閑話 70 開発秘話 上
人生とは何があるか分からん。だからこそ面白くもあり戸惑ったり首を傾げる事もあるのでござろうなぁ・・・。
「藤君藤君。ロボの設計は順調かい?」
「あの〜、斎藤殿?拙者は元々造形師であってメカニックではござらん。百歩譲ったとしてもギリで人形師でござる。」
「うん。作るのは前に藤君も言った4m級、構造的には拡張型外骨格式動力機関搭載パワードスーツ。そもそもの話をするとセンサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システムを経済産業省ではロボットと定義してるんだ。だから、これから作ろうとするものは厳密には人力駆動人形。ほら、藤君の得意分野だ。」
「う〜む・・・、丸め込まれているようでござるが、JAXAの方々にもやると言った手前作らぬ事はないが・・・。」
実は構想そのものはある程度固まっているでござるが、拙者の仕事はしがない原型師。科学的なモノの知識など無いに等しいでござる。それにJAXAの御仁達は『宇宙で使えるようにしてね。』と軽く言う。そして、斎藤殿は宇宙から帰って以来アグレッシブになったでござる・・・。
「藤君、能力と言うのは使わないともったいない。僕は宇宙に行って痛感したよ。今までギフテッドとかメンサとか、IQが高い分物事はある程度直感的に理解出来たし、終わりの形まで分かってると思ってた。でも、そんな事はなかったんだ。想像してもし足りない未知が確かにあそこにはあったんだ。」
「それはいいのでござるが拙者には知識がない。設計は出来たとしても更に使える材料・・・。」
「藤君は勘違いしてるよ。基本構造さえ・・・、アーキタイプさえ作ってくれればそれに僕が肉付けする。概ね使えそうな材料や構造思想はあるんだ。要は骨格模型を作るのをやって欲しい。」
「なんと!それなら話は早いでござる!実は嫁達を作った時に設計したものがあるでござるよ!バイオメタルは使用していいでござるよな?」
「ええ、人工筋肉のはバイオメタルファイバー予定です。それも遥さんに依頼してとびきり頑丈で軽い物を用意予定ですね。僕がいくら設計して作ろうとも本職には負けます。特に人と寸分違わぬお嫁さんを作れる藤君にはね。」
拙者含め嫁達も認めてくれたか。ならば拙者も付喪として全力を出そうぞ!それからは話し合いの日々。今まで作成しようと考えておった設計思想の作業用ロボは、戦闘機を流用しアームを取り付けたような物でござった。元々が輸送機の残骸をイジり、ゲート内での戦闘を支援する様な物と位置づけ、用途としても最終的には弾除けがいいところでござったな。
そもそもビームが避けられる運動性能の4m級ロボと言うのは現実的ではござらん。パイロットが座りレバーや組み込まれたプログラムに従い回避行動を取るようなものでは人の考えとプログラムが衝突してバグが生じてしまう。拙者なら魔術でどうにか出来るでござるが、他の職の方となるとプログラムを無視して壊して動かしてしまう。
それ程までに人とプログラムには齟齬があった。しかし、斎藤殿の思想はロボと言いつつなかなかユニークでござったな。動かすのは人、プログラムは計器制御や生命維持、他は索敵と言ったセンサー類のみで最悪索敵センサーは削るとまで言ってのけた。確かに人と機械センサーでは普通なら機械センサーの方が有利でござるが、範囲以外の点を考えると有視界戦闘を想定するなら眼の前のモンスターを倒さなければ始まらぬゆえ、戦闘時はセンサーがなくてもどうにかなるでござる。
代わりに生命維持系はふんだんに盛り込まれ、バイタル低下時の電気ショックは勿論、高槻殿が作成されていた医療ポッド風に回復薬の自動供給システムや骨折時はバイオメタルが締まり添え木の代わりをする等のシステムもあるでござる。そして、拙者の仕事はそれらを4m級の機体の中に収める事。モデラーとしての腕がなるでござるな!
「搭乗者の身体データとしてでござるが、身長170cm、体重75kg程度の成人男性を基準とするでござる。」
「プラスの誤差ってどこまで許容できますか?」
「遥殿、支援していただいた繊維はどの程度伸縮するでござるか?」
「う〜ん・・・、バイオメタルファイバーだっけ?あれって元々金属でしょ?使う前に特定の熱処理をすれば、わざわざ伸縮性って考慮する必要ある?ファイバー自体は細くなるかもだけど、延長された手足が大丈夫なら胴体部分が多少細くても大丈夫だって思うんだけど・・・。」
「目から鱗・・・!鱗って角膜!?角膜吹っ飛んだ!確かに遥さんの言う様にメタルファイバーは延長されて手足です!つまり、胴体部分は細くとも装甲取り付けで対応出来る!藤君!ヒロイックな外装よろしくお願いします!」
「ガレキ魂が唸るでござる!」
ここで着ぐるみ式になったでござるな。内側に金貨を溶かして塗り込み電気伝導率を向上させメタルファイバー、魔法糸、調合師の糸を織り込んだボティに入り込み頭はセンサー系を詰め込んだヘルメットを被る。
「中身はいいとして装甲なんかはどうするんでござるか?」
「リキッドアーマーは絶対です。これが糸の上に来ます。宇宙での体温保護は必要ですからね、この部分で熱管理を行う予定なので高槻先生にお願いして作ってもらいました。」
「斎藤君も中々面白い事を考えますな。最下層の繊維構造は宇宙服と同等。それを保護して長時間活動出来る様に冷気遮断件耐衝撃様になる比率のダイラタンシー流体を使ったリキッドアーマー。久々に腕がなってスペースデブリの衝撃にもギリギリ耐えられる程度の強度は出せましたな。」
ラボの皆で笑い同じ目標に進む。ここまでは順調でござったな、ここまでは。外部装甲試験でレールガンを耐えられるように試してみたり、ビームとは熱線が飛んで来ているのでどの程度の照射時間まで耐えられるとか・・・。
実際、ビームは鏡面曲面装甲をイメージして出来る限り流線型にデザインをしたでござるし、砕いたダイヤを使った超高級撹乱膜等も使ったでござる。宝石が無制限で使えるというのはいいでござるな。特大ルビーを使ったビーム砲とか作ってみたいでござる。
「飛行ユニットの使用許可がでない?待ってくださいどう言うことですか!?」
「どうされた斎藤殿?」
「ロボに飛行ユニットを組み込むのに許可が降りません。」
「なんですと!?」




