401話 居場所作り
書類は思ったより溜まっていなかった。寧ろ通常レベル。話を聞くと神志那達がヘルプしてくれたらしい。ただ、配信を見て神志那もラボをいじくり回したいとウズウズしてたとか。神志那と斎藤がタッグ組んでいじくりだすと更に訳の分からない状態になるんじゃないかな?
溜まったメールチェックをすると増田からのものがあった。配信前に連絡したがスパイの件で引渡し等をどうするかと言う話だが、バイトを通じて指示すると話したので、初っ端はバイトを増田に預ける方がいいかな?俺の都合より増田の都合に合わせた方が早く済みそうだし。
なので増田がゲートに入るタイミングでバイトを向かわせ、サボタージュさせている中国軍の指揮官と面会させよう。顔は覚えてるし精神世界を彷徨うよりも多分簡単に見つけてくれるはず。何せ彼奴等俺の魔法持っていってるし。その他のメールは飛べない本部長達は薬の受領どうする?と言うメールが何通か来ていたが、飛べない本部長はただの本部長さ。とジョークを返した後に昇降装置を開発中と返しておいた。
いつ出来るかは分からないが、社員達を見た感じやる気はあるし、どうしようもなければ外の工場での受け渡しでもいい。或いは浦城がいるので運搬をお願いしてもいいしね。他は奏江からプログラムを暇な時に一緒にしようとかとか。R・U・Rの方は仕事の一環なので勤務中にしてもいいかな?
「この辺りは漁村ですか?」
「いや?単純に大分ギルドが海の中にあるだけ。似たような作りの所はあるけど山の中にある所もあるよ。流石に日本海側は波が高いからね。さてと、あらかた仕事は片付いたし帰ろうか。」
「やっぱり二馬力だと仕事は早くなりますね。不備はありました?」
「いや?確認した限りだとないよ。カオリも本当にありがとうね。特別警戒も解除したし、明日からは通常運用に戻す予定だよ。何か特別警戒中に問題は出た?」
「コレと言って特に。強いて言うなら例のモンスター対策のおかげで怪我人は減りましたね。ゴムボール以外にも取り敢えず投げる物を持ち込んだり、先に天井を掃射したりしてるみたいです。」
「来ると分かってれば対策できるからね。」
「何かあったですか?」
「天井からモンスターが降ってきて攻撃してたんだよ。ゲート内のモンスターも時間経過と言うか、何か新しいものが作られたら投げ込まれて増えるからね。今回のは先制攻撃するか囮を使って対処するのが楽だ。」
「ほうほう・・・、なら私の所にもクロエが降ってきたですね。助けのヒーローでしたけど。」
「助けのヒーロー?」
「その話は一旦落ち着いてからね。ギルドで話すよりは家で話した方がいい。」
そんな話をしながら仕事を終えて帰宅。帰り着くと家には息子しかいなかったが、ソフィアの件でソワソワしていたのか玄関で待っていた。まぁ、コレが初顔合わせになるから仕方ないと言えば仕方ないのだが・・・。
「ただいま〜。外で待っててくれてありがたいけど一旦中へ入ろう。夕方とは言え地面が茹だって暑い。」
「そうね、千尋ちゃんがいないならパパッと出来る夕食を冷蔵庫と相談しなきゃ。」
「お久しぶりです。お兄ちゃん!ソフィアが帰りましたですよ。バイトもいたですね。」
「おう!・・・、久しぶりソフィア、先ずは中にはいってくれ疲れただろう。」
「え〜と、私は後からの方がいいですかね?家族の団らんですし。」
「そうだな、カオリには改めて話すよ。息子には家族向けの話。カオリには仕事も含めて深い話があるし。フェリエットは・・・、聞くだけ聞く?」
「興味ないからいいなぁ〜。適当にタブレットで勉強でもしとくなぁ〜。」
そう言ってそれぞれに分かれるが、フェリエットはタブレット持ってどこに行く気だろうか?そこまで心配する必要はないと思うが、夕方でも暑いので水分補給用にペットボトルを投げて渡すと肩掛けカバンにしまい込んで歩いて行った。
ソフィアとしては多分初の日本家屋なので興味深そうにあちこち見ているが、若干古めとは言えそこまで他の家とは代わり映えしない。まぁ、ロシアの建築と比べると防犯面とか建築様式が違うので興味深いのかな?
