表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街中ダンジョン  作者: フィノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

389/878

308話 犯罪者 挿絵あり

「俺が悪いわけじゃないんだ!あ、アイツが!アイツが俺を見下して・・・!」


「だから殺して燃やしたと。悪いがそれは貴方の事情であって殺された人の事情じゃない。大人なんだから分かるでしょう?罪には罰を。死刑ではないんですからさっさと刑を全うして下さい。ゲート奉仕刑は期限が区切られてません。指定された項目の両方、今回は35階層到達とクリスタル200個の回収です。」


 仮面を付けてタバコをプカリ。寝た犯人を連れて来たがよくある事で騒いでいる。スタートと言うか、やるのは6階層に行くのを見守ればいいのだが、6階層はセーフスペースなので7階層行きを見守るのが定常化しつつある。まぁ、何故5階層で見守り指定があったかと言えば、犯罪者を連れて来る刑務官が5階層を超えていない可能性がある為。


 今では警察側も15階層到達者を刑務官になる条件としているのでそのうち法律も変わるだろうし、何よりも5階層もモンスターはうろうろしているので、下手すると送り込む前に寝たままモンスターに殺されるなんて事も考えられる。


 まぁ、スィーパーである犯罪者を護送するので、その刑務官自体もそれなりに戦力に優れている事が求められ、本部長以外が送るなら最低3人以上は人員確保しないといけない。因みに、一般人の犯罪者が犯行後ゲートに入ってスィーパーとなった場合は、その分も罪が重なりかなり刑が重くなる。


 どれくらい重くなるかと言えば、万引き犯が逃げてスィーパーとなり、外に出た時点で確保されたなら15階層まで行けと言われる。年齢なんかも加味されるが、されたとしてもクリスタル70が最低ラインらしいのでかなり重いだろう。


 ただ、力がある分責任はあり、その責任を人権を盾に軽くしてしまえば世紀末に突入してしまう。ヒャッハー共が何故ヒャッハー出来るのか?数と武力があるからだが、スィーパーの場合武力が飛び抜けている。なので、本来守るべき罪なき人を守る為に、犯罪者の血で法は鉄の味を濃くしている。


 因みにタバコは別として、仮面は刑の執行時に付ける義務がある。誰が執行者か犯人に分からなくするためだが、俺の場合髪色と背格好でバレそうな気もするので、更に姿を見えづらくしている。家族が害されても事だしね。


「・・・、お前が燃えろ!燃えろ!燃えろ!!何もかんも燃えて焼け落ち、焦げ落ちろぉぉぉーーー!!!!」


 叫びを上げながら辺りを燃やそうとするが、やはり口頭説明ではなく手紙式が楽か。基本的に犯罪者は確保時に麻酔なんかで眠らされるので、何をしなければならないかの説明をしなければならないのだが、こうして逆上する者も少なくなく額に指示を貼り付けたりしてぼんやりしている間に蹴り込む事が多いらしい。


 まぁ、こうして襲って来るのを考えれば当然と言えば当然か。質が悪いのはゲート内は治外法権なので、蹴り込んでも罪にならない代わりに犯罪者が襲って来てもまた、罪には問えない。なので、仄暗いゲートの中では多分、刑務官と犯罪者の殺し合いが少なからずされているだろう。正義感が強いというか、行き過ぎた人には向くかもしれないな。天誅ではなく人誅を合法的に下せると言えば下せるし。


「ここで何をやろうが罪には問われませんが・・・、それはお前にも適用される事は分かっているよな?燃えれば尽きて事もなし。残るは煙で散ってゆく・・・。これ以上暴れるなら生きては帰れない道を辿る事になりますが、いいですね?」


 服が燃えるイメージがあろうと魔法糸で作られた服は簡単に燃えない。それは相手がどうイメージしようと、モンスターを一撃で倒せない時があるのと一緒で抵抗性を持っている。それが麻酔が抜けた後の回らない頭なら尚更だろう。まぁ、燃やされる前に炎は煙になって熱くも痒くもないが。


「うっ!あっ!・・・!なんで俺なんだよ!」


「外で罪を犯したからでしょう。真っ当に生きていれば少なくとも、知り合いでない貴方を私がここに連れて来る事はありませんでした。では、進んで下さい。」


「殺せよ・・・。国の犬が!どうやって罪を償って帰れって言うんだよ!」


「下された判決に従ってモンスターを倒して進み、刑を真っ当すれば法律上は犯罪歴が残るだけになります。その後をどう生きるかは貴方の問題なので私は関知しません。ただ、ライセンスは剥奪されているので、外で静かに働く事をお勧めします。」


