279話 実はもう居た? 挿絵あり
妻と望田と俺とにゃん太の4人?でギルドへ。一応服は妻がコスプレっぽさを意識して選んだ様だが、後ろの席で服が窮屈だとにゃん太が言う。基本裸族と言うか体毛で覆われていた猫に服を着せているので仕方ない。しかし、昨日の蓑スタイルじゃ駄目なんだよ・・・。尻尾で捲れて尻は見えるし、歩けば少し前も胸も見える。
息子も朝から猫特有の姿勢で背伸びする姿を真後ろから見て流石に慌てていたが、ギルマスがそんな自由奔放な半裸少女を連れ回しているのは色々とよろしくない。まぁ、窮屈だと言った後はどうでも良くなったのが外を見て楽しそうにはしているが・・・。
しかし、にゃん太はどちらかと言えばかっこいい系の顔立ちをしていた。なので俺もオスと思い込み男っぽい名前にしたのだが流石にこの姿ではまずいよな?昨日名前を考えるといった手前なにか別の名前を用意しないといけないのだが、人種と言うか猫種も何もかも分からないのでどうしたものか。
日本人と言われればそれっぽいし、違うと言われれば違うっぽい。宇宙と猫・・・、有名画像がちらつくが流石にあれは違う。なら、どうするのか・・・。あぁ、あの猫様の名を借りよう。
「フェリエット。取り敢えずそう呼ぶからにゃん太もそれで返事するように。」
「好きにするといいなぁー。なんと呼ばれようと何も変わらないなぁー。嫌なら返事しないしどっか行くなぁー。縄張り見て回ってないなぁー。」
本人?的にはどうでもいいらしい。このまま行くと人権いる?と聞けばいらないと言いそう。いや、その前に人権あっても不和が出ないか?学習すればいいらしいが現時点では貰った所で義務が足枷になる。人と同じ姿の全く別種族、ある意味頭の良い未開の部族と出会った様なものか。ただ、水道を教えればそこから水は飲むしガス台を教えて火を見せても怖がらない。
人の在り方を渡した手前、それが組み込まれているなら生活様式的な問題はないのだろうが、性格は全く別物なんだよなぁー。人で在ろうとする事と、個人である事は違うから総合的に見ると猫っぽい人ではなく、人っぽい猫と言う方がしっくり来る。ただ、それなら他の猫の言葉も分かるのだろうか?
「そう言えばにゃん太ちゃん改めてフェリエットちゃんは何歳ですか?あっ!歳ってわかる?産まれて今まで生きてきた年数だけど。」
「私はだいたい68歳〜72歳くらいなぁー。お婆ちゃんを敬うなぁー。煮干しと鰹節のスープより、茹でたササミがいいなぁー。」
「あら、お婆ちゃんならもっと柔らかい餌にしとけばよかったわね。いつもカリカリをよく食べてたから気にしていなかったけど。」
「チュールは貰うけど水っぽいのは嫌なぁー。たまにならペディグリーチャムを寄越すといいなぁー。無いなら鳥を取るなぁー。空飛ぶ大きい鳥は旨そうなぁー。」
ギルドが近づき飛ぶ海鳥を見ながら取る気満々の発言をしている。目を離すとそのままハンティングしてしまいそうだ。流石に少女が生の鶏肉貪り食うのはねぇ・・・。当然血抜きもしないので血塗れだろうし・・・。
「因みにどうやって食べる?やっぱり生か?」
「生でもいいけど初めての香草焼きに興味津々なぁー。マタタビをかけると興奮を禁じ得ないからたっぷり掛けるといいなぁー。」
香草焼きにって猫に悪そうな調理法で食うのかよ・・・。う〜む・・・、やはり一度検査なり何なりしてデータを集めないとどう扱っていいか分からない。ただ言えるのは、薬が一杯出たと言う事は少なくとも他にも獣人がいる可能性があるんだよな・・・。
ギルドに着いて裏から入るか正面から入るか迷った挙げ句正面から入る。分かってる・・・、総理ではないが歩く姿はよく眺められているのでもはや気にしない。えぇ!ヒソヒソとにゃん太の事を話しているような声も聞こえるけど気にしないとも!さっさと鑑定室へ入って調べてもらおう。一旦妻達と別れて向かうが神志那は起きてるかなぁ・・・。
私室と仕事部屋が兼用になったような部屋にはまた荷物が増えてエナドリの缶や鑑定した物が転がっている。掃除して片付けろと言えばすぐに指輪に収納してきれいになるのだが、人はやはりその手間さえも面倒くさがる動物のようだ。ただ、何処にも姿が見当たらないので本当に隣で寝ているのかもしれない。
まぁ、昨日の今日で疲れているのは分かる。何なら俺も今日はギルド休みにして閉店としたが有給は握りつぶされた・・・。まぁ、ガーディアンの被害は一応極秘とは言え出たし、疎開から帰らない人の処理もあるんだよ・・・。消えろブラック企業!だいたいお前の所の社員らしいからな?何だよ、過労死するくらいならモンスターと果た死合って候とか・・・。どうでもいいけど生きて帰れよ?
