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街中ダンジョン  作者: フィノ


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330話 木が分からない 挿絵あり

「感覚としてはそれですね。付着した汚れやゴミが溜まるとかさぶた様に葉を形成して脱落させ、傷付けば同体化して塞ぎ、やはり不純物や取り込み過ぎたものは葉として落とす。」


「見た目木でも絶対木じゃないですよね、それ。感覚的には受動的な集塵機とか空気清浄機?」


「それを乱立して森にする必要はあるのカ?」


「さぁ?でも、超精密機器作るなら不純物は敵です。ホコリ毎取り込んで何でもかんでも綺麗にしてくれるなら、モノを作る上ではいいんじゃないですか?」


 ソーツがどこでモノを作っているかは知らないが、仮に人と同じ様に工場生産だとすると宇宙と言うのはかなりゴミが多い。それこそ、砕けた星の欠片やら有害な宇宙線も含めて。それの除去装置と考えれば分からない話でもないが、ゲートの中にある以上廃棄品なので今は別方式でモノを作ってるのかな?


 流石にゲートを緑化しようぜ!なんてあいつ等が言い出す訳ないし、本当にそうならいらないので全て焼き払う。いや、根っこが残ったらそこからまた再生する?その前にあれって根っこある?木っぽいから木だと思ったけど、空気清浄機なら置いてあるだけ?もしかして、倒れない為に大型化した?尺度が違うので分からないんだよな・・・。


 小型のクリスタルリアクターだって数キロを消し飛ばす火力があるし、大っきかったらいっぱいゴミ取れるし倒れないからいいよね?的な?ただ、あそこで手術すれば天然の無菌室・・・、ゲートの中は既に無菌室状態だが感染症のリスクが無いのはいいな。地面は湿ってたし。


「私としてハ、伐採して視界を良くしたイ。行くにしてもトラップが設置しやすい分、モンスターも見えづらくなル。」


「それは無理ですね。地下茎や根は存在します。脱落した葉は還元変換されて少しづつ消える様ですが木本体は傷付けば高速再生、或いはその葉さえ養分として修復する。一応、元の大きさよりは大きくなりませんが、伐採してもすぐに元通りになりますよ。それに、地下茎がある分どれかが再生不能にまで壊れてもニョキッと生えてきます。」


「笹とか筍だったのかあれ・・・。米国だとクレイジープラント的なモノとかだと考えると分かりやすいかな?」


「うッ・・・、クレイジープラントやクレイジーワームはよしてくレ。日本から来て毎年米国の土地を侵略していル。下手すると戦争より戦争らしい侵略ダ。橘、あの木を持ち出すと外もあの木が乱立するのカ?仮にそうなら警告する必要があるガ。」


「それは・・・、料理が来たので焼きながら話しましょう。鑑定だけで研究状況は分からないのである程度の推測は入りますよ。それと、この大量のサンチュは?」


「私が食べる用。いるなら取ってください。」


 肉が届いたので網に乗せてドンドン焼く。米はいらないけどサンチュは大量にいるよ!肉が焼けるまでに食べてよし、肉に巻いて食べてよし!さっぱりするからドンドン食べられる。ただ、下手に巻くと油が手につくのが玉に瑕。食べ放題なので時間いっぱいまで完走する所存である。


「それで、持ち出し規制は必要ですか?」


「切り倒した分については大丈夫でしょう。その大きさで固定されます。代わりに伐採ではなく植え替えすると増えます。」


「挿し木では増えないけど根っこあるとダメか。まぁ、木材だし需要はそんなにないかなぁ。てか、斎藤さんへの贈り物も同じ木だったり・・・。」


 斎藤も鍛冶師でモノを作る人だから、ならお礼に作業環境あげるよ!いっぱい増えれば空気も綺麗だし人も喜ぶよ!はい、外来種と言うか宇宙種の侵略です。鉢から出して地面に植えた瞬間から爆発的に増えるとか辞めて欲しい・・・。いや、下手すると大陸プレート固定されて地震なくなる?やめよう、リスキー過ぎる。バイオハザードと言うか、プラントハザードになりかねん。


