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街中ダンジョン  作者: フィノ


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397話 間の悪い奴だ 挿絵あり

「さて、技術を見せる前に今回のゲストを紹介しましょうかね。先ずは有名どころのお二人から!」


「どうも、ソーツ斎藤です。宇宙に行って宇宙人に姿を貸しましたが、ここにいる斎藤は地球人の斎藤です。」


「斎藤君。その言い回しかなり分かりづらくない?ソーツ斎藤より地球人斎藤の方が分かりやすいですな。まぁ、地球人も星を離れれば宇宙人と言っても過言ではないでしょう。知ってる人はお久しぶり、知らない人は初めまして。高槻製薬社長の高槻です。斎藤君の上司にあたり、クロエさんとは社長と株主の間柄。出演オファーを受けるに当たりまずは一言。ウチは完全スカウト制!ラボ勤務の社員募集はしていません。外の工場は募集あるので、応募してもそちらに行きますな。」


「実際社員さんはそこそこ増えてまーす。社訓を理解して活動出来る人とか何かしらの実績のある人がスカウト対象でーす。私に人事権はないので何か言ってきても知りませーん。」


「そうですな、人事権はほぼ私持ち。行動理念としては個人単位の赤十字とでも思っていただければいいでしょう。まぁ、社員がいるのでお金は貰います。無償で技術を渡すほど我々は高尚ではなく、寧ろ俗っぽい集団の会社だと思ってください。ちなみに国営ではないので日本政府に何か言っても私には関係ありません。」


「そうですね〜。私も縁あってスカウトされてから今回の技術開発を行いましたからね。実力があれば毎日がファンタスティック!」


「先に私から謝りますが、大スケール事業なのに社員の一部に休暇を出す要請をしてしまいました。理由は伏せますが、今回の発表後は会社に戻れる事を私と社長で保証します。」


「社員カムバ〜〜ク!技術はあっても人がいなければ流石に寂しいですからな。さて、我々はよろしいですが後のお二人を紹介されては?画面の向こうの方も興味あるでしょうし、我々もカメラマンの藤君も準備があります。」


「分かりました。では先ず1人目。こちらはまぁ・・・、宇宙に行った時の配信は見てる人が大半だと思いますが・・・。」


「妻の莉菜です。夫が姿と声を取り返してくれたので日本人に戻りました〜。」


「いや、君は元々日本人だから。乗っ取りとかなかったからね?寧ろ、家に帰って乗っ取られてたとか言う事実があったらソーツはただじゃ済まさない。祭壇探す前に無理矢理にでも見つけてボコボコにする・・・。ちなみにこれは無理矢理ならすぐに見つけられると言う話ではないですからね!?宇宙に行ったらソーツがお出迎えとか言う夢物語は望み薄と言うか、祭壇探す正規ルート以外では敵対は出来ても交渉は無理ですからね?さて、最後の一人。まぁ娘なんですけどね。」


「ソフィアです。・・・、コレ世界に向けてライブ?」


「そう話したけど?」


「改めまじで・・・、改めましてクロエ=ソフィアです。職には付いてませんが検証を行うとして留学先から帰ってゲートに入りました!好きな物はボルシチ、好きな歌は多分カチューシャ?お父さんを妹にしたいけどお母さんLOVE過ぎて砂糖はいてます。配信前もディープキスを・・・。」


「こら、そこまで話さなくていい。話しても問題ないけど、それは夫婦の話だからね?と、何度も言っていますが私には妻と2人の娘と息子と猫人の家族がいます。ジョークで言い寄る分には受け流しますが、ガチで言い寄って来たとしても靡く事は絶対にありません。悪ふざけで火傷しても私は責任を取りませんからね?」


 スタートの演者紹介はこんなもんかな?必要な情報は渡したし、ソフィアの立場も明確になった。さりげなく好物と歌でロシア側を揺さぶると言うファインプレーだが、ロシア側はこれを見るとバタバタするだろうな。何せ死んだと思った結合体が生きながらえあまつさえ人に戻っている。


