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街中ダンジョン  作者: フィノ


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384話 どうにかなるものだな 挿絵あり

 軍服の人間が雁首揃えて話しているのを視る限り引く気はなさそうだ。個人的な話をするならどこかで撤退やらの話をしていてほしいが、生憎音声は聞こえないので表情から考えるしかない。武術家はその点やる気満々に見える。さてはてどれくらいの人間を連れてきてるのやら・・・。


 希望的観測で考えるなら小数精鋭とか?表立って行動を起こすよりもソフィア一人を狙うなら暗殺を考えた方が効率は良い。しかし、こいつ等もソフィアの現状を分かっていないよな?ラボにもスパイがいて情報を流すか、或いは国に帰らせた研究者がスパイと言う可能性もあるが、それならもう少し派手に行動してもいいし先に魔法で隠している現常を打開したいと思う。


 しかし、現状打開よりも先にスパイは現れた。スパイが1人とは限らないがそれなら何かしらのアクションは起こすだろうし、ラボにしろ駐屯地にしろネットを使えばそこから使用者がバレる。


 何せ電波塔は俺達が建てて比較的新しい。場所の特性上政府も気を使ってここの電波塔を経由するデータには監視の目があるという。周波数の違う電波ならその時点で違法電波とバレるだろうし、固定処理して勝手にアンテナを立てようものなら流石に誰かにバレるだろう。


 いや、かなり近くにアジトがあれば使える?・・・、無理だな。仮に携帯無線を使ったとしても使用距離は数キロ。遮蔽物がなくブランチしたとしても流石に見落としはないと思うが、ここは薄暗いので最悪黒く塗れば目視は厳しくなるのか?アンテナって細い釣り竿みたいなものがあれば大丈夫だし。


「もしもし大井さんも?」


「おぉ、クロエさんか。どうした?中の事は中野に任せたがなにか内密な話か?」


「内密と言えば内密ですね。ラボ周辺の通信状況ってどうなってるかわかります?電波塔自体はかなり建てたでしょう?」


「通信状況?俺が聞いてる限りだと元々そこは外と連絡が取れた。だからあくまで36階層との中継基地としての意味合いが強い。増強された新規格アンテナ使ってやってっからよく飛ぶらしいが、上がったデータは電話番会社じゃなくてR・U・Rサーバーに行くんだとよ。」


「成る程。大会の折に通信網を急ピッチで10Gとかに強化した理由はその辺りでしょうね。通信データの精査もそこで?」


「精査は黒岩さんやら橘が動いてる。うちはギルドと共同で対テロ訓練するって名目で人を出してるな。・・・、何があった?」


「プライベート・ライアン風味な事があってるだけですよ。では。」


 通信網乗っ取りは厳しいのかな?仮に佐沼の所にスパイがいたとしても橘まで行ってるなら逃げるしかないだろうし、破壊工作をしようにも奏江もいる。丁寧に穴は潰されつつあるようだが、これで諦めて帰らないかな?いくらゲート内の事と切り離して考えても腹の中には溜まっていく。


 簡単には爆発できないだろうが、爆破した時の威力は溜め込んだ分だけ凄まじく必ず尾を引くだろう。それなら先に交渉の席を作る?話し合いで解決できるのは初弾が撃たれる前まで。睨み合いならまだ引き返せるが、手を出せば後には引けなくなってしまう。


「先に出向いてお帰り願うかなぁ・・・。遺恨はあるけどまだ実質的な被害者はソフィアだけ。そのソフィアもまだ復讐とかにまでは至らないだろうし・・・。」


 精神世界で復讐と言ったが、まだそこに進む程自立もしてない様に思う。なら、穏便路線を取る事も考慮したいがあちらがどう考えているか・・・。煙を多少動かして会議室の外を見てみたいがどうしようかなぁ。薄めて動かせば見れない事もない?


「あっ!収納されたか。」


 多少煙を出して見回したかったが、収納されてしまっては仕方ない。拾えた情報は少なくとも軍人と武闘家が居る事。アジア系の人間しかいなかった事。武闘家は何やらやる気があった事か。戦力と言うモノも見たかったが生憎と会議室だけだったからな。次は音声も拾える様に何かイメージするか。


「次は飛行ユニットが足りるか・・・。足りなければどうしよう。」


 ユニットと言うからには装置もそうだか電力が足りない?いや、それは藤でどうにかなるし俺もどうにかできる。やはり現物の問題か。一旦斎藤にどれくらい足りないか聞いてみよう。静かになったラボを歩き外へ。指示を出している斎藤はすぐに見つかり駆け寄る。


