460話 PCは苦手な様だ 挿絵あり
松田から連絡を受けて夏休みの宿題をサボった組がゲートではなく家や図書館、或いはファミレスにこもっている頃、ウチはと言うと息子が一番忙しいのかな?妻や俺は定常業務でソフィアとフェリエットは入学前のラストスパートと言う様に勉強、息子だけが離れを改造しつつギルドのシフトをこなして勉強をしている。
まぁ、高校の勉強はスィーパーがほぼ大半なので、量こそ少ないが休み明けのテストなんてものもあるのでそれに照準を合わせたものになる。気になって宿題の内容を見せてもらったが、数学の計算問題はあるにしても国語は感想文だけだったり理科は自由研究だけだったりと暗記モノは少ないな。その反面、物事を考える系はの問題は増量されている。
ただ、どれをするにしても前提となる基礎知識は必要だろう。残念な事に知識は積み重ねてこそ価値がある。例えば全く知らない事を睡眠学習で記憶を植え付けられたとして、すんなりとその記憶を使いこなせるわけはない。知らない記憶には取っ掛かりもなく混乱こそすれまともには扱えない。そもそも蓄積されず植え付けられただけの記憶はフラッシュバックの様に蘇って使い物にならないんじゃないかな?
いや?もしかしたら最適化された人なら記憶の植え付けって行ける?ニューロンが網目の様に広がるのは一気に電気信号を送り脳の様々な部分から働きを得る為だが、記憶分野が肥大化した事を考えると必要な記憶なら割とすんなり取り出せるとか?まぁ、そんな技術はまだ夢物語だろうけど、そのうち出来るのだろうな。
「改造プランってあれで良かったの?バスタブ無いけど。」
「作るとどうしても小さくなるのでシャワーですね。浸かりたい時はギルドに借りに行きますよ。他は洗濯機を設置したのでコインランドリーは行かなくてもいいかと。」
「物干しは場は好きに使っていいけど、買ったのは乾燥機付きだっけ?」
「ええ、下着系はやっぱり気になりますからね・・・。」
「まぁ、ウチも乾燥機コースだからね、下着は。観光地ってわけでもないけどたまに人が来て記念写真撮ってるし。」
表札も何も無い普通の家の前で写真を撮っているが、何が面白いのだろう?個人邸宅と言う事でSNSでの拡散はNGとしてあるし、見かけたら多分写真は消される。割とガチで警察が注意しに行くので下手な事をしないように。
(ご褒美と言うものが決まった。)
「ん?何にしたんだ?」
3人で話しているとバイトがひょっこりと顔を出しそう言った。色々と迷っていたが到頭決まった様だ。流石に解放してくれと言われたらそのままバトル再開なので、その際は確実に始末するとしよう。残念だがその選択肢を取ると言うならパートナーとしても犬としても今後好転する事はないと思う。なら、一匹のモンスターとして正面から叩き潰す以外ない。
(フェリエットや他の小弱が持つ板が欲しい。)
「フェリエット達が持つ板?」
(そうだ。見ながら指で弾いたりする板だ。吾輩は犬やパートナーの知識を欲する。)
「タブレットの事ですかね?」
「だろうね。分かった、タブレットを1台渡すとしよう。犬とパートナーについて知りたいならそれに準ずるものも入れておこう。」
犬やパートナーだと忠犬ハチ公の映画とか南極物語とか漫画だと銀牙とか?犬を題材にした作品は多いが、真面目というかギャグを抜きにするとこの辺りしか思いつかない。犬になったら好きな人に拾われたと言う作品もあるが、どう考えてもバイトは俺の事を怖がってるし好きな人ではない。寧ろ、見上げると目の前に尻があって邪魔だと思っているかもしれないな。
何にせよ犬とパートナーを意味として受け入れるなら、それを手助けするのもまた作り替えた者の務めだろう。サブスクや漫画アプリをさっさとインストールしてアカウントはそのまま俺のものを使う。いとしのムーコとか懐かしいな。しかし、バイトとしてはこの知能と言うか在り方はどうなのだろう?
