471話 出勤後 挿絵あり
子供達を送り出し家事を終えて望田と共に出勤。LINEで妻に終わらせた家事の事を送り食パンがない事を伝えておく。夜勤が明けたから今日は休みだし寝てから買い物行くなら行くんじゃないかな?鶏肉も無いので使いすぎとお小言はあるかも。まぁ、晩飯と朝飯に消えたのでそこは仕方ないと割り切ってもらおう。
エンゲル係数は高いが大人と中高生が家にいるならこれくらいは使うはず。お金自体は悪くない額を渡しているので流石に底をついたとは言われない。そもそもウチで今一番お金使ってるのは食費だしなぁ・・・。冷蔵庫なんかの高い家電を買うならまず話し合いからなので基本的に用途不明費はない。まぁ、妻もお給料貰ってるので友達とランチに行くとかならそこから出すし、専業主婦の頃も食べに行くなら誰々と行くと言って夜は家にいたしな。
「ソフィアちゃん達は上手く学校に馴染めますかね?」
「そうであって欲しいけど、こればっかりは本人達がどう考えるかだからね。家で話す感じはそんなに煙たがられる様な感じでもないし、あるとすればフェリエットの野生が爆発しないかとか?まぁ、ご飯やらは多めに渡してるから休み時間にひと狩り行こうぜ!って話しはないと思うけど。」
そう言えばソフィア達ってあんまりゲームしないんだよなぁ〜。中学生の話の話題といえば男だとアイドルやらゲーム、後は彼女とか?テレビや漫画も話題にしやすいが見てなかったら話しは合わないし、今だとスマホで配信も見れるので何を見たかは人によるとしか・・・。例外とするなら音楽もあるが、俺が中学生の頃は音楽=アイドル歌手だったので、アイドルに興味がない人はちょっと遠ざかる。
まぁ、そこで楽器を始めたら更にグループとしては違うグループになるので、話しは合わなくなってくな。日常会話やら普通に話す分にはいいのだろうが趣味的なモノとしては別方向だし、それでも仲が良いならどこか波長が合うのだろう。
「多感な時期ですからね。ソフィアちゃんの生い立ち的にその多感な時期かは置いておくとして、周りは思春期真っ盛り。ラブレターとか貰ってくるんじゃないですか?」
「どうだろう?テレビで見たけど、今だと面と向かっての告白は恥ずかしいらしいし、LINEとかでサクッと告白するのが主流みたいだよ?体育館裏での告白とか、伝説の木の下で告白とかはなくなってしまったらしい。」
「それはそれでなんだかもったいないですね・・・。」
気持ちは分かる。だって受け入れられるかも分からない告白を面と向かってして、断られたらどうしようと言う不安もあるし。昔ならある程度仲良くなって面と向かって話して、相手の機微を伺いつつ告白ってのがセオリーだったと思うが、今だとマッチングアプリやらもあるし恋愛感は移ろい変わるモノだろう。ただ、スィーパーの恋愛事情的にはやはり同じチームやらの内輪のモノが多いらしい。
言い方は悪いが命懸けの場面でその人の本質が見えて来て、口先でどんなに愛を囁やかれようとも、モンスターを目の前にして置いて逃げられたら信用も恋も冷める。最新のテレビで調査では昔なら3Kとか言われた高学歴、高収入、高身長とか言われた項目は鳴りを潜め誠実さや職、性格等のマインド部分のウェイトが増して顔の良さ等はあんまり上がらなかったらしい。
まぁ、顔がいいのは獣人がいるし収入もどちらかがスィーパーでも2人ともスィーパーでも悪くない。要は一緒にいて信頼できて堅苦しくなく生活できる人がいいのだろう。ヒモ男は獣人に顔で勝てたら大丈夫なんじゃないかな?
昔からなんであんな醜男に髪金美女が!なんて話しはよくあるが、強さと稼ぎは比例するかもしれないが、醜美は何1つ比例しないので余程の問題がない限りはパートナーが何を優先したかによる所だな。実際世界一ブサイクと言われた人も結婚しているし、外見よりも本質を見る方にこれからの恋愛事情はシフトチェンジしていきそうだ。
実際ルネッサンス基は美しさの基準が能力や知識を重視していて老人だろうと知識人なら美しい人としていたし恋愛対象でもあった。女性側は芯のあるしっかりした女王様タイプがいいとされていたので、大きく見ると今はそっちに戻って来てるのかも。まぁ、そうは言っても最初に見るのは顔なのだが・・・。
「人を愛するにしても愛されるにしても少なからず恐怖心はあるからね。ただし、恐怖心が麻痺してる青山は除く。てか、アイツ外で何してるんだ?」
ギルド前で車を降りるが広場で青山が獣人達に何かしていた。身体を動かしていたし武術でも教えていたのだろうか?俺と言うか望田の車を見つけると腕がちぎれんばかりに振るので何をしているかは想像するしかない。ただ、アイツの戦闘スタイルは低い姿勢からの一撃なので獣人としては学びやすいのかな?
