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街中ダンジョン  作者: フィノ


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395話 配信前 挿絵あり

「話は分かった。国籍の件も日本人として過ごせる様に話すとしよう。ここに来る前に増田さんと話したけど、ロシア側にソフィア=リドフと言う人物はいない事になってる。」


「貴方それって・・・。」


「アチラとしては実験にもそんな人が関わったと言う事実も、下手すればそんな実験があったと言う事自体も無くしたいらしい。記録自体は日本側に残ってるらしいけど、ロシア側のモノは抹消されてるみたい。」


 言うか迷ったが隠しても始まらない。辛いと言える事実か知れないが、自身の置かれた状況と言うものはきっちりと把握して行動してもらわないと、何事の拍子に私はロシア人と言われても困る。日本側にデータは残っているので仮に名目を持って復讐するなら記憶と向き合った後がいいだろうしな。


 曖昧なまま事を起こしたとしても、何処かで自分の記憶に疑問を持ち出せば行動そのものが鈍くなり、根底が揺らげば助けられるものも助けられなくなる。しっかりとした根拠とはそれだけ行動する時の支えにもなるのだから。


「私は・・・、やっぱりいらない子だったですか?」


「そんな事はないわよ!いらない子なんてきっとどこにもいないの!もし本当にそんな子がいるとしたらその子はきっと名前なんてないんだから・・・。」


 ソフィアの言葉に妻が怒る。その怒りは誰に向けたものなのか・・・。全てを隠そうとした国かソフィアを捨てた親か、或いはその言葉を吐くソフィア自身か。何にせよソフィアは選び俺達はその答えに応と答えた。答えたのはいいのだが、関係性をどうするかなぁ〜。


「言い方は悪いかもしれないけど過ぎた事は置いておいて先を見よう。」


「先?」


「そう、ソフィアと私達の関係性。一緒に暮らすなら預かった子とするにしても養子とするにしても、文句を言わせないだけの理由がいる。なりたくはないけど私も有名人ではあるからね。邪魔なマスコミが現れたとして、再誕させた子ですとはバカ正直には言えないし、なら隠し子かと言われても面倒。」


「那由多達みたいには出来ないかしら?確か面倒な手続き踏んだって聞いたけど。」


「養子から実子扱いした時ね。元々実子でそう言う戸籍に細工するだけだったけど、お代り出来るかな?そもそもソフィアの戸籍を作る所から始めるわけだし・・・。」


 息子や娘の写真は小さい頃のも含めてあるから問題ないのだが、ソフィアの物はまったくない。寧ろあったら怖い。家族の集合写真も細工されて今の姿で俺は写っているし、ソレを更に改変するとなるとかなり面倒になるし、何よりもそんな子はいなかったと言われるとみんなダメージを受ける。


 なら、正式に誰かの子を養子として預かり後に実子とするならした方がスムーズではある。スムーズではあるのだが、なら誰の子だよと言う問題が浮上してくるわけで・・・。身寄りのない子を養子にしましたと言うと、嫌な話ならウチの施設の子も言われかねない。


 妥当なのは死んだ友人の子とするとかなのだが、そうなると今度はソフィアの容姿と名前が足を引っ張る。見た目外国人で俺は国外に出たくないと公言している関係上、どこで知り合ったのか問題が出てくる。在日どこどこ人の子で日本生まれの日本国籍保有者、それならソフィアの日本人であると言う根拠にはなるのだが・・・。


「クロエが好きで押しかけたはダメですか?」


「それで養子とかになれるなら誰も彼も養子になるって言い出しそう・・・。だんご大家族はいい歌だけど、ウチは団子じゃないからなぁ・・・。」


「そうよねぇ〜・・・。一旦エマさん経由でホームステイしてる子は・・・流石に後が面倒だし、私の知り合いにも外国の人はいないわね。」


 頭を捻るが人一人の立場を作るのって大変。元から日本人と言うのはいいのだが、ウチに来た経緯となると何処かで不自然さが出てくるし、何よりも未成年なので親は?と言う話になる。面と向かって理由を聞く人はそうそういないだろうが、その代わりに裏で好き勝手言われても面白くない。