「あぁ〜、冷房がないと今年は死ぬな。車運転するだけでかなり厳しい。」
「指輪に入れてるから車内が高温になる事はないんだけどね。ソフィアは体調大丈夫?ゲートから出るとかなり暑さが厳しいけど。」
「・・・、正直に言うと湿度が高くてベタベタします。そしてバテる・・・。クーラーは偉大です。」
「ちょっ!胸元!そんな広げてバタバタするな。中が見えるだろ?」
「お兄ちゃんならいいです、家族です。」
「でも、ソフィア慎みは大事だよ。親しき仲にも礼儀あり、子供じゃないからあんまりしないようにね?間違いはないと思うけど、那由多も男だし。」
「そうね、急にソフィアみたいな可愛い女の子が家に来てウロウロしてたら那由多も意識するわよね〜。」
「大丈夫です。お父さんと暮らして理性があるなら私には傾かないです。寧ろお母さんはなんでお父さんにくっついてる?」
「ツカサはくっついてると夏は温度を奪ってくれるし、冬は温度を上げれるのよ?だから、こうしてくっついてると結構涼しいの。」
居間に入って適当に座って話すが、確かに体温変化もなく一定なので相手の体温が高ければ低くなろうと吸い取るし、逆に低ければ元の温度に戻そうとその部分が暖かくなる。偶にフェリエットが足に抱きついて寝ている時があるが、もしかして冷房が効きすぎていたのだろうか?猫って暑い所の動物だし。
そんな事を考えていると妻が離れ冷蔵庫から麦茶とお盆にコップを乗せて帰って来て、お茶で一息。冷えた麦茶が喉元過ぎれば熱さを癒してくれるような気がする。結構話しているがソフィアとしては初めての場所なので、若干居心地悪そうに辺りを見ている。まぁ、ソファーもあるけど今は全員フローリングに座っていると言うのは向こうの人から見れば変わった光景でもあるしな。
「さてと。それでソフィア・・・、クリスマスプレゼントの妹については深く聞かない。話したくなったら話してくれていいし、話さないなら兄としてそこまでだったんだろう。ただ、1つだけはっきりさせてくれ。」
息子が真剣な目で俺達を見ながら口を開く。一つだけハッキリさせるとすればなんだろう?出身?うちに来た経緯?それとも年齢とか、本当に自分を兄として見てくれるかとか?何を話すにしてもソフィアの気持ちが関わってくる部分もあるので、質問を投げかけるならソフィアになるのだろうが、本人の記憶もあまりハッキリしない所もあるので足りなければフォローを入れよう。
「な、なんですかお兄ちゃん?」
「いや、ソフィアだけに質問じゃないんだけど・・・、その、宇宙人じゃないよな?流石に地球人の妹は妹として見れるけど宇宙人だとどう接していいか分からない。」
息子は本気なのだろうが3人でポカンとする。ソフィアが宇宙人・・・、ソフィアが宇宙とな?確かにあの配信を見て妹が急に出来たら宇宙人と思うのかな?外見的にも整ってるし、外人の時点で日本人からすればそう言う印象を受ける?
