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街中ダンジョン  作者: フィノ


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245話 地元へ帰ろう 挿絵あり

「千代田さんも待ってるんでそろそろでますよ〜。」


「最後の確認するからちょっと待って〜。」


 朝のルーティンを済ませた後、各部屋を見て忘れ物がないか最後のチェック。昨日も帰ってからやったがやっぱり最後の確認は重要だろう。コレと言った忘れ物もなく住み慣れてしまったホテルの一室は朝頼んだルームサービスの食器だけが生活感を漂わせる。領収証はないが、仮に支払いを請求されたらいくらになるやら。多い時は4人、少ない時で1人。その人数で飲み食いしたり寝泊まりしたので考えたくない額ではある。


 そんな旅立ちの朝、頼んだモーニングには一通のメッセージカードが添えられており内容は『よい帰路を。スタッフ一同より』と、一言書いてあった。お世話になったので袋いっぱいのコインチョコを食べ、包紙に金貨を包み俺からも『長い間ありがとうございました、皆さんで楽しんでください。クロエ=ファースト』とメッセージを添えてテーブルに置いた。


 チップの文化はないが、大食らいがいなくなった打ち上げ代くらいにはなるかな?生活的にも不規則な事が多かったので、お世話してくれた人達で宴会でもして労をねぎらって欲しい。今までならホテルから引き上げる時はボストンバッグやらキャリーケースが必要だったが、指輪に収納すれば手ぶらで帰れる。それがまた物悲しくもあり新鮮でもある。


「なにがありました?」


「な~んもなし。後は車で千代田さんから限定プレオープンの話を聞くくらいかな?」


 エレベーターで一階に降り姿を隠さず堂々とロビーを歩く。一般利用者もいるので注目を集めるが旅立つ時までコソコソとしなくていいだろう。それに、俺がここに泊まっているのは噂で広まっている。行きつけのコンビニ店員にも別れを告げたしここが最後だ。


「チェックアウトを。」


「畏まりました。長らくのご滞在誠にありがとうございます。当ホテルはいかがでしたか?」


「文句なく最高でした。ささやかながらお菓子を部屋に置いているので皆さんで食べてください。」


「ありがとうございます。では、これでチェックアウト完了です。よい旅路を。」


 ロビーで見送られながら外に出ると千代田が黒塗りの車でスタンバイ。スターになった気分だが、有名人である事を否定できないので、たまにはカッコつけてもいいだろう。テレビCMでギルド稼働日が告知され責任者として名前も出ているので報道陣も詰めかけている。振り返らずに片手を振りながら車に乗り込み出発。この分だと地元の空港にも人が詰めかけてそうだな・・・。


「相変わらず凄い人気ですね。なにか秘訣ってあります?」


「もしかしたらカオリのファンかもよ?米国での立役者に迫る!とか。でもカオリはあんなのに追っかけ回されたい?」


「ズボラがバレるのでお引き取り願います。夏目さんは先には現地入りするって言ってましたけど千代田さんはなにか聞いてますか?」


「何かというよりはプレオープンの手伝いです。クロエが増強配置と言うので増やしましたが、本格稼働していないのに当初の予定よりかなりの人数が押し寄せています。」


「押し寄せるのはいいですけど今って温泉とトレーニング施設と・・・、もしかしてR・U・Rも稼働試験とかしてます?」


「ええ、アップデートに対応する為に通電及び稼働試験を実施しました。企業側から使用した感想を多くの方から集めて欲しいとギルドでも開放したのですが、地方初と言う事もあり長蛇の列です。他の施設についてもゲートをギルド内に収納した為、暇になったスィーパーが利用しているそうです。」


「無料なら使うよね〜。って、休めよスィーパー!2、3日稼がなくても死なないだろう!それでも潜りたいならもう一つのゲート行けよ!」


 憩いの場にするつもりはなかったが基本ギルドの施設は無料である。いつ誰が使うか分からない所に人を配置するつもりがなかったというのもあるが、基本的にはライセンス習得スペースと相談所と販売及び出土品の販売と鑑定、その他はスィーパーが食事したり待ち合わせしたりする所というイメージしかなかった。しかし、温泉が湧いてジムがあって、最新のゲーム機まであるスパリゾートに何時しか変貌を遂げてしまっている・・・。


 ギルド飯の値段を釣り上げるかな?金貨で払って貰って差額が美味しい額まで。無料の馬肉やら魚やら鳥を使えば丸儲けも出来るが、魚以外あんまりおすすめではない。


「来場者の声としては早くライセンスの発行をして欲しい。ギルドを通しての安全な売買がしたい。ファーストさんに会ってお持ち帰りしたい。等々整理はしましたが多岐にわたりますね。」


「千代田さん!なんかやばい人いますよ!どう考えても誘拐予告です。SPである私の腕の見せ所ですね!」


 一匹おかしなのがいるが多分青山だろ?あいつも先に行って手伝ってこいと言って送り出した。ご褒美はライセンスNo1カードと認定者である俺のサイン。そこまで欲しいかと聞かれると悩むが世の中には取り敢えず1番を集める人もいるし、青山の場合本命はサインだろうから納得しているならどうでもいい。


「上がった意見としては稼働すれば解決できそうなものばかりですね。仕事量は別としてですが・・・。事務スタッフも既に現地入りして明日の落成式後にそのままフル稼働と言う流れで大丈夫でしょう。そう言えば増強って何人来てるんです?」


