334話 攻略開始 挿絵あり
神志那も戻り日々忙殺されながら仕事をする中、他国の宇宙開発やらの発表がなされ、大まかにどの国と繋がりを深くするのかと言う構図も見えてきた。ドイツなんかの欧州、米国、日本なんかのグループと、韓国含む中国ロシア連合チーム。台湾は日本に付くと断固とした態度を示し日本側となった。
そしてその中で日本政府より第200合議案、ゲート内を探索し祭壇の発見及び確保を盛り込んだ方針が示され更にゲート探索は熱を帯びだした。因みに、これの裏目標としては墜落機ないしそれに類する物の発見も入っている。
発見は希望的観測と言いつつ1つだけ心当たりがある。それは何かと言われればガーディアンである。賢者によりコードを書き換えられて奥に送り込み猶予を稼いで壊れたらしいもの。扱えるかは別として、アレも空を飛んでいたし多分、飛行ユニット系は搭載しているし自動修復装置も使えるのは見た。
今どんな姿をしているかは分からないが、多少なりとも形があれば回収してほいしいとの事。ただ、アレもどこまで進んで爆散したか分からないので努力目標でいいだろう。
「選ばれたのは3人ですけど、これで良かったのかは迷いますね。」
「日本側からはね。米国はエマを出したし他の国は中層へ進む事を意識しつつ、表面上はスタンピード対策として組織立ってモンスターを狩ってるよ。実際日本の中位を集めて送り込んでも外の守りは薄くなるし、数より質だろうから仕方ない。流石に全員で1ダメージ与えてもモンスターはそれ以上にいるだろうからね。」
中層を進む筆頭者として俺、宮藤、橘が選ばれた。当然と言えば当然だが、配信でも行った事ある事実と戦えた実績があるので、この人選となった。当初望田も来ると言って聞かなかったが、彼女にはうちの家族含め守りを担当してもらう。海外もきな臭いしそちらの方が精神的に安定する。
「そうですけど・・・。」
「まぁ、最初は初めの退出ゲート探し。そこから先へ先へと進んで猶予も稼ぐ。特にあちら側でスタンピードが起こったらほぼ手出し出来なくなるしね。」
決定的に仲違いしている訳ではないけど、元からあった枠組みが更に浮き彫りになった形だ。ただ、競争先はゲートと宇宙開発なので交流がない訳では無いが、片方は覇権なんて言う目に見えないモノを追っているのでなんとも言い難い。
「貴女本当に大丈夫?」
「大丈夫さ。なんだかんだで俺は安全装置代わりだよ?あの2人が死にそうなら蹴っ飛ばして現実に引き戻すさ。」
じゃあ行ってくると妻とキスを交わし、望田に見送られてゲートに入る。大分からラボを経由して宮藤と橘の2人と合流して装備を整えつつエマの到着を待ち全員揃った所で早期撤退した52階層へ。眼の前に広がるのは相変わらずの森林地帯で足元の湿りがやはり気持ち悪い。
「共同戦線と言う事で来たが緊張するナ。それにこの小さいのがフェムか。初めて見たがよく動くものダ。」
「入手経路は口外禁止なので言えませんけどね。しかし、よく米国が許しましたね。」
「大統領が流す血は同等と言ったからナ。中位も3人新たに誕生したので私にも多少は余裕ができタ。」
「自分も情報貰いましたよ。確かディルとグリッド、それとダレスでしたか?」
「あァ、砂漠で戦った組はやはり思いが定まりやすいからナ。戦が全てではないとクロエは言うガ、それでも命をかけた分どうしたいか見えやすイ。それト、橘は常にその格好カ?同僚を思い出ス。」
「最初からクライマックスです。1体見つければそれこそゴキブリみたいに出てきますからね。さっさと叩くに限る。それに、戦い出せば私が1番弱いんですよ?」
