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街中ダンジョン  作者: フィノ


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322話 暴飲暴食 挿絵あり

「豪勢な事だナ。それが最初に入った特権カ。」


「特権?そんなモノはないよ。拡大解釈すれば職を最初から2つ選べたのは特典なんだろうけど、その職に就くのにもひと悶着あった。交渉権は確かにコチラからの申し出だけど、訳わからない相手に言い逃げされても困るだろう?」


「わからない話ではないガ、それでEXTRAを選んだト。他にも何か隠しているんじゃないだろうナ?」


「ないよ。巻き戻りも知ってるし、死なない事も知ってるだろ?これ以上何も無い。先に言うけど、どんな職があるかは知らないよ?」


「そうカ・・・。」


 何やら考え込んでいるが、EXTRAは確かに選べたら選ぼうと思った。しかし、その支払いは聞いていなかったし、魔女や賢者がいる事も聞いていない。ただ、思うのだ。あの時なにか別の選択肢や、職を選択していたらどうなっていたかと。例えば出来ないと思った物理職は?剣士や格闘家として戦えるのか?


 無理だな。経験もなければ下地もない。ゲームの様にコチラが強くなるまで相手は待ってくれないし、不意打ちも奇襲もビームなんて即死攻撃も最初から使ってくる。なら、慣れない剣を振り上げている時に蜂の巣にされておしまいだろう。いくら身体能力が上がろうとも経験もない身体は動いてくれない。


 なら生産系は?雑学があったとすればそこそこ何かは作れるかもしれないし、自衛隊で銃の分解結合はやったので、作れない事はない。ただ、銃一丁持ってモンスターと戦えと言われても厳しい。そもそも、ガンナーのマガジン棒がなければ銃は鈍器だろう。


 他の職も自身に当て嵌めて考えるが、戦えない事はなくとも活躍出来るかと問われれば答えはNO。多分、秋葉原で死んでいただろうな。そう考えると最初の選択は成功だったと思えるが、仮にウチより少しだけ上の星にゲートがあって、最初の1人が失敗したら?


 勇者青山爆誕か。流石に掃除不能ならゲート持って帰るよな?ゴミの溢れ続けるゴミ箱とか既にゴミ箱じゃないし、その過程でモンスターに押し負けて文明崩壊すれば、職に就けるかも怪しくなる。危機的な星が0だったとは言わないだろうが・・・、さっさと設計図の品を作って備える方が未来的には安定する?


「ソーツとはツカサから見てどう言う者だと思ウ?」


「印象と言うだけなら、最初は集中する子供。でも、考えていく内にあんまり人と変わらない存在とか?怒って掴みかかる事もあれば、お金渡すから仕事よろしくって依頼してくるから、話の通じない化け物ではないかな。まぁ、偏屈ではあるけど。」


「ふム、強大な力を持つが突き詰めていけば行動原理は人と変わらないト・・・。確かソーツはインベーダーではなかったのだったナ。」


「あぁ、インベーダーならさっさと人間なんて駆逐して地球をぶん取ってる。何せ技術だけ考えても赤ん坊と大規模オートメーション工場くらいの差があるからね。そう言えば、山口さんは元気?米国の工場増やしたいとか高槻先生から聞いたけど。」


「精力的に動いているガ・・・、相変わらずのおしゃべりダ。工場に勤める調合師や学者からハ、為になるが話が飛んだりして大変だと聞ク。まァ、それでもそのおしゃべりを誰も止められないのだがナ。研究プランにしろゲート内米軍基地建設にしロ、彼女から学ぶことは多イ。そう言えバ、セスと言う人物とコンタクトを取ってゲート内生活のイロハを米兵に教え込むとウィルソンが言っていたナ。」


「セス?セスって配信者でゲートに住んでるあのセスさん?エマ、会う機会があったらサイン貰って来て。何気にあの人の配信ずっと見てるんだよね。」


「ツカサの言う人物かは分からないガ、会う機会があったら貰っておこウ。配信アカウントをLINEで送っておいてくレ。しかシ、セスもツカサからサインをねだられるとは思わないだろうナ。」


