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街中ダンジョン  作者: フィノ


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421話 完成した! 挿絵あり

「こんな感じですかね、足りると思います?」


「多分大丈夫だと思います。普通のハッキングならサーバーにアクセスするまでにかなりの時間がかかるでしょうし、スィーパーなら間違った方に誘導してくれる人もいますからね。」


 スーパーコンピューターのランキングを言えば1位はR・U・Rを除くと米国のFrontierで2位は富岳。公式発表として1秒間に119京回の計算処理が出来るとしてある。つまり、Frontierでハッキングをした場合単純に119京通りのルートを進めるという事になるし、入口が狭くともその速度で引き返しての再計算を行える。作った網目迷路は0.0001ミリ秒以下でルートが変更され続けるのでサーバー本体への到達時間としてもかなり時間がかかる。


 作った案内人はスィーパー用なので純粋なPC計算には介入出来ないのだが、監視システムとリンクさせて異常発見時はアラートを出してくれる。割と防壁としては硬いんじゃないかな?これから2人でモデリングするモンスターは外観こそモンスターだが、中身はほぼウイルスで作る予定だし、不正アクセスでない限りはR・U・Rの探索モードのどこかでランダムに出現する。


「しかし、人とPCだとどちらに軍配が上がるんだしょうね?」


「佐沼さんと話した限りだと単純作業ならPC側に軍配が上がるみたいですよ?計算するにしてもいくら集中した所でどこかで気が散ってますからね。人間でもマルチタスクが得意な人はいますけど、見方を変えるとながら作業をしてるだけですし。」


 確かにマルチタスクと言われると聞こえはいいが、やってる事はながら作業だな。一番多用する場面と言えば家事だろうか?フライパンを温めながらハムを刻み、卵をといて温まったフライパンで卵を煎りつつ冷やご飯とハムを投入して味付けする。その間喉が渇けばお茶を飲むし、換気扇が回ってなければ付ける。静かで物足りないならスマホを操作して音楽を流すしなんて事も。


 要は同時進行で仕事が早く終わればいいので、数秒ならその場から離れて洗濯機を回す事もあるし、出来上がったならよそって居間に行きつつテレビを見ながら食べる。ながら作業が上手いと取るか、気が散って集中していないと言うのか?それの違いでしかない。


「人がシングル作業をするのってなかなか難しいですからね。こうして奏江さんと作業しつつもネットニュース見たりして情報収集してますし。」


「私もチョコ食べたりしてます!ブドウ糖液じゃ味気なくて・・・。でも、自分で考えるって言う点がPCより優れてる点ですからね。学習AIが進化し続ければ追いつけるかもしれませんけど。」


 学習AIかぁ・・・。いや、それってもう完成形がある様な。藤国王のドール国って機械的な介入はないけどメインサーバーを藤としたネットワーク形式だよな?大本の自我は藤だとしても切り離して見れないように自分でしてるし、自立型学習AIと位置付けてもいい様な・・・。ついでに言えば橘と遥も住人になって人形貰ってるし、下手をするとクローン戦争やら獣人の反乱よりも藤の発起の方が面倒?


 性格的にはそんな事する様なタイプではないと思うけど、嫁達が絡むと俺同様突っ走る傾向にある。そんな藤が何かのきっかけで怒って電子の世界を掌握しようとしたら?単純にマンパワーで負けてるな。重要拠点は無数に乱立しているし付喪である以上作る事には長けている。コストゼロで無制限にスパイウェアをばら撒き続ける相手に勝つのは現実世界でぶん殴るしかない。


 核ミサイルはほとんど廃棄されてしまって後1〜2年で隠していなければゼロになる予定だけど、近代兵器と言うが現代兵器は電子制御なので乗っ取れる。パワードスーツが人力メインで良かった。下手にネットワークシステムとか積んでると出会った瞬間に窒息とかさせられそうだし。


「なにか考え込んでますけど大丈夫ですか?」


「いえ、個人の脅威と技能について考えてました。奏江さんもやろうと思えばどこかの国の息の根を止めれるなぁとね。私みたいにイタズラしたらダメですよ?」


「イタズラって何かしたんですか?」


「ここなら聞かれる心配もないから言いますけど、渡米した折にペンタゴンを掌握してPCとか音の鳴るもの全てから音楽を流したりしました。まぁ、その後解除して今はノータッチですけどね。」


