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街中ダンジョン  作者: フィノ


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325話 落成式 挿絵あり

遅刻です

 落成式当日となり用意した服を着込みギルドへ。妻達がああだこうだ言いながら選んだ服は赤のカクテルドレス。個人の意見を言うならタキシードや燕尾服で良かったのだがこれが1番似合うらしい。まぁ、昔から着たきり雀で服には疎いから、信頼できる人間からコレが似合うと言われれば無視はできない。実際着て似合ってないと言われた事もないしね。


「ここにいたんすね、そろそろ始まるんで準備お願いします。」


「そうか、なら行こうか。」


  挿絵(By みてみん)


 東京の街を見ながら一服していたがどうやら時間らしい。タバコを消して下に降りると、テレビで見た事ある様な著名人が大勢・・・。気後れするから隠れておきたい・・・。だが、来てしまったものは仕方ないので適当に愛想笑いでも浮かべて立っておくか。本日の主役は俺ではなく雄二だし。


「東京にギルド。ゲートが出現して約1年、たった1年で世界は激変し、出来なかった事が出来るようになった。我々はその激動する世界の岐路に立ち、より良い未来を作る為にこうして力を合わせて・・・。」


 総理が演説してるけど、力合わせるならギルドの人員不足は起こらないし、来た当初に書類の山に埋もれる事はない訳で・・・。まぁ、大人の事情って言葉は使い勝手がいい。ただ、意訳すると部外者お断りの内輪の問題となると思うがどうだろう?


 それでまかり通るならギルドも大人の事情で人がいないから、書類整理の一部を投げ出していいかな?それが出来ればかなり仕事が捗るし、本部長がゲートに入る時間も捻出出来そうなんだが・・・。


(めっちゃ緊張するんすけど、俺の演説大丈夫すかね?)


(私も上がり症だからなんとも。ただ、1つ言うならあそこは雄二、君のステージだ。何かビッグマウスでヤバそうな事を言おうとも、作った文章通り読もうとも自由にするといい。必要なのは自分の言葉で伝える事だよ。スィーパーならそれは分かるだろう?)


(うす。)


「続きまして関東甲信第1特別特定害獣対策本部 本部長、木崎 雄二氏よりお言葉です。」


 名前を呼ばれ緊張している雄二の背中をパンと叩き送り出す。ぼちぼちやればいい。確かに大勢の前で噛んだりするのは恥ずかしいけど、それでもこの仕事は雄二にしか出来ない仕事だし、逃げ出してもその仕事と責任が消える訳でもない。


「私は・・・。昨年の秋葉原で戦い、神崎本部長と共に民間人として講習会に参加し米国スタンピードへも参加しました。ハッキリいいます。スィーパーとは安全な仕事ではありません。それでも既にこの1年でスィーパーはなくてはならない存在となっています!犯罪捜査に協力し、早期に解決するスィーパー。道路を整備するのに力を使う魔術師、山での怪我人の救助に、技術開発等々。挙げればきりがない程、誰もが年齢を満たせばスィーパーとなれる分身近なものです。私達ギルドはそんな方達をサポートし、犯罪者には断固とした態度を示し、誰もが笑顔で明日を迎えられる未来を作る為!ここに設立し本日より正式稼働します!至らない点、不便な点はどんどん上げてください。そして、政府並びに先に稼働した大分ギルド本部長クロエさん。尽力のほどお願いします。」


 雄二の所信表明が終わり拍手されながら壇上を降りる。名前を出されたからには尽力するしかないな。自分の所も大変だし、一から十まで指示できるわけでも、手伝えるわけでもないけど、それでも先にいる輩として、相談されればアドバイスは出来る。


 そんな事を考えていると来賓者紹介となり、俺やエマも名前を呼ばれたので一礼し、その後は祝電披露。他の本部長からの祝電以外に目玉と言うか、大物と言うかジョージからも祝電が届いていた。仲いいアピールとしてはかなりアピール出来たんじゃないかな?


 そして、ドヤ顔で壇上に立ったエマが大統領の代理人として祝電を読むのはなんとも。語尾のカタコト感が抜けないものの、元より大勢の前は慣れていると言わんばかりに堂々と読み上げる。うぅむ、昔取った杵柄の全米2位は伊達ではないか。人に見られ慣れているとか、評価され慣れていると言うのはある意味武器なのだろう。


 式典が終わり解散かと思ったが、軽い立食パーティーとなり適当なグラスを取って口を湿らせる。流石にここで大食いするのもね。余ったら食べようかと思ったが、先に残りは獣人に振る舞うと言われてしまったので諦めよう。ついでに言うと、副長として式典に出席していた新名は雄二を残し早々に仕事に行ってしまった。仕方ないのだが副長として名を売ってもバチは当たらない。だが、正式稼働と言う事でパーティーの方はまだいいとして、ギルドの受付なんかはパンクしそうなんだよな・・・。