「畏まるほどの人物ではないんですけどね、私は。ただでサイン貰うのも悪いんで何か・・・、これでいいや。要らなかったら燃やしてくださいと伝えてください。」


「おイ!!コレを渡していいのカ!?」


「ビビるくらい高値らしいですけど、私自身は不用品だからね。」


 誠に遺憾ながらコレには明確な価値がある。前に神志那から言われたけど初期のポスターで約300万以上。コピー品のロッドナンバー付きはそんなに高くないが、海外販売していないのでそこそこの値段。そして、訳分からん事になってる写真集。


 米国大統領の前で設計図と交換したから値段がついていない。寧ろ取り引き履歴がないので、妥当な額は一切不明。在庫出るだろうと先に数千部確保したから手持ちは潤沢にあるし、ポスターもデータ消す前に次からはロットナンバー入れるからと、初期の物は引き取った。どれくらい現存しているかも分からないし、指輪に入れたままスィーパーがお亡くなりになればそのまま消失。


 プレミア価値がついたなら、そこそこまた値が上がるのかな?何にせよ自分の写真集を渡すのは気が引けるが、要らなければゲート内生活で焚き火の燃料に出来るのでいいだろう。手近なナプキンに名前とメッセージを添えてエマに手渡すが、受け取ったエマもオロオロせんでいいだろう?お前自身も持ってるんだから。


「今目の前で米国の保有資産が目に見えて上昇しタ!」


「ドルも紙ならコレも紙。紙の束に一体何どれくらい価値があるんだよ・・・。まぁ、お金は保証されてるけどね。」


「知らないのカ?いヤ、国外の事だから知らないのカ・・・。米国内でハ、設計図を手に入れれば写真集が貰えるとスィーパー達は躍起になって探しているゾンビ?」


「ゲートに入る理由はそれぞれだから口出ししないけど、それが理由でいいのかよ!」


 魔女曰く美しさはかなりいい武器。ソーツめ!これを狙って人の身体をいじったんじゃないだろうな?掃除の円滑化と言う面で確かに有効なんだろうけどさ・・・。


「いいのではないカ?何に価値を見出すかは自由ダ。私だって全米1位に価値があると思って精進したんダ。ツカサからすればそれは無価値に見えてモ、当時の私からすれば何者にも代えがたかったしナ。」


「アイドルになりたい人とそうでない人の違いだろうね。私は家族でひっそりと暮らす方が良い。飼い猫は猫人に成っちゃったけど、獣人が増えれば珍しくもなくなるし。」


「獣人ナ。米国でもわんさか増えてるゾ。職に就ければ肩を並べて戦えるガ、戦えないから愛玩用か若しくはベビーシッター代わりにするのが多いヨ・・・、職には就けないでいいんだよナ?」


「今は就けない。でも、何れ就ける。学習させるといいらしい。頭は悪くないからね。」


「・・・、隠し事じゃないカ!その情報は聞いていなイ!」


「う〜ん・・・、先ず第1に獣人が職に就いた知らせを私も受けていない。第2に数撃ちゃ当たるとどんどん獣人をゲートに入れられても困る。第3に私達は獣人の事をまだ何も知らない。自分に置き換えたら嫌だろう?理由もわからず人型になったらいきなり戦地に送られるだなんて。それに、仮にそこで職に就けたなら明確な恨みを持って人と敵対する。だから多分、政府も職に就ける情報は出してないんだろうし、仮に出すとしても1号が誕生してからじゃないかな?」


「うぅム・・・、獣人は人よりも身体能力が高い分、職でブーストされれば手に負えなくなるカ。日本が隣人として丁重に扱うとした訳が分かっタ。たダ、この情報は持ち帰って話してモ?」


「いいけど多分、ある程度上の政治家は知ってるよ?アライルさんとかは逆に知ってないと不味い立場だしね。さて、結構夜も更けてきたしお開きにしようか。明日の予定もありますからね。」


 エマは名残惜しそうだがお開きにして一服ついた後はシャワーを浴びて就寝。寝るといいつつ寝なくてもいい身体なので、相変わらず賢者と殴り合ったり魔女と話したり。中層に足を踏み入れてモンスターと戦ったせいか、魔女がはよゲート行こうと誘ってくる。行かないといけないのは分かってるが、こっちにも仕事があるんだよ。


 そう言うと賢者どいて、そいつ殺せないとばかりに魔女が殴り合いの相手をしだした。まぁ、殴り合いと言いつつやるのは純粋な魔法の撃ち合いだが・・・、手も足も出ない。米国での精神の不甲斐なさを嘆いてか、はたまた魔女の要求スペックに達していないからか、1つ魔法を作る間に雪崩の様に攻撃されもするし、防ごうとしても流されておしまい。


 途中から手加減なのかビンタも飛んだきていたが・・・、それはそれで無茶苦茶痛い!賢者がコードを込めて殴って来たのも痛かったけど、アレの比にならない程痛い!なんだろう・・・、剣山で刺されても痛気持ちいいと思うが、魔女のビンタは無数の深い擦り傷を更に引っ掻き回すような感じとか?