 PCが無いと仕事は面倒になるが、ネットワークに繋がっていると本当にヤバいかもしれない。それを考えた末に米国が出した答えはクローズドサーバーの設置及び切り離された発電機の設置、それに付け加え検索用と作成用のPCを徹底的に分ける事。まぁ、サーバーがあれば検索履歴は読み取れるが、それを元に何をしたかは作成用のPCを見ない限り分からない。その上で誰が何をしているかも不明だし、配布されたノートPCはWdbカメラ等を排除して使用者が誰かを分からなくしたとか。


 ソフィアの件で協力して貰ったので、これでハッキング対策どう?と聞かれ大丈夫だろうと回答した。建物そのものにも対電対策をしたと言うしEMPも建物内で完全手動で使えるらしい。あまり深く聞くと犯人を探す時に一番に名が挙がるのでお互いにぼかしながら話したが、お互いのイメージが合致していればハッキングは無理だろう。


 仮にハッキングするなら内部に入って直接PCに触るとか?入口も隔壁式になったので通勤は大変だし、データのやり取りも媒体を直接持ち運ぶ方式になったのでかなり不便らしいが、その不便に目を瞑ってもやるだけの価値はあるだろう。それに米国も統合基地をゲート内に作っているので、行く行くはそちらがメインの防衛施設として樹立するかも。


「流石にペンタゴンって大変だったんじゃ・・・。」


「いえ?中に入っているのでネットワークを辿るだけですよ。普通のハッキングと変わりませんし、何より私は特に何かを探す事もなくやっただけですからね。」


 殆どは賢者がパズルとして繋ぎ合わせ、俺はその結合部を道として見ていたに過ぎないが、それでも風景として画像やデータは舞い込んでくるし記憶としても残る。なにせ俺の精神モデルは映画館なので、なにかが上映されていなければ寝ている事になる。そして、今の状態で寝たフリは出来ても精神的には魔女達と殴り合いをしているか座って記憶をみるしかない。


 元々寝たら気を張っていない限りほとんど起きないので、適当に寝息でも立てていればそれっぽくは見えるだろう。まぁ、魔女達との殴り合いに集中しだすと本当に外部からの刺激でもない限りは寝返りもうたない様だが・・・。


「ペンタゴンはいいですよ。モンスターをモデリングするとして、豚鼻でも結構容量を取りましたけど何体くらいならいけそうですか?流石に数増やして中身スカスカは避けたいんですけど。」


「前作ったやつを元にすると3体までなら監視サーバーで対応出来ます。それ以上となるとR・U・Rサーバーから容量を引っ張ってこないと厳しいですね。前の方もかなり動きを軽くして容量減らしましたよ・・・。プログラムとして見るとわけが分からなかったので、こうして接続して触りながら泣く泣く減らした挙動も・・・。」


 そう言えば実際に作った奴と戦った事はないんだよな。必要ないと言えばそれまでなのだがR・U・Rで戦うよりも本物と戦う方がクリスタルも取れるしスタンピード対策にもなる。本来のR・U・Rの目的は未成年に対するゲート内での歩き方や魔術師なんかの職を使う際の補助装置だったり、大会で使った様に対人戦を想定した模擬戦装置である。


 探索モード自体は政府からのオファーなので、俺としてはそこまで力を入れないといけないのかと言う疑問も残るが、これから末永くゲートと付き合う人類の死者が減る為の措置と言われたなら必要なのだろう。地形マップもどんどん更新されて石造りの5階層を超えてだだっ広い山岳地帯マップもアップロードされたらしいが、配信者の動画を見る限りでは似た感じの背景はそこそこ多く、その代わりにプレイヤーへのモンスターの集まり方は尋常じゃないらしい。


 雑魚とは言え初心者が待ち伏せやモンスターハウスを体験できるならいいのかな?セーフスペースがない代わりにR・U・Rでは続行か退出を選べるが、続行して5階層が始まった瞬間に頭を吹き飛ばされる事もあったし、笑えないが笑えるのは続行してすぐにフィールドに飛ばされるので、処理の問題か人モンスター人の順で仲良く手を繋いでるなんて事も。


