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街中ダンジョン  作者: フィノ


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243話 旅立ち 挿絵あり

 都内某所の会場で新旧合わせてのお見送り。これが終わって明後日には帰れる手はずである。帰って翌日にはギルドの落成式をやるので忙しく飲み事が続くが祝と酒は切り離せないので仕方ない。いつもはハイボールな俺も今日はハイソにワインやシャンパンを嗜んでいる。メンバー的には海道が未成年の為飲めないが、これも動きがあり酒造メーカーと政府がなにか取引でもしたのか、スィーパーに限り16歳から飲酒及び喫煙を可能にしようという動きがある。


 回復薬を使えば両方ともリスクなく摂取可能な点と、何より大きいのがゲート内と言う極限状態で、嗜好品と言う精神安定剤は必要なモノではないかと議論に上った。税金を毟り取る手立てとしては嗜好品を使う層を増やせば税収は上がるし、問題となる健康被害も帳消しになるならないも同然。


 まぁ、白熱した議論と言う名のプロレスは賛成多数に傾いているので、ここ1年位で今の年齢から引き下がるんじゃないかな?当然といえば当然だが、飲んで問題を起こせば受ける刑罰は重くなる。ついでに言えば、今年の中頃から中学生に対してゲートやスィーパーについての法律も義務教育化するらしい。


 知識もなくスィーパーになれば法に触れる可能性もあるし、ゲート内が自己責任と言う言葉を甘く捉えない様にする為、早期の教育実施は歓迎するところだな。乾杯の言葉は早々に済ませ、立食パーティーと言う事でそれぞれが好きなように飲み食いしつつ話している。


  挿絵(By みてみん)


「なぁなぁ宮藤たん、これって持ち帰ってええんかな?残ったらもったいなしい歳食ったおじぃ達は少し摘んで食べへんし。」


「華さん持ち帰るってどうやっ・・・、ここでタッパを出したらダメです。そんな事したら食べ放題の店とかだと無限に食材が盗めるでしょう?ちゃんとここで食べられる分だけにしなさい。」


「かたいで宮藤たん!食える時に食っとく、買える時に買っとく、貰えるもんは貰っとく。ゲートで活動するなら・・・。」


「食べるのはいいですが、買っても貰ってもいないので諦める事。持って帰ったら晩御飯をこれから数日、ここのビュッフェ飯で済ませるつもりでしょう?ご飯が惣菜なのはいいですけど迷惑かけたらダメです。」


「ぐぬぬ・・・、この飯とか旨いんやけどなぁ。ならパーティー終わって廃棄行きならええよね?」


「ん〜、そこは自分で交渉してください。と、クロエさん目標達成おめでとうございます。ようやく地元に帰れますね。」


 海道の身元保証人となった宮藤は中々楽しい生活を送ってるようだ。宮藤がこちらに残ると言う事で、駐屯地に間借りしたままでは不便があるとアパートを借りて2人で生活している。割と海道は甲斐甲斐しく宮藤の世話を焼いている様だが、生い立ちもあり儲けてはいるが変な所で節約しようとするらしい。


「ありがとうございます宮藤さん。先に地元に帰って待っておきますね。まぁ教導もどれくらいかかるか分からないですが納得行くまで存分にどうぞ。」


「本当は一緒に帰る予定だったんですけどね、研修会や教導官を引き受けた以上仕方ないですね。ただ、暇な時は奥の攻略を手伝ってくださいよ?現状51階層以降は誰も行っていないんですから。」


「誘うのはいいですがちゃんと休んで下さいよ?海道さん海道さん。このワーカーホリックな旦那さんは無理矢理にでも休ませないと仕事というかゲートに入ろうとするので縛ってでも休ませて下さい。」


「引き受けたでクロエちゃん!撤退使えば退路は奪えるからどんどん外堀埋めてうちの魅惑のボディーで悩殺したる。」


 そう言いながらお子様体型の海道が宮藤の腕にグリグリと平坦な胸を押してけているが、それに負けたら犯罪臭がするのが否めない。まぁ年齢的には結婚出来るし身長は俺よりもあるのでまだ大丈夫なはず!宮藤的には保護者としているようだが、事実は同棲生活なので本当に転がり方次第だな。