 なら、その人物を返せと言いたいだろうが、既に日本国籍は保有する手はずで事は進んでいるし、留学先も米国となってシナリオも組んでいる。先に見せるか見せないかと言う話もあるが、事前に風海の大型ロボテックスーツの映像を送り、コレよりも大きなものを飛ばすと言ったので大丈夫だろう。


 更に言うなら実検にソフィア=リドフと言う人物は関わらず存在ごと抹消されてしまった。ここで写真付き人員名簿とかあるなら疑いの目を持ち出すだろうが、顔もある程度変わってしまいデータや写真が無いなら後は記憶だよりとなる。スクリプター辺りなら同一人物と言い出してもおかしくないが、それを言い出すには遅すぎる。


 なにせソフィア=リドフは黒江 ソフィアとしてもう歩き出してしまった。それを横から覆しにかかるとなると、今度は国が国をを相手に戦う羽目になる。そうなれば国同士の関係は悪化し、松田の言う丁寧な無視はどんどん長引くし、場合によっては機械的な対応で事を事務的に済ますと言う流れになるだろう。


 この場合ロシア側にしろ中国にしろ文句は言えない。機械的な対応であろうとも貿易はしているし、経済的にも繋がりはある。ただそこに渡さないと言う技術があるだけ。特に高槻が言った通りラボはあくまで高槻の会社であって国営ではない。つまり、経済的自由権は保証されてるし、開発しているのがゲート内なので変な文句も言えない。


 丁寧に丁寧にカードは潰し続けている。残るカードは武力による技術奪取だが、それを避ける為に今からここを飛ばすんだしねぇ。相手として取り得る手はまだあるかもしれないが、ライブ配信してある時点で相手としては動きをかなり制限されるだろう。


「ソフィア、なんでまた後ろから抱きついてんの?」


「お父さんが家族の中で1番小さくて抱き心地がいいからです。」


「そうよねぇ、ソフィアは家族の中で結構育っちゃった方だから仕方ないわよね〜。」


「那由多お兄ちゃんには身長で負けました。でも、これからも成長の余地が?」


「成長期かぁ・・・、私の成長期どこ行った?」


「貴方はそのままでいいのよ?変わらず自分を持って進む優しい貴方だから私は恋したんだから。」


「うん・・・、ありがとう莉菜。」


「ここは砂糖吐くタイミングです・・・。画面の向こうの人も袋いっぱい砂糖を吐くといいです。」


 ソフィアが喉を鳴らす押さえながら吐くようなジェスチャーをしているが、コレなら仲の良い家族に見えるかな?家族としての立ち位置と身長なんかを引き合いに出せば、そこそこ家族の中にいる人間に見えるはず。遥にも那由多の後に連絡を入れてソフィアを養子として迎える件は了承してもらっている。まぁ、本人が東京で活動している分、会う機会というのはあまり多くないと言うのも了承するポイントとしては高かった。


「そろそろ行きますよーー!!」


「了解でーーす!!莉菜とソフィアは少し下がって。私は撮影してから上がるから。確かこの辺りより奥に入ってね。」


 浦城と風海は上空待機。敵影があれば連絡が来る手はずだが何もないので来ていないのだろう。斎藤の声で2人を安全圏に入れて後は上昇を待つばかり。この技術が衆目に曝されればセーフスペースでの建設関係事業は加速し、パーツを作っては外に持ち出すと言う流れも出来てくるだろう。


 これが新たな火種になるかは分からない。少なくともコレを作ったのは斎藤達で俺は技術と言う面では何も関わっていない。寧ろ、今回の件で利用した方の人間だ。仮に功績を称える様な話があるとすれば、それは俺ではなくラボの人間が賞賛されるに相応しい。


 俺と撮影用に残った藤の嫁の目の前の大地がゆるゆると隆起し、大地と切り離されても止まる事なく上昇し続ける。多少舞うホコリはしかし、それさえも還元返還すると言わんばかりにすぐに消え、闡明にその姿を現し続けている。遠くない未来、これは新たな土地となり人を助けてくれるだろ。生と死が曖昧になったこの世界で人はまた住む場所を探すのだから。


「人は長い間空を見上げ星に願い・・・、それでも揺り籠の大地で生きてきた。そこにしか生きるすべがなかったから。そこでしか生きられなかったから。哲学的な話をするなら、人の思考は常に飛んでいる。数多の神話や宗教を紐解いても必ずそこには空がある。私達、高槻製薬はその空に大地を浮かべ、宇宙への足掛かりを今、こうして作り上げました・・・。」


(unknown出現、ここより10km地点です!)


