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街中ダンジョン  作者: フィノ


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392話 選択肢

「その件はソフィアさんに選択を委ねる案件であると?」


「そうなります。人を助けた、なら何処までがその助けになるのか?復讐を誓うなら犯罪行為に手を染めない限り助けるのは吝かではない。それだけの事をされてますからね。平穏を求めるなら居場所を作る。松田さんが私に預かれと暗に示し、私はそれを了承した。残りはどういった関係性なのか?焦点はそこになる。」


 妻が言う様にソフィアと話した限りでは結論は出なかった。しかし、松田と話してどうにかこうにか落とし所が見えて来た。その落とし所を最後に決めるのはソフィアだ。預かる誰かの娘なのか、それとも亡命者として身柄を確保していると公にするのかで本人のその後が変わる。


 妻としては養子と言う案も頭にありそうだが、それはまだ何も話していない。あくまでここで話せるのは、生まれながらの日本国籍所有者となり自身の苗字も捨てて全てを心に封じてあった事に目を瞑るのか、それとも刃を研ぎ復讐のその時を待つのかの選択。どちらをとっても2度と後戻りは出来ないだろう。


 流石にそれをされれば、助けるの範囲を逸脱し過ぎていて見切りをつけるしかない。亡命者なら復讐の根拠を取り、日本国籍を取るならドタバタするが一応の平穏を得られる。何もなければ80年の人生だ。それが長いのか短いのか俺には判断出来ないが、どう生きるのかと言う目的くらいは本人が持たないといけないだろう。


「最初の話からすれば復讐を捨てるのでは?」


「それでもです。その話をした時はなんの確証もなくお互いにどうしたいと話すだけでした。しかし、今は明確にどうなれると言う話が出来る。言ってしまえば夢と現実の区別が明確につく瞬間なんですよ。」


 人は夢を見るがそれを現実に出来るとは限らない。願っても上手くいかない事もあれば、無理だとどこかで諦める瞬間もある。例えば俺ならボール投げだろうか?自衛隊にいた頃に体力検定の項目としてボール投げがあった。知らない人からすればそんな事と思うかもしれないが、これが特定の距離まで飛ばないとクビである。元々球技は苦手だったがその壁にぶち当たり野球部出身の同期に仕事終わりにフォームを見てもらったり、実際にボールを投げたりとやれる事はやってみたが飛ばない。別に肩が弱いとかフォームがおかしいとか握力がないわけでもないが、しかし飛ばない。その繰り返しでボールは俺にとって飛ばない物になったし、自衛隊を辞めるきっかけにもなった。


 他人にとってはそんな事と笑うかもしれないが、やっている本人は大真面目でそれに取り組んでいるし、その努力が必ず実るとも限らない。しかし、ソフィアの願いは今、叶おうとしている。別に復讐を諦めても覚えている事実は変わらない。だが、何らかのきっかけでそれが出来ないと言う免罪符があるなら、俺個人としては逃げ出すのもまた1つの賢い選択だと思う。


 逃げるな立ち向かえ。そう言うのは簡単だが、本当にそれは勇気なのか?傷付き倒れる程に立ち向かった先に本当に納得出来るだけの結果はあるのか?やらなければ分からない。でも、やってからでは取り返しがつかない事も確かにある。なにせあのまま諦めずに自衛隊で粘っていたら妻とは出会えなかったのだから・・・。


「書類は用意しておきましょう。名前の欄は空欄としますが、日本国籍を保有すると言うなら本人に苗字を考えさせておいて下さい。それがケジメと言うものです。」


「分かりました。その話は確かにソフィアに伝えましょう。それと、配信するタイミングは?」


「そちらに任せます。我々はそちらの現状が把握出来ていませんからね。ただ、配信前には一報してくださいよ?久々に腹を抱えて大笑いできるタイミングなんですから、冒頭からリアルタイムでコーラとポップコーンを楽しみながら拝見したいですね。」


「分かりました。後どれくらいかかるか分かりませんが、配信前には連絡しましょう。」


 電話を切り一服。さてと、吉報でいいかな?話をソフィアに伝えるか。松田の言うようにケジメとして苗字を決めるにしても時間は多い方がいいだろう。


「戻ったよ〜。」


「リナはどう考えますか?私はクロエと一緒いたいです。」


「う〜ん・・・、黒江ってそもそも苗字なのよね。私も黒江 莉菜ってフルネームだし。それに、一緒にいたいって言っても色々なカタチあるわよ?職場の同僚だったり友達だったり、家族だったり恋人だったりね。ソフィアちゃんの一緒にいるってどう言う気持ちなの?」


「一緒にいるカタチ?」


「そう。私と司は夫婦だし、テレビ電話で見た人達も色々な関係性があるの。漠然と一緒にいるって言われても多分、誰でも戸惑うと思うわよ?」


 関係性か。確かに何をどう望むのだろう?一番になれないとは言ったし、優先するものも伝えた。友人とするなら1回りと言わず2回りくらい離れているので話が合うかどうか。順当に行けば・・・、なんだろう?


「決まってます、子供です。私はクロエに新しく作られました。だから子供以外関係性がないです。」


 入ったら何やら重要な事を話していた様だが、ソフィアは俺達(?)の子供になりたいらしい。つまりは養子と言う事だろうか?まぁ、松田と話した限りでは苗字を決めろと言う話もあるので悩まないでいいのだろうか?


 ただ、ガチの実子でない以上、本当の関係性と言えばどうなるのだろう?やはり対等な友人とかがいいのかな?或いはルームシェアした人とか?


「クロエもどってきた!」


「とりあえず話が固まった。松田さんと話してソフィアをウチで預かるのは大丈夫。ただ、増田さんの方から今と昔の顔が結びつくかの報告を待ってからの話になる。それまでにソフィア自身に決めてもらう事がある。」


「決める事?」


「ソフィア自身の日本での立場。亡命者なのか日本生まれ日本育ちの日本国籍保有者なのか。それによって出来る事と出来ない事が明確に分かれる。」


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― 新着の感想 ―
[一言] ボール投げは体力というか技術だしねぇ 投槍で戦うわけでもなかろうに ジャベリンは撃つものだし、自衛隊には無いけど 他におなじ境遇の子が居れば復讐に走る可能性もあるだろうけどね
[一言] 人生の岐路、本人が幸せになれる選択をして欲しいですね
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