482話 割と好きだったらしい 挿絵あり
「ガン飛ばしてるから食ってやるなぁ〜!!」
「おう!切り分けてやるからフェリエットはいっぱい食べろよ!ほら、お前達は少し待ってろ!」
「焼き魚のパイ包みと考えれば猫人に人気があるのは頷けるのか?」
「クロエさんが食べるのはオススメしませんよ。アレは魚の味が全てを上塗りして香りも・・・。」
魚が好きな猫人にはストライクなのだろうがどうなんだろう?レシピを検索してみるとホワイトソースを作りそこにぶつ切りの魚を差し込み焼き上げる・・・。基本的に使う魚はサバやニシン後はイワシで風変わりなものはザリガニとある。
魚風味強めの牛乳・・・、無理だ。飛び出している頭は食べなくてもいいらしいし、内臓も抜いてあるらしいから苦くはないのだろうが食指が動くかと言われればNo。次いでにキドニーパイには犬人がワラワラと集まりだしている。
外で食べるつもりなのか適当なテーブルを出してそこにパイを乗せたエヴァが剣で切り分けて大きなピースをフェリエットに差し出しているが、フェリエットとしても中々手が出ない。と、言うか男性猫人も犬人もフェリエットの事をずっとスリスリしている。
考えてみればフィンは男犬人なのでアプローチかけるにしても女性になるし、ここの中位と言えばサイラスになるのでこれまた女性となる。エヴァは女だが下位なので獣人としては数多いスィーパーの中のひとりとか?
因みに俺の方をガン見する獣人も多いが、日本の獣人の様に寄って来ずにまだ遠くから見ている段階。フィンの姿は見えないと思うが他の所にいるのかな?
「バリバリ食えば割と食べられるなぁ〜。」
「だろ?コレは皆んなに魚が入ってるって分かりやすい様に魚を刺して立ててるんだぜ。」
「魚の味が凄いなぁ〜。」
割とフェリエットはパイを気に入った様だ。人に近い味覚だがやはり感覚は違うのだろう。なんにせよお菓子じゃ腹が膨れなかったみたいだしいい事だ。しかし、他の猫人と食べ始めてしまったしどうしようかな?一応魔法省の敷地内にいるし勝手に交流させて俺達は中を見てもいいな。
「青山はエヴァさんとかフェリエットについててくれ。私と松田さんは一足先に中を見てくるとしよう。」
「そうですね。フィン君も中にいるでしょうしここは青山君に任せましょう。サイラス長官よろしいですか?」
「構いませんよ。魔法省の敷地内で狼藉を働けばそれは女王陛下に弓引いたのと同じ事。見回りのスィーパーもいるので大丈夫でしょうしエヴァも付いてますからね。では長官室へ行きましょうか。」
「フェリエット〜、食事が終わっても青山とエヴァさんから離れるなよ〜。私は先にサイラスさんと中に入る〜。」
「分かったなぁ〜。」
「何かあればすぐに電話してくださいね。俺からは何もなくても電話しますから!」
「せんでいいから辺りを案内でもしてもらえ。一通り見て回ったらエヴァさんも長官室へ案内してくれるだろう。」
青山達を残して魔法省内へ。中は豪華というかシックというか白を基調としたロビーに光が差し込み明るい感じで、壁画やら天井画はないもののシャンデリアがぶら下がっているので格式が高く感じる。建物の外観そのものはジョージアン建築とでも言えばいいのか正面から見れば左右対称で赤レンガ風の壁で作られていて、最新式ながら歴史を感じろと言われたらもう少し薄汚れれば古くからそこに建っていたと言われたら納得しそうな感じだな。
トータル的に見たらここで舞踏会とか開けそうだが、スィーパーが集まるなら武道会に様変わりしてしまいそう。ただ、さっきのサイラスの言った事が本当ならここで問題起こすと英国に対して問題を起こした事と同義になるんじゃないかな?下手に目をつけられたくはないから問題を起こすつもりはないが、中にはゲートに向かうであろうスィーパーがいるのでどうしても注目されてしまう・・・。
「居心地が悪いですかレディ?そのドレスなら舞踏会の華になれるでしょう。」
「華は華でも棘がたっぷりの茨が踊るバトルダンスですよ。私は無骨者なのでダンスなんて相手を踏みつけて蹴り飛ばすくらいしか知りません。」
「しかし米国ではダンスを披露したと聞きましたが?」
「雨乞いですよ雨乞い。広域でモンスターのビームを減衰させるならさっさと放電なり冷却なりする方がいい。流石に雨の砂漠は戦いづらいし体力も奪われますが、湿気が多い程度に留めれば動きも阻害されないでしょう?」