「どうやら観客がいるようです、今上昇している大地の話は一旦置いておきインタビューしてみましょう!」


 来なければよかったが、霧が晴れてライトで照らされて正確な位置が分かり何かしらの動きがあるなら見に来るだろう?まぁ、俺達がライブ配信してるとは夢にも思わないだろうが、恨むなら本国から届く指示が遅かった事を恨め。俺は帰れと言ってスパイにして接触してきた中国軍を追い返した。


 ん?・・・、あぁ。お行儀よくサボタージュしているからそもそも接触した事を報告していないのか。あちらの部隊規模は追い返したスパイ達が魔法をネコババしたままなので依然として分からない。だが、こうして表れたと言う事はサボタージュしていない他の部隊もいたのだろう。


 撮影用係の嫁、リンドウを回収して低空飛行で一気に距離を詰める。浦城からは何やら銃なんかを構えているらしいと情報が入っていたが、風海が前面で待機し防御は固めている。発砲現場を撮影したいなんて言う危ない欲求もあるが、流石に新築の大地を傷物にされるのも面白くない。


「撮影は?」


「バッチリカメラ回してますぅ!」


「OK、ならどこの誰か立場をはっきりさせてインタビューしましょう。そこの方達ーーー!!どこの誰ですかーーー!!!私はクロエ=ファーストーーー!!!!アレはモンスターではありませんよーーーー!!!!」


 叫びながらその部隊の前に舞い降りる。面白いほどに動揺している雰囲気が伝わってくるが、簡単にはお引取させてやらん。既にカメラには前に来た中国軍と同じパワードスーツを着た集団が、銃を構えている映像が映し出されているだろうし、何よりこれはライブ配信。逃げてもいいが名乗りもせずに逃げれば誰もが不信感を抱く。


「聞こえませんでしたか?改めて、クロエ=ファーストです。名前と所属を教えてください。ここへは何用で?」


「・・・。」


「回答なし?日本語が分からないと言う事は海外の方ですか?I am Kuroe. Who are you people?」


「・・・。」


「英語も通じない?なら、それ以外を母国語とする方達ですか?とりあえず、お()を見せてください。」


 ヘルメットを取る様にオーバーリアクションでジェスチャー。相変わらず銃口は向けたままだが、さてどう動くかな?下手すればあのヘルメットの中で指示を仰いでいるのかもしれないが、そんな暇はあると思うなよ?片手を上げてもう片方の手を差し出す。ええ、非武装ですとも。絵面とするなら非武装の少女相手に銃口を向けたままの正体不明の集団。


 先に銃口を下げる指示をしていれば多少は言い訳も出来るだろうが、降り立って名乗った瞬間にやらずに後手に回った方が悪い。更に言うなら、有名なので顔を知らないや名を知らないは既に通用しない。俺からは友好を相手は何を差し出す?


「我々は機密行動中だ。顔を晒す訳にはいかない。ここへは異常を感知してやって来た。」


「異常を感知して来た?機密行動中に?作戦行動中なら、それでは話が通りませんよ?どんな密命かは知りませんが、異常があるからと勝手な行動が出来る程度の命令なら、どこの人かくらい教えてくださいな。」


「・・・、日本人だ。」


「それはありえませんよ。ここは自衛隊からも封鎖地域として通達が出ています。警察にしてもその話は共有されている。それなのにここに来たと?悪いですが日本人と言う話は信じるに値しません。仮に日本人で自衛官だとするなら武装解除を命じます。これは特別特定害獣対策本部 本部長としての命令です。」


 ガッツリと墓穴ほったな。まぁ、どの国の人間であろうとすぐさま外務省に確認を取ると言えばバレるだろうし、正体不明の武装集団をゲート内で武装解除させたとしても誰も文句が言えない。寧ろ、名を出された国から猛批判も飛んでくるし、立場はどんどん悪くなる。