「・・・、貴女今まで何してたの?」


「モンスターと戦って、そこそこ勝ってきました。この前は賢者に喜ばれもしたよ?」


  挿絵(By みてみん)


「言い訳はいい。こんな体たらくだから米国でも、遅れを取るし中層でもすぐに撤退する。賢者、次からは私が半分相手をする。貴方ももう少し遊びを減らしなさい。」


「いいけど段階と言うモノもあってだね・・・。」


「コレの精神はもう砕けない。金継ぎだったかしら?アレが馴染んだから、砕けようがない。」


「うへ、あれ馴染むものなの?侵食の間違いじゃない?」


「コレはアレをそう定義した。私は方向性を示した。なら、それ以外を知らないなら、そうなるしか無い。」


 金継ぎって継ぎ終わったから終了じゃなかったの?てか、賢者よ。侵食ってなんだ侵食って。俺は俺の中にあるものしか使ってないから結局俺のパーツだろう?それが馴染んで元通りなら侵食なんて言葉は出ない。そもそも糊(?)に金粉振りかけたものがどうやって侵食するんだよ。


「あの〜・・・。自分の事で恐縮ですが、話が全く見えない。えっ、精神の壺なんかヤバいの?」


 遠くにあったモノを近くに呼び寄せるが、モニターモニター、豪華な壺!金継ぎで繋げた壺は豪華で魔女の絵もあるので美術品の様に見える。ただ、描かれている赤ん坊が少し成長している様な・・・。コレが馴染むってこと?金継ぎした網目を子供が握っているが、先に風船はないので金糸を持つだけに見える。


「君が使った接着剤ってアブザだよ・・・。正確にはアブザの一部、君がいいと言うからそのままにしたけど、確かに終わりの先の始まりを持つモノがこうして一部になるなら精神は砕けないか。・・・、ちょっと君、魔女が手を加えたとしても高性能だね。若干羨ましい。」


 こっわ!アブザが一部になったというのは別にいい。産んで消えてしまったけど、中にいるのは知っていたし。怖いのは賢者の羨ましい発言。こいつ等をして羨ましいとかどんだけ高性能なんだよ。また変な機能とか知られざる秘密とか出て来ないよな?


「も、もう何も起こらないよな?これ以上変な事態にはならないよな?な?」


「さぁ?私は職だし賢者も職。暇じゃない事は歓迎するわ。賢者もこれで分かったでしょう?」


「あぁ、少し細工するとしてコレならいい。思考し、妄想し、空想し、操作し、具現化し、法を破る。今一度コレを最初から叩き込むとしよう。」


「お、起きるんでまたの機会に・・・。」


「まぁまぁ、ゆっくりしていってね!」



________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



「クロエ、まだ寝ているのカ?」


「朝が弱いとは聞いていませんが、眠いのなら好きなだけ寝てもらいましょう!役人との話し合いなんてクロエさんの睡眠時間の大切さからしたらゴミカスと一緒です。あぁ!もしかして布団が落ちて寒い思いを!?忍び込んで布団をかけて部屋を出なくては!」


「ナチュラルに侵入しようとするナ!なんでクロエはこのバカを連れてきたんダ!」


「起きてる、入っていい。」


 起きられた事に感謝!ないはずの心臓がバクバク言っている様な気もするし、身体は大丈夫かとあちこち触ってみる。大丈夫だ…腕も腹もある。しかし、二人がかりは卑怯じゃないか?前衛後衛分けるにしても、2人で魔法使ってくるにしても逃げ場はないし、油断してなくとも足を止めたり動きを止めればタコ殴りにされる。そしてそれの痛い事痛い事・・・。


 いくら精神が頑丈になってもね、廃人になる時は廃人になるんですよ!なにが思考速度が遅いだ!思い出しても腹立ってきた!あれ以上早くしたら未来視だろう!取り敢えず、八つ当たり気味に枕をボスボス殴る!次は負けない!絶対這いつくばらせてやる!