「少なくともソフィアは地球人。年齢設定は14歳で米国からの帰国子女。公の設定は話しただろ?」
「聞いたけどいざ本人を前にするとな・・・。どことなく今の父さんにも似てるし2人目の被害者って言われても納得出来る。まぁ、地球人ってのは信じていいんだよな?」
「あぁ、それは保証する。職にも就いてないからオーソドックスな地球人だ。流石に全身くまなく見せろと言うのは断るかな?」
「・・・。わ、私はお兄ちゃんが信じないなら脱ぎますよ?お尻でもオッパイの下でも見て下さい!」
そう言ってソフィアが立って服を脱ごうとするが、脱いで見た所で外見でバレる様な隠し方はしないんじゃ・・・。息子と妻が慌てて止めているがどうしたもんかな?息子は良くてもソフィアの方に何かしこりが残ればまた暴走しそうな・・・。
「分かったから!脱がなくていいから!」
「そうよ!乙女が簡単に男の人に肌をさらすものじゃないのよ!」
「で、でもですね・・・、疑われながら暮らすのも嫌です・・・。信じてもらえるなら出来る事はしたいです。」
「貴方からも何か言ってよ!」
「水着だな。水着も下着も変わらないと思うけど、下着が駄目なら水着で見てもらうのがソフィアとしては納得出来るだろうし、那由多としても妥協出来るだろ?まぁ、妥協と言うより眼福かもしれないけどな。」
「あう、水着ないです、」
「知ってる。だから水着買って海に行く時にでも見せればいい。どの道生活用品やら服は買わないといけないし・・・、そう言えば部屋をどうしようか?空き部屋となると物置に使ってる部屋を整理するか・・・、私の書斎かな?流石に遥の部屋を確認なしに使うわけにもいかないし。」
部屋自体は余っているが客でも泊まりに来ない限り物置代わりとなっているし、一部はフェリエットが好き勝手使っている。部屋にするなら片付けると言ったが狭い方が落ちつくと言うし、寝る場所は確保しているものの夫婦の寝室に夜な夜な潜り込む事もあるので使用実績としては低い。
ただ、プライベートスペースは必要なので遊び部屋になってる俺の書斎を譲るかな。本はどこでも読めるし衣類や細かな物は指輪に収納すればいい。部屋としてもベッドと机があるので学生となるソフィアにはちょうどいいだろう。
「私はソファーがあれば大丈夫ですよ?服は適当に入れておきます。それに、みんなと一緒にいたいです。」
「一緒にいるのはいいけど部屋がないのはダメ。何かあって1人になりたい時もあるし、勉強するなら居間だと気が散る。それに、自分の居場所はちゃんと作らないと帰る場所を見失う。」
「帰る場所・・・。」
「そう、帰る場所。ここはソフィアの家で私と莉菜がいて、姉の遥に兄の那由多、猫人になったフェリエットと暮らすそんな居場所。」
「ありがとう・・・、ございます・・・。」
ソフィアが涙ぐんでいるが、なんだか湿っぽい話になったな。どこの部屋にするかは本人に見てもらってから決めるとして、後は何がどこにあるかとか?最近と言うかこの身体になってトイレにいかないので、出かけた先でそう言ったところを聞かれると地味に困る。妻からはそういった所で化粧直しすると言われたけど、そもそも化粧しないしな・・・。
「よし那由多、家を案内してやってくれ。使い勝手もわからないし畑で野菜取ってこいと言う事もある。家の周りを2人で歩いてフェリエットがいたら捕まえて来てくれ。帰る頃には飯だしな。後は一応工藤さんとこにも顔を出しといて。」
「家の周り歩くならお金あげるから次いでにスーパーで何かお惣菜買ってきてね〜、香織さんも多分ウチで食べるから多めにね〜。」
「いいけど目立つなぁ〜・・・。父さんと出かけてだいぶ耐性は付いたけど、今日は1人なんですか?ってたまに残念そうに聞かれるし・・・。」
「良かったな。今日は2人だし美人なソフィアもいる。なにもないと思うが、何かあればすぐに逃げて電話しなさい。」
「へいへい、行こうかソフィア。最初は家の中から回って外に出たら庭の後にバイト連れて結城の所行って買い物しよう。お小遣いはまだないだろうし、お兄ちゃんがお菓子を買ってあげよう。」
「お菓子は敵です!お兄ちゃんは乙女心が分かってません!」
「えぇー・・・。」
息子が立つとソフィアも立ち上がり後をついていく。さてと、後は望田を呼んでソフィアの事を話すか。問題は何処まで話すか・・・、再誕の話をするかどうかだな。ただ、ここをぼかして話しても辻褄は合わなくなってくるし、ガッツリ話すとややこしくもなる。取り敢えずあらましを話すだけ話して後は質問して貰うかな?
