352話 結婚式 挿絵あり
「今回は1泊2日か。上司のご祝儀って相場いくらだろう?あんまり多いと向こうの親族に気を使わせるし、かと言って少ないと外聞も悪いしなぁ・・・。」
現在東京行きの飛行機に乗りフライト中。なんでこんな話をしているかと言えば赤峰と井口の結婚式に出席する為。本部長と副長が揃って出席していいのか?政府側とも議論したが現時点でスタンピードの兆候もなく、仕事としても滞りなく順調なのでOKが出た。
この先誰かが結婚したり出産したりと、未婚者が多い本部長達はそんな人生のイベントを控えている可能性があるので、有事でもなければ最長3日までは2人揃って不在でも可にしようかと言う話もある。
本来なら任せられる人間がいればいいのだが中々難しく、うちに限って言えば、今回は法律課の神近と神志那が2人で日常業務に当たってくれている。ただ、任せる前に軽く仕事内容と書類量を見せたら絶望していたが・・・。
「10万くらいでいいんじゃないですかね?私は一応副長なんでツカサの半分くらいにしますけど。」
「いっその事ズタ袋に金貨詰めるだけ詰めて渡すとか?こう・・・、テーブルの上にドンっ!と。」
「それなら掴み取りの方が面白いと思いますよ?少なくともマイナスにはならないでしょうし、」
ジューンブライド。6月の花嫁はヨーロッパから広まり出産なんかを司る女神ジュノから来ている。日本では梅雨時期だが、あちらは心地よい気候で農業なんかも落ち着いた時期で良いとされたが、日本だと梅雨と田植え後はギリギリ夏野菜を植えれば間に合うので微妙にミスマッチしている。
まぁ、今どきの農家はハイテク化も進み、野菜もその時期でなくてもハウス栽培なんか出来るので、本当に旬を味合うと言う機会は減っている。それに魚なんかも天然と養殖どちらが美味いかと聞かれたら多分養殖だろう。
餌や肥料までは管理して美味くなる様努力して作った結晶と、たらふく餌が食えたかも怪しい天然物では根本的な質が違う。ただ、それでも天然物を求めるのはやはり希少性からだろうか?ゲート内の食材は進んで食おうとは思わないが、それでもそこそこいい値段で取引されているし、奥のモノになればなるほど価格は上がる。
この前取ってきた樹の実は現時点で言えば軽く金貨100枚になるとか。神志那がそれくらいになると予想を言っていたが、それだけ金を積む美食家が世にどれほどいるのだろうか?ただ、馬なんかは万能調味料路線も確立されつつあるので、料理番組でも『ここで馬味調味料を少々』なんて言葉が聞ける。
語感的に馬味調味料もうま味調味料も変わらないのでいいのかな?いつの間にかすり替わっていても精々味が良くなった程度にしかわからないし。
「金貨掴み取りって既に余興なんじゃ・・・。流石に成金みたいだからしないかなぁ。あぁ、あれでいいや。ピトー金貨10枚なら面目も立つでしょう。」
「それサラッと言ってますけどかなりの額ですよ?」
「元がただだからねぇ。そのうち職員用の慶弔関係書類もまとめるかな?毎回いくら包む?って話をするのも面倒だし、邪魔だろうけど今なら宝石で作った椅子とかも贈れるよ。」
「宝石関係の価格はガクッと落ちましたからね・・・。今だと露店で高品質ダイヤも買えますし。」
「真っ白いキューブが出て何かと思ったら真珠って言うのも中々笑い話だったけどね。ほとんどの成分がカルシウムだから鉱石枠なのかな?まぁ、今回のネックレスもイヤリングも息子お手製だけど。」
「那由多君いい腕してましたね。真球で玉揃えるって言って型抜きしたみたいに揃えちゃいましたから。」
