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街中ダンジョン  作者: フィノ


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457話 ご褒美 挿絵あり

「ファーストさん・・・、この件を正式に米国に持ち帰り検討すると言うのは駄目ですかね?流石にこの場限りにしたら私が無能になる。」


「う〜ん・・・、情報交換と言う形なら多分大丈夫だとは思います。開示するのは前提で他の獣人が職に就けたらウチも開示と言う話なので。ただ、現時点で何らかの話を進めると言うならドゥさんの職を交換開示したというのがいいでしょう。無論秘密裏に。発見経緯はドゥさんとフェリエットが出くわしたからが妥当だと思います。」


 フェリエット2号がいつ誕生するかは分からないが、少なくとも数年以内には出て来るだろう。それがソフィアの護衛として学校に通っている間かそれ以降かは分からない。実際神志那やフェリエットの言う様に勉強している獣人もいれば遊び回る獣人もいるし、学習レベルを調べるのはかなり困難だ。


 そもそも要件が年齢でも性別でもないし、何に括っているかは分からない。まぁ、フェリエットは元々野良だったので人間換算で16歳と言われればそれまでだし、個体成長薬は神志那の鑑定だと16歳未満の人間が飲めば職に就ける所までは成長させてくれるらしいが、それ以降も成長速度が普通の人間と同じ様になるかは不明だし、16歳以上が飲めば死んでしまう。


 仮の話をするなら16歳未満で薬を飲んで成長したとして、どの時点が職に取って最高のパフォーマンスを出せるのかなんで全く知らないし、例えばヒョロヒョロの子供が薬を飲んでガチムチゴリマッチョに成長したらその子は格闘家や盾師辺りしか適性がないとか?まぁ、ゲート内で活動するなら体力は絶対必要だし飲んだ時点で全員マッチョやらプロレスラー体型は覚悟しないといけないのかな?少なくとも多分ボディービルダーはない。余りに脂肪が少なさ過ぎてスタミナが足りないし。まぁ、それでも強い男をイメージするならボディービルダーはありなのだろうが・・・。


「その話でお受けしましょう。コチラは鑑定術師の存在を開示する。そちらは獣人が職に就けたと開示する。但し、公にはせずに内密にする。局長へは話してもいいですよね?」


「そこを省く訳にはいきませんからね。私も松田副官房長官に話します。話は出来るだけそこで止めてしまった方がいいでしょう。数撃ちゃ当たると手当たり次第ゲートに獣人を入れるのは推奨しません。」


「なにか職に就く要件が?」


「少なくともフェリエットは日本の有名大学生程度の数学知識はあります。それ以外は一般的中学生レベルのテストを解答することも出来ます。まぁ、地理や歴史は苦手ですけどね。その上でウエイトレスとしても円滑に働ける。つまり、生活態度は別として本人の知識量と学習量が関係しているのではないかと言われています。」


 フェリエットは魔術の扱いはワイルドだったが席に座って摘みを食べている。それだけ見ても礼儀やらは見えてくるだろうし、食べているのも先程のチーズの様な肉ばかり。他の物が食べたいならちゃんと貰っていいか聞くし、しらない人が多いので代価が必要かも聞いている。


 あぁ、ディルとか言うやつが好きなだけ食べてくださいと言ったら嬉しかったのかずっとスリスリされてる。若いせいか頬に赤みがさすが体格差があるんだよなぁ〜、パッと見は大人と子供だし。まぁ、ウチのフェリエットは可愛いのでしかたない。


「学習量・・・、確か日本ではタブレットで?」


「よくご存知で。獣人誕生時から知能指数を測ったり記憶力をテストする為にアプリを作ってそれを今も更新しています。まぁ、隣人としての獣人を雇用する所もあるので、指示が理解出来ないと困りますからね。」


「・・・、ドゥ。この統合基地にいた獣人で職に就いた者は他にいたか?」


「おらんよ。いたらその・・・、フェリエットさん?の登場の時にそこまで驚かんさ。あ〜、俺も何か食いもん残しとくんだったな。肉まで使い込んで戦ったから今はほとんど何もない。」