「香織を呼んでくるわね。私も今回は当事者だし同席するわ。」
「頼む。でも、呼ぶのは俺が行くよ。一服もしたいしね。」
残ったお茶を飲み外に出て一服。家の裏の畑を見せていたのか奥の方から出て来た息子達を見送り離れの扉をノック。私服に着替えた望田は足音で気付いていたのかすぐに出てきた。ちらりと覗く離れの中は物置から住居に変わり、センスの良さそうな壁紙なんかが見える。
まぁ、ここに住むにあたって必要品は一緒に買いに行ったので、買い込んで新しく増えた物以外は見知っていると言えばそうかな?足りないのは風呂だけなので、そのうち増築して作ってもいいし。
「待ってました、話はここでしますか?」
「いや、母家でやろう。妻も今回は関わってるから3人で話そう。」
望田を連れて母屋へ。居間に入ると息子達のコップは下げられ新しいコップと茶漬けの菓子がテーブルの上に置いてある。取り敢えず茶を飲んで適当に座り、息子達が帰ってくる前に話し終えるとしよう。
「先ずは増田さんから何か話は聞いてる?」
「それが全く聞いてないんですよ・・・。特別警戒に移行するにあたって現状を知りたいって言ったんですけど『電話及びPC等でのやり取りは情報漏洩に繋がるので回答できません。』の一点張りで・・・。流石に配信見たらヤバい状況ってのは分かりましたけど、何がどうヤバかったんですか?」
「そうだな・・・。」
ソフィア発見から配信終了までの経緯をかいつまんで話、それに妻が足りない部分を補足して行く。スタートの結合体の部分で望田の顔は曇りラボで分離して過去の記憶が曖昧という話で目尻に涙を浮かべ、元々が施設にいたらしいと言う話で自身に重ねたのか涙は溢れた。
引き取った経緯も元はロシア人らしいが存在を抹消されて行く当てもなく、政府かうちかという話でウチで引き取る事になり、元の苗字を捨てて日本人の『黒江 ソフィア』となった辺りで嗚咽を漏らしていた。ギルドで話さなくてよかったな。元々共感しやすい望田は話せば憤りを覚える事も泣いてしまう事も分かっていたし。
「ほら、今はここにソフィアはいる。悲しい過去はゲートで消してきたから、これからは日向を歩いて先を見る。本人が泣かない限り私達が泣くのは・・・、大人が先に泣くのはずるいよ。まぁ、今はソフィアがいないから好きなだけ泣いていいけどね。」
「はい・・・。しかし、そんな無理矢理な実験許せませんね・・・。スパイとか誘拐なんかはこれから先も警戒を?」
「警戒はする。でも、出来ればソフィアには自由でいてもらいたい。この家の周りにはたくさん公安の人も潜んでいるし、ちょっとやそっとでは誘拐なんて出来ない。それに、誘拐したとしてもその理由がかなり難しいんだよ。他国の名を騙ればその国が潰しに来る。身代金やいたずら目的なら日本が潰しに行く。人で出来た城壁は隙間が広い様に見えて其の実、隙間に入れば押し潰される。だから、ソフィアを預かる事も養子にする事も出来たんだけどね。」
「そうね・・・。でも、司は本当によかったの?最初は政府か施設って話だったけど。」
妻が神妙な顔で聞いてくるが、騒動が終わって冷静になってから振り返っての疑問か。まぁ、人一人を新しく迎えて育てるとなると色々あるし、引き取る事を考えた時もどうなるか想像してみた。ただ、想像した上で引き取る事が最善であるとも判断した。
「いいよ。今が14歳として大学卒業までで8年。それが長いか短いかはそれぞれによると思うけど、その8年をモヤモヤした気持ちで過ごすよりも一緒に過ごした方がわかる事もある。それに、前なら会社員の給料で大丈夫か?って言う金銭面の心配もあったけど、今は唸るほどの財産があるからね!」
人間関係もそうだが金銭面は生活と切り離せない。例えば引き取ったとして俺にも家にもお金がなかったらどうなるか?答は食べ物や衣類の取り合いから始まり、立場的に新参者で弱いソフィアはどうあがいてもハブられる。流石にそんな状況なら引き取るなんて言わないし、仮に会うとすれば遊びに来てもらう程度かな?