「先ずはそっち方面よりも勉強と奥へ行く事ですね。至るのはそのうち予感めいたものがあります。それまでは準備期間として様々なものに触れましょう。」


「はぁ〜い。とりあえず今はお腹が空いた予感がするから飯食ってくるわぁ。」


 そう言うと海道は皿と箸を持って料理に突撃していった。彼女は栄養を余すことなく吸収できるようでトイレも余りいかないらしいが、それでも結構食べる方らしいので食いだめしたいのだろう。スィーパー全般に言える事だがゲート内を長期で旅するので、飯問題や排泄等は早期に打開策を見つけるとか。まぁ一番無防備になりやすい事柄なので回数を減らしたりやらないに越したことはない。


「実際今の研修生で予感めいたものがある方はいますか?」


「まだいないようですが、彼等としても本部長の先を見ているので年内にはと言ったところじゃないですか?それぞれの考えや思いもありますからね。」


「一応何もなければ庁舎建設完了と同時に配置になるので、それまでが研修期間と言えばそうなりますね。至ってなくても気負うなとは言っておいて下さい。誰がどう至れるかは分かりませんから。」


「それは重々承知してるんですが、他国から中位が出て浮足立っているのは否めませんね。研修を受ければ至れる、講習会だったから至れた。そうではないと言っているんですが、人の気持ちなので中々。なにかいい案とかあります?」


 逸る気持ちが分からないでもないが、研修会を始めてまだ一月そこそこ。1人で、或いはチームで今までゲートを旅して奥へ行っていたという自負もあれば、中位や英雄と呼ばれる人から指導されているという責任感もあるのだろう。


「手っ取り早いのはメンバーの誰かが中位に至る事。私の時も卓君が至ると他の方も至りやすかったように思います。それ以外だと対話する事を面倒くさがらない。興味のある事や自分と向き合う時間を増やす。至りたい自分、至った先の自分そして、明確に何がしたいかの目標を持つとかですね。試しに藤君にでも講演会してもらったらどうです?彼は研修生の前で中位に至りましたから先輩の話よりもすんなりと入るかもしれません。」


「ものは試しですやってみましょう。では自分も他の人と話しています。ずっと独り占めにしてたら他の人から恨まれますからね。」


 そう言った宮藤は海道を追う様にテーブルに向かい、久々に顔を合わせたであろうメンバーと話している。俺も一服したくなり壁側に寄りタバコを口にした時に、ポッとタバコの先に火が灯ったのでわざわざつけてくれたのだろう。ただ一吸したら消すかな。大丈夫だと分かっていてもマナーと言うものがある。


「主賓が端っこでいいんですかねぇ?」


「そうそう、真ん中でばんばん食べちゃってよ!」


「主賓なので好きにできるんですよ。祝われる人間が窮屈だと他の人も窮屈に感じるでしょう?」


「ちげぇねぇ。ギルド稼働おめでとうございますクロエさん。妻ともども前途多難にならない事を祈っときます。」


「いやぁ・・・、軽く見積もっても数日缶詰になるんじゃないかって量の仕事がありそうなんですよね・・・。まあ1号なんで他の人が楽できるような配置やら運用を模索しますよ。裕子さんは結構お腹目立ってきましたね。順調ですか?」


「目茶苦茶順調で気が早いけどもう動いてる気がするかも。回復薬様々でつわりとかないから楽なんだけどついつい仕事にかまけたり・・・。」


「俺は休めって言ってんだがよぉ。なにかしてないと落ち着かないって言ってな・・・。高槻先生に2人で話したら軽いウォーキングとか水泳ならいいんじゃないかって言われたんだがこいつときたらねぇ・・・。」


「数十キロ単位で泳ぐのは軽いねぇ。」


 どう考えても軽くない距離を泳いでいるようだがどうなのだろう?ドーバー海峡横断も職ありの経験者がすると往復して再出発も出来るらしい。潜水の記録も最近更新されて214mがギネス記録だったが保持者が職に就いて再挑戦したら、軽く倍は潜ったそうなのでギネスやらそれに限らずともスポーツ全般の記録は飛躍どころか異次元にかっ飛んでいっている。フルマラソンなんて2時間の壁と言われていたが公式記録で30分弱、非公式ゲート内だとコンマの世界である。


