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街中ダンジョン  作者: フィノ


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412話 無事だといいな 挿絵あり

「リュックに弁当入れた?携帯トイレや飲み物は?軽食は・・・、今回はささみの燻製でいい?後は装備品はインナーとか鍛冶師の靴とかは着けてるしマントもちゃんと着てるな。そう言えば、魔法は持った?」


「クロエがお母さん風味な事しか言わないなぁ〜。ボチッと行ってボチッと帰ってくるなぁ〜。」


「思った以上にクロにゃんが過保護な件について。コレ装備品だけでいい額しない?」


「無料な物が多いので額はどうでもいいです。気になるのは獣人のモンスターへの攻撃性ですからね。職に就いてないのに殴りかかったら勝負にもならないでしょう?神志那さんもお願いしますね、そこのあたり。」


「ういうい。フェリにゃん中では指示に従ってね〜。」


「モンスターをプチプチしたいけど、まだその時じゃないなら諦めるなぁ〜。」


 フェリエットがゲートに入る当日の朝。装備品のチェックには余念がない。と、言うのも何気に家族を目の前で送り出すのって初めてなんだよなぁ。妻や息子達は東京にいる間に入ってしまっていたしソフィアが入るのは来年以降、そんな中でフェリエットを見送るとなるとやはり心配な所が出てくる。


 別に神志那の能力を疑う気もないし、誰しもが入れば最初の5階層は確実に降りなければならない。ただ家族が入ると言うならそれを心配するのは人としては自然な事だろう。なにせ絶対はないから今生の別れになるかも知れないのだし。


「それでいい。無事に帰ったら好きな物でも食べに行こう。」


「絶対帰ってくるなぁ〜。ごちそうの誘惑に私は勝てないなぁ〜。」


「入って職就けたらすぐ連絡したほうがいいかにゃ?」


「いえ、気が散るので出てからでいいです。連絡するくらいなら警戒してください。その方が生存率も上がりますからね。」


「あーい。じゃあフェリにゃんゲートに突貫だぜー!」


 神志那とフェリエットが手を繋ぎゲートへ入る。多分出来る事は全部した。過保護と言われようと構わない。なにせこれはエゴであり後悔をしない為の措置なのだから。死んでしまって後からアレをすればコレをすればと言うのは思いの外引きずる。本来なら一緒に入るのがいいのだろうが、コレはあくまで新たに職に就こうと言う新人が踏み出した一歩。


 それにマスターが介入すれば他の人も私には何故マスターが付いてきてくれないのかと言う話にもなる。一蹴してしまいたい話だが、それをすれば今のバランスも崩れてしまう。戦闘と言う話を考えると神志那よりも青山を向かわせた方が安心なのだろうが、奴は奴で夏休み中に職に就こうと増えた新人の方で忙しい。


「どうか無事であってほしい。にゃん太からフェリエットに変わった新しい家族よ。」



ーside 神志那ー



 責任重大!いやマジで。手をつないでフェリエットとゲートに入るけどガチにヤバくない?獣人は職に就けるってクロエは言うけど前例はない。そして見立ては6割。その6割って話も何で6割かは分からない。多分聞けば理由を教えてくれるだろうけど、それはともかく聞きたくないなぁ〜。だって聞いたらそこで答えが出てしまうから。


 だから私なりに推測したけど知性と対話の比率が鍵だと思う。種の起源として獣人はとても新しく獣人としての文化なんかはまったくない。仮にあるとすればそれはペットとして人と過ごしたと言う部分だけかな?学術的な研究資料は色々と読み漁りDNAレベルでの違いから間近にいる獣人の観察もした。


 私見で話すなら獣人と人は外見的な特徴以外はほぼ人と変わらない。人からの施しを好む面や過度なスキンシップを好むと言う部分についても個性と言われればそれまでで、とりわけ異常とする事はない。言ってしまえば人類の亜種。亜人と言う物を考えた時にこうだろうと言う者の体現。


 だからこそ舵取りは今の所成功している。人はプロメテウスにも成れるけど同時に獣人達の神にも成れた。でもそうなれば必ず軋轢は生まれ人と獣人の関係は悪化していく。「自己を捨てて神に走るものは神の奴隷である。」漱石の言葉だけど、獣人達は人に対して良くも悪くも危害を加えない。寧ろ色々と手伝ってくれる。でも、それは無償ではなく一定の代価があるからこそ。


 奴隷として扱い無報酬なら噛み殺されても文句は言えない。彼等の掟は自然の掟が混ざり、人類と戦うと決めたなら直ぐ様子供を襲うだろう。なにせそれが一番効率的でスィーパーには勝てなくとも普通の人には勝てるのだから。ま、獣人のおかげで結構差別とかなくなったんだけどね!