 配信者本人が修正依頼を出したので今はもうないと思うが、重ならないだけで本当に真横にモンスターがいると言うパターンはある。何気にトイレや食事以外で致死率が高いのがこの瞬間だからな。慣れた人は一番気を張るし、対処法の意見交換も盛ん。変わった人はマネキンを前後左右においてみたり、剣を持って回転しながら突入してモンスターを斬り伏せるなんて事も。


 ただ、パーティーだとそれは危ないのでマント型の武器を装備してみたり、女性パーティーはダンスする様に個人がロングスカートの裾を翻して範囲を確保したりしている。まぁ、モンスターの方も一瞬は観察してくれるので、あるとすれば隙はそこだな。ただし、捕食中なら巻き込まれるので過信は禁物。パワードスーツのおかげで事故は減少傾向だが、頭だけヒーローの仮面を被った格闘家というのも中々シュールだ。


「なら軽くして作りましょうか。挙動が少ない代わりに逃げ回って遠距離しか攻撃せずに近寄ったら広範囲を焼き払う様な奴とか。後はバグよろしく特定の地点だけ極小的にロストする攻撃とか。」


「米国の強いモンスターをモデリングするとそうなるのかなぁ・・・。でも、ロストってどう表現します?」


「ダメージ表現エフェクトを参照してランダム部位の部分的な欠損を発生させます。R・U・Rの処理としてはヒットした位置がそのまま欠損したと言う判定指示を出し、結果として片腕のない状態等として再現してくれるでしょう。」


「攻撃エフェクトがない分軽くはなりますね。ただ何かしらの挙動がないと倒せないバグモンスター扱いになりませんか?本当に戦うならバグではなく理不尽を体現した様なモンスターで片は付きますけど。」


「現実味をもたせるならそれでいいんですけど、ゲームとしても扱われてるからなぁ・・・。」


「例えば先にヒットする部位が一瞬歪むとかはどうですか?瞬間発火なんかのエフェクト処理をする時に歪み表現もあるから、魔法発動エフェクトの色だけ抜いた状態ならそれが作れますよ。」


「なるほど、ならそれでいきましょう。攻撃範囲と距離はどうします?確か人とモンスターは等価でしたよね?」


「等価ですよ。コチラが攻撃出来るのに相手が攻撃出来ないって言うのは無しですからね。職やモンスターのタイプ事で変わりますけどモンスターの最大攻撃可能距離でいいんじゃないですか?」


 サラッと奏江が言うが、最大距離を参照すると狙撃距離となる。つまりモンスターかアクティブになった瞬間に不可視の一撃が飛んでくる事に・・・。モンスターのアクティブ範囲自体は音声や他のモンスターとどんどん連動して広がるのでR・U・Rの中だとしても攻撃手段があるなら数km先から攻撃される。ほぼ無理ゲーに近いから頭部破損だけは参照不可にしようかな?


「それでいいですけど、頭部だけは初撃で狙わない様にしましょう。R・U・Rで心折れてスィーパーが減っても困りますからね。」


 話はまとまりモンスターの皮を作る。作るのは蜂と蝉と下層のモンスター。記憶から呼び覚まし作るので外観は多少甘くとも85%程度。見た感じ威圧感もないし殴り殺したくなる様な衝動もない。やはり本物とは違うな。


(ねぇ、暇だから遊んでもいい?)


(モンスターデータを作るからそれに協力してくれるならいいが、何をして遊ぶつもりなんだ?)


(迷路と案内人をいじくりたいかな?中々面白そうな材料だし、こうして何かを作ったりいじったりする場は僕にはないからね。)


 暇な賢者の遊びというやつだろうか?こちらとしてはファイアウォールが堅牢になるなら喜ばしいし、なんか違うと感じた案内人をいじりたいならそれはそれで構わない。奏江的にははクリーンヒットだったらしいが、外観やらが崩れなければ大丈夫なのかな?何にせよ四六時中一緒にいるので息抜きも必要なのかな?