 そこから考えるとスタンピードはやはりよくないな。モンスターを倒すはずが全力を出すと自分の力で周囲を破壊してしまう。実際俺も潜るなら1人が楽だと考える時がある。仲間は必要だとは思うのだが相性が悪いと巻き込んでしまう。望田と潜ったのもどの程度(・・・・)まで耐えて付いてこれるかを試す為。結果としてガチガチに守りを固めればある程度耐えれるし1人程度なら背中にでも背負えば大丈夫なので問題はないだろう。映像には残さなかったが魔女が張り切り過ぎで49階層の少なかった山がかなり消えてしまった・・・。ま、まぁ?俺も楽しくなって魔女と代わった後に吹き飛ばしていたので何も言えない。いい娯楽である。


「程々ですよ。つわりがない分動けますけどやり過ぎるとお腹の子にさわりますよ?」


「いや、それがよぉ。最適化って覚えてるか?」


「覚えるも何もみんなで51階層にこの前行ったばかりでしょう?えっ!そこで何かあったんですか!?」


「そこは私から。エコーとかで胎児の様子が見れるじゃないですか。その時言われたのが一般的な胎児よりも少し脳形成が早いらしくて・・・。多分あれですよね?私達の頭の中もあれなんで。」


 職には就けなくとも胎児の時から脳は何らかの影響を受けると?ん〜、51階層がキモなのかゲートに入るのがトリガーなのかは分からないが、そのうち頭が悪いという言葉が無くなりそうだな。既存のテストは記憶力さえ良ければ満点が取れるし、あとは応用さえできればどうとでもなる。そうでなくとも海馬が大きければイメージや空間把握能力は上がるので職は使いやすくなる。ん〜、及第点を底上げしてくれてるとか?


 掃除が楽になればスタンピードは起こりづらくなるし悪い話ではないのだろうが、数世代先でどうなってるかは分からないな。そもそも俺は脳みそないし。記憶は多分あのツボとかモニターに詰め込まれていってるんだろうし。寧ろイジれるなら何か扱いやすい形に作り変えた方が効率的なのだろうか?・・・、下手にいじるとなにがあるか分からないので辞めておこう。


「何かあればすぐ言って下さい。設置者をフルボッコにして償わせます。」 


「・・・、そん時はお願いします。でも今はすくすく健康に育ってるんでどんな子であろうと私は産みます。」


 母は強しと言うけれど井口もそれの仲間入りだな。赤峰と愛おしそうにお腹を撫でているのが微笑ましい。しっかしこれで更に奥に行く理由が増えたな。正常に産まれてくればいいが何かの際にはソーツに交渉ではなく鉄拳をくれてやろう。戦えるかシュミレーションしてみると負ける要素がない。剥奪されたモノはソーツではなく魔女達に送られているようなので、諦めさえしなければゾンビアタックがいくらでも出来てしまう。まぁ、交渉で穏便に済ませられるならそれに越したことはないので、早めに祭壇を探そう。


 ただ井口よ。回復薬があって飲んでも大丈夫だからってあんまり飲みすぎるなよ?赤峰の方が飲んでる姿見てオロオロしてるじゃないか。子煩悩になりそうとは思っていたが、そのうち産まれてきた子供に空手を教えだして英才教育しそうだな。元々2人の子供は中位同士の子供と言う事で注目度も高い。下手に攫われたりしないよう気を付けてもらおう。そんな2人の所に兵藤と弟子的な泰山と浦橋が加わり井口のハーレムが形成されている。みんなマッチョなので大変暑苦しい。


「待ちに待った2人の時間です。大分ではどこで2人で住みますか?赤峰夫妻が羨ましいなら子供を作りますか?」


「物覚えが悪いようだから脳みそ交換してもらえ。私には家もあれば子も妻もいる。そろそろはっ倒すぞ青山!」


「ユーモアは大切と教わったのでウイットに富んだジョークです。どうでした?」


「回答ははっ倒すぞ!だ。相手を不快にさせるのはジョークではない。寧ろお前分かってて言ってるだろ?」


「分かっていますがかすかな望みを捨てるわけには行きません。10回で駄目なら100回、100回で駄目なら1000回とどんなに辛くても諦めずに続けていれば何時かはたどり着けます。物事とはそうやって積み重ねていって初めて作り上げられるものだと思うんです。」