 肌の色が違うより耳と尻尾が人とは物理的に違う分、獣人と人って分けたし何よりも宇宙人がいる事が世界にガッツリと知らしめられたから誰も彼も全員地球人って考える人が増えた。実際宇宙人見て地球人見ると形一緒だから変わんないよね〜。


「さてと、フェリにゃん職は出た?」


「???・・・、?空白のウィンドウがあるなぁ〜。」


「えっ!?空白?格闘家とかガンナーとか出てない?」


「ないなぁ‐、壊れてるなら叩けばいいなぁ〜。」


 えっ、本当にどうしよう?最初に出る職のウィンドウはあるみたいだけど、それは本人にしか見えない鑑定も通用しない。橘さんとも話したけどコレもゲート同様いや、下手するとそれ以上にヤバいモノであるって話して決着した。確かに職の一覧見たさに何人か新人を補助したけど、この見えないウィンドウは鑑定しようとすると頭の中で鑑定するなって警告がバリバリ飛んてくるし、それを押し切ろうかと思ったら今度は身体も目も動かない。


 多分本当にヤバいブツなんだろう。でも、それに空白表記ってどうすんの?流石にこれは手に負えない可能性が大。職に就けないは4割の方引いちゃった?それならそれで補助から介護に頭切り替えて進む?職に就けないならモンスターは有害以外の何物でもないし、色々装備品を渡されてるかフェリエットはそうそう殺られる事はない。慎重さは必要だけどモンスターに囲まれたりするよりは最速攻略かな?


「なんか出るなぁ〜。クロエと一緒にモンスターをプチプチしたいなぁ〜。」


 何も無い所をフェリエットがバンバン叩く様な仕草をしてるけど、多分そこにウィンドウがあるのかな?でも出ないならそれはそれで仕方ない。気を取り直して先に進もう。


「フェリにゃん仕方ないし先行こー。今回駄目でもまた機会はあるし。」


「なぁ〜お・・・。」


 苛立ちがあるのか威嚇する様な声を上げて尻尾が激しく揺れる。意気込んできたのに職に就けないと言うのは確かに肩透かしをくらった様でいい気はしない。でも、出ないものは仕方ないし私ではどうする事も出来ない。流石に何処かにスイッチがあってそれを押せば済むって話してないんだし。


「取り敢えず私が先頭に立つからフェリにゃんは後ろに・・・。」


「なぁ〜お・・・。な・・・、なんか点滅してるなぁ〜。」


「はえ?点滅?それってピカピカ光ってるの?」


「なんか赤く点滅してるなぁ〜。早くなんか出すなぁ〜ポンコツ!」


「ポンコツって・・・。これ壊れるものなのかな?職に就けなかったらそもそもウィンドウ出ないはずだし。」


「もっと叩いて振り回すなぁ〜!!」


「そんなバーテンがシェイカー振るみたいに振ったら危ないって!」


 何か持っているパントマイムの様に両手を一定間隔で開いたままブンブン振ってるけど大丈夫かな?と言うかあのウィンドウって持って振り回せたんだ。ほとんどの場合職をそのままタップして終わりだから知らなかった。


「うなぁぁぁ〜〜・・・!!はぁ、疲れたなぁ〜。」


「気が済んだら行こうフェリにゃん。」


「・・・、おぉ!1個出たなぁ〜!やったなぁ〜!」


「1個?待って!本当に1個だけ!?それってまさかEXTRA!?」


「違うなぁ〜。妖怪って書いてあるなぁ〜。」


「妖怪って化物!化物って何!?って、もしかして選んだ?」


「私は妖怪に成ったなぁ〜。」


 未知の職!妖怪ってあの妖怪?いやいや、職業妖怪って何さ?その前に一つしか出ないのにEXTRAじゃなくて普通の職?適性値が妖怪しかないって事?その妖怪って職に人は就けるの?いや、そもそも人は妖怪じゃないし・・・。ま、先ずは職の説明は?何が出来るの?どんな性能なの!?ヤバっ!マジヤバっ!オカルトな私の探究心が止まらずその秘密を暴露させたくて仕方ないし!