「おはようございます本部長。」
「おはようございます。何かありませんでした?」
「いえ、受付で把握している事は何も。昨晩は平穏でしたよ。」
「分かりました、交代までもう少しなので頑張ってください。」
受付で昨晩の事を聞く。何もない報告は喜ばしい。下手すると食堂で飲んだ組がバカをやって何人か皿洗いしてるなんて話も聞くしな。望田に先に本部長室へ行ってもらい妻と家事やら家に足らないものやらをサクッと話し本部長室へ。朝イチの書類はそこそこの量で獣人の登録は分業化しているのでない。
出土品の方も神志那が分類しているので後から回収して金庫行きだな。後は1ヶ月しても帰還しないスィーパーに付いては仮死亡として分けていく。チームとして潜り誰か1人でも帰って来て全滅報告があればいいが、なければ生死は不明。半年後に死亡とするがひょっこり帰ってくる事もあるので難しい。
話によればセーフスペースで生活して移住を考えていたなんて話もあるんだよなぁ〜。要望としてギルドにポストやら宅配物の受け取り窓口を作れないかと言う話があるが、そんなもん仕分けする方の身にもなれと一喝。外で私書箱でも開設しろよ、そんなに高くないんだしさ。
どこに住んで何をしようと個人の自由だが、ウチは何でも屋でもないし、仮にウチがそれを認めたら他も認めろと言う声が上がる。どうしても郵便物やら宅配物が欲しいなら有志でどうにかしろ。一応、セーフスペースから帰れる宅配員を護衛する前提で統合基地に招けばいいのでは?と言う案は出したんだしさ。
何気にそんな商売やる会社もある様で速達を出すとその日の内に相手に届く。ネットワークと言うか会社がまだ出来立てほやほやなのでカバー地域は少ないが、連携次第では大規模ネットワークになるんじゃないかな?需要は高いだろうし頑張れば海外にもその日の内にデリバリー出来るし。
「ん?サイラス長官から通信か、なんだろう?」
「英国魔法省からですか、直接通信って事は政府を超えての頼み事とかですかね?」
「どうだろう?気軽に連絡してって言ったから茶飲み話だとしても驚かないよ。ただ、今から8〜9時間前だとすると深夜と言えば深夜かな。」
時差を考慮すると昼過ぎ辺りに連絡が来るならアチラとしても負荷はないと思ったが、朝イチ通信となると帰って寝たいんじゃないかな?まぁ、サイラスがどこに住んでどこで寝ているかは知らないし、残業しているのかも分からない。何にせよ話さないと連絡内容も分からないな。メールをチェックしても特に来てないし。
「お疲れ様ですサイラス長官。」
「おはよう?でいいですか、レディクロエ。確か時差を考慮するとその挨拶が正解だったと覚えています。」
「ええ、大丈夫ですよ。それで、そちらは夜中だと思いますがどうかされました?後、副長である望田も同席しています。」
「米国スタンピードでの英雄の1人ですね。分かりました、話というのはこの前のフィンに付いてです。ゲートの中でモンスターと戦わせるのは魔術を使う糧になると思いますか?現在の所ゲート外では穴を掘らせてみたり泳がせたりしていますが、中々糸口が掴めないとか・・・。」
魔術を使う糸口か・・・。フェリエット本人がいればいいが今は学校だしなぁ。少なくとも強制ではなくのびのびとやらせている様だが、そんなに早く糸口が欲しいのだろうか?まぁ、そこに突っ込むのもまたナンセンスか。しかし、強制以外でやるとなると・・・、共同作業とか?