 わがままだろうが胸を張って養子なら養子と、娘なら娘と言えるだけの根拠。それが捻り出せれば何処からも文句は言われなくなる。それに、これがないと最悪手のひらくるくるで娘の親を名乗り出る他人がいたり、ウチの国の人間だから返せと言う話も出てくる。実際俺がゲート開通当初にそれを言われたしな。


「う〜ん・・・、やっぱり元から紹介してなかった娘にするとかが妥当なのかなぁ。遥は装飾師だっから講習会に呼んだけど、那由多は鍛冶師だったけど講習会には呼ばなかった。なら、職に就けないソフィアの事を公表する謂れはない。」


「問題は住んでる地域の人の目よねぇ。あの二人は小さい頃から顔見せてるから分かるけど、ソフィアちゃんはそれもないし・・・。」


「う〜ん・・・、元々ウチは辺鄙な所で周りに家も少なかったから人目につかなかったとか、或いは幼少期に留学させた・・・?」


 ふむ。容姿にコンプレックスがあるとするなら、その話は出来なくもない。俺は普通に学校に通っていたが、この姿での学校での目撃例がない理由の1つに容姿によるコンプレックスで保健室登校をしていたと言うものがある。なら、娘にその二の舞いを味あわせたくないと、似た容姿をしている人のいる海外に留学させたとするならどうだろう?


 そして年齢もある程度重ね、本人の意向もあり帰国。帰国時の年齢は・・・、14くらいなら大丈夫かな?本人の学力問題もあるが夏休み明けからこちらで学校に通い出すとすればそこまで大きな違和感はない。問題はどこに留学させてたとするかとか?


 心当たりがあるなら2人。アライルかウィルソンとなるが、そうなると米国にも動いてもらわないといけないので何かしらの手土産が必要になる。・・・、飛行ユニットを手土産にする?NASAとJAXAは協力関係にあるけど飛行ユニットはほぼ斎藤が専属で扱っている。なら、その技術共有を見返りにソフィアの事を留学していた人間として貰えばスムーズに行くかな?


 問題は飛行ユニットの技術公開をいい顔しない人もいると言う事だが、浮島を配信してしまえば技術についての問い合わせは多数来る。そこで隠し通すのは無理だろうし、どこに情報開示するかと言えば、やはり米国が筆頭。なら、利益が取れる内に取ってしまって円満な内に動いて貰った方がいいのかな?


「なにか思いついたですか?」


「容姿によるコンプレックスとか虐めを危惧して海外留学。そして、その好機の視線にも耐えられると判断しての帰国。年齢は14〜16歳なら勉強についていける?」


「勉強・・・、頭良くないです。多分おバカです・・・。」


「それならちゃんと勉強しまようね?大丈夫、お兄ちゃんになる那由多はそこそこ頭いいから。」


「那由多お兄ちゃん・・・、怖くないですか?」


「遥よりは優しいかな?まぁ、遥も優しいは優しいけど少し不器用な所もある。ただ、養子として・・・、黒江 ソフィアとしてウチに来るなら兄弟姉妹として振る舞わないといけないわね。」


 妻が何気なく黒江姓の事を言うとソフィアの顔がパッと明るくなる。本人が望み名字と言う形で現れたなら、喜びもあるのだろう。必要ならソフィアと言う名も変えられるタイミングだが、流石にそれまで変えてしまっては過去と別れすぎる。


「な、仲良くなるように頑張ります。オッパイとか押し付けたら男の人の喜ぶ?」


「喜ばない事はないだろうけど千尋ちゃんが嫉妬するから辞めるように。そうだな・・・、変に畏まらない。言いたい事はちゃんと話す。何かする前にはきちんと考えてから実行する。まだ若いから難しいかもしれないけど、感情だけで動けば取り返しのつかない事もある。ゆっくりでいいから自分の居場所を作れるようにね。さて、ちょっと電話してくる。」