「説明!職の説明はよ!」


「その前に武器と指輪が欲しいなぁ〜。」


「待てとか酷すぐる!はよ!内容はよ!!って、雑魚は引っ込んでろ!!」


 流石に騒ぎ過ぎたのか奥から雑魚が走ってきてる。ギロチンタイプじゃなくてサイみたいなやつ!砲撃型ってのがいるけどそれよりも細いビームを無数に放ち、外殻も硬く何よりもその図体で割と素早く突進してくる初心者泣かせ。


  挿絵(By みてみん)


 でもこいつって小回り効かないんだよね。さっさとパワードスーツに着替えてフライボードで滑空ぅ!ビームはマントで撃ち払いモンスターに触れる。鑑定は充分、分解ロッドで表面に傷をつける。私は腕力無いから流石に切り飛ばしたりは出来ないなぁ・・・。


 でもそれはオカルトの暴露が補ってくれる。隠された物を曝け出す様に傷は広がりクリスタルは見え、それを料理人の腕て無理矢理引き抜き倒す。青やんとナンカイも練習したし痛い目も見た。回復薬のお世話に何回なったかな?


 でも、その痛みは確かに私を強くしてくれた。逃げ隠れするでもなく真正面からちゃんとモンスターを倒すスィーパーとして。ただ、橘さんと比べちゃうんだよねぇ〜。射撃か接近戦か?オカルト選んだから接近戦の方が多分強いんだろうけど身体もっと鍛えないとにゃあ・・・。


「うっし!雑魚狩ったし詳細はよ!って、先行ってる!ちょっと待って!」


「この先に武器と指輪があるなぁ〜。さっさとゲットしてモンスターをプチプチするなぁ〜。」


 正面のモンスターを倒している間にフェリエットは壁や天井を蹴りながらモンスターを飛び越えて最初の間へ。誰が言い出したか知らないけど、職に就いてそこに行けば指輪と武器が手に入る。何が出るかはお楽しみで頭を抱える子もいれば納得する子もいる。でも、一つ言えるのはどんな形であれそれは確かにスィーパーを助けてくれるしモンスターを倒す手段となる。


 まぁ、銃持ってない子が黒棒でて、指先から弾出せるイメージを作るまで待ってくれないなんて言う不具合もあるけどね。そんな事より妖怪!なに!?鬼太郎とかポンポコとか猫娘・・・はもう猫娘だけどそんな妖怪になってるの!?


「お〜、指輪と武器が出たなぁ〜。」


「武器?それ武器なの?ちょっと鑑定させて。」


 指輪はまぁ、普通の黒い指輪。思い入れはないのかさっさと指に嵌めてしまった。それよりも武器はまた変なのが出た。回復薬よりも小さな瓶。マジックの様にキャップを抜けばハケが出てくる。うん、これってマニキュアだよね?黒い液体がサラサラとハケを伝い瓶に戻る。クロエが武器くらいまともに作れとソーツに怒るのも分かる。


 分かるんだけどこのマニキュアはそのまま武器なんだよね・・・。鑑定して分かったけど単純明快に塗ればそのまま爪が武器になる。牙にも塗れるし使い終わればもう一度ハケで拭えばいい。動物的な武器といえば確かにこの形しかない。ただ、盾師みたいに硬くなるわけでもなく、剣士や槍師ほどリーチがあるわけでもない。


 身体能力の高さと身軽さを使ってのインファイトがメインかな?でも、妖怪ってそんなにボコスカ殴り合ってるイメージがないような・・・。


「どう使うのかなぁ〜?飲むのかなぁ〜?」


「一応飲んでも害はないけど下から黒い塊が出るよ?これは塗って使う武器。爪とか歯とかにね。犬人も猫人も全員コレなのかな?」


「さぁ~なぁ〜。でも爪のお手入れは気合い入れて木をバリバリ引っ掻くなぁ〜。」


「それより!ここまでまたせたんだから説明はよ!」


妖怪:身体と魔術で戦う事が出来る。

   但し本人の使用率により比重が変わる。

   また、見えないモノを見る事が出来る。


「こんな感じだなぁ―。私も空が飛べるかなぁ〜。まだなにかありそうだなぁ〜。」


(文章説明?これってS職って事?確かに能力的に神崎本部長っぽい感じだけど、魔術に指定がない?いや、クロエの話では得意だから指定が出るのであって指定がないって事は得意な魔術もない?それに比重が変わる?て事はどちらかに極端に進むと片方は使えなくなるとか?でも、獣人って魔術使えるのかな?獣に近い獣人は火を怖がったりする時があるって何かで読んだけど・・・。)