「こいつからは肉の臭いがよくするなぁ〜。未だあるなら胸かお尻を触る権利をやるなぁ〜。」


「い、いや自分は・・・。」


「フェリエット、食べ物は私が出すからそれを食べなさい。そもそもここの方達はさっき中層から帰って来て疲れてるんだ。他でバレはしてないな?」


「人にはよく見られたけど触られてないなぁ〜。猫人や犬人が撫でくり回してきて面倒だったなぁ〜。」


「まぁ、そう言う種族だからなぁ・・・。」


 初見の獣人の横を通ると、俺は尻尾で背中撫でられたり頭撫でられたり抱きつかれたりと色々ある。半分諦めて顔の前でバツをすると見えている獣人は悲しそうだが諦めるのでいい。まぁ、それでも尻尾が顔や背中に撫でる様に当たる事はあるが・・・。そもそも中位の神志那や望田も獣人からはモテるし、ここのメンバーはウィルソンを除き中位かそれ以上なので獣人にとっては大変魅力的な部屋なのではなかろうか?


「獣人なぁ〜。そういやぁダレスよ。教会的には獣人ってとう言う括りなんだ?やっぱりゲームや漫画みたいに排除か?」


「バカ言え。汝、隣人を愛せよだ。シスター達がゲートに入る時に子供の面倒見たりしてるよ。虐待じゃあないが行く当てのないやつはたくさんいる。教会は獣人にも開かれた場所だ。」


  挿絵(By みてみん)


「確かに飯さえ気を付ければ獣人は素直だからな。変に金の話をされるよりゲートの馬肉やらを食べさせた方が安上がりでいいんだろ。まぁ、味にうるさいから飽きたら怒りそうどけどな。」


「それは炊き出ししてるから大丈夫だろうさ。寧ろ最近のシスターや神父達はいいもん食ってるからいい肉付きしてる。」


 話を聞く限りだとギルドで預かる代わりに米国では教会が獣人達の受け皿になっている様だ。まぁ、米国にはたくさん教会があるイメージだし元々の資本が大きいので成り立つのかな?日本だとお寺に獣人を預ける様な感覚なのだろうが、そうすると坊さんの煩悩が爆発しそうな・・・。まぁ、それは教会でも一緒か。何にせよ逃げ込める先があるのはいい。それがないと再起出来るものも出来なくなる。


「エマって教会いきます?」


「長く行ってないナ。クリスチャンではあるが私は人も殺し過ぎタ。まァ、懺悔する様な事はなにもなイ。それが私の生き方ダ」


 なにやらエマがしんみりしているが、それを咎める事は出来ないな。殺人はダメだが軍人として敵を撃つのは仕事である。ドライだがそこは割り切るしかない。寧ろ、それが割り切れないならなるべきではない。俺も赤峰に言われたが、中国軍が本当に息子を連れて来ていたら皆殺しだっただろう。


「エマがやった事が悪くないとは言いません。しかし、それで救われた方がいたのも事実です。結局の所ぶつかり合ったのが両者の正義なら押し通した方が正しい。つまり、ここにいるエマは正しい。それだけの話しです。」


「勝てば官軍だナ。まァ、殺した奴の顔など覚えていなイ。どうせテロリスト共ダ。」


 そんな話をしていると割といい時間になった。中層の話も聞けたし松田への連絡もある。望田の元気な顔もみれたし、そろそろ御暇しようかな?望田はここで祝杯続行するならそれでもいいし。


「さて、私はそろそろ帰りますかね。カオリは未だ話があるなら残ってもいいよ。取り敢えず2日くらいは休んでまだ足りないなら休みを続行してもいい。流石に一ヶ月は長いからね。」


「う〜ん・・・、小さな約束も果たせましたし私も帰りますよ。これ以上長くいても帰るきっかけなくしそうですしね。」


「そう?カオリがそれでいいならいいけど。」


「はい。それに・・・、お酒って祝杯用以外残ってなくて・・・。」


 どれだけ買い込んで行ったか知らないが、日にビール1本でも30本。疲れや他の娯楽がなくて語り合う時間があるなら更に酒は進む。スィーパーの趣向品緩和問題は仕方ないな。まぁ、緩和されたからと言ってやらかしたらあとは知らんが・・・。