甘えて来るなら可愛がるが・・・。と、言うか散歩は割としてるし水洗いもエサもあげてるので一応関係性としてはありなのだろうか?あげたエサは高確率で鳥に食われているが・・・。まぁ、元がモンスターだし食わないなら食わないでそれも選択肢か。ただ、あの2人組には釘を差しておこう。
(魔女と賢者ちょっと。話は分かるな?)
(タブレットの事?どうせ変な事はするなって言うんでしょ?しないよそんな事。君のイメージのおかげでWi-Fiとか受信できてるし。)
(好きな物を買うくらい許しなさい?報酬よ。)
(報酬は渡すがせめて一言くらいだな・・・。)
はい。Wi-Fi飛んでんなと言いながら避けるギャグがあるが、アレを元にイメージすると目に見えないが電波は常に飛び交い今も身体を通過している。そもそも電磁過敏症で体調不良を起こす事はあるし、その原因はオール電化やWi-Fi等の人工電波が原因でそれを遮断する為に頭にアルミホイルなんて事も。元ネタはSF小説でテレパシー遮断の為だったが、映画のトータル・リコールで濡れタオル頭に巻いて発信機の電波を遮断したりしたのが、いつの間にか濡れタオルからアルミホイルを巻いたと置き換えられてる人もいるかもしれない。
そんな電波を避けるのではなくキャッチするイメージを作れと賢者に言われて試行錯誤した。スタートは妖怪アンテナよろしくアホ毛で電波を受信するイメージをしたが、ビジュアル的にバカっぽすぎて却下。うん。アニメならいいけどリアルでやるとただの寝癖だよね・・・。
なので妖怪アンテナは却下して次は耳飾り的なカチューシャを使ったが、これも髪から滑り落ちて邪魔。最終的に飛んでくる電波をキャッチして送り返せばいいと、髪を網に見立ててキャッチして毛先から送り出す方式へ。コレにより電脳化出来ない俺もネットの世界の住人になれた。まぁ、これしないと賢者がスマホをぶっ壊すので毎回替えを注文する手間がかかるんだよね・・・。
前に壊すなと言ったがゲームに熱中してこの体たらく。でも、ゲーム応用戦術とか使ってくるので更に脳内訓練は過酷を極める・・・。本当にどこかのゲーム大会で優勝とかしてるんじゃなかろうか・・・。因みに電波の厳選は案内人がしてくれるので、暗号化されて解読出来ないんじゃないかな?
まぁゲームはいいよ、ゲームは。課金するわけでもなく与えられた手札の中で課金勢を倒せる様なゲームしかしてないし、ラグなしと言う最大の武器とミス配置なしと言う悪夢が合わさってコンマ以下の世界で戦ってるし。それに引き換え魔女である。この横暴の権化である。地雷がどこにあるか調べなかった俺も悪いと言えば悪いのかもしれないが、魔女や賢者は人の記憶を勝手に見ている。
そして書物として再現して読んでみたりしているのだが、ある時何かを食べたり着たり出来るのか?と言う話になった。普通に考えれば記憶を食われたら危ないと思うが、賢者曰く本はイメージで作っているから壊しても燃やしても記憶からはなくならないらしい。なら、ファッション雑誌を読ませる魔女が直接服を着ればいいのではと言ったのが運の尽き。
俺の服へのイメージの貧弱さを滾々と説明され、作られた服を見せられたらびんぼっちゃまスタイルだったり、前面にあったフリルやらレースはなくストンと単色で装飾なしだったりと確かにデザインとしてはどうかというものばかり。なので実際に買って手に取れと言われて買ったのが数着。次いでにいいお茶やお菓子をよこせと買ったのが数点・・・。
お菓子はいいが服が届いた時に妻から『こんなのが好みなのね?次はこれ系で攻めればいいのね!?』と詰め寄られる始末。幸いと言えばいいのか魔女は服の素材までは気にしないし、パリコレとかの奇抜な服もお気に召さないのでいいのだが、フリルやらレースは好きな様で俺の精神はゴリゴリ削られる。それに、たまに高い服も選ぶので始末に負えない。それこそ俺式Wi-Fi開通当初は勝手にカード番号使ってかなり高額な品物が届いたので送り付け詐欺かと思ったよ・・・。
ただこれで魔女の好みと言うか趣向が分かればそこそこいい手札になるのかな?自分で自分に贈る袖の下とでも言えばいいのか、宥めるにしても飴は必要だろう。
(綺麗なものを見て手に取るくらい良いでしょう?)