「斎藤さーん、お疲れ様でーす。」


「お疲れ様です。どうしました?」


「飛行ユニットの個数の件で。何個くらい必要ですか?」


「計算上は後30は最低必要ですね。」


「フライボードでも代用できます?箱開けマラソンすれば何個かは出るかもしれませんが。」


「駄目です。大元は一緒でも飛行ユニットは人が使いやすい様に改造してます。一応物があれば改造出来ない事も無いですけど、接続部分を組み込んだり制御装置を取り付けたりしないと、浮かせた時にバランスが崩れて崩壊します。」


「そうですか・・・。仮に一枚板の上にラボと駐屯地を乗せる方式だとどうです?」


「う〜ん・・・、一応その案も考えています。現在穴を掘ってやっているのは装飾師による固定処理とユニット設置部分の目印付け。浮遊大陸と言う物を考えた時に地面の下が落下しないのはどういう原理なのか?創作なら地面やその大陸が乗る部分が大きな岩で且つ、その石そのものが浮く能力があるとします。私達がやろうとしている方式はこれに近いですね。地面に浮く能力を与え、その地面が崩壊しない様に飛行ユニットを多数設置し1枚の面として地面を作り上げる。問題点はその地面が崩壊しないかどうかです。数が足りなければ当然地面の脱落が起こってしまう。」


「なら、地面が崩壊しないほど硬ければいいんですか?」


「乱暴な話ですがそうなりますね。駐屯地とラボを乗せるプレートが例えば1mを超える鉄板等の強度が有るなら設置個数は減らせます。先に言いますが箱の素材では強度が足りませんよ?硬いのは硬いですがあれば溶かして使える様なものでもないですし。」


「・・・、斎藤さん。この地面って成分分かります?」


「地面の成分?基本はケイ素や石英等ですね。外とは違い微生物がいないので腐葉土に当たるものはありません。一説にはゲート内の食材に風味がないのは微生物の作用がないからではないかと言われています。」


「成る程・・・。と、言う事は石英ガラス作れますよね?」


 モース硬度7。硬さだけで言えば鋼鉄にも勝てるほど硬い反面ガラスなので割れやすい。ただ、それは薄く作るからであって分厚く作ればその限りではない。問題は剛性に乏しい事だろうか?変形のしやすさと言う面では鉄に負ける。ただ、硬いプレートを作るとするなら選択肢にはなるのでは?多少砕けてもバーナーで炙ればすぐに補修できるし、何より鉄よりも軽いという点は見逃せない。


 実際普通のガラスではなく石英ガラスなので強化ガラス化すれば耐久力は大丈夫だろう。ちょうど良い事に穴が空いているので、そこから層を作り緩衝材を詰め込めば即席で強化ガラスができる。これなら飛行ユニットの個数は減らせるし、下面を鏡張りにした時にガラスで保護できるからすぐに壊れる事もないかな?


「まさか石英ガラスを作る気ですか?流石にこの規模をガラス化させるにはかなりの火力が必要です。上にいる私達もバーベキューみたいに焼けてしまう。」


「ええ、火を使えばね。斎藤さん、アナタの職はなんですか?」


「私は鍛冶師・・・。成る程、確かに職の内容的には石英ガラスなんて簡単に作れますね。なら範囲を指定して構造と強度を算出して厚みを考慮して・・・。」


「間に緩衝材とか挟んで強化ガラスとか防弾ガラス仕様でお願いします。最下面は鏡張りです。」


「それなら飛行ユニットも挟み込みましょう。その方が破損確率は小さい。穴を掘ってもらっている所を更に横堀してもらって、圧縮率を考えると深さは倍でもいい。精製を考えると私もさっさと中に入って作業を!」


「作業はいいですけど崩落とか大丈夫ですか?」


「大丈夫です!最初に外枠から作りミルクレープの様に作って行きますから。あぁ!こうしちゃいられない高槻先生も呼ばないと!」


「飛行ユニット足ります?」


「ええ!地面が頑強なら点で支えると考えなくて良くなります。何よりいいのが下面をフラットに出来るので重量耐性も上がり、更に間に緩衝材を流し込めれば、上にある程度重量物を置いても問題ありません。」


 斎藤がウキウキしながらタブレットを操作しているが、重量とかを計算しているのかな?何にせよ個数が足りるなら大丈夫か。これが最大の問題でもあったし、最悪併設されてるとは言え駐屯地とラボを別々にした方がいいかとも思っていたが、どうにかなるなら浮かせてもらおう。こんな時でなければ外で浮かせてもらってさぞいい眺めが見れたんだろうがな・・・。


  挿絵(By みてみん)


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[一言] フロートテンプルも作れるなぁ とりあえず淡路島を浮かせるか 頑張れば浮遊国家も作れるな
[一言] ラピュタの城作りたい人出てきそう
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