453話 彼女の帰還 挿絵あり
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増田が帰ってからも忙しないがデスクワークに追われる日々は終わらない。そんな中でも時間を見つけてフェリエットに短時間講習をしているのだが・・・。
「ここで・・・、多分火だなぁ〜!」
「なら私は水を出そう。」
「なら雷?だなぁ〜!」
「ほい土壁。」
「なぁ〜ぉ・・・。後出しなのになんで負けるかなぁ〜?」
「魔法を飛ばすと考えるなら後の先を取った方が有利だからだよ。魔法の規模にもよるけど点で飛んで来る魔法なら当たるまでの時間がある。今は互いに距離があるし、フェリエットの場合火の玉を作ってそれを飛ばして私に当てる。工程としてもダメージを発生させるまでに3工程あるけど、その中でも距離と言うものは重要だろ?例えばフェリエットは空間認識能力がずば抜けて高いんだから飛ばす工程を省略して手元に火の玉を浮かべたなら次はその火が私に点火しているイメージを持てれば私が燃えだす。まぁ、増田さんの顔を水球に沈められたから点在するイメージはあるんじゃない?」
「難しいなぁ〜。何かもっと簡単な方がいいなぁ〜。動画をいっぱい見たけどいきなり火はつかないなぁ〜。」
こうしてセーフスペースで魔術の練習というか、フェリエットが発動させてそれが当たる前に潰すように練習している。しているのだが、本来は的あての方がいいんだよな。下手に魔術を潰しているとそのまま出来ない方のイメージが付きまとうし。なら、なんでこうして撃ち合いなんて事をしているかと言えば、撃ち合いと言うか魔術と共にゲートに入った時にどう防御手段として成立させるかの練習。
魔術はデタラメも出来るが前提として現実世界に存在する現象となると。つまり、火を消すなら水か土か風。同程度の魔術師ならそれでどうにか防げる。まぁ、それでも高温なのか数撃つタイプ化で対処も変わってくるし、瞬間発火出来るなら身体に水を纏っても水蒸気爆発させる時もある。
逆にそれを見越しているなら水温を下げたりも出来るし、周囲を水浸しにしたり先に相手を攻めてしまってもいい。フェリエットの場合魔術を攻撃手段としてだけではなく防御手段としても扱えるので手札はどんどん増やせる。ただ、得意なモノがないというのはかなり大きいらしく、どうにかこうにか魔術は出せているのだがイマイチ出力は弱い。まぁ、弱くとも扱い方次第では戦力になるしモンスターにもダメージは出せる。そもそもフェリエットは現時点でそれぞれの魔術を空中に浮かべる事は出来ているんだよなぁ・・・。
「瞬間発火のイメージが難しいなら早く多くを動かす方を練習しようか。周りにぷかぷか浮かぶ水球も水筒なしで出せる様になったわけだし。」
「何をするのかなぁ〜?」
「そりゃあこうする。」
水球を生み出しそれに缶を投げて跳ね返す。簡単に見えるだろうが、かなり難しいんだぜこれ。特に最初に缶を跳ね返す所が一番難しい。本来水に缶は沈む。それを撃ち返すとなると浮いている水が高速かつ面で迫って打ち返すか、表面を凍結させて打ち返すかあたりとなる。そして跳ね返った缶は速度が増すので他の水球で速度を殺しながら撃ち返すか、缶を最終的に球体にまで固める様に丁寧に全ての面を水球で打ち返す。
「これは・・・、難しいなぁ〜。」
「水球スタートは難しいから豆腐で行こうか。手の平に魔法を出して優しく撃ち返して次を水球で跳ね返せばいい。豆腐の角に頭をぶつけて死ぬには、約340m/sの速度が必要だからそこまで速度を上げなければ豆腐にあたって死ぬ事はない。」
「身体を動かして頑張ってみるなぁ・・・。」
豆腐を打ってリレーする方がさらに難しいがそこは内緒。砕けたなら消えていくし、缶撃ちも消えるで地上に落ちなければ概ね成功だが、そこまでたどり着くにははさなるイメージが必要だろう。