 一旦部屋を出て松田に連絡。こちらのシナリオを話すとOKとの事。寧ろ、日本国内での改ざんが少なくて済む分、政府としてはその路線を取っても問題ないらしい。手土産の件についてもNASAに開示するタイミングと言うか、JAXAからもNASAへ飛行ユニットの情報開示要請が来てたとか。


 正式な開示は配信後で合意し、寧ろ同盟と言う部分と枠組みを強調して欲しいと言われた。まぁ、仲いいから米国に技術開示する程度でいいのだろうか?何をどう話せば国同士が仲いいと分かるかなんて考えた事もないんだが・・・。


「預けた先はウィルソン・スミス氏の所でよろしいんですか?」


「他の知り合いってアライル局長とジョージですよ?エマは流石に無理があるし、人選を考えるとそこかなぁ〜と。寧ろ松田さんは誰か心当たりあります?」


「う〜ん・・・、流石に個人での留学に対して国の施設を使えとも言えないですね。あちらで確実に協力者として信用でき且つ、改ざん等を行える人物。人選としては問題ないでしょう。ただ、これはクロエさんとウィルソンさんの問題になってくる。口裏を合わせるならご自身でどうぞ。戸籍等は手配しましょう。」


「了解です。手土産もあるので無碍にはしないでしょう。決裂したなら他の国に飛行ユニット技術を開示するとでも言えばいいですからね。」


「悪いお人だ。では、次の連絡は飛ぶ前にお願いします。焼き鳥が冷める前にね。」


 電話を切りそのままウィルソンヘ・・・。そう言えば個人の番号知らないな。時間的にペンタゴンで仕事してる?ちょっと面倒だがそちらにかけるとしよう。ハッキングした時と番号が変わってなければいいが・・・。


「Hello?」


「ご無沙汰してます、クロエです。」


「ファーストさん!?」


「ええ、クロエ=ファーストです。ちょっとお願い事があって電話したんですけど大丈夫ですか?アライルさんの指示がいるなら指示を仰いても構いません。」


「えっ!ええ!!私でよければなんなりと。局長も近くにいますから、必要なら指示を仰がせてもらいます。」


 急な電話だったが大丈夫な様だ。事の真相はぼかすとして先にお願い事を話すとするか。出来る限り独りよがりで独善的な理由をつけて。変にソフィアの事を話し出すと墓穴掘りそうだし。


「ウィルソンさんの家って一軒家ですか?それともアパート?」


「ペンタゴンから少し離れた一軒家で、そこそこの広さですけど・・・、もしかして泊まりで遊びにでも来ますか?」


「いや。その予定はないんですがホームステイ可能な広さはありますよね?お願いと言うのは人を1人、未成年の娘を長期間でホームステイさせていた事にして欲しいんです。」


「それは・・・、込み入った事情かあるんですよね?私は未婚なのでホームステイ先としてはかなり違和感を持たれますが?」


「別に本当に今から人を送るわけではなくて、そう言った事実があったとシナリオを組んでもらいたいんです。」


「アジア人が出入りすれば少なからず目は引くし、一軒家とは言え流石に人の目もある。かなり無理を言っているとおわかりで?」


「ええ、国内で完結させるのが厳しそうなのでこうして同盟国の友人(・・)にお願いしています。まぁ、当然見返りもありますよ?それに容姿を言えば白人です。」


「白人の未成年の娘を1人・・・、見返りとは?」


 見返りの部分に食付くが、それよりも白人の娘と言う所を掘り下げたさそうだ。下手すれば米国人を拉致ったとでも思われたのかな?流石にそれはないので後で訂正するとして、俺とソフィアの関係を説明するならどうしよう?嘘を付くと雪だるま式に大きくなって収拾もつかなくなるが・・・。