「おぉ!!儀式魔術!それもイメージですか!私もそれって使えますか!いえ!使ってみたい!魔法陣を描けば私にもできますか!?」
「サイラス長官近い!近い!」
やはりこの人は魔術が好きなのだろう。魔術の話となると子供の様にはしゃいで目を輝かせている。しかし儀式魔術と言われても雨乞いして雨が降るか降らないかは天のみぞ知ると言った所。それを100%湿気で満たすならどうすればいいか?答えは水箱である。
ほぼ無限に水の出る箱に煙を吹きかけ水と混ぜて辺りに拡散させる。そして、拡散した水をそこに停滞させて守りとする。踊って雨が降る事を祈ってもその願いが叶うかは分からない。しかし、雨乞いをしたという事実と、どこまでも湖面讃える水箱があるなら確かにそこに溢れるだけの湿気がある。まぁ、ぶっつけ本番だったので魔女に言われた通り踊ったし、そもそも踊りはなんでもよくて雨降る程度に湿気ろと言う魔法だったのでないよりはマシと言う程度だろう。
しかし魔法陣書いて魔法を使いたいと言うか、設置系の魔法でも使いたいのかな?職的には使えない事はないと思うが中々難しいイメージだろう。まぁ、仮に出来るとすればとアレの応用となるな。
「その話は上でしましょう。ここではあまりにも目がありすぎる。」
「すいません、興奮してしまって・・・。」
「サイラス長官・・・、少女に詰め寄る紳士なんて変態ですよ?日本では『YES!ロリータNO!タッチ』でしたっけ松田さん。」
「それは国の品格として貶されているような・・・。まぁ、ブラックジョークとして受け取りましょう。それにクロエは見た目こそロリータですが中身は44歳ですし。」
「英国内では今の所外見年齢が全てですよ。若い人は若いし老人は老人。まぁパブに行くなら身分証明か日本の様にドッグ・タグを見せれば問題なく飲めます。」
いい事を聞いた。夜はホテルに引き籠もってルームサービス生活かと思ったがドッグ・タグはこちらでも身分証として使えるらしい。と、言う事は英国での飲酒可能年齢は引き下げられたのかな?それとも、日本の物にない年齢表記も英国ではしてるとか?何にせよスィーパーは16歳からなれるし、それ以下でスィーパーに成った子はわざわざ飲み屋に行こうとも思わないだろう。
健全か否かは別として、酒が旨いと思えるにはそこそこ歳がいる。甘いカクテルやチュウハイなんかなら飲めるかもしれないが、自分の飲酒限界を知らずにこっそり飲んで次の日にグロッキーでエナドリやら回復薬のお世話になるまでがセットかなぁ〜。
俺も初めて飲んだ時は全く酔わずに飲めると思ってどんどん飲み、日本酒一瓶空けた途端に意識飛んだ・・・。それからは流石に限界を知り美味しく飲める量を知って楽しく飲む様に自制したしな。今となっては底がなくザルになったのでいい思い出である。
「クロエ何処かに遊びに行こうとか思ってません?自重してくださいよ?」
「嫌ですねぇ松田さん。私が行くとすれば古本屋と博物館とパブですよ?いかがわしい店はノーサンキューです。」
「そのパブが問題です。出来ればホテルのバーで我慢してください。」
「青山連れてくから大丈夫でしょう?外出時には顔も隠しときますよ。それでダメなら全身を隠しておきます。」
「なんでそこでアグレッシブに行動しようとするんですかね?」
「それは旅の醍醐味だからでしょう?来てホテルに引き籠もっては何も得るものがないじゃないですか。さて、行きましょうか。サイラスさん案内をお願いします。」
「分かりました、ジャスパーはフィンを探しておいて欲しい。流石に長官室には居ないと思う。」
「ええ、見つけて連れてきましょう。ただ、長官室にいたら連絡してください。」
ここでジャスパーと別れ長官室へ。エレベーターで上がり最上階が長官室の様だ。『チンッ』と言う音共に扉が開くと赤い絨毯が一直線に奥の扉に伸び、その扉の上には何故か校長室と書かれている。はて?長官室とサイラスもジャスパーも言っていたような・・・。
「なんで校長室なんですか?」
「・・・、女王陛下から『学び舎で教鞭を取るなら長官よりも教師や校長よね?』と言われました。」
会った事ないが女王陛下は中々面白い性格をした人らしい。まぁ、それくらい人生を楽しめなければ一国の君主は務まらないのかなぁ〜。