「ファーストさん、ギルド稼働に関してなにか一言!」


「東海林さん!質問されたからには答えないとですね。東京ギルドは首都のギルドと言う事で人の出入りが多い分、仕事に時間がかかる場面もあれば、人員不足と言う面も否めない。大分では獣人の登用も視野に入れているので、仮に獣人が人と同等に仕事が出来れば・・・、一部の人間は入れ替えても問題ないですよね?特に戻る先のある方は優先しても。民間採用試験とかも構想にありますし。」


 文章は回したし、サラッと釘刺しとこ。民間はこれで飯食ってるから早々解雇出来ないけど、警察と自衛隊は古巣に帰ればそれで済む。それが嫌なら定期的に人を出してくれていいのよ?寧ろ、ここ以外も稼働したら人員不足が叫ばれる事が予測出来るので出してもらっても中途含めて民間採用試験はやる!


 流石にここまで人員不足が出るとは、俺も予測してなかったんだよ・・・。それが後から後から仕事が増えてどうしたもんか・・・。嘆いても仕方ないので早期に人員は増やさないとね。


「ギルドの人員不足は深刻と。それは早期に?」


「早期かは別ですね。構想段階なので何も基準がありませんし。まぁ、やる時は発表しますよ。何なら就職サイトとかに載せるかましれませんね。」


 そんな話をしている横で雄二が松田達に囲まれてあーだこーだと話し込んでいるが、増田が見を光らせているのだ大丈夫だろう。何気に増田もスィーパーでS職なので引き抜きが現実味を帯びてくるな。今は政府からの使者枠だが、引き込めればギルドから政府への使者枠に出来る。そうなれば、面倒事をどんどん断ってもらって・・・。


「おっ!クロエさんもお久しぶり。警察側に書面が届いた・・・。」


「言うな黒岩さん。ウチにも届いた。これで他の高官を黙らせられる。ありがとな。」


「そうですねお2人共。要請を受ければかなり公務員をギルドへ割り振れる。そうなれば・・・。」


 松田が皮算用しているようだが、足元にポチ君がしがみついているのでイマイチ毒気が抜ける。ギルドに公務員割り振ってもいいけど、それって単純に公務員採用枠増やすだけなんじゃ・・・。


 公務員なら保証やらなんやらも厚くしないといけないし、ギルドとしては給料以外政府で賄ってもらう事になるがいいのだろうか?今の時点でギルド職員を公務員で固める事にメリットはないし、仮にうちを天下り先にしたとしてモンスターとの戦闘経験は必須だし、対人経験があるとなおよし。


「松田さん、公務員増やしたとして何かメリットあります?完全事務方オンリーだとしても戦闘経験は必須ですよ?それに、数の暴力を使おうとも、本部長権限がギルド内では最高位となります。」


「いいですよ?私は公務員の中位を増やして基盤固めをして、次のスタンピードに備えたいだけですから。私もスィーパーですけどペーパーですし、守る盾は多い方が良い。民間人は逃げるなら先に逃げてしまえばよろしい。その為に良いお金貰ってるんですからね、私達は。」


 胡散臭い松田がいいこと言ってる。思えばコイツって交渉権の話をした時に自分の命で賄えない?とか普通に聞いてきたんだよな。本気かどうかは別として、ガチで命取られる可能性がある中でなかなか言えないかもしれないな。


 今はいらないけど交渉する時に必ず差し出してね!それはつまり、予約された死刑宣告。年一回の交渉予定がある以上、再度差し出すと言うかは分からないが・・・。まぁ、いいこと言うならそれはそれでいいか。


「それにゲートの先は見てみたいし、宇宙に気軽に行けるようになったら楽しそうじゃないですか。」


「松田さん?つかぬことをお伺いしますが、JAXAに動力研究依頼した方って誰です?」


「私を疑うならどうぞ?私が指示していないと言っても、それを信じるかは貴女次第。逆に私が指示したと言って、それを信じるかも貴女次第。」


「クレタ人じゃないですかそれ。」


 変に突けばパラドックスに絡め取られるか。グレーはグレーのままにしておけと言う警告かな?1つ言えるとするなら、安全にやれと言うくらいかな?


「それよか主役の木崎君は・・・、囲まれてんな。」


 黒岩が話を変える様に雄二の方を見たので釣られて見るが・・・、うん。少なくとも見てくれは悪くない。若さも十分で知名度もある。そうなってくると引く手あまたか。


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― 新着の感想 ―
[一言] スカートが短くて露出度高めなドレスを着てタバコを持った美少女 ヤバい絵面だな でもこの世界の住人にはもう見慣れた光景か
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