フェリエットが職に就く前段階でやらせた事、やった事を考えていくと知識の習得、対人関係に対する理解、獣人のリーダーとしてのウェイトレス作業、数学を通じての0や自己への理解、そしてソフィアの・・・、人の面倒を見させると言う責任を持たせる事。自分がいて相手がいる。それは当然の事だがその相手に対してどう接するのか?ペットならなんの責任もなくお願いさえしていればいい。ご飯が欲しければ吠え、散歩に行きたければ吠え、遊びたいなら吠えればいい。
そこに相手の状態を考慮する所はなく、仮に子供が生まれてもやるのは舐めるや狩りの方法を教えたり餌を渡すくらい。つまり、相手の意思を尊重すると言う部分が酷く少なく、自身の思いが最優先される。それはフェリエットの性格と言うか考え方でも分かる。しかし、それにも多少の変化は出て来ている様だ。
朝飯がそうだろう。身支度を優先させたのは今まで通り。しかし、しらすを要求して断られたら自分で持って来て大根おろしを入れて味付けもした。前なら持って来ないなら諦めたが、今ではそんな味付けさえ出来る。後は、誰かと無償で物を分け合えるとか出来ればある意味一人前だろう。
フェリエットはサイラスと話した時に遊んで好きな事をさせていれば自然と魔術を覚えると言った。それはつまり、子供と一緒なんじゃないのか?人の輪の中では自分の主張が通らない事はあるし、怒られる事もある。でも、それで怒っても駄目なものは駄目で諦めてしまう。だが、好きな事を誰かと共におこないそこで効率性を考えていけば・・・。
「先に伺いますがフィン君は誰かと遊んでいますか?」
「いえ?貴重な存在なのであまり・・・。1人で穴を掘ったり泳ぐ事が多いですね。一応誰が監視したりパートナーは共にいる事が多いですが、特段指示を出したりはせずに遊ばせています。」
「なら輪の中に入れてください。なんならどこかでリーダーをさせてもいい。本人がいないので憶測的なものになりますが、遊んでいれば自然に覚えると言うのは、誰かと共に遊び尊長し合ったり意見を出し合うと言うのが本質だと考えます。フェリエットは獣人として誕生してからほぼ全ての時間を多数の人と接しながら過ごし、私の娘と共に勉強してモノを教えたりしています。」
「なるほど、要は遊びの中で必要性を見つけさせればいいと?」
「多分そうなります。それに、1人では闘争心も出てこないでしょう?」
「闘争心?話が飛躍してなんでその言葉が出るのか分からないのですが・・・。」
サイラスは首を傾げているが望田は納得している。前提となる知識量の問題のせいだな。そもそもソーツが人を選んだのは闘争心からである。どんなに優れた種族がいようともスタンピードを容認してモンスターとの戦いを避ける様ならまずゲートは設置されない。それは既に掃除ではなくただの侵略だろうし、ソーツの掃除しろと言う要望とも食い違う。
ペットや獣に闘争心がないわけではないが、その闘争心の本質は縄張りを守りたいからや、獲物が欲しいからであって優れていったからではない。しかし、人と同じ思考が出来る獣人は効率という言葉を使う。そして、効率とは相手よりも優れていれば更に増す。
あっぶねぇ〜!マジであっぶねぇ〜なぁ、おい!自分で考えていて思ったが、本当に奴隷ルートを取っていたら何十年後かに獣人が職に就いたら最後、数を増やして間違いなく戦争するじゃねぇか!人の代わりに仕事して社会基盤を掌握した後に反乱を起こされたら止める手立てがねぇ!なにせ簡易量産型卓が大量に攻めてくるんだぞ!?職に就いたばかりのスィーパーなんて奴隷労働させられて根性据わった獣人に勝てるわけがねぇ!
「誰かより優れていたい。それは人なら誰しもが考えるでしょう?獣人は人です。会話が出来る時点で、人と同等の知能がある時点でそこに変わりはない。多数の中で優れている為には法を破るしかないじゃないですか。」
「なるほど思考し、妄想し、空想し、操作し、具現化し、法を破る。最後の魔術師としてあるピースを闘争心で埋めると。分かりました、魔法省も明日から本格的に稼働するので対人作業を割り振れるなら割り振って仕事をさせてみましょう。」
「『働かざる者食うべからず。』『ズルすればご飯抜き。』『仕事は適度にサボって真面目にする事。』そして最後に『他人に迷惑をかけない。』これは国際会議で日本が出す獣人憲章と言うものです。いいですか?絶対にサボっての部分を省かないでくださいね?絶対にですよ?」
「ね、念押しされる前に先ずは書き写していいですか?録画とかしてなくって・・・。」
「なら後で政府を通じて送ります。」
「サイラス長官大丈夫ですか?割と需要な話だったような・・・。」
「レディ望田、多分だいじょばないかものぉ〜・・・。ま、まぁ、?ワシってトップじゃし?この通話も勝手にしてるだけじゃし?」