「私は鉢植え見てないのでなんとも言えませんが・・・、そもそもアレは木に見えて木ではない。」


「ならば金属カ?増えないなら家の壁材やフィルターに良さそうだとは感じたガ。」


「説明聞いた感じ塗装出来るかは微妙ですね。ペンキ塗った側から葉が生えるかもしれませんよ?でも、海に沈めてマイクロプラスチックのろ過装置とかにはいいのかな?すごい勢いで葉が溜まりそうですが・・・。」


「呑気と言うか現実的と言うか・・・。こら、その肉は私が育てた肉です。」


「焼肉は戦争です。警告を受けたので今回は引き下がりますが、次はいただきます。と、言うかエマは赤身ばかりでカルビなんかはいいんですか?」


「タンパク質優先ダ。後で少し貰うとしよウ。それデ、呑気とハ?」


「エマとクロエは金属圧着を知っていますか?」


 サムギョプサルうめぇ~と別の肉を巻いて食べていたが、なんでまたここで金属の話?もしかして木は金属?いや、そもそもあの木1つで1原子とすると金属原子?何にせよ混ぜて合金でも作るのかな?一応宮藤は木を気合入れれば焼けるし、モンスターの高出力ビームでも貫通出来る。


 簡単に壊れないが壊せない事はない。あの木はそんな木だな。あぁ、そう言えば耐火性はかなり高いんだった。最後の方は宮藤も遠慮なしに火を使ってたけど燃え広がらず、凍らせてもほとんど変化は見て取れなかった。金属なら金属で金属疲労とか・・・。あぁ、接合してないから疲労そのものがないのか。


 極端な話、モノが壊れると言うのは分子分解である。引き合っていた分子が離れて原子単体になった=ティーカップが壊れて取っ手が取れた状態。その破壊が繰り返していけば最終的に原子に。それ以上行くと核融合やら原子分解やらになる。平たく言えば原爆の仕組みがこれ。ただ、流石にあの木はウランやらプルトニウムじゃないよな?箱から出るとかなり騒ぎになるんだぞ、アレ。


「同じ金属、或いは違う金属を研磨して表面をツルツルにした状態で押し付ければ出来ますね。確か熱を加えなくても人の力で出来たし、強度も伝導性も良かったと覚えています。」


 技術や環境は求められるが吸盤の様に張り付くし、強度もそれなり。そこに更に熱を加えると継ぎ目の見えない状態にも出来る。人力だけでやるとハンマーで叩けば取れるらしいが、流石に俺も試した事はない。


「よくそんな事を知っているナ。」


「雑学知識ですよ。真面目に授業受けてたら知ってる人は知ってるレベルです。」


「私もハイスクールは卒業しているのだガ?教育水準の問題だろうカ?」


 エマが何高に行っていたかは知らないが、俺工業高校化学科だし。就職してそのまま使い物になるレベルの勉強はした。まぁ、結果として工場ではなく自衛隊に入隊してから除隊して工場警備員となったのでその知識は活かされる事なく死蔵されてしまったが、どこで何を使うか分からないのが知識なので勉強しておいて良かったと言おう。


「私だってクロエよりいい高校や大学に行きましたが、そんなものは知りませんでした。多分、興味や知識の方向性の問題でしょう。話を戻しますが、あの木は切って押し付ければその接合方式の様にくっつきます。」


「ふむ、分子間引力ならぬ原子間引力あるいは結合?そもそも1つの原子を無理やり割っている状態だから不純物さえ無ければ同一視されて接合される?そうなると・・・、無敵の接着剤が作れる?いや、その前に木が実は流体で外側は酸化した表面で、穴が空いた所も瞬時に酸化している?」


 少なくとも木片は握れる。つまり3次元構造体である。なら、水はなぜ握れないのか?そこに存在するのに接着剤も必要なくコップから海に水を流せれば一体化する。なぜかと言われれば水と言うか、液体は分子構造が決まっていないから。なら、あんなに巨大だけど1つの原子と言った木はどんなに砕いても何かと混じる事はない。


 ただ、そこに裏技があるとするなら水中で砕いてしまう事。水中でも個体だろうがそれを目に見えない程小さくした後、乾燥させて水だけ蒸発させれば思った形状に固められるし、粉化出来れば他の物と攪ぜて何でもくっつくし、必要な特性も持たせられる。それに、木は元々埃なんかを集めていたとすれば、帯電なんかもする?駄目だ、斎藤達の研究成果が出ないとなんとも言えない。