 なんだろうなぁ・・・。すげぇいい事言ってるはずなのに行き着く先の目標が俺と添い遂げたいとか言う馬鹿げたものなので、執念深いストーカーの妄言にしか聞こえない。おかしいなぁ、頑張れば主人公張れそうなスペックはあると思うんだけどなぁ・・・。青山は頭の痛いやつだったが、何気に奉公する者も頭痛いんだよなぁ。身体が邪魔になったら何時でも精神を抜き出して開放しますとか言うし。


 ただ俺以外に対しては勇者やら聖人君子やら的な接し方で困ってる人は助けるし、余程の事がなければお願い事も断らない。そしてスペックが高いものだから解決してしまう。なんだろうなぁ・・・、ゲームで操作する主人公的な思考とでも言えばいいのか、とりあえず法に触れることはない。次いでに言えば行き着く先が俺の良い評判に繋がる事が多いのでこれも奉公の一環なのだろう。


「お前と子を成す事は未来永劫ない。それで?準備は進んでるのか?」


「ええ、いつでも帰れますよ。元々荷物は常に指輪に収納するようにしてましたからね。ギルド稼働後はどうしたらいいですか?」


「基本的には新人のお守りがメインかな。ゲートに入るのは好きにしていいが中位でもないしあまり奥へは行かなくていい。」


「分かりました、それをメインで動きますね。1日は1回は面会していいんですよね?」


「報告をしに来る分には特に回数を制限しないが、ただ会いたいとかなら来るな。」


「ええ!ええ!何かしらの情報を探し回って持ってきます。この前ゲートに入った時は何もなかったですけどね。」


 地元に帰った時にフラフラとゲートに入って行ったと聞いたが、話を聞くと有用なモノがないか探しに行っていたらしい。ではその有用なモノとは?本人もなにがいいか分からず箱を手当たり次第に回収していたらしい。まぁどんな出土品がどう転ぶかは分からないので間違いではないのだが、それをするくらいなら祭壇を探して欲しい。だがそれをお願いすると先に進んで死んでしまいそうなので中々お願いできない。こいつも至ってくれればなぁ・・・。ただ、裏切らない手駒というのはなにモノにも代えがたい手札なので放逐は出来ない。


「とりあえず命大事にやってくれ。私としてはこっから先、底に着くのは年単位でかかると思ってる。」


「探索者も底は知らないので何があるんでしょうね?」


「さぁ?希望くらいはあるんじゃないかな?潜る理由は様々で永遠を目指す者もいれば、お金が欲しい人もいる。正義感からスタンピードを防ぎたい人もあれば、自分を高めたい人もいる。一口に願いを語るには少しゲートは広すぎる。さて、お前もこっちで知り合ったメンバーと飲んで来い。友人は多い方がいざという時に助けになる。」


 ゲームの様に魔王がいる訳でもなければ、底にいかなくとも薬は手に入る。中層を掃除できればスタンピードも防げそうだし、自己鍛錬なら自分に見合った所ですればいい。それでも一定数底を目指す人はいる。それご探究心からなのか他の理由があるのかは分からないな。まぁ俺が目指す理由は祭壇確保なんだけどね。


「分かりました、親睦を深めましょう!遥さんインナーの事で話が・・・。」


 親睦を深めろと言うに人の娘にちょっかいかけるとかいい度胸だな。話しかけられた遥も青山を知っているので顔を歪めながら話を聞いている。どうやら青山はマントが欲しいらしい。昔からマントとか厨二病全開装備だったが、背中に付けるタイプではなくポンチョの様に前面までスッポリと覆うタイプが売れている。


 企業の発売する鎧や防具も売れているのだが、結構値が張ったり素材が無かったりと素材持ち込みでのオーダーメイドが主流になりつつあり、結果として魔術師や調合師が生み出せる糸を使ったものが安価で丈夫なので売れている。まぁ、安価と言っても自分で糸が出せないなら金貨1000枚〜とあまり安くもないような・・・。


 それでも糸は使い続ければ丈夫になっていくし、全身鎧なんかを作る時は下地にすれば防御力も上がるので、初期からずっと使うと考えれば安いのかな?最近はFRP素材のように糸を混ぜ込んで強化繊維を作ったり、硬度照射装置を使って固くしたりと色々と試されているようだ。斎藤がそちらの方面で何やらやっているようだがそのうち成果を聞かせてくれるだろう。そんな事を思いつつ料理を取りにテーブルへ。ビュッフェ形式だがよく食べるので肉料理多めはありがたい。