  挿絵(By みてみん)


「朝から何やら機嫌が悪イ・・・、青山は目を瞑レ!クロエは服を着ロ!」


「なんです・・・、ありがとうございます!ありがとうございます!まさか下着姿のクロエさんを見られるだなんて!俺の命日は今日ですか!?」


「見られて減るもんじゃねぇーからいいです・・・。クソっ!次は絶対ギャフンと言わせてやる!」


 寝起きだが腹立たしい!腹立たしいが、今いる2人に怒りの矛先を向けるのは違う。クソ、飯を食うか。呼びに来たならまだそこまでギリギリではないだろうし、ルームサービスではなくビュッフェなら多分やっているし、作ってもらわなくてもそこに飯がある。


「なんダ?どうしタ?ゲームにでも負けたカ?」


「いえ、非常に私的な事です。着替えて朝食を食べましょう。時間はギリギリではないと思いますが、下のビュッフェに行きます。エマ達はもう食べましたか?」


「あァ、私は朝粥を頂いタ。行くならお供するガ?多少腹にも空きはあル。」


「俺はSPなんで行きます!食べたい物はどんどん言って下さい運びますから!」


 立ち上がってそのまま早着替えをして一階へ。髪に櫛を入れなくても、寝起きで顔を洗わなくてもこの身体に瑕疵はない。礼儀が悪く嫌になるが、それでも腹の虫が収まらん!ビュッフェに突撃し、周りの客から見られるがそんなモノ無視して片っ端から料理を食べる。何なら青山に持ってこさせてそれも食べる。皿が山積み?ハハっ!怒りの暴飲暴食ならこれくらい食うだろう?


「い、いつもに増して食べるナ。」


「暴飲暴食を体現しています。少しづつ腹の虫は収まってきましたよ?」


 皿の山を見れば気分も落ち着いて来た。怒るのは別にいいとして、次に繋げる方法を考えよう。確かに賢者の言う様に速度が遅い。認識して発動していては追い付けない。なら、常に思考を回し必要な対処のイメージを作り、何が来ても対処した上で相手の上を行く必要がある。


 魔女も賢者も末端なら、そこにあるイメージは俺の中の物を使っているはずだから、要は取り出して具現化するのに時間がかかり、その先の法を破る過程で更に時間を食っている。なら、思考を済ませ常に法を破る手前で待機させる?う〜む・・・、ドックに行った時の様に常に煙を弄くり回しているのが理想なのか?


 いや、キセルは補助具。なら、補助具を脱却して何もない状態から瞬時に作り上げる方が早い?公安とヤラセをした時は拳銃を構えられてから対処した。なら、そう来ると予測出来ていれば、構える前に銃を落とさせる事も可能。魔法の極意を思い出せか。確かにそれぞれの過程を突き詰めていけば、総合的に出来上がる速度は早くなる・・・。


「シェフ!ウインナーにスクランブルエッグは!食料庫の開放をクロエさんの為に!あそこで美しい人が美味しそうに料理を食べているんですよ!?」


「に、兄ちゃんフル稼働だ!仕入れがなくなる!」


「青山さん、もういいですよ。落ち着きましたから。」


「腹一杯カ?」


「ええ、怒るのは終わらせて次に進む()を模索します。」


「ここにいましたか、スマホに連絡を入れても出ないので何処にいるかと思い探していましたが・・・、余り目立つ行動はお控えください。」


「おはようございます増田さん。少々イラッとする事がありまして朝食をお腹いっぱい食べていました。本日はどれから行うのですか?」


「エマ大佐は引き続き大使館と伺っています。私とクロエ、青山氏は東京ギルドの視察です。」


 東京ギルド。視察って事は雄二がいるのかな?前にテレビ電話した時は書類が高く積まれていたが多分、消化は出来ていないだろう。そこに視察に行くのも悪い気がするんだが・・・。


「行って大丈夫ですか?仕事の邪魔なら落成式当日だけでもいいですよ?」


「大丈夫・・・、助力をお願いします。」


 あっ・・・、コレ視察って言う名の仕事押し付けだ・・・。現状マスターとして仕事している人間は俺しかいない。なら、そのノウハウのある人間がいるなら、頼るのは当然だし大会でも頼れといった手前断れない。仕方ない、視察した時間分と落成式で滞るであろう分を手伝うか。