 正解と言うなら、さっさと顔を見せて大丈夫なら帰りますだろうか?これが多分傷口が一番小さくて済むし、不信感は抱かれない。文句言うなら上司か判断ミスした自分だな。動揺して判断をミスする。ありはするが、それが取り返しのつかないものなら後はどうやって傷を最小限に留めるかだな。


「我々は日本人だ。ゲートの中は治外法権。よって従う理由はない。」


「辻褄が合わんぞ?武装解除、国籍、氏名の提示。全てを蹴る気か?その上で日本人を語るのか?ならば日本のスィーパーの管理者として強制的に武装解除さしてもらうが?」


「我々が従う理由はない。脅しには屈しない。我々は日本人であり機密行動中だ。」


「なるほど。では見方を変えて、そのパワードスーツをどこの国の物か照合するとしましょう。」


「何故我々にそこまで干渉する!我々は日本人で機密行動中の集団だ!コレ以上の追求はやめろ!」


「言ったでしょう?ここは封鎖地域としてあると。そこに無断で入った部隊があるなら抗議するのは当然の権利です。外国の方が知らずに来たと言うならまだ話は分かります。しかし、貴方がたは日本人を名乗った。その上でギルドマスターの要請にも応えず、武装解除も氏名も名乗らない。なら、追求するしかないでしょう?」


「我々は民間企業に雇われている。封鎖地域の件は知らなかった。」


「それならそれでは構いません。企業側にも抗議はしません。その代わり顔は見せなさい。顔の晒せない機密行動なら犯罪の可能性があります。私は犯罪行為には断固とした態度を示すと明言しています。」


「ゲート内なら治外法権だ。」


「ゲート外は法治国家です。何か勘違いしていませんか?ゲート内で何かをする分には罪には問えないですが、ゲート外までそれを持ち出すなら私達は必ず裁きを下す。私の仕事として貴方達の素性を確かめる必要があるのは分かりますよね?既にこのやり取りも配信されている。流石にこれ以上は怪しさしかないし顔を見せて素性を話せ。最悪武力行使にシフトチェンジする事になる。」


  挿絵(By みてみん)


 チラリと背後を見るとカメラは回り続けかなりラボも上昇している。リンドウが忙しなくカメラを行来させているので上昇風景もバッチリ流れているだろう。相手の動揺は最高潮なのか構えた銃口は降ろされず、代表して話している男(?)の手はかすかに震えている。


「む、無関係で無害なスィーパーをファーストは攻撃するのか!?」


「今更それを口にすると?無関係で無害なら肉まんでも水餃子でも、なんならチャーハンも振る舞いましょうか?でも、その時間は終わっている。私は攻撃するわけではありません。素性を明らかにします。」


「やめろーー!!!」


 男の絶叫は電子音声から肉声に変わり、脱兎の如く逃げ出そうと踵を返す間を与えずに魔糸で動きを封じる。現れた顔は明らかに日本人ではない。外人から見ればアジア人と一括りにするかも知れないが、日本人と言う単一民族からすればその違いはひと目で分かる。


「やめませんよ。やめるわけがない・・・。貴方は日本人と語ったが同じ民族とは思えない。中国の方ですね?ここに何をしに来たんですか?」


「わっ!我々は・・・!越権行為だ!」


「ふざけた事を抜かすな。治外法権といった口が越権行為を主張するほど滑稽な事はない。国の密命を受けてここに来た、目的は何ですか?私ですか?ラボですか?それともべつの何かですか?」


「違う我々は通りかかっただけだ!ただそれだけの事だ!」

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[一言] 地上で任務に当たっている人員と比べて、流石に下調べが足りてなさすぎる。 ゲート内だと知能が下がってしまうのか、サークル立ち上げお父さんが有能だっただけか。
[一言] 割と中国人的には普通の対応というのが何とも ネット上ではソフィアとこの怪しい集団ネタで盛り上がるんだろうな
[一言] 本当に間の悪い 発言が矛盾だらけたし役者が違うな
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