「腹減ったなぁ〜。リュックのゴハンはへそくりにして、メガネの指輪の()のおにぎりが欲しいなぁ〜。説明の報酬をよこすなぁ〜。」


「おにぎりくらいい・・・、ちょっ!ゆ、指輪の中見えるの!?どれくらいはっきり見える!?もしかして箱の中身も?ねぇ!教えて!何がどれくらい見えてるの!?もしかして勝手に取り出せたりもする!?」


 大発見?もしくは恐怖の幕開け?指輪の中と言うのを完全なプライベート空間と考えている人は多い。私だってそうだ。無尽蔵に物が詰め込めて何が入っているかは誰にも知られない。だからこそどの国も密輸を恐れるし、そこにあったなかったと言う論争もある。でも、それが仮に丸裸に出来ると言うならその脅威は計り知れない。


「か、肩から手を離すなぁ〜。うわべしか見えないなぁ〜。」


「うわべって何!?どこがうわべで何がうわべ?さっさと話したらごちそうでもなんでもない好きな物食べさせてあげるから!」


 両肩を掴みガコガコ振る。首がガクガクなろうとも構わない!明日は筋肉痛?私もそこそこ鍛えたから多分大丈夫!駄目なら回復薬飲むし!


「大きさとかたちだけだなぁ〜。頑丈そうなモノに入ってたら見えないなぁ〜。」


「外観が分かるって事?」


「そうだなぁ〜。なにおにぎりかは知らんなぁ〜。」


(銘柄は読み取れてない?私のお昼用に鮭おにぎりコンビニで買ってきたけど、確かにフェリエットは何にぎりかは言わなかった。つまり、物体の形や大きさが分かるシルエットクイズ状態?いや、それでも指輪に入ってるモノの総数が分かればゼロが分かる?)


「私の指輪の中にどれくらいの物が入ってるかわかる?」


「多すぎて分からんなぁ〜。ごちゃごちゃだなぁ〜。片付け出来ない女は結婚出来ないなぁ〜。」


「変な所で毒はかなくていいし!見えるのは後から色々検証するとして何が変わった?」


「腹は減ったなぁ〜。お弁当食べていいかなぁ〜。」


「いや、すでにササミ食べてるし。う〜ん・・・、流石にモンスターもいるしゲート内で考察や検証するのは限界があるかにゃあ。よし、ちょっぱやで進むぜ―!」




ーside 司ー



 心配な時間は長く感じるが、少なくとも半日から1日は退出にかかると思う。魔法を渡したので覗き見も出来るのだろうが、それをするとずっと見てそうなのでしない事とする。そんな中で新しく来たメールは望田からのモノ。エマ達と合流した旨と今回潜るメンバーの写真が添付されているが、模擬戦でもした後なのか微妙に煤けている。


 まぁ、望田とエマは仲が良かったので出会い頭に腕がなまっていないかチェックしたとか?実際望田は副長の任があるので、俺が何かをする為にギルドを離れると居残りを余儀なくされる事が多い。そんな中で久々に会えたから激突したとしてもまぁ・・・、


 おかしいな・・・、普通女性同士が久々に出会ったらお茶とケーキを楽しみながら話し込むものでは?どうしてもあの二人だと仲がいいはずなのに互いを攻撃してるイメージがあるんだよな。多分、ゲート内で模擬戦をして至った姿を見たからだろう。


「おつかれ〜、フェリエットはまだ?」


「おつかれ、体感だけならそろそろって気もするけど職に就けなかったら介護案件だからね。」


「そうね、大丈夫だと思う?」


「そう思うしか出来ないよ。ただ、にゃん太の時からアイツはたまに残念だからなぁ・・・。」


 用水路を飛び越えようとして落ちる。ネズミ取りの罠にかかって全身トリモチだらけになる。上げると切りはないが、それだけ思い出を共有した家族。どうか無事でいてほしい。


「戻ったなぁ〜、メガネがうざいなぁ-。」


「考察検証実地!お代は払うからイマからやるにゃあ!」


 神志那がフェリエットにベッタリとくっついて帰ってきた。とても喜ばしいのだが、この状況で話すならこの言葉だろう。


「フェリエット、貴方の職は何ですか?」


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― 新着の感想 ―
[一言] 妖怪ならやがて尻尾が増えて寿命も延びそうだ ウィンドウ動かせるし叩けるのか ソーツの嫌いな失敗とか欠陥とかかな? 指輪中身を見られるのか…
[一言] 妖怪ってことは猫又? 猫鬼は中国だしなぁ エクストラっぽいの獣人初のサービスなのか獣人の基本か
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