何やら口調が砕けているが、多分指摘されて本当にヤバいと思ってるのかも。まぁ、茶飲み話程度で何かあったらいいなぁ〜と連絡したのに国際会議で話す憲章の事を言い出したのだから焦りたくもなるか。まぁ、何にせよ松田にも連絡してってサボっての部分だけは抜くなと強めに言おう。
「心中お察ししますサイラス長官。クロエと話す時は何かしらで録音した方がいいですよ?いきなり突拍子もない結論が出てくる時がありますからね。」
「先に言って欲しかったのぉレディ望田・・・。何にせよ文章をお待ちしています。では。」
「ええ、夜分遅くまでご苦労さまです長官。では。」
通信を切るがさっさと電話しないと不味いなぁ〜。議論されて仕事は真面目にする事と短縮されるとかなりまずい。他人に迷惑をかけないという言葉があるから、そこまでの危惧する事かと聞かれれば迷うが安全装置は多い方がいい。
「やけに念押してましたけどサボっていいんですかね?普通なら仕事は真面目にする事って話でいいと思いますけど。」
「いる。多分抜くと後からどえらい事になる。」
「どえらい事?いい仕事してくれそうですけど?」
「なら、真面目な仕事って何?」
「真面目な仕事ですか?それはミスなく無駄なく素早く完璧な仕事じゃないですかね?今日の文章も少なからずミスはありますし。毎回訂正するのも面倒なんですよね・・・。」
望田がぼやいているが、真面目な仕事と言うよりは完璧な出来の仕事と言うニュアンスが強い。しかし、それを獣人がやりだしたらどうだろう?憲章の内容通りの仕事をしたとして働けないならご飯はないし、不正は許されないし、仕事を休んでもダメ。他人に迷惑もかけられない。つまり、受け取り方次第では奴隷規約となってしまう。ただ、そこに適度にサボると言う言葉があれば、任意の休みは確実に生まれる。
そして、年老いても身体が動かないからサボっていると言えるし、本当に病気ならズルでも仕事しないではなく出来ないなのでご飯も貰える。それだけではなく一番怖いのは延々と真面目に仕事をする事。教えた当初は指導者として人がいる。しかし、次の時には獣人の先輩から教わる。それを繰り返せば人の仕事は獣人が行い共同作業なんて生まれない。
本当に獣人が職に就けないなら、そんな役割分担もあっただろう。ただ、その分担をしてしまえばスィーパーは限りなく弱くなる。なにせ発想力が欠如しだすのだから、見ただけの同一イメージを再現したりするだけになる。つまり、適性と言う部分は剥がれ落ちそれしか職が出ない状態に突入してしまえば、後は脳死アタックの同一戦法でモンスターを狩るだけ。
人に妖怪が出れば魔術師も格闘戦も行けるのだろうが人には多様な職がある。それが出なくなったからといって、魔女達が他の職に統合してくれるとは限らないし、下手したら消滅する職とか出てくるかも。なにせ魔女達は観客だ。映画館に入れない客は帰るしかない。それの猶予がどれほどあるか・・・。
確かにソーツでは職のシステムに介入出来ないな。だってそれって魔女達に勝手に帰るなと怒鳴ってる様なモノだし。え?まって、俺が職の一覧を覚えてないのって記憶消されてるから?不思議に思ってたんだよなぁ〜。記憶の映画館は無意識に見たモノでさえ浮かび上がるのに事、職の一覧については一切浮かび上がらない。
(なぁなぁ、俺ってその記憶消されてる?)
(職の一覧?消えたと言うかあれって君の言葉の羅列だから、そもそもどういった形なのか僕達は知らないよ?)
(形を知らない?えっ?空に浮かぶウィンドウは?)
(貴女ってたまに本当に馬鹿よね?それさえもイメージであって私達がそんな形を指定するわけないじゃない。よく考えなさい?私達は遅れて来た観客よ?職の名前が決まってから初めてそこに目が行く。そこに目が行って消えたなら後は貴女のイメージのモノが繰り返される。そして、それを貴女が思い出せないなら消えたのではなく破壊されたのではなくて?)
(記憶を破壊?いや、俺はそんな攻撃受けてないぞ?受けて・・・、三つ目か!あの光か!)
確かに初めてゲートに囚われた時に受けた攻撃と言えば喋る三つ目の光。てか、初っ端喋るモンスターとかリスキー過ぎない?あの時はまだ仕切りも無かっただろうし、武器部屋行かなくて逃げ回った末に死亡とか下層まで落下とかあったのだろうか?寧ろ、そんなアホな死に方ならソーツ撤退してた?よそう、過ぎた事だ。
しかし、あの光って熱線じゃなかったの?下では弱いけど雪を溶かしてたし・・・。確かあの時は頭痛は酷くなる一方だった。しかし、異物感があると指輪から物を取り出したら収まったし、精密検査の結果も異常なかった。なら、あれは関係ない?いや、もしかしてチェレンコフ光とかの光による重度被爆で脳が溶け始めてた?確かに頭痛は職に就けは治ると言われたが、その前に脳もなくなったので痛みを感知出来なかった?
