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街中ダンジョン  作者: フィノ


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278話 現実逃避 挿絵あり

 トコトコと歩いて入ってきたパッチリクリクリお目々の全裸少女?はにゃん太の餌入れからカリカリを手掴みで食べてマズイと吐き出した後、カリカリの浮かぶ水皿を手にとって飲んではマズイと吐き出して、面倒になったのか俺の寝転ぶ足元で丸くなった。ヤバい、なんか知らん少女が!猫耳と尻尾生えた少女が!人んちに勝手に入って来て猫の餌食って丸くなった!


 妻や息子も唖然としている。俺もどうしていいか分からない。足にほっぺたをスリスリしてくるが・・・、えっ!マジで誰!?居間に入る扉の影からバイトが顔を半分出してこちらを覗いているが、お前の友達?狼ならぬ犬に育てられた少女とか?いや、いくら辺鄙な所に住んでいるとは言えウチは一応住所は市がっくし未開の他でもなんでもないんだよ!


「と、父さんの知り合いだよな!?」


「貴方・・・、隠し子とか作ったの?生物実験的な意味で・・・。」


「・・・、なんか疲れたし寝ようか・・・。」


 多分夢、きっと夢。胡蝶の夢なら私は蝶になったんだったか?いや、いるのは猫耳生やして尻尾もある少女だけどもウチのにゃん太が猫又にクラスチェンジするには年齢が足りないよな?確か猫又って100年位生きてないといけないはずだし・・・。そもそも、にゃん太は猫で少女は一応人?なのか?耳が頭の天辺ではなく、こめかみくらいのところから斜めに生えているし、丸くなっても周囲の音を拾っているのかよく動く。


 尻尾は尾てい骨から続いているようだが、稀に尻尾の生えた人間と言うのもいるにはいる。まぁ、人は猿から進化したんだし先祖返りと思えば生えてもおかしくないが、キジトラ模様の耳と尻尾は流石に違うだろう・・・。


「お風呂借りてもいいです・・・、かぁ!?えっ!ちょっ!誘拐現場じゃないですよ・・・、ね?」


「なぁー・・・。」


「にゃん太ちゃん!?」


「カオリ!私達はきっと疲れてるんだ・・・。だから変なものが見えるし聞こえる。大人しく寝ようじゃないか。きっと寝て起きたらこの状況が好転してるはずだ・・・。」


 人と獣の違いってなぁに?答えは脳の大きささ!後は手先の器用さとか火を怖がらないとか!逆を言えば、それをクリア出来れば獣は獣人さ!ははっ!丸くなって寝ている少女の獣度は推定10〜20%。ならきっと迷子の少女だろう多分、きっと・・・。やっぱり寝よう・・・。きっとスカリーも『司、あなた疲れているのよ。』と言ってくれるはず。


 Xファイルは初期がいいな・・・。宇宙人は現物見てお腹いっぱいだしグレイはいなかったし・・・。まぁ、今更どっかの氷の下からUFOが飛び出してきても無事に帰れよーっとお見送りして見なかった事にする。


「待って下さい、起きて!起きて!!」


「そうだ!父さん起きろ!戦わなくっちゃ現実と!」


「いーやーだーねーるー!!」


「貴方駄々こねないの!家族の一大事よ!多分きっと・・・、にゃん太が妖怪になって猫娘になったんだから!」


「なら除霊とか陰陽師の領分だろう!?妖怪ポストに手紙書くよ!それこそもう!長文から単語まで各種類でウザったいくらい書くよ!?」


「書いてもいいけど書いてる間起きてるよな?父さん。代筆するからどうにかしてくれ・・・。」


「私は猫型ロボットじゃない!どうにかしろってどうするんだよ!?見てみろ!この子は丸くなって寝てる、なら私も寝る。WIN‐WINだろ?」


 魔女と賢者がまた笑い転げているのが鬱陶しい!絶対なにかきっかけあっただろ!?何だよきっかけ!さっきからバイトは顔半分出して覗いているし・・・。まて、おおいにまて。こっちに帰ってきてからバイトが母屋に入った事があったか?そもそもバイトは俺の事を主とは認めているが信頼からではなく恐怖心からだ。


 まぁ、元々モンスターなので害すれば殺すと延々と粗相をしない様に思い続けて来た。なので呼べば走ってくるしお手と言えばお手をする。そして出来る限り名を呼ばれない様に、或いは姿を見せていらぬ反感を買わない様にしていた。なのでバイトからすれば母屋とはたいそう居心地の悪い場所なのだ。