橘の場合弱くはないが、身体能力のハンディがあるからなぁ。ただ、肉壁スーツやロボテクスーツのおかげでかなり動けるし、完全に武装解除でもしない限り動けるだろう。今回来たメンバーはそれぞれ思い思いの装備をしていて、宮藤は軽装で魔法糸と高槻の作った糸を遥が織り込んで作った一品だし、エマも来る前に事前にインナーを何着か欲しいと言うので作って送ったし、橘は言わずもがな。
相変わらず俺はゴスロリだが、魔女がテンション高めでモンスターを狩らせろと言うので動き出したら止まらないだろう。目標的にも次のゲートを見つけるまでは合法的に籠もれるし、51階層には電波塔も建てて外とも通信出来る。お膳立てはバッチリだ。
「さて行くとしますか。上で話した通りエマと橘さんがペアで、私と宮藤さんは遊撃しつつ単独で構いませんよね?」
「ええ、2人には火力担当になってもらう予定ですからね!」
若干の風切り音がした瞬間に全員が散開!姿は見えないが、どこかにいる!キセルをプカリ。エマや橘は既に獲物を発見したのか行動を開始しているし、集まる事は分かりきっている。自身に出来る仕事をしよう。
(仲間を巻き込まない限り自由にしていいぞ。ただ、絶対に仲間を巻き込むなよ?)
(そこまで念を押さなくてもいいわ。)
「自分も行きます。お先に!」
「ええ、お行きなさい?」
(おい、真反対に歩き出したがあまり離れるなよ?)
(被害を出さないなら真反対を攻めれば、私が総取りできるじゃない?コードは馴染んだ。壊れる側から巻き戻るなら遠慮は要らない。そして、巻き込まない限りの自由は貰った。なら、久々に踊るとしましょう。)
「白亜の森は深く映える色は何色かしら?底へ続く道すがら、集まる者は何者かしら?意味を・・・。」
紡がれる言葉が終わる前に飛来した弾丸を首を振って躱すが、避けきれず頬をかすめる。しかし、その傷はすぐに巻き戻り何もなくなる。ただ、上機嫌だった魔女はご立腹な様だ。戦っていれば傷付くのは当然だし、今までも幾度となくそういった場面はあった。ただ、久々に暴れられると言うのにその出鼻を挫かれた事に対しての怒りは凄まじい。
「疾く早く疾く早く・・・。そこね?」
限界突破した強化は一歩踏み込んだ瞬間に最高速に達し、風景を置き去りにしつつも一切の衝撃を撒き散らさず、ただそよ風の様に通りすぎ第2射を撃つ前に眼前に立ち、そのまま引き千切る。
「得られるモノはどこかしら?おいでなさい、おいでなさい。私の前に、姿を表し見せなさい?隠れても無駄。逃げては駄目。自由な遊び場はここに有りてそこにある。さぁ!煙は静かに炙り出す・・・。」
何時だったか賢者に言われた。何故コレは吹く物なのに吸うのかと。俺はこれがキセルに見えたし、キセルを吹けば灰が舞い散り辺りが汚れると思った。実際コレは本当にキセルではないし、俺は旨いと思っているが他の人がどう思うかは分からない。
何せ吸わせたらどうなるか分からないのだ。武器として貰い説明は補助具としかないキセルを人が吸う。それはともかく武器を完全に取り込む事ではないのかと。
最初の1体を皮切りに集まり出したモンスターはカサカサと木を這い回り、ある者は空を飛びながら乱射し、ある者はこのまま飛びかかってくる。飛びかかって来た1体を足に貼り付け、そのまま盾のようにして弾丸やビームを受け止め、穴が開くモンスターがそれでも放とうとする弾丸を掴み取り手近なモンスターに投げつける。
そこまで来て弾丸が貫通したくらいでモンスターは止まらない。しかし、その足掻きは本当に足掻きでしかないのだろう。遥か背後で燃える火を感じながら口に咥えたとキセルを思い切り魔女が吹いた。
「私の手の中腹の中。根こそぎ食べましょう平らげるつもりでねぇ。」