「伊月警部以下20名程現時点では来て頂いています。必要なら直接お願いすればもう少しは増やせるそうです。」


「あの人も大変だなぁ・・・。警邏したり警備したり。」


「知り合いですか?」


「カオリは知らないのか。私が最初に尋問を受けた人。多分今は消されてるけど0時の魔法を見た人かな。」


 仮にあるとすれば高槻がデータを持ってるくらいかな?それも残っているかわからない。最初は学会で発表したいとか言ってたけど、状況が状況だけに抹消されているだろう。また1つ男としての俺の痕跡がなくなったのかな?まぁ、未練はないので莉菜が保管しているアルバムだけあればいい。因みに俺の両親も写真やアルバムを莉菜に送り実家にはディープフェイクの写真があるそうだ。


 いつ帰るかわからない実家の部屋は、たまに送られてくる母からの写真で見るとプラモやガチャポンフィギュアがなくなり、代わりにファンシーな縫いぐるみとパステルカラーのベッドなんかが置いてある。なくなった物は母が指輪に収納しているそうなので、死ぬ時に思い出ごと持っていってしまいそうだ。


「貴重な体験者ですね。口は堅いと?」


 望田が興味深そうに聞いてくるが、あの映像って誰まで見たんだろう?少なくとも橘は見てる。ヘリでかっ飛んできたから千代田も見てる。ならその上となると警視総監とか?松田や大井、黒岩も知っていたが映像まで見たかどうか・・・。まぁ見ても男の俺が映るだけで呪いのビデオではない。


「この方は私を見て嫌な顔をした。そういう人です。警察官としてはある程度信用が置けるでしょう。それに宮藤君の元パートナーでもありますしね。」


「あ〜、身内いたらよっぽどじゃないと裏切らないですね。増強はこの方だけですか?」


「面識があると言う事でこの方と柊と言う婦警が警察とギルドの窓口になると思って下さい。そう言えば大井さんからの言伝で『自衛官が部隊として入る時に多少融通してくれ』だそうです。」


「空き部屋で着替えるなら別にどうぞ。私服なら一般人なので関与しません。スィーパーでない新兵なら人数次第では融通しますが、余程の事がない限りはノータッチと伝えて下さい。そもそもライセンスはギルドだけじゃなく警察署でも発行できるので必要なら機材貸出を打診すればいいですよ。」


 大井が言いたいのは駐屯地増やすから箱よろしくだろうな。電波塔建設でゲート内も東京限定だがかなり電波が良くなった。しかし、それにも限界があり一つ区を離れると電波がすぐに悪くなる。携帯会社ではないがエリア拡大は自衛隊としても急務であり、それを作るための資材やら人材がいれば協力してくれと言う話。


「了解しました。人数次第では融通してもらえると伝えておきます。」


「ええ、その様に。と、着きましたね。しかし人が多いなぁ・・・。」


「張り切って堂々と正面から出ましたからね。隠れます?」


「いや、最後だしいいよ。」


 車を先に降りた千代田が扉を開けてくれるので降り手を差し出す。その手に千代田も手を重ね固い握手。なんだかんだでコイツともぶつかったり話し合ったり酒飲んだりと色々したな。秋葉原の時はどれだけ話し合ったか。


「一般市民である貴女を長々と拘束してすいませんでした。これからも大変ですが頑張ってください。」


「ええ。これからと言うより明日から既に忙しいですが、本部長としてまとめてみせましょう。ただ、これから何かあればまた連絡しますからね?専属ネゴシエーター増田 竜一。」


「私は・・・。」 


  挿絵(By みてみん)


「亜沙美ちゃんのお父さんの増田さんでしょう?平時ならそれでいいじゃないですか。有事なら変わりますけどね。では、お疲れ様でした。」


「私も行きますね、何があっても守ってきます!」


「君の守りは分かっています。頼みましたよ。」


 増田と別れてそのまま搭乗口へ。良かった、これで待合室で待つなら格好がつかない所だった。そんな別れを経てようやく地元へ!フライト中にやる事と言えばスマホでニュースを見るくらい。一面はギルド稼働の事ばかりで国内は安定しているようだ。国際記事を読むと『欧州にも中位誕生か!?』と言う見出しが、内容はどうも眉唾っぽい。特に『関係者は口を閉ざした。』とか書きたくないか取材してない時の常套手段だろ?他は不死者のデスロードと言うB級臭のプンプンする映画の話とか?主人公を務める男が本当に不死らしいが実弾使って映画撮るとか周りは迷惑だろう。


 ニュースよりも面白いのがネット広告かな?魔術師講座なる怪しい通信教育の広告があるが、監修は知らんやつ。お決まり文句は個人差がありますとあるので怪しすぎて笑えてくる。初回の安い定期購買型の本は週間橘を作ろう?プラモデル鎧を作るのはいいが許可した人の名に宮藤とあるので私腹を肥やしているようだ。


「クロエ、そろそろ着陸しますよ。」


「あっという間だな、また報道が待機してるのか・・・。」


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― 新着の感想 ―
[一言] そのうち広く知られるようになってモンスターモードのバイトフィギュアとか人気になったりして
[一言] 故郷への帰国おめ! やっとここから一話に繋がる地元編っすね
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