 そんなこんなで皆と別れて外へ。米国の新たな中位はグリッドにダレスにハミング、ディルにドゥ。教官がエマなら悪い方向には進まないだろう。話した感じは気のいい人達だったしチームとしてもまとまっている。


「やっと帰ってこれましたね。大分ギルドよ!私は帰って来たーー!!」


「叫ぶのはいいけど人多いからね、ここ。」


「夕日が綺麗だなぁ〜。海に反射して目が痛いなぁー!!」


「あれだけ薄暗い所から出たら仕方ありませんよ。でも、基地内って明るかったですよね?」


「人より目がいいせいかたまに獣人はこう言う事言うよ。まぁ、すぐ慣れるんだけどね。カオリは先に帰る?私は一度本部長室に行ってから帰るけど。」


「ついていきます。浦島太郎じゃないですけど変わった事と言うかフェリエットちゃんの事も知っておきたいですからね。」


 出たのがギルドの外だったので注目されたが、望田を見ると何故か拍手が・・・。まぁ、1ヶ月くらい姿を見せなければ何かあったと勘ぐられても仕方ないか。別に隠す程の事でもないが『副長ゲート出張中』の札を受付に置いていたので、初日から知っている人は死亡したかもと思うかもしれないし。


 次帰ってきて外だったら叫んでみたい気もするが、さすがに人前で叫んで注目を集めるのは避けたい。人前に出るのなんて何かを公に発言する時だけで十分だし、叫んだ後後悔しそうだし・・・。


 そんな拍手の中を歩きギルドの中に入ると、また注目を集めるがそれを気にせず歩き受付の札を外す。なにやら感じ取ったのか食堂からなんかも人が顔を出すし、先に望田に挨拶回りでもしてもらうかな・・・。


「カオリ、先に挨拶回りしてきてよ。みんなカオリを待ってた人達だからさ。」


「えぇ〜、なんか恥ずかしいじゃないですか。こう・・・、ボロボロで歴戦の勇士感があるならいいですけど普通にただいま〜って言うとサボりに見えません?」


「ならお土産にダチョウの肉あげたら?中層出張のお土産ですって。」


「東京バナナ風にそれって配っていいんですかね?ラボにも渡してないんですけど。」


「まぁ、一定数あれば?私も中層のセーフスペースには行けるしね。見つからなかった乗り物がどうやったら来るか試したいし。」


「そうですか?なら、ちょっと挨拶回りして上に行きますね。」


 望田と別れて先に部屋へ。フェリエットはソフィアの元へ行くと言って別れ付いてきたのはバイトのみ。話しをきくと煙は予備も含め使い果たしてしまった様だ。取り敢えず予備様に何個か作って渡しご褒美は何がいいか考えてもらおう。


「今回はお疲れ様。全員無事なのは嬉しい限りだ。さて、ご褒美は何がいい?」


(そもそもご褒美とはなんだ?吾輩はどうすればいい?)


「そこからかぁ・・・、例としてはフェリエットだ。ご飯を貰って耳や胸を触らせる。コレは等価交換と言って互いの利益が釣り合うものを差し出している。それに対してご褒美とは働きに対する報奨。これのミソは大それていなければある程度もらえる事。まぁ、感謝の気持ちだとでも思ってほしい。ソフィアの件でも無茶な注文を付けた様に思うし。」


(そのご褒美とは形あるものか?それを指定しなければならないのか?)


「いや?別にそうじゃないけどかなり難しい。感謝を言葉で表してもいいけど、それならありがとうの一言で済む。感謝する側は言葉だけでは物足りないとも思うから、出来る範囲で物や金銭を用意したり、あんまり関係ないだろうけど地位を渡す。」


(・・・、それは今決めないとだめなのか?)