「無理だろ・・・。」


「さぁ?ただ言えるのは殺された人は死にたくなかったし、殺した貴方はその人の人生を奪った。ハムラビ法典ではないですが本来償う方法のない事を償おうとしているんです。受け入れなさい。では。」


 話を終わらせ項垂れる男を7階層行きゲートへ投げ込む。何度かやったが気持ちの良いものではない。ゲートはソーツが持ち込んだが、この法律は人が作ったものだ。スタートの階層も本人未到達から開始なんて指定がある時もあるし、本当にこの刑罰は正当性があるのかは分からない。ただ、スィーパーがそれだけ危険な力を持つ事は忘れてはいけない。


 吸い終わったタバコの吸い殻を投げ捨てれば、少しずつ透明になろうとしている。送られたヤツの最後を暗示している様だが、この後はもう本人次第だろう。脱出アイテムでさっさと外に出て伊月に執行完了を伝えて執務室へ。


「はい・・・、ええ・・・、いえ!そんな事はないですよ?連日書類の山と格闘してます。」


「誰と話してるの?えらくかしこまってるけど。」


挿絵(By みてみん)


 部屋に戻ると何やら望田が、電話しながら百面相しつつペコペコ頭を下げたりしている。とくに仕事上でミスはなかったと思うが、知らない所でなにかあったのだろうか?


「あっ!いえ!増田さんからです!東京ギルドの落成式に出席するのかと言う問い合わせですけど、仕事が立て込んでると話してました。」


「雄二が本部長のギルドかぁ・・・。仕事抜きにしても行くかは迷うよねぇ〜、どこかに顔出すと他の所に行かなかったら角が立つし、行かないなら行かないでなんか文句出そうだし。最初の最初だから迷うなぁ〜。」


 5月頭には稼働予定の東京ギルド。正式名称は長いからあんまり覚えてもらえないし、大分でも正式な文章以外では見ない。まぁ、ギルドの方が短くて言いやすいし県名を頭に入れればそれだけでどこのギルドかもすぐ分かる。


 因みに大分は県として、大分ギルド以外に玖珠と言う山間の街に支部が1つある。高速も通ってるし市内から車で1時間から1時間半のところだが、県としてゲートが2つ出た為にある程度アクセスのいい所として選ばれた。


 まぁ、支部のゲートがスタンピードを起こしそうなら、本部のゲート入れ替えて迎え撃つ予定なので、あまり離れても空輸が面倒なんだよね。支部の機能としては本部とあまり変わりはないが、本部長の決裁が必要な書類はこちらに送られてくるので、お役所仕事と言えばそうなるのかな?


 設置しないで欲しいと言う声もあったらしいが、視察に行ったら静かだった街がかなり賑わっていたので、町おこしの様になったかもしれない。ただ、自衛隊後期教育後の配属先がここの駐屯地だったので、下手に自衛官に会うと元同僚じゃないかと勘ぐってしまう。


「行くと雄二くんや近くにいるメンバーも喜びそうですけどね。」


「そりゃあそうだけど、仮に行くなら代わり番ことか?ないとは思うけど落成式被ったらどっちに行くで揉めるしうちは来なかったで揉めるし、祝電と花飾りでもいい様な・・・。いや、行こう。少し早いけど慰霊もしないといけないから。」


「そうですね・・・、初のスタンピードから約1年ですもんね。式典とかもやると思いますが、そちらは?」


「個人の訪問で済ます。理由は同様で慰霊される側より慰霊する方が目立ってはいけない。てか、電話繋がったままだけど大丈夫?」


「ええ。電話の向こうで息を殺して、雑談から有利な事を引き出せないか探ってる息使いが聞こえます。」


 耳がいいのでそんな事も聞こえるのだろう。まぁ、何が有利かは別として話すなら普通に話せばいいのに。テレビ電話に変えてもらって向こうの映像を見るが・・・、向こうもこっちと同じか。書類の山が見える。


「お疲れ様です。どこもと言っては語弊がありますが、本部長の周りには書類があるみたいですね。」


「お疲れ様です。先ずは望田くんの監視は厳になさい。友人と貴女の写真を交換していますよ?」


「写真?ヌードでもなければいいですよ。撮られて減るものでもなければ、写真集なんて物も出したんです。内輪でやる程度なら目くじら立てません。」


「貴女が良いというのであればいいですが・・・、既に所在は公的なものでしたね・・・。望田くんへの苦言のついでと言ってはなんですが、東京ギルド稼働に伴い少し人員を貸していただけませんか?大分の時を考えると、アレ以上の人数が来ます。そちらも人手が足りないのは重々承知していますが、こちらが混乱すると色々と不味い。」