「橘さんが空飛んでる理由。人が扱える飛行ユニットの開発に日本は成功しています。それの技術開示です。」


「!?その娘にはそれだけの価値があると?」


「個人の価値観なんて物差しで測れるものではありませんよ。何も聞かず預かったと言う事実を作り穏便に開示を受けるのか、それともちょっと大事になった後に色々と言われて開示して貰うのか?早い話が取り引きですよ、取り引き。」


「横から口出していいかね?」


「えぇ~、アライルさんが話すと情報抜きに来るでしょう?ウィルソンさんが抜きに来ないとは言いませんが、話せば巻き込みますよ局長殿?」


「部下が翻弄されてたら上司は口を出すよ。その娘の容姿も何も分からないのに協力は厳しいね。わざわざ米国に話を持ってくる時点で何か危ない物を抱えているのだろう?」


 黙ってOKしてくれればよかったけど、流石に一筋縄ではいかないか。まぁ、そこも見越していると言えば見越しているので適当な理由を話すとしよう。


「写真は・・・、IPアドレス教えてください。そのPCに送ります。その娘と言うのは私の養子でして。外見が白人なのでコンプレックスを抱えさせるのも悪いと幼少より海外留学させていた事にしたいんです。その留学先が・・・。」


「IPアドレスはこれで。米国でありウィルソン君の所であると?なるほど、元々一般人であるミシィーズファーストの娘の1人が実は米国にいた事にしたいと?君の性格や行動からすればかなり厳しいシナリオだよ?」


「女性で女性が好きと言う時点で生きづらさはありましたよ。その上で更に外見的なコンプレックスを娘に持たせたくないと言う親心です。流石にこれ以上掘り下げるなら別のシナリオで動こうと思います。」


 話を練り直す必要があるが、流石にソフィア本人に突っ込まれるよりはマシだ。他の案を作るならウチの両親に助けてもらうかなぁ・・・?両親の知り合いが死亡し、その1人娘を養子とした。国内で嗅ぎ回られるとかなり面倒だが、それでも不可能なシナリオでもない。その場合俺が両親を説得しないといけないが、だいぶ丸くなったけど親父はまた曲者だからなぁ・・・。


「見返りの飛行ユニットは確かNASAでも話題になっていたね?日本側と協力体制を取るが、その部分は開示してもらえないと嘆いていたよ。それの有用性は取り引き材料に値すると?」


「飛行ユニットは簡単に言えば、地上で宇宙空間に置ける生活スペースを建造できます。つまり、中国やロシアの様にバンバンロケットを打ち上げなくても1回の飛行で宇宙にいけますね。そうでなくとも橘さんの様な挙動のロボテックスーツが作れます。」


「・・・、それって取り引きじゃなくて有無を言わさず飲めって言ってない?」


「まさか!飲まないと言う選択肢はありますよ?売れる様になったら買って調べる。当然技術漏洩は怖いので簡単には解体できないでしょうが、長い月日をかければ、ね。」


「はぁ〜・・・、その話は飲もう。流石にそんな技術があると言われてここで見逃せば首では済まないよ。ただ、1つ条件を言うなら現物を見せてもらえないかな?口だけなら何とでも言えるからね。それを見て我々は動くとしょう。」


「それで構いません。写真は送りますが後の学歴等は自由にしてください。ただ、年齢だけは14〜15歳の日本国籍保有者とする事。自己申告では頭はあまりよろしくないらしいので、飛び級して高学歴とかもやめてくださいね?現物の確認は橘さんの飛行で足りないと言うなら、直近で配信するのでそれを見れば分かるでしょう。」