(その結果俺が着る羽目になるがな。少なくとも何かを買ったりする際は言って欲しい。知らない間にネットショッピング依存症とか言われるのは勘弁願いたいからな。俺が見てない所でバイトのタブレット使って買ったりするなよ?)
2人に話している間にバイトはタブレットを使いだす。前足でタップするかと思ったら寝そべって尻尾でタップしたり舌でタップしたりと中々器用に見えるな。バイトならタブレット自体は勝手に俺の指輪から取り出すから場所も取らないし、必要なのは片付けだが流石に持ってくるか犬小屋の中で使うだろう。
「割と器用に使えますね。え~と、犬 パートナー?」
「検索より先にアニメとか漫画、映画を見ろ。」
「ちょっとバイトくん?俺はクロエさんに奉公する者だけどポジション奪おうとしてないか?それなら即刻排除しにかかるぞ?」
「お前は犬に張り合わんでいい!そんな事する暇があるなら学生とか獣人達の面倒見てこい。最近は獣人達も遊びより勉強ってやつが増えてるから質問に答えたりだな・・・。」
「獣人方面は神志那さんが実験がてらに何かやってるんでノータッチです。学生方面で補助していますね!」
爽やかにウィンクを残しつつ格好良く走り去るが鳥肌しか出ない。すぐに元通りになるとは言えブワァっと逆立つ感じは気持ち悪いんだぞ?言った所であれも奉公の一環だと言われたら逃げ場がなくなるので指摘はしないし、なんだかんだで女性人気もあるので下手に扱うと敵が増える。触らぬ神に祟りなしだ。
「さてと、青山も行ったし昼食べたら神志那さんを呼ぶか。」
「今日が英国の方との会談でしたね。中々ごねたと聞きましたけど?」
「ごねたと言うかあちらとしては職に就いた獣人を引き合わせて検証したかったみたい。あちらの獣人、犬人でフィンって言うんだけど職名は妖怪。内容的にも出来る事的にもフェリエットと変わらないと思う。ただ、比重が論点になると言えば論点になるのかな?」
「比重がですか?鍛え方で変わるはずでは?」
「そりゃぁそうなんだろうけど男女や体格、性格にパートナーがとう戦っているのか?本人の希望もあるだろうけど環境的な要因はどうしても外せない。そもそも人だって親から子に職の適性部分が引き継がれるかの検証を正確にするなら16年かかる。それに、あちらとしても指輪の中が見えるって部分は重く受け止めててね。」
「入国審査官として採用出来れば危険物の持ち込みリスクは減らせますからね。代わりにゲート内での取引は増えそうですけど。」
「それも悩みのタネ。大量に爆薬持って入っても違法とは言えないし、それを誰かが持って出ても違法とは言えない。用途はゲート内で使うと言われたらそれまでだしね。黒岩さんとかは所持品リストを作ればどうか?って言ってたけど、そのリスト1人分を作るのにどれだけ時間がかかるやら・・・。」
「色々入る分、何入れたか忘れたモノもありますからね・・・。籠もった時に甘いものが欲しくなって指輪漁ったら去年のチョコレートとか出て来ましたよ・・・。」
「それなんだよねぇ。元々はゲート内の運搬用具なんだけど外で使えるからついつい色々入れて忘れる事もあるし、運搬して未開封の箱とかも相当量入ってるんじゃないかな?最近は統合基地付近で箱開けだけの業者も出来たとは聞くけど。」
「あれって獣人喫茶とかの副業らしいですよ?未開封の箱そのものも買い取りとかしてるみたいですね。」
箱の買い取りか。箱にナンバーがあるわけでもないし奥に行こうと箱は何も変わらない。それこそいいものが入っていようと入ってなかろうと外観は変わらないのでお手軽にトレジャーハントをしたければそう言う選択肢もあるのかな?実際奥だからいいものが出るかと聞かれると、実際に回収して開ければ分かるが石油瓶小が1つと金貨2枚なんて事もあれば、クリスタルを使う武器が出るなんて事もある。
