387話 そろそろ飛ぶかな? 挿絵あり
魔女達と扇動が下手と言う話をしてリーダーに話を聞いた後、兵士達は帰って行き武術家の男も走り去った。魔女がやった事を思えば中層に向かったんだろう。帰って来なくていいが、行ったら俺の所へ帰ってくるのだろうか?それよりもスパイが使い物になるかどうか・・・。一応ここでパワードスーツ着て来るからにはそこそこ地位がある者だと思うがどうだろう?
相手の全容が分かれば扱いやすくもなるが、当面の間は放置だな。必要時以外はバイトも接触させないし、それまではひたすら情報を集めてもらおう。流石に事を起こすにしても上からの指示や連絡を取っているだろう。
そんな接触した者が帰ってくるなり奇妙な行動を取れば何かされたと疑うだろう。まぁ、バレて幽閉されても構わないし情報を持ってきてくれればくらいの試みだ。一応、どこの国が徒党を組んでいるかの情報は手に入ったし、ラボそのものははっきりと見つけられてないらしい。
らしいと言うのは何となく人工建造物がある所とイメージして馬を走らせたが、個人がキャンプしている所だったり一度は行ってみたいギルティタウンだったりと当たりが引けず、虱潰しで探す中でどうにかこうにかここまでたどり着いたが、今度はすぐに見えなくなったとか。
隠蔽は成功してたんだな。ついでに言えば回復薬のある所では駄目だったらしい。他の国も研究所は作っているみたいだし、個人単位でもセーフスペースで研究する人は多い。ニアピンと言えば米国工場付近にも行ったらしいが米兵がウロウロする所に探りを入れるのは控えたらしい。
捜索そのものに相当人数を注ぎ込んだと言う話だが、かなりの迷子がいるんじゃないかな?時間制で外に出ていいらしいが、真面目に探す人間とサボる人間とどちらが多いのやら・・・。ただ、サボろうとも人は多いのでこうしてどうにかこうにかここが見つかったのだろう。結果として見るなら激突する前にどうにか回避出来たとか?手土産はいらないスパイだが、サボタージュしろと言ったので何かと理由をつけてサボるだろう。知らんけど。
ただ、ラボと駐屯地を浮かせる計画はさっさと進めるかな?妻は帰ると言ったがもう少しここに残ってもらうか、息子共々ギルドに泊まるか望田と共に行動してもらうか迷う。流石に本当に人質には取らないと思うが、行動原理を考えると自分達は正しい事をしていると言う認識で動いてそうだし、それに協力しない俺の方が悪者とされてるのかも・・・。
自力でどうにかして欲しいし、素直に協力しないかと話を持ってくればまだ、考える余地もあるのだろうがなんとも。差し当たってはソフィアの件の全体把握もしたいし、まだこんなくだらない実験を進めていないかも気になる。
実際戦う中で治癒師が瀕死になって、破れかぶれてモンスターと結合なんて話もありそうだしなぁ・・・。まぁ、それは自身で選んだ結果なのでどうにかしてもらおう。自分で結合したなら自分で解除できるだろうし、妻はソフィアとモンスターを分離した。誰でも出来るわけではないらしいが、元々無理矢理だったので割とスムーズに出来たとか。
医療現場で傷口からゴミを分離したりとしていたので、そのイメージも強いんだろう。他の医者兼治癒師も結合と分離は結構得意らしいし。どの道俺の身体には効果がないので使われる機会はないかな?それとも、心から受け入れたら1つに結合出来るのだろうか?まぁ、妻といたす時は結合とか合体ではなく、今は接触になるのだが・・・。
「一旦帰るか。浦城もこちらを見ながらやきもきしてるだろうし。」
なんだかんだで時間を食ったが腹立たしさも落ち着いたので帰る。やらかした事は忘れんからな?ただ、それは今返すのではなく後からでいい。寧ろ、スパイは全部増田に引き渡してしまおうか?裏切らないスパイって欲しがる人多そうだしぃ。誤情報垂れ流しスピーカーなら俺よりもそう言った人達の方が扱い上手そうだしぃ。
飛び立って適当に飛び回り帰還、浦城はやはり俺の方を見ていたのか人質を見た時に狙撃しようか迷ったらしい。俺が手を出せばその時点で他の兵士達と急行する予定だったらしいが火蓋は切って落とされなかったので一旦解散したと言う。あのまま感情で動いていたらゲート内戦争勃発だったか・・・。
「引き続き警戒でいいですよね?なんか和解して帰ったみたいですけど。」
「ええ、中国はいいとしてやはりロシアも関わってるみたですからね。どう動くかは知りませんし、どちらが率先して動いてるかも知りませんけど、関わり合いたくはないかな?」
「話し合いで解決出来ればいいんですけどね〜。そもそも何でまたこんなにバタバタしだしたんだろう?」
「あ〜、どうせ政治の問題でしょう。政治のね。」
適当にお茶を濁して別れるが、結局首謀者と言うか主導者の目標はなんだったのだろう?不老も不死も若返りも出来る中で好き好んでモンスターと一つになる理由・・・。モンスターと結合して永遠を欲しがる理由?こ、恋したとか?フランケンシュタインの花嫁に自身がなりたかった?仕事があると言って美少女をゲートに連れていき・・・、ソフィア以外も多数いるなら好みを探りたかった?