「お疲れ様ですクロエさん食べてるっすか?」


「こら雄二言葉遣い。増田さんからも上に立つんだからせめて丁寧語で話すようにって言われてるだろ?」


「それは仕事だろ?今はプライベートだ。」


 2人の上に立つものとしての教育は千代田に引き受けてもらったが先ずは言葉遣いからか。変に謙ると舐められるので教育としては間違いないだろう。それにいずれは犯罪者と対峙する事もあるのでその当たりのノウハウも覚えて欲しい。


「ぼちぼち食べてるよ。2人共地元に連れて行くつもりだったけど、能力的にそれは流石にもったいないと思って本部長になってもらった。・・・、荷は重いかい?」


 学生から本部長。肩に乗る重責は途方もなく、自己責任と言えど行方不明者や死者の報告は上がってくる。最善でなくとも納得できる結果。それを引き出すのは指示する人間の資質による。それでもどんなに考えようと、そこにたどり着けるかは分からない。でも、後から後から文句は出てくる。だって事が終わった後でゆっくりと考える時間があるのだから。


 図太くなれとは言わないが『あの時はそれ以外の選択肢はなく思いつかなかった。』そう、胸を張って言い返せる程度には強くなってもらいたい。そうでなければいなくなった人に対して申し訳が立たないのだから。


「正直僕は今でもちゃんとやれるか不安です。でも選ばれたからには引っ張っていくだけの準備はするつもりです。」


「卓は真面目だな。俺は・・・、俺も同じです。でも誰かがするであろう仕事の誰かとは、自分で有っても問題ない。そう言い切れるくらいの意気込みで仕事に取り組むつもりです。」


 どうやら雄二は前に話した事を覚えていたようだ。自分勝手な言葉でやり方は自分で決めるという宣言。背負うモノは重くともその言葉を紡げるなら大丈夫だろう。


「最初に2人を巻き込んだ事。こうしてここでお酒を飲める事。そしてこの先上に立つ事。何かあれば気軽に声をかけて欲しい。それをしていいだけの権利を2人は持ってるからね。」


「そうは言ってもなぁ卓。」


「あぁ、生意気ですけどそのまま返します。始まりがなければ僕達はここにいません。だから何かあったら僕を頼って下さい。」


 そう言って2人が真っ直ぐ見つめてくる。思ったよりも2人は大人で頼るだけではなく頼られる立場である事を自覚しているようだ。なら、多分この2人はもう大丈夫だろう。雄二は切符も持っているし自身の足で歩ける2人ならきっと辿り着く先が分かる。


「一端の顔をしてるんだ。何かの際には無理難題を優先的に押し付けるとしよう。なに、2人でも1人でも解決できるさ。」


 2人共その言葉でギクリとしたようだが、誰からともなく笑い出す。何かの際の何かとは悪い事ばかりではない。例えば赤峰夫妻の結婚式の時に余興をお願いするとかね。


 パーティーは進みお酒も料理も減っていく。遅れて駆け付けたラボの面子や大分に派遣される神志那も周りと話が進んでいる。食の細かった神志那が普通に飯を食っているのを見ると、奥に行きたいという気持ちは本物なのだろう。心做しか少し腕に筋肉がついたように思う。


「それでは皆さん整列して下さーぃ!」


 そう宮藤が声を上げる。なにかやるのかな?望田が俺の手を引いてみんなの前に連れて行くが・・・、これはあれか。何ともこそばゆい。


「それでは、クロエさん。これまでありがとうございました!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 回復薬で脳の受容体も治してくれるなら、ニコチンの禁断症状がなくなるので、ただ煙くて臭いだけのものになるはずなのだが。ただ先だっての職が脳に宿るという推測と、回復薬を飲んでも記憶喪失にはならな…
[一言] 2、3年後の海道が長身グラマー美女になってたりして 成長期の終盤をスィーパーとして育つ第一世代だからどう育つかわからんしね >軽いウォーキングとか水泳なら 個人差はあるにしてもスィーパー基…
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