箱から出た真珠キューブは息子に渡してイヤリングとネックレスにしてもらった。男ならスーツ1つです済むのだが、女性は何かと入り用だ。望田は明日の朝から髪をセットしてもらうらしいが俺はパス。どんなに固めてもすぐにストレートに戻るし、ピンなんかもスルスル落ちてくる。一応持って行けと妻から髪飾りは借りたけどどうするかなぁ・・・。
「しかし、ここでも注目されてますね。サングラスって意味あります?」
「一応あるんじゃない?さっきからやたらと食事と飲み物進められるけどさ。」
流石に花嫁より目立つ事は避けたいが仮面付けて結婚式出るのもなぁ〜。だいぶ落ち着いたが、魔性の女やら惹きつけ者やらを自覚して使ったので美しさには磨きがかかっているらしい。鏡を見ても分からないが、周りがそう言うならそうなのだろう。
顔を崩してみたら印象変わるかなと顔をムニムニしながら息子やら妻に見せたが、そこまで代わり映えはしないらしい。この身体と長く付き合うからそろそろ注目される事は諦めるかな・・・。見られるだけでなにかされる訳でもないし、逆に見られているからこそ不用意な事は出来ないと言う戒めにもなる。
そんな話をしながら飛行機を降りて、ねだられたサインを適当に返して握手なんかもしながらタクシーに乗ってホテルへ。式場は帝国ホテルと聞いているので後は遅れない様に行くだけ。荷解きも指輪がある関係上必要ないし、今日はこの後まるっとオフとなる。
長旅という訳でもないが久々に仕事から開放されて昼からゴロゴロ出来るが、望田は増田に呼ばれていると部屋を出ていった。望田の方は今回2泊3日で休みを取っているので帰りは別々となるが、久々に東京に来たので顔を出したい所もあれば会いたい人がいるのかもしれない。
俺にとって大分は地元でも望田にとってはそうではないし、馴染む馴染まないの話をするなら、ウチの離れで結構悠々自適に過ごしているので馴染んでいるとは思う。ただ、そこで出来た人間関係と過去からある人間関係を考えるならまだまだ東京の方が濃いだろう。
そんな事を考えながらテレビをBGM代わりにスマホをポチポチ。タブレットを買おうか悩むが、タブレットでしか出来ない事もないので悩む。操作性の問題だけ考えるならエクセルが使いづらいとかキーボードの方が打ち慣れてるとか?
前よりも指は細くなったのでタイプミスは格段に減ったが、それでも間違う時は間違うし、それも面倒になったら直接操作して書く方が早い。思った文章がそのまま出力されるって素敵!漢字の変換なんかもミスなく出来るのでかなり楽。ただ、相変わらず魔女は文章構成にうるさいが・・・。
大きく取り上げられている記事としては宇宙開発系はかなり多い。新型ロケットやら燃料やら、変わった所では無重力下における筋力低下軽減方法なんのもある。実際スィーパーはかなり宇宙適応性が高く宇宙線に対する耐性もあるが、筋力低下はどうなんだろう?
骨なんかも脆くなると聞くし、多少興味が湧いたので記事を読んでみるが、ロボテックスーツにECMマシン搭載して全身運動で解決って、解決出来てる?アプローチとしては間違っていないのだろうが、長期滞在する時は基本的に搭乗員は肉壁スーツ着た上で頭以外はロボテックスーツを脱がず生活。
排泄なんかの生理現象もスーツに任せて溜まれば容器交換で凌ぐか、或いは自己完結できるなら地上でその訓練をするのが望ましい。個人の食事や必需品は個人の指輪に携行させ、水なんかは圧縮装置で圧縮して液体として持ち込んでもいいし、更に必要なら圧縮水素と酸素を持ち込んで合成する・・・。
圧縮出来ても封入技術がまだ未熟だからこういう路線か。ただ、飛行ユニットがあるから筋力低下は問題視しないですむかな?提唱元は韓国で枠組み的に中国側だから飛行ユニットの件は技術提供されてないのかも。月面基地作成プロジェクト待った無しで構想をねっているのだろうが、あちらでは宇宙エレベーターの作成はしないのだろうか?