「オッ、おっ!( ^ω^)おっ!モザに自慢!写真をよこすにゃぁ!」
温泉に入っていたであろう神志那が現れた。前よりは若干腕にも筋肉が付いたようなので筋トレは持続中らしい。実際至ったので後は51階層を目指すだけなのだが、そう言えは忙しくて選んだ職も聞いてなかったな。それは後から聞くとして・・・。
「写真撮るのはいいですよ・・・。ここに来る時も撮られましたから。それよりもこの娘の鑑定して下さい。」
「いいけどまずはその娘立たせて!なんで転がる缶々追ってるの?」
「多分本能です。」
神志那の足元にあった缶が転がると、それを追う様に四つん這いで走り出す。普通にも走れるのに四つん這いなのは本能かな?ただ、バランスが悪かったのか立って追い出したが・・・。そんなにゃん太を尻目にスマホで連写している神志那はご満悦の様だ。ただ、仕事はしたのか連写音はピタリと止んで口を開いた。
「クロニャン人体錬成は禁忌って習わなかった?下手すると腕とか足、身体を持ってかれるよ?」
「真理の扉あるなら私は差し出しますよ・・・。どちらかと言えば私はホーエンハイム側ですって、鑑定できました?」
「結果は猫人。やべー、面白すぎて笑いが出るけどくっそ頭痛い案件が絨毯爆撃してきたぜー!まさか進化の過程をすっ飛ばしたミッシング・リンクが朝から歩いてくるとは思わなかった。んで、この娘何処で拾ってきたの?」
「・・・、元々飼い猫です・・・。」
「・・・、パァードゥン?」
「ウチの飼い猫です!」
「そうだなぁー。私はこの白いのに飼われてやってるなぁー。もふもふする権利をやる代わりに飯を食べさせてもらってやってるなぁー。」
流石に神志那も固まったか・・・。俺も逆の立場なら理解が追いつかないよ・・・。ただ、神志那は鑑定した手前ある程度は分かってるだろう?鑑定してどんなイメージが読み取れたかは知らないけどさ!
「個体成長薬をなんで飲ませたのか理解に苦しむけど・・・、クロニャンの好奇心が猫を殺さず人にしたのかにゃ?いや、そもそも人?う〜ん・・・、知能テストとかしないと分からない。けど、話せるならそこから学習できて・・・、共存か離反かでまた荒れる?」
笑っていた神志那が真剣な顔でブツブツ話しだしたが、デスクに座るとPCのキーボードを叩き、何かを検索したのかコチラに画面を回して見せてきた。外国のサイトの様だが内容的にはゴシップ記事かな?犬耳と尻尾があるしなやかな筋肉の黒人が走っている写真。ハハッ!既に獣人はいてコイツの元はドーベルマンとかかな!?
「眉唾なのか少し前に怪我した愛犬に薬のませたら人になったって記事があったけど、誰も信じてなかったしすぐに削除された。流石に私も嘘だと思ったけど・・・、クロニャンといると退屈はしないにゃー。」
「あぁ・・・、警告の前に既にいるんですね・・・。この個体成長薬って人に使うとどうなります?」
もしかしてだけど~、もしかしてだけど~、これってインスタント中位作れちゃうんじゃないのぉ〜?仮に飲んで至れるならアホほど貴重なものになる。何せ苦労しなくても強くてニューゲームが出来る。まぁ、ニューゲームも何も始める前に飲めばイージーモードなのだが・・・。
「ん〜、職に就ける年齢まで歳を取る。職に就いた人が飲むと・・・。」
「飲むと?」
「死ぬ。」
「毒!猛毒!なんで成長して死・・・、死ぬまで成長してしまう?」
「御名答。多分職に就ける掃除人増やそうぜ感覚だぜ!ソーツと出会ってから思考トレースをやってたけど、目標以外はどうでもいい割と私達側・・・、メンサとかでやる気なかった人が目標持って全力で走った感じだと思った。なら、そこにいい悪いはなくて、どうすれば効率性が増すのかを考えると・・・。手っ取り早くスィーパー増やしてある程度補填が効けば面倒な交渉を回避出来ると多分考えたにゃ。」
人手が増えれば楽だよね?だからコッチ来んな、見んな!って、お前達は増えれば増えたですぐに組織として組み込めるかもしれないが、人間が獣人を組み込める為の土壌なんてねぇーよ!
(あら、良かったわね。コレで他種族との付き合い方が学べるじゃない。)




