400話 多分あの人はラッキーガール 挿絵あり
「ちゃんとでましたか!?ここどこですか!?私はソフィアです!」
「大丈夫よ、私も司もいるから。」
「心配はあったが杞憂だったか。ちゃんと日本だ。」
ゲートから出て辺を見回すと見馴れたギルドが見える。位置は建物内ではなく近くだったが、それのおかげでより確信が持てた。鍛えられたと言うか、ギルド周辺では誰もいなかった所に急に人が現れる事は多々あるのでその事に誰も驚きはしない。
驚きはしないのだがおめかしして家族と・・・、厳密に言えば話題のソフィアと現れたので相当注目されている。されているが遠巻きに見られるだけと言うのは助かるな。ただ一人、名刺を両手で掲げた東海林以外はだが・・・。
「張り込んでは2日目の東海林です。私のラックは折り紙付き!!ファースト氏がゲートより帰還された模様です!いやぁ〜、これ生?それとも録画?突撃しといてスルーされてますけど・・・、えっ?緊急で中継つなげる?ちょ!私メイクとか大丈夫!?ギルドでインタビューしながら温泉入ったりしてまったりしてた・・・、もうつながってる!?」
『現場の東海林さん?生だから放送事故に気をつけて〜!!』
「分かりました、気を取り直して再度突撃してきます!ファーストさーーん!!東海林でーーす!!約束は守ってくださーーい!!」
コントをしたいのか真面目に取材したいのか?多分半々な東海林がこちらに突撃してくる。選出戦の時にゲートに入ったので間違いなくスィーパーだが、職はプランナーとか?元々運がいいと思っていたが、ピンポイントでここを取材してる時に俺達が帰ってくるとか既に神がかってる様な・・・。
「司・・・、あの人って?」
「専属インタビュアーの東海林さん。東京に残ってると思ったけどまさか大分まで突撃して来るとは思わなかった。さてどうしようかな?2人共疲れてるなら私だけで対応するけど?むしろ、2人はさっさと隠れた方がいいかな?」
「インタビュアー?テレビですか?」
「そう。カオリが中にいると思うか・・・、声を聞きつけたのかカオリも出て来たか。合流して先に入ってて。東海林さーん、お久しぶりでーす。」
今から出ると連絡したが出る位置はどこか分からないと望田に言っていた。玄関で待ち構えていたのか東海林よりも早くこっちに走ってきている。妻とソフィアは望田に任せて俺は東海林の方を対応するかな?今更テレビに出た所で2人の顔は既に配信で知られているが、進んで出したいものでもないしね。
「お久しぶりです、姿が見えないと思ったらあんな事業をやってただなんて!いの一番に駆け付けて特ダネ報道陣したかったんですよ!?と、言うか配信時よりおめかししてません?」
「遥に着せられましたね。一応封鎖地域での事業ですし、ラボと駐屯地は撮影NGです。ここで話すのもなんですし、応接室にでも行きましょう。」
妻達の方も観ている人は多いが、望田が壁を作りながら誘導しているので近付けない。ついでに言えばおめかしして目立っているので自然と注目は俺の方に来る。これを見越したかは知らないが遥はいい仕事したな。
妻達がギルドに入ったのを確認し悠々と歩きギルドの中へ。色々な所から顔を出してこちらを伺ってくるが、今は無視してさっさと部屋へ。元は殺風景にパイプ椅子と長机が置かれた部屋だったが、装飾師や鍛冶師が寄贈品と言う名の在庫処分で家具を寄贈していき、使わないのももったいないと獣人達の感性を養う為に配置させていたら意外といい部屋が出来た。
「さぁどうぞ。適当に座ってください。」
「適当ってめちゃくちゃ高そうな椅子ですけどいいんですか?さっきまで獣人さん達と海で撮影してて砂とかついてますけど。後、生放送ですけど大丈夫ですか?」
「いいですよ。ほとんどは生産系スィーパーからの寄贈品で、家具は使わず眺める事に意味はない。使い潰して捨てるまでいけば家具としても本望でしょう。さて、配信でほとんど話しちゃいましたけど何か聞きたい事が?話せない事はNGとします。」
そう聞く横でカメラマンがスマホをイジっている。多分本社と連絡を取って質問内容を決めているんだろう。話せる部分と話せない部分もあるので気を使う。何より東海林のインタビューって結構な頻度で生放送なんだよな・・・。基本的に生は嫌と言っているが、状況的に仕方ないと言えば仕方ない。
「えーと、今日はツインテールですけどなにか心境の変化が!?」
「いや・・・、心境の変化というか暑くて単純にうなじを出しただけですよ。と、言っても勝手に髪留めが滑り落ちるのでそんなに長続きしないんですけどね。」
相変わらずな感じだが、初手の質問は東海林の好きにさせているのだろうか?まぁ、遭遇率と言う話をするならお仕掛けてこないぶん分べつはあるし、構いはしないのだが・・・。
「はぇ〜、年齢の発言がありましたけど本当に?」