国土の広さ的に定点で上げるよりも、マスドライバー作った方が早いとか?宇宙エレベーターの問題点としてはやはり地震がトップに来るらしい。時点で台風やらの風で最後に津波。地震があった際ケーブルパージして収まったら再接続と言う流れになると聞いたが、地上の固定具に深刻なダメージを受けると復旧には時間が掛かるし、その間は宇宙ステーション生活となる。
代わりにマスドライバーは発射方式にもよるが、スペースシャトルの様に垂直上昇ではなく滑走路方式なら、滑走路の整備が済めはすぐに新しいシャトルの発射再開も出来る。ただ、シャトル打ち上げと言うなら燃料はかかるし、当然打ち上げ事故のリスクは出てくる。チャレンジャー号ではないが爆散したら多分助からない。
宇宙エレベーターの利点は途中で停止しても自力で脱出出来る事。ケーブルが破損してもエレベーター自体が浮くし、乗った人がフライユニットを使えればそのまま運べる。あぁ、添乗員と行っていたがライフセイバー的な役割もあるのか。
後は快適ゲート内生活なんて言う雑誌記事に傾く企業と再生計画なんていう経済記事。ゲート内生活はいいとして、傾く企業はなかなか面白い。疎開以降スィーパーが増えて職に就かない人間の方が総合的に少なくなった。そこで始まったのがブラック企業や中抜する企業に対してのストライキ。
膿出しの様に炙り出されたブラック企業は人がどんどんいなくなり傾いたし、職場環境が悪い所は大手でも人員不足が叫ばれている。そんな中で出た再生計画は雇用方式の変更。まぁ、変更と言っても企業勤め、スィーパーとの兼務、非正規として分け企業勤めの人間が幹部兼人事となりスィーパーと兼務の人間を班長として非正規を大量に雇うと言う方式。
スィーパーに成ろうとも一定数ゲートに入りたくない人間はいるので、その人をそのまま幹部に据えて育成し仕事そのものを回そうという方式らしい。ある意味幹部と言いつつスカウトマンだな。適材適所を見抜きどの程度人を集めどんなスィーパーが必要なのか?
計画立案を行いトップダウンで仕事を流し、アフター5で仕事終了。残業なんかはあるらしいが、それでもスィーパーとして仕事をするなら前よりもずっと早い。そこに獣人の雇用もお試しでいいからと政府が打診しているらしく、早くも人の生活の中に獣人と言う戦力が組み込まれつつある。
実際フェリエットのウエイトレスとしての仕事は思いの外ちゃんと出来ていて、飯につられてやっている感はあるものの覚えが悪くないのでそこそこ人気を集めている。そこで犬人もウエイトレスにと思ったらフェリエットの後をついて歩いたり、誰かと一緒に仕事をしたがる傾向が強かった。
なので厨房と法律課に回したら適正があったのか結構いい評価をもらっている。まぁ、法律系は内容がまだ難しいのかお茶出しや掃除、後は本を読ませたり説明したりと先は長いようだが、それでも思慮深い性格の犬が犬人に成ったタイプは物事を深く考えてくれるらしい。
そんな記事を見つつ配信サイトを巡っているとセス氏の最新動画でアメージングの見出しが。何があったかと見たらポスターと写真集抱えて大喜びをしていた。ただ、ついたコメントがお祝いと憎しみと怒りほとんどなのがなんとも。中には売ってくれとか中身を見せろというものもある。
「戻りました〜。いやぁ~疲れた。増田さんも『暇そうですから仕事を手伝いなさい。』って、私休暇中なんですけどねぇ!」
「お帰り〜、増田さんの用事って仕事を手伝わせる事だったの?必要なら抗議しとくけど?」
「いえ!身から出たサビもあるので綺麗さっぱり落としてまいりました。」
「何したか知らないけど程々にね?」
仕事手伝ってチャラなら別にそこまでなにか問題を起こした訳でもないだろう。増田の部下ではなくなったがそれでも頭の上がらない人とか?学校に行ったら教師には逆らいづらいとか言う感覚と一緒かな?