流石にないな。仮に好みが分かっても容姿は別・・・、整形?モンスターが好きな容姿と言うか、好みの容姿か分かればそれだけお近づきになれる?いかん、バタバタしすぎて変なこと考えてる。増田は道楽と言ったので試せる方法を試したに過ぎないのだろう。やはり胸糞悪い。
頭をリセットする為にタバコを吸い、妻とソフィアの所に戻ろうかと思えば地上で斎藤が手を振っていた。石英ガラス案で事を進める手はずだが何かあったかな?
「とうしました?」
「電力プラントは急ごしらえですがリアクターを使ったりして大丈夫なんです。肝心の燃料であるクリスタルもらえませんか?浮かせるにしても飛行させるにしても人やロボテックスーツよりも遥に重量があるんで、予備も含めて量か高純度の物が必要なんですが。」
「それなら中層の物含めて渡しましょう。普段は指輪にしまっておいてくださいね?量は・・・、どれくらい必要ですか?流石に数十億と言われると手待ちが怪しくなりますが。」
モンスターを見かけたらぶち殺すのはスィーパーの義務です。そして、倒したモンスターからクリスタルを回収するのもまた義務です。コツコツ拾い集めたクリスタル。スタンピードだろうと講習会だろうと、中層だろうと拾える時は拾いまくりましたとも!そもそも指輪って本来は運搬道具だから、クリスタルに向けて回収と思えばどんどん回収出来る。
これがなかったらモンスター殺しながらアイテム回収なんて言う更なる地獄が始まっていたかも。実際モンスターを根絶やら絶滅やら根絶やしに出来るならいいのだろうが、蜂の巣を突付いた様に彼奴等どんどんやってくるし・・・。
「いえ、億はいりません。上層の物でも1つで一般的な家庭の電力が何ヶ月か賄えるんですよ?予備含めて5千もあれば十分です。浦城さんの飛行ユニットなんて稼働後にクリスタル変えてませんからね。」
「物凄くコスパいいのは分かりましたけど、クリスタルって使い終わったらどうなるんです?」
素朴な疑問だが真っ黒いクリスタルを直接使わないのでどうなるか知らない。大きかったり高純度と言うだけあって光ごと吸収する様に更に黒さが増したりするクリスタル。叩き割ろうとしても危ないんだよな・・・。圧力かけたり高速回転させたりすると発電したり発熱するし。
「クリスタルの最後ですか?観測例は少ないですが消失が妥当ですね。こう・・・、色が抜けて輪郭を保てなくなりそのまま消えます。」
「なら、どこかが透明になりだしたら交換とかですかね?」
「いえ、変化は急激ですよ。色が抜けたと思ったらすぐに消えます。ゲートの還元変換に耐えうるだけのエネルギー量はあるのでしょうけど、それでも時が経てば消えますね。」
「無作為にモンスターが進化しない理由はそれですか。ずっと考えてたんですよね、クリスタルが残り続けるならハイエナがいてもおかしくないんじゃないかって。出来る場合もあれば出来ない場合もあるんですね。」
米国ではクリスタル見つけたモンスターは食ってたしな。ゲート内はサバンナだけど、外は使わない限りクリスタルが残り続けるのでモンスターからすれば進化し放題。バイトはゲート内よりも外の方が興味の対象は多いと言っていたので、討伐されなかったモンスターは気の赴くままに人を殺したり街を壊しながら次のスタンピードを待つのかも。やはりモンスターは倒すに限る。
・・・、もしかしてモンスターとソフィアが結合させられたのって、クリスタルを見たから?ソフィアと結合してもクリスタルはクリスタルとして残った。なら、その前段階としてクリスタルと人を結合したら?あの状況になっても残ったクリスタルは人と混ざらずクリスタルがうめこまれただけの人になる。それは浦城が武器と結合しても混じり合わなかった様に。
だからその先・・・、意思のありそうなモンスターと意思のある人を結び付ければ新たな寿命として使えると考えた?或いは・・・。蘇生薬を取り出して見る。黒い中で時折光るそれをクリスタルを溶かした液体だと考えたなら、飲むよりも身体と結合させた方がより効率的にエネルギーが摂取出来る?