 なのに今日に限って言えば少女と共に現れて、ずっとこちらを見ている。そう、何をするでもなく顔半分出して事の成り行きを見守るように見ているのだ。身体を起こして問いかける。


「おいバイト!なにか言う事は!」


「いや、父さんいくらなんでも犬に話しかけても・・・。」


「いいから!煙をやるから筆談で話せ。文字は賢者にでも教えて貰え。」


「えーと、あのですねツカサ。そこまで言っちゃうと色々暴露っちゃう事になる様な・・・。」


『にゃん太様が怪我をしたので薬を使った。他の猫に負けたくないと言うので個体成長薬を飲ませた。』


 そうか・・・、猫って成長すると人型になるのか・・・、ってバカ!成長と進化を取り違えてるだろ!?成長って言ったら身体が大きくなったり頭が良くなったり器用になったり・・・。駄目だ・・・。全部今の姿に当てはまってる・・・。


 頭が良くなるなら脳の肥大は重要なので、四足歩行では頭部の重さを支えられず頭が下がる。イメージとしてはキリンが水飲んでる姿か。頭がデカい分首は上がらないので血流も悪いし、常に脳に血が溜まった状態。それだと死ぬ。器用さが必要なら少なくとも両手は使えないといけないので、余分な腕でもない限り直立する事になる。大きさは見れば分かる、各パーツを支える為に太ももは身体の割にムチムチしている。


 確かに進化だよ・・・。猫と同じ様に耳が動いているので人より集音性は良さそうだし、尻尾は元々バランスを取ったり感情表現器官なので無くなると逆に不便に感じる・・・。


 顔を見る限りヒゲはない。代わりに髪が長いがそもそも猫のヒゲは感覚器官なので他が発達すれば代用できる。試しに髪に手を突っ込むとほのかに温かいので人よりも髪で感じる部分が増えているのかもしれない。


 ド畜生!確かにこれは進化ではなく成長だ。今の地球に即した成長適応だ。ヤバい・・・、神志那がサラッと薬が大量に出だしたと言っていたよな・・・。えっ!ソーツって獣人増やしたいの?バカなの?いや、仮に・・・、そう仮にスタンピードで死亡した人達の補填を考えたとして人の成長速度は多分遅い。それこそ職に就ける年齢が知性や脳の大きさに関わっているとして、0歳から育てるより・・・、人口減少が始まって人が増えるかもわからない中でスィーパーを手っ取り早く増やしたいとするなら・・・。


 人よりも成長の早い小動物を改造した方が早いという結論もあるのではないか?少なくとも猫の成長は人の18倍から始まって4倍で落ち着く。つまりそれだけ早く大人になる。なら、なんでにゃん太は少女に・・・?


(そりゃあ学習期間は必要だろう?このままゲートに入れても職には就けないよ。僕だってこれに力を貸せと言われたら断るね。だって言った事を理解できないし職を理解出来ないじゃない。ただ、言っておくけどアレの学習速度は多分君達と同等だよ?)


 猫に人権を!てか他の動物に薬飲ませたらインスタント獣人が生まれる?いや、その前に本気になった犬にも勝てない人間が獣人に勝てる?別に勝ち負けじゃないけどさ・・・。学習期間って事は教えれば覚えるし・・・、そもそもただいまってにゃん太言ったよな?教えてもないのに人語を話す時点で記憶力は高いんだよな?


 外見だけ考えるなら12〜3歳かもう少し下。いや、肉どこから待ってきたよ?って、回復薬も瓶に対して容量がおかしいが、それが肉になったとか?人体の構成物質だけ見ればそこまで貴重なものはなかったしゲートから出るもので賄える。重要なのは割合でそれさえ成立させれば・・・、そもそも奴等に俺は身体作り変えられてるじゃん・・・。捧げ物して高級ボディーになってるけど、バランスを弄ってもらったし職は弄れなくても人の身体は弄れる。


 ソーツは人を学んだと言っていたが人の業を学んだのか?そりゃあ・・・、そりゃあね!猫耳の美少女がいたら確かにちょっと話してみたいし愛猫が喋れる様になったなら甘やかすけども!あぁ・・・、目が大きいのって確か心理学的に可愛く見えるからだったよな。