「44歳は間違いないですよ?免許にもそう記載されてますし子供が上は成人もしてるんです。間違いありませんね。なので・・・。」
「あっ!年齢の話はもう大丈夫です。ネットでクロエちゃんは年齢クロエちゃんでいいって結論出てるみたいなんで。」
「そうなんですか?なら別にいいですけど、身体的には14歳くらいから育ってないんですよね〜・・・。まぁ、成人扱いしてもらえるならいいですけど。それで聞きたい事はまとまりました?」
「えー・・・、あの飛行技術って聞いても大丈夫ですか?」
「飛行ユニットの事ですか?私もそこまで詳しくないですけど斥力と引力で飛んでます。イメージとしては風船を見えない糸で引っ張る感じですね。なので配信でも感じたと思いますがほぼ無音です。どれくらい浮いていられるかは話せませんけど、相当時間だと思って下さい。」
「出ましたね謎技術!市販の可能性と言うか、海外セレブとかは新たな土地として欲しがる人はいそうですけど販売までにはまだ時間がかかりそうですよね?」
「う〜ん・・・、そこは社長と社員さん達の頑張り次第でしか。ただ、配信後は休暇を取っていた社員達が休暇いらないから仕事させろと詰めかけていましたね。全く新しい技術なのでコレからいじくり回して遊ぶんでしょう。開発に携わった社員も少なかったと思いますし。」
「早く市販されると嬉しいですね!そうすれば私もヘルメットを被って飛行リポーターとして新たな活躍が出来ます!」
「東海林さんの場合黄色いヘルメットを被って台風に突撃取材とかしそうですけどね。開発とかの事は多分これ以上はNGです。私は社員じゃないので企業的に秘密にしていたいこともありますからね。」
「なら1つだけ!コレだけは上が聞けってうるさいんですけど、アレってもう宇宙に行く道筋は出来てますか!?」
「道筋はあると思いますよ?責任者がそんな話しましたからね。」
設計図も渡したし後は研究次第か。高槻が木を欲しがっていたあたり木片から何かわかったのだろう。そうじゃなきゃ根っこごと一本欲しいとか言わないし。斎藤がもらった鉢植えの方も何か調べは付いてるのかな?
「手軽に行けるようになったら私も宇宙へ!そう言えば、奥さんと娘さんが正式に配信に出てきましたけど良かったんですか?」
「その辺りは悩みましたが、公にしていないとは言え生活圏は割とバレていますからね。逆に顔を出した家族に対して何かすれば法的に戦いますし、顔を出していない息子は来年就職予定で親の七光りを嫌って自力で活動するとして顔を出していません。」
「しっかりした息子さんですね。では、噂のソフィアさんは中学生って事ですけどどちらの中学に?」
「特に決めてませんよ?一般人なので一般的な事しかしませんよ。本人の状況を見てどの時期から編入するかは決めます。さて、時間的にはこれくらいですかね?」
「はい!局の方は好きなだけインタビューしてもいいと言ってますけど、流石にお疲れな所もあると思います。今回はコレでおしまいとして、また次回不定期でお送りしまーす。」
東海林のインタビューをおえ、ギルマスルームへそそくさと帰ると部屋では望田と妻とソフィアが楽しそうに話していた。ただ、妻としてもどこまで話していいか分からないのか全体的にふわっとした会話になっている。
そして、俺が帰ると妻は雪城や救護室のメンバーと話すと言って出て行った。雪城もグレーな人間だが、今の所実害はないし警戒レベルは低くていいかな?何を目的として情報を抜いているのか?それは分からないが、妻や救護室から取れる情報と言うのは少ないだろう。
今回望田に頼んで流した誤情報も一部は真実になったので、何処までが嘘で何処までが本当かは分からないだろうし、雪城にはラボの場所も教えていない。基本的に回復薬取りに行くのって本部長、副本くらいでウチみたいなケースは稀だしね。
「それで、可愛い娘さんはどこで引っ掛けたんですか?」
「引っ掛けただなんて人聞きの悪い。理由は追々話すとして、この子は私の娘黒江 ソフィア。仲良くしてやってくれ。序に言うと学力は微妙だから時間あったらでいいから勉強見てあげて。」
「それはいいですけど、ギルドに連れてくるんですか?」
「日中帯はそうなると思う。最悪食堂・・・、いや託児所で勉強かな?明日からカオリは休暇取っていいからゆっくり休んでね。」
「一緒に居たいんで仕事しますぅ〜。たまには私にも構ってくれないとヤキモチ焼きますぅ〜。」
「いや、カオリはどこのポジションだよ・・・。」
「お父さん・・・、不倫?」
「ソフィアはなにもない所で顔を半分出したようなジェスチャーしなくていいから。取り敢えずスマホの契約とか色々やる事は多いけど、先ずは帰って那由多と顔合わせだな。終業時間までは書類仕事をやろう。」
アフターファイブまであと2時間。息子との顔合わせを考えると今日は残業なしの定時退勤だな。さて、帰ってから息子がどう反応するか見ものだが、頑張って口裏を合わせるか。