不死には成りたいが薬は見つからず、なら代替え案としてクリスタルをモンスターの生命力と見立て、それを摂取するか取り込む事で高い寿命の薬を買わなくとも延命出来ると考えた行動なのか?その実験過程で誕生したのが結合体であるソフィア?
推測の域はでないし、本当にそう言う理論でモノを考えたのかは分からない。ただ、事実としてソフィアは結合させられ目標は永遠だった。
「モンスターの事は分からないですね。調査するにしてもするだけの実力も必要ですし、何より懐いて無害になる訳でもないですから。人は興味を持てば死ぬかもしれないと知っていても、知りたいと研究しますけどモンスターに関しては研究したいなら残骸で済みますからね。」
「確かにそうですね。わざわざ動いているモンスターを研究する必要性はない。」
「そう言えば地面となる部分の厚さは80mとしました。一応総重量と耐久値を出した上でその厚さですが、固定処理や刻印なんかも刻んであるのでかなりの強度ですね。底面の鏡化も貼り付ける方式から薬品を流し込んでの全面鏡化を実現!接合自体も石英ガラスの支柱を使っているので相当な強度でしょう。」
「おぉ〜・・・、それってどこまで出来てるんてすか?」
「掘る所・・・、正確には底面と層のみです。人が入って作業するには中々骨が折れますからね・・・。ただ、柱と鏡は完成してるんで後は2m間隔の層を作れば完了です。」
「わざわざ層っていります?間隔開けるよりもみっちり詰めた方が強度自体はありそうな・・・。」
「そこには耐震材を流し込んで防弾ガラス化させます。流し込むのはベークライトで大型の銃弾が飛んできても内部で固まります。まぁ、その他も色々と設計してますけど聞きます?」
「いえ、長くなりそうなんで後から聞かましょう。ガンナーの弾丸、これは止められますか?」
「・・・、かなり厳しいです。本人のイメージが貫通弾とでもされれば刻印があるので一撃とはいきません。ただ、マシンガンの様に連射されると厳しいですね。何せ硬いと言ってもガラスですから。」
「その辺りは追々問題点を洗い出しましょうか。まぁ、最悪中層の木を植樹してみます?あれって地下茎で広がって勝手に再生するしモンスターのビームにも一定の耐久性がありますし。」
「それは考えましたけど、先ずは浮かせてからですね。流石にセーフスペースをジャングルにする訳にもいきませんから。」
ラピュタは本当にあったんだ!とはならないらしい。あの木自体かなり無作為に生えているので『それいいね!採用!』と、言われても困る。正確な栽培方法?が分かるまでは触らない方が良い。ただ、鉢植えが同じ木だとするなら隔離すればいいのだろうか?鉢植えはそれより大きくなれないが、引っこ抜いて地面に植えれば大きくなる。
それと同じ様に浮かせた土地で隔離して使うなら大丈夫とか?流石に憶測で大惨事を引き起こしたくないので、そっと胸の内にしまっておこう。斎藤と話しラボに入り妻と会う。テレビ電話をしていたので相手を見ると息子で、いつ帰ろうかと話し合っていたとか。
ゴタゴタが続いて時計をみないと朝夕も分からないが、ソフィアの件が始まって既に5日ほど経過していた!飯とか大丈夫かと聞いたら、千尋ちゃんが作ったり買って食ったりしているらしい。部活も引退して最近は学校が終わると就活がてらにギルドで鍛冶をしたり、スィーパーとしてモンスターと戦っている。まぁ、戦う方は殆ど無くもっぱらハンマーを振り回している方が多いそうだ。