レアリティなんて欲しがる人によりけりなので、未開封でお金に変えた方が堅実と言えばそうなんだよな。ただ、堅実とは言えその箱の中に設計図やら不死の薬がないとも言えない。蘇生は聞かないが不死は最近出たらしく一時期話題になっていたな。回収した本人は売ると言っていたので、大金を貰い後の人生は遊んで暮らすつもりだろう。なにせ不死と言えば権力者の夢、買い手なんて腐る程いるだろうさ。
「商売として成り立つならいいんじゃない?毎回獣人を連れて行くコストを考えると安くはないんだろうけどさ。」
「そこは提携の問題ですね。ゲート内に研究所を構えたりする企業としては出土品の安定供給があれば研究も出来ますし、モンスターの素材を直送してくれるなら遅れもカバー出来ますし。」
「統合基地周辺は賑わってるからね。戦力としてスィーパーを雇いたい企業も、企業に腕前を売り込みたいスィーパーもギラギラしてる。」
そのうちゲート内老舗旅館とか誕生するんだろうか?セーフスペースなら最悪その辺りに雑魚寝でも一切問題ないが、豊かさを知った人間としては布団が恋しい。今の所各研究所に仮眠室とか待機室はある様なのでそこで寝ていると思うが、人数比率が変わればそう言う需要もあるだろう。そのうち最初からモンスター退治前提で企業採用とかもあるかも。まぁ、人それぞれなので好きにしてくれればいいが、管理は面倒になる一方だな。
妻の愛妻弁当を食べつつ望田と話し、ある程度の時間となったので神志那とフェリエットを電話で呼ぶ。Web会議の楽な点は移動しなくていい事だし調度品で威嚇しなくてもいい。究極的に言えば見える所さえきっちりしていれば見えない所はどうでもいい。それこそ、スーツを着て下半身がパンツでも文句は言われない。
流石にそんな格好で会議をする気はないが、気分としてはかなり楽だろう。最悪通信不良と言って会議も切り上げられるし。望田は会議中の責任者と言う事で部屋を出るが話は聞こえるし通訳は神志那がいる。そもそも英語分かるよね?と米国から帰って以降散々確認されて分かるし話せると松田にゲロったのでもう隠せない。ただ、日本語じゃないとニュアンスが違っても知らんとも言ったので、会議の際の日本語指定は未だ継続中である。
「もしもし?そろそろ定刻ですが準備は?」
「私はいいですが神志那さん達がまだですね。松田さんとしては英国との付き合いはどう考えます?」
食後の一服とコーヒーを楽しんでいるとPC画面に松田の名前とカメラを起動するかの確認アイコンが。そのまま起動させて通話するが松田は何をしてるんだろう?背後にたくさんの獣人が見えているが・・・。
「関係は良好なので現状維持路線ですね。大使の件はEUとのパイプとして機能して貰う事を条件に許可しました。」
「EUとの?英国は離脱してEUとは関係ないでしょう?なんでまたパイプ役なんて・・・。スケープゴートじゃないですよね?」
「違いますよ。EUと日本は仲がいいので、よほどの事がない限りは事を構える事はありません。ただ、危惧するのは国連ですよEUにあるスイスが本拠地なので、何かやらかさない様にある程度の距離から物理的に見守るお目付け役となって貰いました。日本への大使帰還は大々的に報じてもらう予定です。」
「まぁ、私が大使に会うわけでもないので構いませんよ。今回は職に就いた獣人を引き合わせる事と意見交換で間違いないですか?」
「その予定ですね。問い合わせを受けたあとあちら側と協議を重ね実際に職に就いた獣人がいる事と職名を交換開示しました。どちらも妖怪と言う喜ばしい結果で嬉しいところです。」
「私としては2人だけなので頭痛の種ですけどね。更に人数が増えて安定して入国管理とかに回せるなら何も言いませんが、2人だけとなると下手すると大きな会議の度にオファーが舞い込む。英国としては公表路線なんでしょう?」
「いえ?まだあちらも公表路線ではないですよ?そもそもあちらの犬人のパートナーが公表を拒んでいますからね。今あるのは引き合わせた時のリアクション確認と意見交換のみ。大規模公開すれば波紋は大きいでしょうが、それだからと言って獣人が職に就けるわけでもない。言い方は悪いですが世界初の職に就けた獣人の国となるより安定した頃に情報開示したほうがいい。」