そんな練習のさなかスマホが鳴り内容を見ると望田帰還の知らせ。56階層で見つけられなかった退出ゲートは発見され、一旦外に出て再度統合基地でエマ達と集まる様だ。割とハードだが、最終点呼とラボから貸与されたポッド風呂を使用しての体調管理やメディカルチェックを受けるという。
青山から連絡を受けたがギルドの方は平常運転中なので会いに行くなら統合基地に行くといいと言われたが、気を利かせたのだろう。素直にお礼を言ってフェリエットと共に馬に乗り統合基地へ。自分の写真をイメージするのはいささか恥ずかしいが、ルートがそれしかないので仕方ない。
「望田 香織ただいま戻りました!」
「お疲れ様、統合基地だけどゆっくり休んでね。エマや米軍の方々もお疲れ様でした。私が言うのも変かもしれませんがよくぞご無事で。」
「中々ハードルだったゾ・・・。だガ、それに見合うだけの成果は出タ。今回の指揮官として礼を言ウ。望田の貸し出しとバイトの増援をありがとウ。」
8月も中旬に差し掛かり送り出した望田がようやく帰還してこうして話すが、当初の予定では長くて半月と言う話だったが伸びに伸びて一月くらい籠もってたんじゃないかな?米軍関係者もそこそこ来ているし、周りは騒がしいがそれよりも大切なのは無事に帰って来たメンバーだ。
「いえ、その感謝は私ではなく行った者達へ。・・・、2人共髪、伸びたね。」
「講習会のゲート籠りを思い出すかってくらいハードでしたね。脇目も振らずセーフスペースを目指してたどり着いたら上昇アイテム使って一つ上の階層に行ってはモンスター倒して疲れたらセーフスペースに引き戻るって生活でしたから・・・。あっ!お土産の木はちゃんと持ち帰りましたよ!」
「その木を入手するのはかなり大変だったナ。最終的に周辺の地面を爆破すると同時に一気に引き上げタ。それでも根が地中に伸びようとする様は地球の物と根本的に違うと感じざるおえなイ。間違ってもゲート外に植えようとするなヨ?」
「しないよそんな事。この木はラボに送っておしまい。まぁ、扱いミスってリアルラピュタが出来たら笑うかな?最早一発芸の類だろうし。」
(間近で初めてファースト見たけどどうだ?俺はありだ。むしろ大歓迎するな。)
(確かに大歓迎だけど、ちょっと俺達にはちんまくねぇか?大佐も含めてみんな170cmは超えてるしダレスは2m超えだろ?一番低いディルだって180cmはあるしよ。)
(2m超えの女はそうそういない。だから小さくても一向に気にならんさ。と、言うかハミング、お前はファースト否定派じゃなかったか?)
(目の前にいい女がいたら口説くのは男の務めだろう?ちょっと一杯どうってな。てかディル、なに押し黙ってんだ?)
(惜しい事をしたと・・・。砂漠で出会っていれば今日の今になる前に美しいモノを知っていられたのでしょう?)
(あ〜・・・。ドゥ、ディルは大丈夫かって、お前も大丈夫か?てか、そもそもファースト見ても大丈夫なのか?)
(・・・、大丈夫だ。いや、最適化されて鑑定できないもんはねぇと思ってたけど、EXTRAは一切なんも見えんと来た。ずっと不思議に思ってたんだよ。橘は俺より先に中層に行ってそん時は大佐もファーストもいた。見る見ないじゃなくて視界の端に入ればモンスターと戦ってたら嫌でも視ちまう。なら、ファーストの中身も視たんじゃないかってな。解答は見えませんでした、か。)
何やらヒソヒソ話しているが、帰ってきて早々目くじらを立てることもない。顔だけアメリカンヒーローのお面をつけたやつがいるが、多分あれがプラス要員だろう。
「おぉ!ファーストさんも来られてましたか!」
「ウィルソンさん!お久しぶりです!」
知った声が上がるので振り向くとウィルソンがいた。今は旧知の仲と言う設定だし・・・、とりあえずハグしとくか、確かハガーでそう言う挨拶を好む人だったし。とりあえず両手を広げながら歩いていけばいいよな?