「那由多、お母さんは明日には帰るからね。思い残しのない生活を千尋ちゃんとするのよ?」
「思い残しのない生活ってなんだよ?あっ!それは俺のオカズだ!」
「私のをやるから落ち着け。魚はもう数尾焼いてる。」
「今日は働いてない那由多は食う資格がないなぁ〜。夜は外でポーちゃん達と夕涼みしてくるなぁ〜。明日くらいまででいいかなぁ〜。」
「那由多君、この家の防音は完璧です。私も耳栓して寝ますね。」
「フェリエットも望田さんもやめてくれ・・・。あんまり言うと結城の所へ行くぞ?」
「それはそれで喜びそうな人に心当たりがありますね。」
「なんだかんだで結城の顔は悪くないからな・・・。クラスでも昔からあの2人は〜って噂はあったが、私は隠れ蓑ではないよな!?」
「あのな千尋、俺と結城は幼馴染Ok?あと、そんな噂してるやつは・・・、女子?」
「黙秘する。」
「好きな子は好きですからね、そんな話。小田さんとか清水さんも好きだったなぁ〜、かなり濃かったけど・・・。」
「非効率だなぁ〜、子供が産まれないなぁ〜。でも、クロエがするなら面白いのかなぁ〜?」
「私と莉菜は夫婦だからいいの!フェリエットは夜あんまり出歩くなよ?なにがあるか分からん。」
「毎日クロエの布団で寝てるなぁ〜。いい子だから帰ったらごちそうをよこすなぁ〜。」
「それは帰ったらな。」
「それはそうとツカサは後どれくらいで帰ってこれそうです?」
「う〜ん・・・、どれくらいと言えばいいのか・・・。」
中国はいいとして姿を見せないロシアがなぁ・・・。ラボを飛ばす目処は立った。望田にも誤情報を流してもらったからおかしな噂は多分囁かれている。問題は最後のソフィアが外に出たら何処に出るかだな。奏江に調べてもらっているのでそろそろ報告も来そうだが、こちらから聞いてみてもいいかもしれない。
ゲートから外に出して日本と言う国に匿えば、一旦は今回の件も沈静化するかな?ラボや駐屯地は映さないにしても、浮遊大陸としての映像を流せばそちらに目は行くだろうし、宇宙開発競争の中で既にこう言った技術があると分かれば無視は出来ない。
技術提供するかは別として外交カードとしてはかなり使えそうだし、松田が新しく据えるであろう外務大臣もやり手になるだろう。なにせ今は海外に強気に出られる人が立った方が舐められずに済む。下手したら加納とか松田の傀儡として使われるかも。
2世議員ではないにせよ元々外務省所属で海外を飛び回り、本人も中位としての実力もある。嫌な話だが外務省大臣から話を持ってこられるよりも、加納から話を持ってこられる方が断りづらいんだよな・・・。
「誰と話してるです?」
「そこは誰と話してるんですか?な。アニメでそんな口調のキャラでもいた?」
「獣人と人間がゲームしてたです。当たると服が脱げるやつです。」
「あれか、話してるのは息子や家族に友人達だな。」
ソフィアが画面に映り息子達も誰だろう互いに眺め合う。さてなんと言い繕おうかな?まともに保護対象やら助けたロシア人と言うとややこしくなるし、最悪拉致された時に情報吐けと言われかねない。
「好きになった人はハーレムクイーンだったです・・・。私も入れる?」
「妙な事を口走らない。私はハーレムなんて作ってない。」
ソフィアの認識が何かおかしい。