松田としてはデータ取り優先か。護衛の件もあるし素直にありがたい。問題は職に就いた獣人を抱える英国がどう言う話の進め方を考えているかだったが、それも松田の話しぶりからすれば今日明日と言う早急性も感じられないな。
「おい〜す。私、参上!時間は大丈夫なはずだけど、もしかして早めに始まってた?」
「途中参加はよくないなぁ〜。日を改めるから寝てくるなぁ〜。」
「待てフェリエット。神志那さんもまだ始まってませんよ。松田さんと今回の会議や方向性について話していました。情報共有はされてますか?」
「ある程度ね〜。英国としては獣人の職についての情報収集がメインで公表とかは二の次っぽいとは聞いたよ。実際事例が2人だけならそれが賢明な判断だにゃあ。」
「私は遠くにいるフィンとか言う犬人なんて会わなくていいなぁ〜。」
「猫と犬で種族も違うから余計に興味がないのは仕方ないとして、妖怪の仲間なんだから顔くらい見とけ。」
フェリエットのやる気がないが顔合わせしたら何か変わるだろうか?う〜ん・・・、犬人と猫人の関係性は良好である。互いを好き合うとか結婚なんて話は聞かないが喧嘩するような事もない。強いて言えば猫人は犬人よりも個人主義が強く逆に犬人は群れるとか?
とある雑誌の犬人猫人のここが好きと言うランキングを見ると、犬人は常に私に寄り添ってくれてやんちゃな所が好きと言う意見が多く猫人は普段、部屋にいても好きな事を勝手にやっているが寂しいと思う時にはスッとよって来てくれるのがカッコいいとあった。まぁ、両方一緒に飼っていた人から言わせると互いの距離感を知っているので早々問題は起こらない。仮に問題が起こるとすれば犬人が猫人に干渉しまくった時が主だとか。
まぁ、犬と猫の喧嘩を見ると猫は冷めやすいが犬はずっと猫の事を吠えたりするのでイライラするのだろう。口で話してちゃんと意見交換が出来る様になり喧嘩はほぼなくなったと思う。
「すぐに忘れるなぁ〜。この場にいない奴はどこまで行ってもこの場には来ないなぁ〜。何かあるなら会った時に改めて名乗ればいいなぁ〜。」
「まぁ、そうなんだけどねぇ。でもフェリにゃん?距離はあっても魔術ならどうにかなるし身体を鍛えれば走って会いに行けるかもよ?」
「来るなら覚えてやるなぁ〜。でも、来ないなら本当にどうでもいいなぁ〜。」
ドライと言うかなんと言うか。まぁ、紹介されてもそれっきりの人は確かに忘れるので、ここでどうこうと言う話もない。これが国際会議で2人揃って持ち物検査要員となるなら話は変わるかもしれないがそのオファーがあるかも分からないし、現時点で言えば2カ国にのみ妖怪は確認され、知るのは米国含めて3カ国しかない。まぁ、米国が本腰入れて獣人を教育しだしたら状況も変わるかもな。
「ジャスパー、これって繋がってる?スマホはいいけどPCなんて触ってこなかったからなぁ・・・。このカメラでいいのか?」
「繋がってますよサイラス長官。ただ、覗き込み過ぎてあちらでは長官のドアップが見えてます。」
「師匠のドアップとか誰得だよ。早く離れるか席につけ。いつも英国紳士とは〜って言ってるだろ?」
「やかましい。操作が分からないものはしっかり学ばないと後から困るだろう?次があるかは分からないが。」
松田や神志那と話しているとコール音が鳴り接続すると若い男のドアップ。会話から察するにこの人が魔法省長官なのだろう。ただ機械音痴なのかPCの扱いは苦手な様だ。顔だけ見れば年齢は30代後半から40代くらいかな?まぁ、若返りの薬があるので年齢に意味はない。いるのは3人でボーイッシュな女性と大柄だが苦労してそうな男性、そして燕尾服の様な服に杖を持った長官。サイラスと呼ばれていたので事前情報でもらった長官の名とも合致する。
「お初にお目にかかります英国の方々。クロエ=ファーストです。早速ですがサイラス長官、貴方の職は何ですか?」