「待ってほしい。その技術を公にするのかい?」


「ええ。製法や取り扱いについては話しませんが、そう言った物があると言う事実は広めます。コレは確定事項ですね。」


「先にちょこっと見せてもらうのは?」


「う〜ん・・・、ライブ配信になると思うのでその時次第としか。こうして穏やかに話してますけど、割とゴタゴタしてたんですよねぇ。」


 スィーパーの被害が多い→調査→結合体発見→精神世界→分離再誕→スパイが来て卓とバトル→中国軍が来て今のラボと駐屯地は浮島になろうとしている。息子や望田、ギルドの人間には悪いし帰ると言った妻も帰りそびれてまだいる。長い1週間だったな・・・。ただ、それももうすぐ終わる。寝てないし時間の感覚は狂いっぱなしだが、帰ったら休めるのだろうか?


「OK、準備だけは進めておこう。状況次第では大統領がその技術を共有する準備は出来ていると発言するかもしれないけど、それは?」


「大丈夫だと思いますよ?ただ、その発言をするなら私のお願いは絶対です。不備なく違和感なく過去にそこにいた人間とする。詳しくは副官房長官の松田さんに聞いて打ち合わせをお願いします。では。」


「あぁ、人生とは中々刺激的だね。私も長生きしたくなってきたよ。さてウィルソン君シナリオを考えようか。では。」


 電話を切り一応の根回しはこれでいいかな?指定されたソフィアの写真も送ったし大丈夫だろう。しかし、フライングで見せてくれか・・・。地上から飛び立つ時に撮影すればいいかな?寧ろ、配信の初めをそこにして後ろでどんどん飛んでいくラボとかを撮影すればいいかな?まぁ、ラボは映せないので下側とかになるかもだが。


 後は演者をどうするか?俺はまぁ出ないといけない。高槻と斎藤は出演。藤は撮影係として、ソフィアを出すか出さないか。ガッツリと映して家族と宣言した方がロシア側としては手も出せなくなるし、どこの誰論争も白熱しない。まぁ、何人論争はあるかもしれないが、既に国籍は日本となる手はずなので問題ないかな?


 最悪今の俺の容姿を引き合いに出せばそこそこ納得してもらえるとは思う。俺も何人か分からない様な容姿をしているし、肌の白さだけで言えばソフィアよりももっと白い。なら、整った容姿同士で違和感も少ないのかなぁ・・・。身長は伸びないので、下手したら並んで歩いた時に俺の方が子供として見られる未来もあるのだが・・・。


 まぁ、余程の僻地でもない限り俺を見て子供と扱う人も少ないだろう。未だにおばちゃん達は飴をくれたり、タバコ吸ってたらおじさんがお菓子くれたりするのだが・・・。それでも子供として扱われると言うよりも単純に話の駄賃としてくれる様に思う。


 知らん人から物を貰うのはあまりいい事とは言えないが、ファーストさんと呼ばれて渡されるので、どうにも断りづらいんだよなぁ〜。流石に毒は入ってないと思いたいが、そもそも入っていた所で効きもしないし適当に回復薬飲めば中和するのでいいと言えばいいのだが・・・。


 そう言えば夏目が大分にいた頃に、釣り人から貰ったふぐを持ってきて丸ごと食べてたな。ふぐ毒で死ぬかと思ったが割とケロッとした顔で『やっぱり刺し身がいい。毒ごと食べても毒を制御して集めて吐き出せるのはいいけど、食べると言う行為からは離れすぎてる。』と言いながら毒袋?を捨てていた。


 今思えばあれって普通にゴミ箱に捨ててよかったのだろうか?最終的にゲートに投げ込むのだが、触った程度でテトロドトキシンの影響を受けないとは言えかなり危ない行為だったんじゃ・・・。やはり調理師免許はいるな。半田の所では言えばふぐも出してくれそうだが。