「結論、バイトとソーツが悪い!よし、寝よう。多分明日の朝には元に戻ってると・・・、いいなぁ・・・。」


「自己完結して端折りすぎ!えっ、これから猫人?増えるんですか!?」


「・・・、寝てます。」


「父さん・・・、寝てる人は話さないから。」


「あら?割とこの人疲れてると目を開けてはっきり寝言を言うわよ?何回か騙されたし。」


 横になったが狸寝入りは許されないらしい。かと言って推測の域はでない。そもそも個体成長薬は神志那も名前しか鑑定出来ていなかったので、バイトがにゃん太に飲ませたと言う状況証拠しかない。宇宙人、宇宙兵器、廃棄品に亜人・・・。そろそろ腹一杯で吐いていいかな?色々終わるらしいけど・・・。


「端的に言うと個体成長薬って薬が原因っぽい。詳しくは分からないから明日神志那さんに診てもらうか高槻先生案件かなぁ・・・。正直私じゃ手に負えないし、元に戻らないなら戸籍とか用意しないと・・・。」


 多分松田とか増田に言えば用意はしてくれる。そうでなくともこの薬の危険性を知らせないといけない。知らせないといけないが、ペットを家族としている層からすると本当に家族になるなら・・・。と、言う話がないわけではないし、独り身の人が野良を取っ捕まえて家族になろうよ〜としない事もない。


 普通に可愛がるならいいけど、メス猫だったにゃん太が結構可愛くなっているので変な気を起こす人が・・・。コレで大人なのかそれともこれから成長するのかも分からないし、どうしたものかなぁ・・・。一応、ゲート関連で性別や姿が変わる事があるのは例が少ないとは言え証明されている。しかし、種族?が変わるのは流石に想定外だ。


 いっその事バイト方式で作り変える?ただ、お前はペットの猫と言って本人から『何を今更、私はペットの猫です。』と返されると今度は喋る猫になって混乱しそうな・・・。駄目だ・・・、思考が空転してきた。いっその事数を増やして宇宙に出そうか?移民ならどっかの星で暮らすだろ、多分。


「取り敢えず服を着せましょうか。にゃん太?お洋服着るわよ〜。」


「お腹すいたなぁ〜、鳥が食べたいなぁ〜。美味しいモノをくれると嬉しくなるなぁ〜。」


 耳を動かし片目だけ開けて鶏肉を要求してくる。確かににゃん太は鳥取って食べてたな。元々魚より肉派だったが嗜好はズレてないようだ。う〜ん・・・、学習するとして何歳ぐらいの知能なのだろう?寝ると言って寝っ転がったままの俺の尻を手で押してモミモミするのはやめて欲しい。 


「にゃん太、服を着ろ。そしたら考える。」


「なら毛を纏うなぁー。ところで旅から帰った世話役1号はなんか白くなったなぁ〜。小さくなったけどいい匂いがするからこのまま枕になるなぁ〜。」


「そうか・・・、ならやっぱり寝るか。」


 あぁ・・・、うん。猫だ。髪の毛がそのまま身体にまとわりついて蓑来てるみたいになってるけど、温かそうでいいなぁ〜。春先だから抜け毛が大量に出そうだが櫛を使えばきっとカーペットとかに散らばらないはず・・・。モミモミしていた尻をそのまま枕にしようとしているが、このまま俺も寝ようかな・・・。


「なんで枕になる事を受け入れてるんですか!」


「なんかもういいかなぁ〜って・・・。」


「駄目ね。本当にこの人今日は電池切れみたい。ここまで言って動かないならこの後何言ってもテコでも動かないわよ。」


「だな。望田さん諦めよう。にゃん太・・・で、いいかは分からないけどなんか着るぞ。父さんの服でいいかなサイズ的に少し大きそうだけど。てか、父さんも服を着ろお尻丸出しじゃないか!」


「着せればいいなぁー。着て欲しいならさっさと着せるなぁ〜。」


「なぁーなぁー言う語尾は何なのかしらね?」


「腹減って困ってるアピールなぁー。何時ものカリカリは美味しくなかったなぁ〜。水も欲しいなぁー、温かいのはここにあるからいらないなぁー。」


 尻から離れて背中やら脇腹をモミモミしているが、結局尻に戻った。仕方ない一度起きて服を着るか。自分の家だからどんな格好でもいいのだろうが、流石に寝巻きに着替えるか。


「水道や調理器具は分かるか?」


「知らんなぁー。用意する事を所望するなぁ〜。」


「そうか、バイト。やらかしたお前は教育係兼お目付け役な?にゃん太が粗相しないようにしっかりと言って聞かせる・・・、意思疎通できるよな?」


(どうにかする、首はご勘弁を。)