 妻といたす時は見ない様にと言うか奥底に去っていくし、そもそも俺と妻の夫婦の営みは魔女と賢者からすれば原始的すぎて感覚的に言えば人が虫の交尾を見る様なものらしい。そう言われると傷付くが見守られたいものでもなければ、そっとしておいてほしい事柄だ。2人の興味の方向性も知識的な欲求と承認欲求にウエイトは置かれているし、共通している部分はモンスターぶっ殺そうぜ!とか?


(許可はするが制限はつけるぞ?先ずは監視サーバーよりデータ的に大きくならない事。モンスターと迷路を起動させてもR・U・Rサーバーと監視サーバーが限界スレスレまで動かない事。案内人に変な指示を出さない事かな?)


(えぇ〜、限界スレスレはダメなの!?)


(そんなスピード狂のチキンレースみたいな事はしなくていい。余力がないと攻撃された時に全てのシステムが止まるんだよ!)


(止まるも何もそれって効率よくシステムが回ってないからでしょ?そもそも攻撃を壁で受け止めるって発想がおかしいんだよ。普通なら回避1択じゃない?)


(回避して他の物が被弾しても困るから壁なんだよ。相手を潰して攻撃を停止させるのはいいが回避は出来ない。言ってしまえばタワーディフェンスゲームなんだよ。監視サーバーを潰されても防衛機構がなくなって丸裸だし迷路を攻略されてもダメ。R・U・Rサーバーって言う拠点を如何にして守り切るかのゲーム。当然流れ弾の発生は許可されないけどな。)


(逃げるんじゃなくで罠やユニットを配置してのパズルゲーム。確か君の記憶にもそんなモノがあったね。なるほど、その説明は分かりやすい。要はコストパフォーマンスに支障なく相手を集めて潰せばいい。わかった。その遊びは面白そうだし案内人はいい仕事をしてくれそうだ。ただ、誰もこなかったら暇だね。こちらから攻められないし。)


(壁が迫ってくるのは遺跡だけで十分だ。さて、先ずはモンスターから行こう。魔女も手伝うか?)


(ゴミを作るのは嫌よ。でも、綺麗なモノや素敵なモノは探しに行くわ。)


 探しに行くと言ってもネット閲覧だろ?まぁ、手伝いたくないならそれで暇を潰していてもいいか。前は賢者に手伝ってもらったけどそのうち一人ででも出来る様になった方がいい技術だろうし。


 大量の0と1が飛び交い集まって形を作っていく。皮なので表面だけだが、カラーコードを入れて色彩を持たせれば見えてくる。ただ、容量減らしの為に単色でいい所は単色で作るし動きの影もかなり薄い。元々フィールド全体を通して薄暗いので影なんてものはぼけた程度が丁度いい。本来は先にボーンを設置して可動箇所を決めた上でディテールを作るのだが、そちらは共同作業なので外観からどう動くかのイメージを作ってもらおう。


「おぉ~、私の作り方とは全く違いますね。」


「奏江さんはどう作るんですか?」


「手っ取り早くモンスターの写真を取り込んで、それの動きをイメージして動かしてますよ。カラーコードとか考え出すと処理が大変で・・・。最終確認は人がいるって想定で架空のスィーパー相手にフルアクションさせてます。」


「私よりもそっちの方が凄い様な・・・。」


 要は写真から3Dモデルを直接作って動かしてるんだろ?その過程でデータが出来上がるなら俺の様にゼロから組み立てなくていい。モンスターの追加モデルがマイナーチェンジ含めて増えたと思ったが、その方式ならどんどん量産できるんだろうな。


「写真からなんで戦った事ないモンスターや見えない部分はノッペリとしてくるんですけどね。私も作ってみせますよ!」


 そう言うとなにもない空間にモンスターの写真が現れ背景が消える。そして平面のモンスターが扇の様に広がりシンメトリーの身体が生まれ輪郭が整えられていく。多分挙動箇所も既に指定されてるのかな?触手はウネウネしているし、巻き付く様な挙動を見せる時もある。3Dプリンターでリボルテックフィギュアを作ったらこんな感じかな?