「ん?斎藤さんからか。なら・・・、もしもし?」


「もしもし?斎藤です。最終段階に入りました。後1時間もすれば封入は完了し飛行可能だと思います。」


「おぉ!ついにその時ですね。差し当たって何かする事あります?」


「配信するならその準備とかですね。電気系統は正常なので今の所は最終通電に問題ないかのチェックも進めてますし。」


「了解です。ならそれまでに打ち合わせを済ませましょう。もう少ししたらそちらに向かいます。」


 時間を確認すると息子は多分家にいる頃。なら、ソフィアの件を話しておくか。流石にいきなり連れて帰れば混乱するだろうし、家の中のパワーバランスなんてものも気にしていたので心構えは必要だろう。


「もしもし那由多?」


「父さんか。中々帰ってこないけどもう帰ってくるのか?」


「帰るのは今日か明日になると思う。それと朗報があるぞ。」


「朗報?遅れてインターハイやるとか?」


「まさか。お前小学校の頃にサンタさんに妹くださいってお願い事書いただろう?父さんも母さんも色々と頑張ったんだけどなぁ・・・。」


「生々しい話はいいよ。色々って夫婦のそれだろ?なんだ?父さんまで孫の顔見せろとか言い出すのか?家にも帰らずに。」


「違う違う。朗報って言うのはその妹の話だ。端的に言うとお前には妹がいたけど海外に留学してて最近帰ってきた事になった。」


「・・・、は?いや、姉ちゃんはいても妹はいないだろ!?」


「卒業前の最後のクリスマスプレゼントだと思って喜んで受け入れてくれ。大丈夫だ。お前の言う家の中の男女比なら私も男側だ。」


「それが一番納得いかねぇ!!父さんを父さんとして扱うのはいいけど、身体は女性だ!」


「バカ、43年は男だった。ならその年月が過ぎるまでは男だ。なんだ?一緒に風呂入って背中でも流してもらおうか?親孝行だとでも思って。」


「なんでされる方が要求するんだよ・・・。と、言うか妹の件はマジ?」


「マジだ。色々と込み入った事情があって母さんとも話してそう結論を出した。お前に言うのが遅れて悪かったな。」


「いや、うん。急にそう言われると何も言えなくなるんだけど・・・、日本人だよな?まさか別の国の人を拐って来たとか言う話じゃないよな?」


「中々鋭いじゃないか。妖精と言えば?」


「妖精と言えば?ロシアかイギリスか?確かテニス選手でそんな人がいたと思うけど・・・、えっ?外人?」


「日本語は話せるぞ?よかったな美人な妹が出来だぞ那由多お兄ちゃん。多少おバカらしいからちゃんと勉強はお願いされたら見てやれよ?」


「勉強って何歳だよ!?えっ、妹って事は高2とか?」


「惜しい!一応中2予定なんだが年齢は覚えてないらしくてな。推定年齢だとそうなる。身長は・・・、多分お前よりも少し低いくらい?確かお前って170超えてたよな?」


「175だよ。て事は170位あんの姉ちゃんより高いじゃん。それで中2・・・。」


「喜べ外人さんだからナイスバディだぞ?」


「俺には千尋がいるからその情報はいらん。」


息子は俺に似て硬派で一途な様だ。まぁ、ここで浮気しそうなら色々と考える所もあるが、話した感じソフィアに靡くことはなさそうだ。寧ろ浮気する気なら全力で止めに入るし千尋ちゃんに土下座どころでは済まない。


「その言葉を聞いて安心した。何にせよ妹が出来る心構えはしておいてくれ。事情については折を見て話す。」


「事情はいいよ。父さんじゃなくて・・・、名前は?」


「ソフィアだ。黒江 ソフィアと言う日本人の妹。」


「なら、ソフィアが話したくなったら直接本人から聞く。それまではただの家族で兄貴として過ごす。込み入った事情って要は他人が話すべきじゃない事だろ?」


「ふふ。」


「なんだよ?急に笑って。」


「いや?いい男に育ったと思ってな。じゃあ切るぞ。」


 電話を切って部屋の中へ。息子にも話したしこれからは新しい家族の問題だ。新たな家族となるソフィア。彼女・・・、娘の気持ちを確認して配信に出るか出ないかを考える時間。別に出ないなら出ないでもいつの間にか家にいたと言う流れで発見された時に娘と言えばいいだけだしな。