「具体的な方針と問題発生時の対策を立案しきっちり知らせる事。薬の件は今回は一応不問とする。次から回復薬だけにしろ。」


 そう言うとバイトは外に出ていった。多分これから考えるのだろう。丁寧に玄関を閉めたのはいい心がけだ。さて、残りはにゃん太なのだが・・・、飼い出した頃メスと知らずににゃん太にしてしまったが今の姿では流石に新しい名前を考えないとまずいよな?妻と息子が世話を焼いているがさてどうしたものか・・・。


「何にしても保留か・・・。」


「今出来る事ってないんですかね?こう・・・、猫にあげたら駄目なもの調べるとか・・・。」


「ん〜、個体差があるからなぁ〜。基本的に駄目なものって猫の大きさだから駄目って訳で玉ネギとか人が食べても赤血球破壊してるし。」


 身体の中身が分からなければどうしょうもないな。猫の餌食ってマズイと言うのなら味覚は発達している。そして、味覚が発達していると言う事は味が分かると言う事。つまり苦いや酸っぱいがよく分かる。なら、舌でヤバいと感じれば吐き出すし食える食えないもある程度本人?本猫?で判断がつくはず。


 なら誤食についてはそこまで危惧しなくていいだろう。寧ろにゃん太をどう説明するかの方が問題だ・・・。やっぱり猫に人権を!と叫ばないといけないのだろうか?まぁ、人型にならない限りはペットでいいのだろうが・・・。


 そんな事を考えながら取り敢えず就寝して次の日。朝から居間で飯食っていたがにゃん太が俺の膝の上で飯を食べたいとすり寄ってきたり、煮干しばかり食べたりとフリーダムさに磨きがかかっている。実際行動自体は普段のにゃん太と変わりがないので気にする事はないのだろうが、行動を見ていて思うのは視点も体格も違うのによろける事がない。観察していて分かったがやはり尻尾は偉大で、髪とともにバランスを取る役割をしているようだ。


「おっはようございまーす!」


「新しい世話役なぁー!」


 にゃん太が走っていったが、気にせず卵スープを啜りながらテレビを見る限り。ガーディアンの被害はなし。出現した国では対策が間に合い何もなかった。寧ろ、誤動作で我が国を貶めたのではないか?謝罪と賠償を要求すると声明が発表された。裏話を知っているのでなんとも言えないが、責任転嫁も甚だしいしそもそも誰に対して謝罪と賠償を求めているのだろう?


「えっと・・・、君誰?親戚の子?」


「にゃん太なぁー。こっそりくれるチーかまは背徳の味なぁー。もっとくれる権利をやるなぁー。」


 いや、被害ないなら謝罪だけだろうし賠償と言う言葉を出した時点で何かしらの被害があったと言っている様なものでは?ワンセット感のある言い回しだが、そのままワンセットで発表すると駄目だろ・・・。一応被害が本当になかったか国連の視察団が入国を希望しているとあるが、埋めておしまいなんじゃない?


「おはよう結城・・・。」


「お、おう。今度は何があった?」


「犬が筆談してにゃん太が人型になって、その前は父さんが宇宙に行って宇宙人と話したな・・・。」


「なぁ親友。時には逃げ出してもいいんだぞ?」


「それ父さんが言ってた言葉だろ?逃げ出してもその先にはやっぱりなにか別の現実があるんだ・・・。なら、少しでも分かってる道をおっかなびっくり進んだ方がいいだろう?幸い、一緒に歩いてくれるやつはいる。」


「そっか・・・、ならぼちぼち歩こうか。で、にゃん太ちゃんはどうすんの?新しい家族とか発表するとまたなんか騒がれるけど。」


 ソーツとの邂逅からの一連の出来事は一旦収束かな?現在進行系で発生している問題は結城君にまとわりついているにゃん太だが、何にせよ調べてみないと何もわからない。


「おはよう結城君。遅れないように那由多と行ってくれ。にゃん太はこっちで引き取るよ。」


「おはようございます司さん。では、那由多借りてきますね〜。」


 息子を見送って俺とにゃん太も出勤準備。さて、神志那になんと説明しようかな・・・。


   挿絵(By みてみん)


「窮屈なぁー。」



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― 新着の感想 ―
[一言] 予想外の原因と変化が最高過ぎですw
[一言] どうして猫の日(昨日)に投稿しなかった…
[一言] 江戸時代の落語だと猫又になるのは飼い猫歴10年で行けたはず ソーツにとっては最早進化と成長に区別はないのか トカゲの類に飲ませればダイノサウロイドになるんだろうか 比較的知的と言われるのは…
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