 人型なので両手両足が同じ動きをしたり非対称に動いたりするが、容量対策なのか肉感的な部分が脈打つ様な事はない。多分その処理は人間側が持っているのだろう。ただ、容量減らしの鍵はそこかな?俺が作る場合戦った姿を再現するのでランダム関数がべらぼうに多い。それこそ立っているだけでもバカスカ容量を食う。それをPCに置き換えると、存在するだけのデータファイルが常に計算指示を出している状態だ。


 確かに前にイジれないと言われた事があったが、膨大なプログラムの中でどの関数を抜いても大丈夫か判断を下せる人間は早々いないな。もしかしたら奏江なら抜けるかもしれないが・・・。


「こんな感じでどうでしょう?」


「参考になります。容量問題を考えた時にリアルを追求する部分とそうでない部分の境目が分かりやすい。なら、一度この皮を崩して再構築しましょう。イメージを送るので手を握ってください。」


「イメージを送る?」


「お互いに有線で電気接続しているので、拒絶しない限りはデータのやり取りは可能でしょう。まぁ、モンスターのイメージを送るので気持ち悪かったら拒絶してください。」


「素朴な疑問ですけど脳って大丈夫ですよね?」


「脳内を流れる電気って10マイクロボルトしかしないので最大値をそれ以下に抑えます。送るのも私が見たモンスターの挙動や外観なので、大丈夫だと思いますが心配ならやめましょうか?」


「気合入れてやります!」


(それってファーストさんの記憶を覗いていいって事!?えっ、待って。もしかしたらその時の思考とかも垣間見れたり心が繋がったり?推しの為なら脳が焼き切れるとか些事よね?寧ろ、これで成功したら何かあった時に毎回心で繋がれる?やる!絶対にやる!!)


  挿絵(By みてみん)


 奏江が気合を入れるといって俺の姿を模して勢いよく両手を差し出すが、R・U・Rを舐めた奴等をそんなにギャフンと言わせる決意が硬いのだろうか?出来るかもと言う話で紹介した人物だが性に合っていた様だ。さて手を取ってイメージするのはさっきの3体。最初は蜂から行こうかな?飛び回りビームを放ち形体進化前に倒してしまったので、概ね進化したらこうだろうと言う形を整える。ベースがそれなだけで凶悪さは増し空からスィーパーを打ち据える高速移動物体。


 回避するならビームと同様に光速じゃなければ羽で切り刻まれ、慣性は無視するので真横でピタリと止まる事も。アレには手のような部分もあったが触手をイメージして取り付かれたらそのままサイコロステーキコースだな。


 ビームは頭部からも胴からもその下の部分からも出ていたし、空間攻撃をしてくる起点を作るなら・・・、頭部でいいか。複眼の様な目からそのまま視認して攻撃しているとする方がイメージしやすい。耐久値は均一でいいな。羽が脆いとか・・・、そもそも羽がなくてもあれって飛んでたな。なら、羽も純粋な武器だったのだろう。すれ違いざまにブレードの羽で切り裂くと言われるとカッコいいが、実際にするなら自爆攻撃だ。なにせ飛行機でそれをしたならバランスは崩れるし相手が硬ければもげる。


 ならあの作品にあやかって光の羽ならぬビームカッターの羽でいいか。要はそれっぽく見えればいい話だし。なら、胴の下は分離式にして大型ファンネルとか?雄二と夏目がそんなモンスターと戦ったと言っていたからおかしくない。寧ろファンネルラックにして追尾する毒針のイメージにしよう。・・・、なんかだんだん楽しくなってきた!倒せと言われたら倒す事は出来るが、ボスとして売り出すならかなり強くてもいいよな?