でも今は生活スタイルは変えないにしても本部長になって金は舞い込むし、株でも舞い込んできている。妻も良い給料貰ってるし遥も稼いでいる。来年就職予定の息子が働き出せば子供の養育費はソフィアだけとなり、出費は今とさほど変わらないし収入と支出を考えても大きくプラスとなっている。
「前だと三世代くらい世代を重ねると財産なくなってたんですけどね。ツカサの場合継続して財産が増えていく?」
「う〜ん・・・先生の所の株を売らないとそうなるのかな?売って利確しないと現金化は出来ないけど、そうすると配当金は貰えなくなるからね。何より国としては市場にだしたくないし、ギルドの持ち株にするのも独立化の要因になるからダメ。結果として配当だけで仕事しなくても豪遊しながら暮らすだけのお金は入ってくるかな?」
「・・・、副長宅にシャワー付けません?温泉は好きですけど、たまに家から出たくない時ってあるじゃないですか。」
「いいよ〜、流石に長く住むなら不便だろうとは思ってたし・・・。アパート借りる?」
「いえ!ツカサの周りでは何があるかわかりません!それに副長兼SPでもあるんです。近くにいないとダメじゃないですかね?そうですよね、莉菜さんも。」
「別に追い出すわけじゃないから、そんなに必死にならなくてもいいよ。」
「そうね、香織ももう家族みたいなものだもんね。シャワーはつけてもいいけど、業者決めて配管の図面とか必要なら言ってね。」
「了解です!じゃあそろそろお暇して・・・。」
「惣菜だけど晩飯食べてきなよ。今息子達が買いに行ってるしさ。」
そんな話をしていると息子達が帰宅。息子の手に荷物はないが指輪に入れているのだろう。スーパーまではそんなに距離はないが、かなり暑かったのか2人とも汗だくになっている。と、言うかソフィアが泣いている?
「那由多、信じてるからはっきり言いなさい。ソフィアに何かした?」
「いや・・・、あんまり暑いもんだから適当なジュースとアイスを奢ったらな・・・。」
「暑さに・・・、負けたです。太らない様にお菓子とジュースは食べないつもりでしたが、誘惑に勝てませんでした・・・。」
「少しくらいなら食べてもいいのよ?お母さんもソフィアくらいの時はお菓子とジュースは結構食べてたし。」
「少しならいいんだけどな・・・。スーパーのお菓子売り場にふらふら入っていったと思ったらカゴいっぱい持ってきたんだよ。流石に身体に悪いと思って3つまでにさせた。その後はアイスを山程買おうともしてたな。後、一緒に来た結城の奴はそんなソフィアの横でポテチ食べながら歩くもんだからソフィアの手もそれに伸びて・・・。」
息子が呆れた様に言うが、ロシア人ってアイスをかなり食うんだよなぁ。寒い所にいるからアイスなんて食わないだろうと思われがちだが、外気とのバランスを取る為に食べる。なんなら買い置きの習慣がないので見かけたら食べる。
日本とは風土が違うのでそのうちソフィアも日本ナイズされていくと思うが、日本の夏は始まったばかりなので今からアイスを大量に食べていると先が思いやられるな。それはソレとして・・・。
「私達にアイスは?」
「あるよ。ないともっかい行けって言うだろ?適当に買ったから味はじゃんけんででも決めてくれ。ソフィア、汗かいたなら先にシャワーを浴びるように。冷房で風邪引く。」
「は~いお兄ちゃん。」
お兄ちゃんの部分で息子の顔がニヤけているが、シスコンとかにならないよな?頭に義が付いた妹だけど、なんだか俺達以上に息子がソフィアを可愛がりそうな・・・。
「タオルは適当に使って・・・、替えの服ってある?」
「藤さんと遥から何着か貰ったわ。ちょっと渡してくるから料理を並べといて。」
妻がソフィアを追い3人で食器を出していく。炊飯器のセットは済んでいたのでホカホカご飯にありつけるな。息子に買い物に行った先の話を聞くとやはりと言うか注目の的だったらしい。工藤さんの所に先に寄ったので結城君も一緒に行き買い物をしたと言う話だが、ソフィアはこれから先日本のお菓子やコンビニスイーツ、ホットスナックの誘惑に勝てるのだろうか?