「駄目ですね。ある情報だけを積み上げても、分からないものは分からない。って、ここで新素材の話なんかして何かあるんですか?」


「いえ?単純に分かった事を伝えているだけです。斎藤さん達は宇宙ステーションの外壁に出来るんじゃないかと騒いでましたが。」


「ほウ、それはNASAも喜びそうだナ。」


 騙されたような気分だが、この木?を混ぜて合金とか作れば全くの新素材が作れそう?原子配列を変えるのは手間だが、目に見える原子ならいくらでも配置できるし、勝手に元に戻ろうとするならエマじゃないが簡単に補修出来る壁材に・・・、もしかして輸送機の外殻ってこの木?


 流石に木造船で宇宙に行く発想はないが、それは木の特性の問題であって、仮に木が鉄や合金よりも優れた性質を持つならその発想にも行きつく。う〜む・・・、もっとくれと言われたら木こりにでも成って木を持ってくるか。ただ、根っこは怖いから伐り倒してから。それでも怖さはあるが・・・、渡した木片から変な事になったと言う話は聞かないので大丈夫だろう。


「伐り倒した分も増えないだけで再生するんですか?」


「ゲート内ならば多分、還元変換されて緩やかに消えていきます。外なら再生して過剰分は葉っぱですね。ただ、どの程度まで小さく出来るかは分かりませんが。」


「再生する木片と言った所だナ。サンプルとして貰ったが学者が喜びそうダ。サンチュの追加はいるカ?」


「同じ量ください。寧ろ増やしていいですよ。後、タンと壺漬けカルビを。モンスターは鑑定出来ました?」


「その暇はほとんどなかったですね。分かった事と言えば実弾は武器と似た様な素材です。」


「似た様な?同一ではないと?」


「ええ、どちらかと言えばモンスターが撃つモノは私達が使う武器には劣る。劣る代わりに量がある。仕留めたモンスターが内蔵していた槍の様な実弾だけで千近くありました。」


「私のトラップと実弾がぶつかり合ったとして、トラップは砕けるカ?」


 今更ながらに大衆焼肉屋で話していい会話なのかなこれ。橘が飯食いながら話そうと言うから軽い気持ちで話していたが、話の内容的にかなり重要と言うか、国家機密スレスレと言うか・・・。さっきの木だって見方変えると自己再生するナノスキンだよな?壊れたら再生、材料が足りないなら取り込んで再生。


 もしかして自動修復ユニットって、この木を制御する為の装置なんじゃ・・・。仮に根っこ付きで木を一本積んでいたとする。船体は木をくり抜いたものを使用して、修復時に指定箇所だけ修復する様に指定し・・・、メインコアがなくて修復ユニット単体が暴走したら大樹が出来る?


 す、過ぎた事だから忘れよう。ただ、輸送機がドック行く時周りの廃材を何でもかんでも引き連れてたんだよな・・・。修理の仕方分からんけど、終了時には既に廃材と言うか隕石とかはなかったし・・・。


「今のトラップを見ないと断言できませんが、51階層に行って最適化されたなら、中位でもあるしすぐには砕けないと思う。ただ、それが嵐の様に打ち付けるなら分からない。」


「そうカ、クロエとしては実弾はどう思ウ?」


「経歴上一般人よりは親しみがありますが厄介ですね。ハンドガンやライフルと違って弾丸が長い分刺さった所での回避が阻害される。今までは・・・、上層は発射後の事なんて回避すればいいくらいにしか考えてなかったでしょうが、これから先は何処に刺さったかも考えないといけないので厄介です。熱っ!油が指に!」


  挿絵(By みてみん)


「ほらタオルって、指をペロペロ舐めない。暑さで頬もほんのり赤いんですから外の方達には目の毒ですはしたない。あの弾丸は還元変換されても消えますが、他の物よりも残り時間は長い。理由は分かりませんけどね。鑑定しても武器としかでませんし。」