「ただいま。国籍と今までの所在は手を回してきたし、那由多にも話してきた。一応、これで妙な疑いが浮上しても言い逃れは出来ると思う。そこで1つ話があるんだけど、後1時間もしない内にここは飛ぶ。そしてその飛ぶ姿をライブ配信か録画配信する。その時の演者として・・・。」


「ソフィアちゃんを出すの?」


「莉菜、娘にするならちゃん付けじゃなくて呼び捨てがいい。遥も那由多も呼び捨ての中、ソフィアだけで呼び捨てじゃないのは違和感を覚えるからね。ソフィアも私はお父さん、莉菜はお母さん呼びになるけどいい?」


「大丈夫ですクロ・・・、お父さん。妹扱いは・・・、ハイ、ダメですね。」


「そこは『えぇ〜、何時もみたいに妹扱いじゃダメ〜?』とかかな?何にせよ養子として来るならウチの家系的にはそうなる。ギリギリ妹が欲しかったから背の低い私を妹が扱いしたかったとかならまぁ・・・、どうにか道理は通るかな?」


  挿絵(By みてみん)


 姉妹の様な親子もいるし多分おかしくないはず!まぁ、大抵母親の方が姉になるのが道理なのだろうが、外見的に言えば俺は14歳でしかないしそれを差し引いても身長差で妹扱いか。まぁ、海外セレブはジョージを筆頭に息子娘よりも外見的に若い人が出て来てるしな。


 どこで手に入れたか知らないが、往年の名優が青年役で映画復帰なんて話もニュースで流れて来ていた。無茶苦茶演技の上手い若人とか後続の俳優を潰すのでは?と物議も出ていてが、時代にあった演技と言うものもあるので大丈夫だろうと言う見解が出ていたな。


 実際若返った俳優は顔が昔のイケメン風なので人気ぼちぼち、演技も演技していると言う風なので、今求められる自然な演技とは少し違うらしい。まぁ、それでもファンとしては見るしかないのだが・・・。


「出る出ないは本当に自由でいいけど、どうする?特に話さなくてもいいし、仮に話をするなら娘として紹介して挨拶するくらいだけど。」


「・・・、それって私も出ていいの?」


「えっ!?莉菜が?」


「そう。娘が娘として出るなら妻は妻として出る。偽物の私が配信されただけで本物が出ないのは違うでしょう?それに、私が『妻です〜〜!』って言えば貴方が言い寄られるのも収まるんじゃないかしら?私も貴方を信じてるけどヤキモチだって焼くのよ?」


 そう話す妻の手はソフィアの手に添えられている。多分、どちらの決断をしたとしても大丈夫と伝えているのだろう。俺自身中々酷な話をしているのは分かる。でも、誰かを守ろうとする時、その差し伸べた手が必ず開いているとは限らない。開いた手では抱きしめる事ができる、握り込んだ手なら掴み取ることが出来る。だから、今俺の手はソフィアの手を握り込もうとしている。


「・・・、リナ・・・、お母さんと出ます。」


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[気になる点] ~「悪いお人だ。では、次の連絡は飛ぶ前にお願いします。焼き鳥とビールが冷める前にね。」 ホットビールなら冷めるのも納得ですが多分違うので、ビールを削るのが無難でしょうか。
[一言] 中々に不憫だよな息子さん何せこれまで話にもででこなかった白人美少女妹が突如出現するんだから絶対に学校で騒ぎになるよな 学校に中位のスパイ居るしもう一波乱あるかな?
[一言] >やっぱりいらない子だったですか ロシアからすれば最終的にそうなったけど捨てられたモノを拾って治した人が居るのだし あとはフェリエットと一緒に呑気に那由多にじゃれついてればオッケーだ しかし…
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