「今日は時間ややり取りがあったから有り合わせだけど、次はソフィアがうちに来た記念にどこかで豪勢にやろうか。」
「それいいわね!何がいいかしら?寿司に焼き肉にコース料理もいいわね〜。」
「母さん、選ぶのはソフィアだろ?先ずはネットで店をピックアップしてからだな。」
「私はあれ食べてみたいな。スフレパンケーキ。毎度ブームに乗り遅れるし今回こそは!」
「ツカサ、それも古いですよ。」
「なぬ!そう言えば那由多は風呂と飯どっちにする?それとも、父さんの背中を流すか?」
「その話は断ったはずだ。そう言えば、フェリエットはまだ遅くなるみたいだぞ?」
「飯食いに帰って来ないなんて珍しいな。」
「なんか公民館で集会するんだって。」
猫の集会と言ったら路地裏とか空き地だと思ったら最近は公民館使うのか・・・。と、言うか何話し合うんだろ?どこどこの家ならご飯くれるとか、最近はネズミ少なくなったねとか?変な話をしていなければいいが・・・。寧ろ獣人と普通の犬猫は混ざって会議するのだろうか?
「上がりました。」
「思ったより早かったな。」
「シャワーで軽く汗流しただけだから早いのよ。後でお湯を張るからちゃんと湯船に入るように。さて、ご飯よそって食べましょうか。」
普段は4人の食卓だが、今日は5人なので割と賑やか。望田が結構ソフィアに話しかけるし、ソフィアも最初はおどおどしていたが後の方は慣れてきた。ただ、俺が元男とソフィアは知らないので一緒に風呂に入ると言うのを中々譲らない。ただ、風呂が狭いからと言う理由でどうにか乗り切れたが、これから先どうするか考えないとな。
そんな夕食と風呂を終えてフェリエットも帰ってきて残り物を食べてマッタリしていると寝る時間。書斎の荷物はさっさと指輪に収納して場所を開ける。今のソフィアの荷物は服数着にイヤーカフス、他はタブレットくらいしかない。
「さてと、部屋はここを使うといい。買い物は明日で布団に私の匂いがついてたらごめんね。」
「それは多分ご褒美です。・・・、1人で寝るですか?」
「その予定だけど?自立するなら部屋を持って自分でどうレイアウトするか決める所から。まぁ、悪夢を見たら上に来るといい。じゃあ、おやすみ。」
ソフィアの心細そうなおやすみを聞きながら外で一服して寝室へ。帰ってきてもバタバタしていたので、ようやく一息と言ったとかろかな?妻はまだ下で食洗機に食器を入れていたし、ベッドを整えて適当に服を脱いで配信後の情報でも漁るか。
「ツカサ、私の理性は豆腐を超えて大豆だけど大丈夫かしら?」
「地味にぶつけられると硬くて痛いから大丈夫じゃない?」
部屋に入るなり人の尻を揉みながらのたまうが、節分に鬼の役やってぶつけられると大豆は結構痛い。最近だと散らからない様に袋のままとか、殻付きの落花生が多いようだが・・・。妻がそっとキスをしてくるのでついばむように返すが・・・。
「今日はここまで。ソフィアが来るかもしれない。」
「そう、なら仕方ないわね。お楽しみはとっておくとして、明日は買い物かしら?」
「任せるよ。流石に本部長が休みすぎるのも問題が出る。」