うわぁ・・・、あの三つ目バラしたい。バラして検証したい。しかし、喋る三つ目は下にしかいないし、喋る時点で簡単には捕まえられない。なら、上の三つ目はと言うと生産終了のお知らせか出現率はかなり低い。昔は大量にいたのになんでだよ!
量が多いから覚えてないんじゃなくて、記憶消去と言うか新し目の記憶から消え始めてたとかなら・・・。どうなんだろう?交渉内容は割と覚えてるから本当に秘匿されてると言う線も捨て難い。何にせよ記憶の霧の中だな。
(確認するが2人は知らないんだよな?特に目である賢者は。)
(あのねぇ、君は確かに僕を選んだけどその姿になったのはずっと後。なら、あの場で目が行ったとしても意識のない僕じゃ分からない。)
(同感ね。捧げられて始めて私達は来る事を容認したのよ?それまでの事なんて知る由もないわ。)
職の一覧はやはり不明か・・・。まぁ、なくても困らないと言われたらそれまでだし、あったらラッキーとは思ったが仕方ない。どの道誰かが職に就き続ければ分かるたろう。
「黙り込んでとうしました?」
「いや、獣人の話だけどサボらない獣人は効率を目指す。なら、それを極めていくと人は要らないと言う結論も出てくる。人がいなくてもモンスターは倒せるし知識は仕事すれば増えるからね。それが重なっていけば人より仕事する獣人にとって、指示するだけの邪魔者は間違いなく敵になる。サボるって言うのは言わば遊びだよ。ある程度の適当さは必要で、共に考えるだけの関係性があれば関係は簡単には崩れない。」
「つまり今が一番危うい時期であると?」
「そう。獣人は個人主義っぽいけど、周りに集団となる群れがいれば、そこまで無茶はしないし寄り添ってくれる。でも、今すぐに獣人だけの集団で何かさせたらすぐに人は不要論が出る。だから、サボらせてそこを補うストッパー役に人が就く。完全自立は流石にまだ先にしないと異種族コミュニケーション失敗になるからね。」
「人が不要・・・、獣人だけの文化圏とか出来たら人を排斥すると思います?」
「フェリエットは今朝しらすに大根おろし乗せて醤油を入れた。料理出来る獣人が増えたら人はいらないだろうし、放逐して野生の味しか知らなければ旨いモノはそれだけになる。野良猫にちゅーるあげた罪深い動画知らない?」
「見た事ありますね。癒しだけどその猫が次にちゅーるを貰えるのがいつかと考えると・・・。」
「可愛いから気持ちは分かるんだけどねぇ。でも、その野良は次からも人に寄ってくるだろうし、貰った所はまた貰えるかもと巡回範囲に入るだろう。今は野良に危害を加える人はいないけど、それでもね。」
獣人化すれば更に美味しいものは食える・・・、と思う。でも、薬がなくて獣人化しないならそれは拷問だろう。しかし、割と獣人も元の猫や犬の自分を区別してるんだよなぁ。何かしらのプログラムでもあるのだろうか?それとも、姿が人だから?まぁ、なんにせよ獣人が犬猫に戻るのは無理だからありがたいと言えばありがたい。
午前中の書類整理は終わり、松田へ獣人憲章のサボるの部分を絶対に抜くなと連絡を入れて昼食へ。食堂で青山と出くわし朝の事を聞くと警官とともに獣人に捕縛術を教えていたそうだ。職に就ける就けないは抜きにしても話せる麻薬捜査犬は有用と言う事で試験的に採用を目指すそうだ。同様に猫人も訓練しているので犬人のお巡りさんも猫人のお巡りさんも見れるかも。
ただ、階級ってどうするんだろう?デマのせいか警察犬に階級があるなんて話を鵜呑みにしている人もいるが、警察犬に階級はなく備品扱いである。それが獣人に適応されるかは微妙だが、ギルドからの協力者枠とか?階級就けずに報酬だけと言う話しならゴタゴタはないし私人逮捕なら文句も出ない。
相手がスィーパーなら危ないが流石にパートナーはいるだろうし、そこまで手抜きをするわけもないと思いたい。ただ、駐在所に住ませるとかはありそうだな。過疎地とかならそこまで人を割きたくないからとかで人と獣人2人とか。
なんにせよここまで来たら獣人排斥は不可能だし暴動を起こされるのもごめん。いい付き合いをしていこう。