 蝉も送り最後の下層のモンスター。アレはアレで完成形だがどうもそのままイメージを送ると強さが分かりづらい。ダルシムっぽく光速で伸びる腕は全て必殺でガード不能だし、増殖体とでも言えばいいのか、そんなモノも出していた。ビームも出力は段違いだしそもそも空間攻撃そのモノを盾にしているので有効な攻撃と言うか、下手に殴りかかると自分の腕が消える。


 これじゃ流石に無理ゲーだ。なら、多少のスケールダウンは必要か。空間攻撃バリアは無しにして本体をひたすら硬くする。攻撃はそのままでいいな。回避の練習相手にしてもらえばいいし。ビームも出力は最大でいいし、増殖体はどうしよう?中層付近みたいに投げつける?それは隙だな、なら爆発させるか。自走して有効と思ったら橘が相手にした奴みたいに溶ける液体を撒き散らしながら爆発。スィーパーに踏まれても爆発。なんなら芋虫の様に這っていったら噛みついて爆発。


 これくらいならそこそこ強いと認識してもらえるかな?他にも盛り込みたいが、あまりすると容量がパンクしそうだし、ゆっくりと奏江へイメージを送っているが、本人も手を繋いだまま目を瞑り思考の海へ沈んでいる様だ。でも、流石にモンスターのイメージを残したままでいるのもまずいな。


「一応3体分送りました。不快な記憶ならどうにかして消せる方法を模索します。」


「いえ・・・、それはしないでください。私も本部長だからいつかはこう言ったモンスターとも戦わないといけないんです。それの予行練習として残しておきます。」


「分かりました、では蜂から合作といきましょう!」


 手を繋いだまま作業開始!作るモノのイメージは共有出来ているので互いの得意分野で作り上げていく。挙動方面は俺で外観の加工は奏江。挙動と外観に齟齬が無い様にまとめていくし、これはハッカー用の守り手でもあるので、そちらの方面の機能も持たせる。持たせ方を話し合ったがバグデータをモンスターに詰め込むのではなく、空間攻撃を起点として監視サーバー内にウイルスを保存しそれを押し付ける方式へ変更。


 攻性防壁なのでこの方がそれっぽくていいらしい。何にせよそれで撃退出来るならいいのかな?モンスターのデータ自体も個別保存でロックされてるし、直接監視サーバーを攻撃されたらそのまま案内人に迷路に誘ってもらおう。


「かなりいい出来じゃないですかね?これなら攻性防壁としてもいいでしょうしR・U・R内に現れても弱いとは言われないでしょう。」


「一度交戦したら次から逃げそうですけどね・・・。」


「う〜ん・・・、ゲームで強いモンスターや死亡イベントを回避しようとする人って絶対にいるんですよね。」


 よくあるのはFFとか?ファイアーエムブレムでキャラが死んだらリセットもやるのでそれも類するものとして、回避する方法があるなら試すしイベントなんかで倒せない設定の敵だろうとどうにかして倒してしまう人もいる。つまりは今回作ったモンスターだって挙動を読んで自分の手札でどう攻略するかを考えていけばいつかは倒される。


 それこそ初期に作った豚鼻も初心者の登竜門と言われているが、逆を言えば初心者でないスィーパーなら倒せてしまう。当然と言えば当然だがアレは20階層も超えていない所にいたモンスターだ。なら、その先を旅する人が戦ったとしてもちょっと骨のある小骨である。


「つまりいつか攻略する人が出てくればいいと?」


「ええ。アレを今すぐ攻略する人がいるならその人は中位じゃないですかね?まぁ、R・U・Rなので不正して倒すと言う手もありますけど。では、今回はお疲れ様でした。後処理は頼んでも大丈夫ですか?」


「はい!容量も多分大丈夫そうですからR・U・Rサーバーへの最終接続をする程度です。一応その前に佐沼さん達に確認してもらわないといけないですけど大丈夫だと思います。」 


「分かりました、ではお願いします。」


 この後許可が出てフィールドに降り立ったモンスター3体が恐怖の対象になったのは言うまでもない。出現する確率はとても低く、更に言えば乱戦中だろうとお構いなしに出てくるそれは、大会で再現された映像と相まって中層のモノとして認識され、倒せば中位への道が開けるかもとある者は探して挑もうとし、またある者は一目散に逃げ出す対象となった。ただ、その話を俺が知るのは結構先になってからだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 推しの為なら脳が焼き切れるとか些事 もう狂信者の域にいるような made in 賢者のタワーディフェンスきっと不条理なんだろうな…
[一言] サーバー間のデータのやり取りのセキュリティ対策は最終的には人力になっちゃうよね 賢者謹製のタワーディフェンスが出てくるのか
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