「青山さん、クエストボードに依頼はないと思いますが、あればそれを優先して解決。長丁場になりそうな依頼は無視でいいです。増田さん、限りある時間です。やれるだけ業務を進めるので書類の用意と、それに伴った構造改革をするかもしれません。最終的には木崎本部長の采配になりますが、問題点を洗い出しましょう。」


 そんな話をしてエマと別れ増田の車で東京ギルドへ。東京湾に建設されたギルドは大分ギルドより更に大きく、それだけ人の出入りが多い事を予測させる。そして、ギルドを中心とした戦闘区域には何もないものの、敷地に続く橋は片側4車線の計8車線。


 駐車場は全て廃止して降車場としての部分だけがあり、仮にここにスィーパーでない人が来るなら、シャトルバスを使うかコインパーキングに停めて徒歩。要人専用駐車場なんてものもないので、結構スッキリして見える。そして、大分と同じ様に身体を鍛える人に走り回る獣人、奥には露店も見えるので人は多い。


 ・・・、あれ?落成式って何時だっけ?庁舎の正面玄関は自動ドアなのだろうが、電源を落としているのか閉まる気配はない。まぁ、人の往来が多く下手に閉まれば、怪我するかドアを壊してしまいそうだが・・・。


「落成式って知らない間に終わってました?」


「終わってませんがゲートを収納したのでこの状態です。流石にゲートに入ろうとするスィーパーは止められませんし、政府関係者もここを頼って来る事が多い。稼働前だからと門前払いが出来ないのが現状です。」


「それって厄介事を役所が投げたしてギルドが割食ってる訳じゃないですよね?若いからって変な書類回して来てるの見つけたら厳重抗議しますよ?」


「そうしましょう!スィーパーはゲートに入る者!俺と共に戦うクロエさん、不甲斐ない俺に檄を飛ばすクロエさん・・・、素敵だなぁ・・・。」


 青山がヤバい薬決めてるんじゃないかと思うくらいトリップしているが・・・。俺が傷付き倒れる心配はなしかよ!今朝も魔女と賢者にけちょんけちょんにされたんだが?


「青山はいい。増田さん、私はこのまま正面からで?」


「ええ、変に隠すのもおかしいでしょうから正面からどうぞ。」


 増田がそう言うので車から降りて正面入口へ。人集りは出来るが近付いてこない。なんでかって?先に降りた増田が鉄柵出したからだよ!罠と柵に繋がりがあるかと問われれば、まったくない物の様に思う。強いて罠とするならば、飛びそこねて足が引っかかるとか?結構高い柵で網目もあるし、簡単には入ってこれないのだろうが、気分はパンダだな・・・。


「はしゃぐのは分かりますが、コレだと私がパンダになりません?」


「他の要人の方もこの様にして連れて行くので大丈夫でしょう。証拠に柵を見ても驚く人はいません。」


 確かに柵には驚いてないけど、柵越しに俺を見ようと人が集まってるよ!降車場からギルドまでは一本道だけど、そもそもグラウンドで道もない。さっさと進むか。そんな柵の道を小走りに進み、さっさとギルドの中へ。大分ではスーツ姿の企業人が多かったが、こちらでは自衛隊の制服着た人や警官が多い。これに落成式後は一般人が増えるとなると泣きたくなるな・・・。


「おお!待ってましたよクロエさん。お久しぶりっす!それに青山さんも。」


「久しぶり雄二君。1番人の多そうなギルド選んだけど大丈夫そう?髪の毛も寝ちゃってるし。」


「クロエさんのお願いでクエストボード処理をする事になったから、依頼があったらどんどん回して欲しい。もちろん、帰るまでの間だけど、出来る限り尽力するよ。」


 がっしりと雄二と握手。青山が珍しくまともな事を言っているのも得点は高い。ただ、トレードマークと言うか、ツンツンヘアーは鳴りを潜め落成式に向けてか、はたまた偉い人にはそう言うイメージがあるのかワックスでオールバックにしている。


「母親が煩いんです・・・、人の上に立つならそれらしい格好をしろって・・・。積もる話もありますが、マスタールームに行きましょう。」



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誤字脱字とかはあんま気にしないけど、エマのこれは話してるうちにゾンビのようだと思えたってことなんですかね
[一言] だんだん青山が好きになってきた
[一言] 賢者が羨む程の高性能…恐っ! 取扱説明書(カタログスペック?)見てみたい
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