そんなことを思いつつ日も暮れてきたのでルームサービスか外で食べるかを話し、それなら久々に講習会メンバーと会って飯を食おうと東京の夜の街へ。久々に会った小田や清水は元気にしていたし、兵藤は彼女が出来たと自慢してきた。ただ、その彼女が米国人なのは政府としていいのだろうか?
まぁ、人の恋愛なので国が文句を言っても始まらないか。ジョージ辺りはこの話を聞けば大喜びして結婚式に顔を出すとか言いそうだけど、その辺りは考え方次第かな。
そんな話をしながら飲んだ翌日、結婚式当日となり朝から望田は髪をセットしたりメイクしたりと大忙しの様だ。その横で俺はキセルでプカリ。髪をセットするって言ってたけどまさかこの部屋でしてもらうとわね。ただ、スタイリストさん。そんなに俺をチラチラ見なくていいのよ?
「クロエはなにかしないんですか?結婚式ですよ結婚式!」
「前に作ったメイクマスクとかはめようか?こう・・・、パコッと。」
「いや・・・、外していいです。女性の身支度は時間かかるのにそこでストレスフリーとか羨ましい。」
「和装も考えたけど着付けが面倒だからね。見たでしょう?一度着たやつ。」
「見ました!似合ってました!」
「動かないでくださいね〜。髪が崩れたらまたやり直しですよ〜。」
「はい・・・。しかし、今日は白っぽいドレスなんですね。てっきりタキシードかスーツだと思ってました。」
「それでも良かったんだけど莉菜が『こんな時こそおしゃれしないとね!』って持って来たんだよ。パンツスーツで良かったんだけどスカートもドレスもなんかだんだん抵抗もなくなってきたし。」
何と言うかスカートにはスカートの良さがある。ミニは履く気がないがロングなら動き回っても中は見えないし、割と快適といえば快適なんだよなぁ〜。それとも似合う似合う言われすぎて感覚が麻痺していたのだろうか?まぁ、女性がスカートを履いて笑われる事はない。
「なら、今度からずっとスカートでいます?普段のチューブトップとホットパンツもそれはそれで捨てがたいですが。」
「割とどうでもいい。ずっと同じ服を着回してもいいし、選んでくれるならそれはそれで着てもいい。多分、私が選ぶよりも似合うモノ選んでるんだろうし。」
そんな話をしながら望田の髪はセットが終わり結婚式会場へ。何やら著名人やら政府関係者からの花でロビーが溢れている。それだけ繋がりを持ちたい人が多いと言う事だろう。落成式にも大量に花は届いていたし。
「昨日はラフでしたけど今日は華やかですね。」
「そう言う兵藤さんも黒のスーツが似合ってますよ。てっきり陸自のカエルスーツ着てくるかと思ってました。」
「アレは勘弁です。元々俺はアレに殆ど袖を通してないですけどね。」
陸自のスーツは上から下まで全身緑。誰が呼んだかカエルスーツは確かにこの場には浮く。自衛隊員として結婚式に呼ばれたらアレを着る事になるが、格好いいか悪いかで言えば格好悪いに1票。空自とかは格好いいのに陸軍カラーだからと緑にしなくてもいいのにねぇ・・・。
「お久しぶりです。僕は結婚式に出席するの初めてですけど何か注意する点ってあります?」
「卓君もスーツ似合ってるよ。結婚式の注意点と言えば飲みすぎないハメを外しすぎない、酒は飲んでも飲まれるなとか?余興とかもないし、楽しく食べて赤峰さんにたらふくビール飲ませるといい。」
「こらこら、元部下を潰そうとしない。」
「橘さんもお疲れ様です。結婚式と言ったら新郎にはビール攻めでしょうし。どうせ下にバケツ用意して一口飲んだらそこにいれるんですから。橘さんが結婚する時は・・・、電池とオイルがいいんですかね?」