 増田が言う辺り本当にヤバいんだろう。東京都の人口は1400万人程度確かいたと記憶している。大分が約114万人として約12倍。庁舎も大きいし支部も何個かあるし、確かにこちらの比ではないな。


「まぁ、日本の首都ですからね・・・。夏目さん引き上げの話を今朝したので、そちらの立ち上げに携わってから自身の任地へ行ってもらいましょう。他はどこがどの程度足りないと言う予測ですか?」


「法律系の方はクロエのおかげである程度の確保できています。食堂も大丈夫でしょう。医療系は不安でしたが、お願い事に目処が立ち夏目さんが来るなら大丈夫でしょう。問題は鑑定師です。一応、五十嵐君、真田君、橘監査官に稼働後数日は協力をお願いし、以後は判定機と警察持ち込みで対応しようとしています。大分の方では鑑定師はどの様な推移ですか?」


「データだけ見るならそこまで混乱はないですね。個体成長薬が出土した辺りは増加傾向でしたが、すぐにデータ登録したので混乱はありませんでした。彼奴等に感謝するのは癪ですが瓶と中身の色が統一されてるのは助かった。ただ、揺らぎもあるので過信は禁物ですけどね。」


 作りたい物を作ってる宇宙人は高級品から粗悪品まで作る。まぁ、彼奴等なりのポリシーなのか使って不具合の出る物は作らないと言うか出土しないのだが、代わりに効力が微妙なものもある。個体成長薬で言えば頭は全員同等にいいのだが、代わりに獣度が変わる。基本はフェリエットだが、粗悪になるにつれて量を調整しなくても人っぽい二足歩行の猫になったりする。


 元々完成品と言う概念が薄い奴等なので多分、最初に作った物が完成品に一番近いんじゃないかなぁ・・・。料理とかも手を加えすぎるとカレーだったはずの物がハヤシライスになったりするし。まぁ、粗悪だろうと一定の効果は期待できるのでいいのだが、フェリエットがなぁ〜なぁ〜言うのは微妙に粗悪品だったからだろうか?


「揺らぎの件は個人の裁量なので私達には関係ありません。結局どれを飲ませても歩いて話し出すんですからね。獣人関係の法律はまだ細かい部分の目処が立ちませんが、独立自治は認めない様な動きになるでしょう。」


「ふむ・・・。そもそも独立して獣人国家を作ろうとさえ思ってないでしょうから問題はないと思いますね。ただ、獣人にとって分かりやすい法律は必要でしょう。無闇矢鱈と人に危害を加えないとか、勝手に物を盗まないとか。まぁ、法律と言うよりは憲章ですかね?小難しく言うより、悪い事したらご飯抜きの方がよっぽど獣人には堪えますから。」


 フェリエットが摘み食いしておかずが無くなり、スーパーに買いに走った事があったが、買ってきたおかずも何食わぬ顔で食おうとしたので飯抜きの刑に処した。そうするとこの世の終わりの様な顔をして地面を叩いていたので、かなり効果はあっただろう。


  挿絵(By みてみん)


「憲章・・・、一応その話も上げておきましょう。こちらでもポチ君を観察していますが、元気が良すぎてじっとしていない。元々豆柴だった時も活発な様でしたからね。」


「うちも一緒ですよ。優しくはあるんですけどね。」


「そうですね、私もフェリエットちゃんから煮干し差し出されながら『ちゃんと食えてるのかなぁ〜?仲間はずれなのかなぁー?小魚を恵んでやるなぁ〜。』って言われましたからね。」


「母屋じゃなくで離れに住んでるから仲間はずれか。理解出来れば分かってくる話だけど学習次第かな。そう言えば神志那さんのアプリは特許取れました?本人は別に簡単なものだからいらないと言ってましたけど、政府が介入するなら何らかの形で報酬がないと困る。」


「その件は話を進めています。日本限定となりそうですが、推移次第では輸出と言うかダウンロード販売も考えられるので、アプリの権利買い取りも視野に入れて話し合われています。実際私もポチ君にやらせましたが中々良い出来です。」


「まぁ、メンサ会員の神志那さんが作ったものですから、そうそう下手なものではないでしょう。さて、脱線してしまいましたが人員の貸出は考えてみるので人数を出して下さい。そちらは警察も自衛隊も近くにビルを構えたので大規模ではないでしょう?」


「ええ、それと落成式に参加していただきたい。政府として仲良しアピールがしたいそうです。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価、感想、ブックマークお願いします
― 新着の感想 ―
[一言] スイーパー犯罪は難しそうだな 未来は16以下以外ほぼスイーパーだろうけどどんなスタンスなのだろうか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