「いや?後日でもいいけど、あんまり先延ばしは止めたほうがいいかな?感謝の気持ちって言ってる瞬間が最高値で後になればなるほど冷めていくし。」


 ご褒美渡すのって勢いなんだよなぁ〜。その瞬間なら割と無理なお願いも聞くけど後になって冷静になるに連れて用意するもののランクは下がる。アニメ映画でヒロインを助けた英雄にナイトの称号を渡したりするが、冷静に考えれば貴族を増やすよりも報奨金を渡した方が遥かにお得である。つまりはノリと勢いで言ったモン勝ちな所がある。


(思考する。)


「いいぞ。その答えはお前が決めた事だ。決まったら言うといい。ただ、無理なものは無理と言うし代替になる事もある。」


 何を望むかは知らないが、あんまり変なもんじゃないといいな。例えば腕かじらせろとか。美味いかどうかは別としてコイツは俺の身体を噛みまくった記憶はある。それを望むと言われてもちょっと拒否したい。そんな事を考えつつスマホを取りだし松田へ繋ぐ。流石にフェリエットの職の件があるので報告漏れは避けたい。


「もしもし?松田さんですか?クロエです。」


「もしもし?どうしました?職に就けた獣人が増えましたか?」


「違いますよ。1つ目は知っていると思いますが望田 香織が本日帰還しました。健康状態等は問題なく今日から数日休息を取って定常業務に復帰します。」


「それは喜ばしいですね。米国側とも生存確認は出来ているとしていましたがこうして帰って来たと貴女から聞くと信憑性もます。今はまだゲート内ですか?」


「いえ、大分ギルドに戻りました。それと2つ目、米国側のエージェントウィルソン氏と情報交換を行いました。」


「情報交換?何か有益な情報が合ったと?」


「ええ、中層アタックメンバーが当初から1名追加された事は知っていますね?」


「ええ、それは把握していますよ。出発直前に新たな中位を追加したいと申し出がありましたから。ただ、本人の情報は付いていけると言う事以外伏せられていましたが。その方の情報ですか?」


「ええ、その方はドゥと呼ばれ顔は隠していたので分かりませんでした。ただ、職に付いては判明しました。」


「情報交換する意味のある職なんですね・・・、もしかして鑑定術師ですか?」


「御名答、鑑定術師ドゥ。それが新たに判明した米国側の中位です。その情報の見返りはフェリエットが職に就けた事と職の内容の一部開示です。ゲート内秘密情報開示と言う事で、知らせるのは上司のアライルさんまでとしています。それと、日本側としての獣人が職に就けたと言う公表時期も伝えています。」


「なるほど・・・、どうしてその情報交換となったかは今は横に置いておきましょう。フェリエットさんの職は全ては見られていませんね?」


「証明が難しい質問ですね。私の職は見えずフェリエットの職は名前以外不明瞭だった様です。それだけしか分かりませんね。」


「分かりました。コチラとしても米国側への通達は行おうと思っていたので丁度よかったとしましょう。フェリエットさんのデータもかなり集まって来ましたからね。」


「神志那さんがよくまとめてくれます。実際専念してデータ収集しているし未知への探究と言う事で楽しいようですよ?イギリスではアカデミー案がまとまったとニュースでも見ましたし、次はイギリスからかもしれませんね。」


「妖精と魔法の国ですからね、あそこは。ブリテン島で獣人が職に就けたならそれはもうお伽噺話でしょう?」


「ピクシーはいませんでしたが長靴をはいた猫ならいますけどね。まぁ、現状話せるのはその辺りです。新しい食材やラボからの依頼で採取した木は後日運ぶとします。」


「分かりました、また何かあれば。」


「ええ、また何かあれば。」


 電話を切るがバイトはまだ考え中の様だ。そろそろ望田も来ると思うが来ないので先にフェリエットについてのデータを出し一服。米国側獣人に対してどう接していくか分からないが、教会の話も聞けたので悪い方には進まないだろう。まぁ、逃げ出した獣人を探すのは割と手間なので、国境とか気にせず好きに走り回ってる可能性もあるしなぁ・・・。寧ろ頑張れば大陸から日本まで泳いでこれるのだろうか?最悪船に乗って密航されても探しようがないし・・・。


「戻りました〜。」


「お疲れ様、ならフェリエットの話をしよう。」




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~「夕日が綺麗だなぁ〜。網に反射して目が痛いなぁー!!」 綱に反射がよくわからず、方言か誤字か文の通りに夕日を反射する綱が付近にあるのか。 バイト「正規のギルド職員にしてほしい」(違
[一言] キリスト教も原理主義的な宗派なら獣人も駄目だったろうけど世の中に対応できない連中は滅びたのかなぁ 多分悪魔がどうこう言って暴れてた イギリスはローカルでケット・シーだのクー・シーだの呼ぶん…
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