「石油なら売ればお金になるので貰いましょう。と、そろそろ式が始まるみたいなのでいきましょう。しかし、この報道陣は何なんですかね?」
「昨日増田さんから言われましたけど、中位同士の結婚って事で海外も注目してるみたいなんですよ。その関係で取材させてくれと・・・。」
「赤峰さん達がいいならいいけど、親族としては落ち着かないような・・・。」
望田が教えてくれるが芸能人でもないし報道陣とか来たら本当に落ち着かないと思う。まぁ、それもロビーまでで式と披露宴会場までは来ないようだ。望田の横に座り開式を待ち、とうとうその時が来た。
「新郎新婦入場です。」
厳かに始まった式はしずしずと進む2人の足音だけが会場に響く。本来なら新婦の父親が共に入場するのだろうが、今回は赤峰が井口の横にいる。形式張った式がいい式とも限らないので、2人で決めたならそれでいいのだろう。
『裕子綺麗・・・。』そう言ったのは誰か?誰かは分からないが花嫁が綺麗なのは当然だろう。何せ主役は新郎新婦で井口はそのヒロインなのだ。ここでグダグダ抜かすヤツは最初から呼ばない方が良い。牧師から指輪の交換と誓いのキス。そして、最後に赤峰から誓いの言葉が始まる。
「お集まりの皆様、本日は遠路遥々遠い所からのご出席誠にありがとうございます。おっ、私はこうして裕子さんと夫婦となりこうして立派な式も上げる事が出来ました。裕子さんのお父さん、お母さん。私は今日の誓いを胸に夫婦揃ってどんな時であろうと前を向いて進む事をここに誓います!」
赤峰と井口が一礼し会場は拍手に包まれる。久々に結婚式に出席したがやはり誰かの幸せとはいいものだな。奥の方を見ると宮藤は柔らかい顔で拍手を送り、兵藤は早すぎるだろうが泣きながら手を叩いている。ウエルカムドリンクで涙腺もろくなったかな?
その後はブーケトスを行い花束を取り合うが、本部長女性陣の参加率は悪い。ブーケト取るのって結構夢なんじゃないかな?どの道俺は既婚者なので参加はしないけどさ。そして披露宴となりエマも合流。望田と話が弾んでいるようで笑い合っている。お色直しが終わり出てくる井口は赤いカクテルドレスで、赤峰は白のタキシード。ガタイがいい分様になっている。
「では、続きまして上司挨拶。クロエ=ファーストさんお願いします。」
名を呼ばれたので前に出る。本部長としてみんな同列なのだが、それでもと頼まれた。体の秘密の事も知っているし、俺の前で愛を誓った以上見届けてもらわないと困ると言うよく分からない理論だが、確かに結婚式に出席した以上忘れはしないかな、
「先ずは、赤峰さん井口さんご結婚おめでとうございます。私とお二人との出会いは去年の今頃。そして、お二人の出会いも今頃でしたね。ゲートと言うモノを通じての出会いはきつい思い出の方が多かったと思います。ですが、先程の誓にも会った様に1人で進めないなら2人で進めばいい。誓ったのなら成し遂げればいい。昨今では人の寿命も曖昧で、死が2人を分かつ事がないかもしれない。ならば、2人で歩める喜びを踏みしめ長い長い人生とその後日談を語る時まで仲睦まじく進んで下さい。」
本来なら人柄なんかを褒めたりするのが正解なのだろうが、それはもう井口は知っているし俺が話すより深く知っているはずだ。なら、先の話を語り贈ろう。不老や不死の薬があるならどこかの時点で寿命の話は出るだろう。なにせ2人共に中位でそれに手が届くかも知れないのだから。
俺と莉菜は決断を下した。しかし、赤峰夫妻はまだその時じゃない。だから、夫婦としての先輩からも後輩へ贈る言葉。それは先の話。