「武器としかでない?何でしょうね、間違ってないはずですけど違和感のある感じ。それと、指にソースやら油がついたら舐めるでしょう?確かに行儀はよくありませんが。」


 サンチュで巻いて肉を食べるけど、失敗すると熱い肉の脂が!しかし、弾数聞くと弾切れは中々なさそうだな。売ってある銃で100発撃てるハンドガンとか、ミニガンとかならその弾数をすぐに吐き出せるのだろうが、それの用途は狙撃ではなく掃射。つまり適当にバラ撒いて当たったらラッキーとか、概ねこの辺りにそれだけの弾を撃ち込めば死ぬよね?と言うもの。


 古い話をするならそれまで単発で1発撃つ毎に弾込めしていた銃が主流の中で、ウインチェスターライフルは始めて弾倉を装備して戦争に大きく貢献したし、機関銃が始めて実戦投入された時は電ノコと揶揄された。普通、奇襲を掛けるなら単発狙撃で消音出来る物がいいし、モンスターもあの時ほぼ無音で単発で撃ってきた。しかし、モンスターが掃射を選んだ場合かなり質が悪い。


 炸薬式なら銃身が焼け付くなんて話もあるのだろうが、どうも炸薬式では無さそうだし、その分連射力が無いのかと言われると、そうでもないような気がする。ソーツがどこであのゴミを運用する気か知らないが宇宙だと考えると炸薬式は反動で自分も後ろに飛ぶし、実用化する方が難しい。


 あるとすれば何らかの反動のない発射方式か、それに類する音の出ないもの。パッと思いつくのは弓、ボーガン、レールガン。レールガンはあくまで弾を加速器して出しているだけなので反動は小さい。ただ、難点は発射距離で下手すると加速による摩擦熱で弾が燃え尽きる。


 なら、耐熱弾用意しろと思うかもしれないが、電磁加速と言う事は通電出来る物が前提になるので金属性になる。もしかして槍みたいに長い理由って狙撃も視野に入れてる?主体はビームっぽかったけど、実弾メインでも補給方法さえあれば問題ない訳で・・・。


「モンスターの行うゲリラ戦カ。頭の痛い話ダ。従来のゲリラ戦を想定しようにもモンスターには死の恐怖が無い以上、どうあがいても動きが悪くなる事はないシ、獲物を見つければどんどん集まってくル。発見を更に鍛えるカ・・・。なにか良い訓練はないカ?」


「ゲリラ戦の訓練?私にも流石に想定された中でしか・・・、すごく嫌なものは思いつきましたが・・・。」


「かかってこいバーサーカー師匠!スパルタは慣れタ!あッ、ホルモンとタレをくレ。」


「そろそろオーダーストップですから頼むなら早めに。で、その訓練とは?」


 考えただけだが、感知式のセントリーガンを森中に仕掛け更にガンナーから狙撃させる。この時ガンナーは必ず当てる。当たるかは別として、必ず当てるタイミングで長距離から狙撃させる。要は見えない必中弾がどんどん飛んできている状態なので、それさえ搔い潜れれば生き残れる。地形的には木もあるので数発は盾にはできるし、それも配信で証明されている。


 弾は流石にペイント弾やゴム弾だろうが、これならそこそこ安全に訓練できるかな?場合によっては立体戦闘で人間の方が有利に立てるかも。


「エマの所にはガンナー中位のライフシーカーがいましたよね?その人に狙撃してもらってください。」


「それは死ねと言う事カ?」


「違います。適当な森にセントリーガンをしこたま配置した上で、ライフシーカーやガンナーに狙撃してもらってそれを回避する。中層を想定するならそんな感じでしょう。」


「確かに入った感じはそれですが・・・。」


「報告するか迷う訓練方法だナ・・・。」


「皆様オーダーストップです。注文し忘れはないでしょうか?」


「大丈夫です、ありがとうございます。」


 2人が微妙な顔をしている。だから俺も言いたくなかったんだけどな・・・。

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[一言] このクロエはヤバい 生成AIグッジョブ! なんか感想とか全部持ってかれた
[一言] 木に見える物体恐いな! 最近問題視されてる海洋プラスチックとか解決出来そうだけどいずれ何処かの馬鹿が植えてプラントハザード起こしてこれまでの実績からクロエが解決することになりそう
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