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街中ダンジョン  作者: フィノ


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305/878

240話 それぞれの過ごし方 挿絵あり

 妻と駅で落ち合い昼食を食べてショッピング。分かっていた事だが服のサイズが大人向けではなく子供向けと言うか、中学生辺りのものがギリギリいいサイズとなる。大人向け?残念ながら大きすぎたんじゃよ・・・。まぁ、ダボダボが好きなのでそれでもいいのだが、流石に肩からずり落ちるのはね。次いでに下着も見立てて貰ったが、大人向けから子供向けまで色々試させられた。


 ついでに言えば魔女もあれを着ろとかこれを合わせろとかうるさく。嫌と断ったら『なら、中層は自力で全て進みなさいね?』と返されたので恥を投げ捨ててフリフリも着た。チクショウ・・・、なんで量販店にゴスロリ置くかな?理由は売れるからだろうが、俺は着たくない・・・。まぁ、いつも着ていろではなく所有する事で手打ち出来たのは僥倖か。


 息子よ・・・、願いは叶ったぞ・・・。妻が1枚だけプリントパンツを忍び込ませていたがそれもお買い上げ。履くかは別として所持品としては持っている事になった。こんな買い物で嬉しかったのはレザーのジャケットとスカートがあった事。レザーパンツはぴっちりしすぎるので好まないが、スカートなら関係ないので普通に履ける。


「結構買い込んだけどちゃんと着るのよ?貴方ってば着た切り雀で同じ物ばかり着るんだし。今も試着したまま着て来たレザーのジャケットとスカートだけど気に入った?」


「コーデされれば着ない事もないが、オシャレは分からないからなぁ・・・。向こうでも遥が来るまでは貰った服を適当に着てたし。」


「何を着てもいいけど楽しむのよ?じゃないともったいないし、何より若い子が貴方を真似するんだから、変な格好だと他の子もその格好になっちゃう。」


「ファッションリーダーとか嫌だなぁ・・・。と、この後どうする?帰るなら買い物するし何処か寄るならそっち優先するけど。」


「そうね、そう言えば帰ってから温泉入った?」


「いやまだ・・・、そう言えば隠れた穴場がある。入るならそこ行く?ちょっと確認がいるけど。」


「確認?新しい温泉開拓したんなら入ってみたいかな?」


 そうと決まれば千代田に連絡を取ろう。地下に温泉があってそれも確認したが誰もまだ入っていないはず!ならば、マスターとしては効能を確認するのは至極当然の行動で、一般人からのレビューも貰わないと一般公開できないよね?適当なカフェに入り妻と一緒にケーキセットを頼み一息。


  挿絵(By みてみん)


 早々に物は届いたが喫煙席と言うか、喫煙OKな席が大半になってらっしゃる。昭和の初めの頃を思い出しつつキセルをプカリ。副流煙ならぬ副流コードがあるかもしれないが、被害は報告されてないので分からない。そんな事を考えつつスマホで千代田に連絡する。


「もしもし?千代田さん今大丈夫ですか?」


「もしもし?なにか問題発生ですか?私の方は貴女関連で問題が発生していますが。」


「は?私関連で問題?なんですかそれ?これと言って何も・・・。」


「ペンタゴンにしたイタズラがバレました。非公式ですが抗議・・・、いえ、やめてくれと文句が来ています。」


 ほう、あれがバレたのか。まぁ文句が来たなら諦めよう。ただ、それが発見できたと言う事は発見できる者が誕生したのだろう。鑑定師でも多分発見出来ない事はないかもしれないが、わざわざ自動扉を触るかと言われれば確率は低いし挟まれる。それに、触れば分かるなら手袋でもして対策は取っているだろう。他の職かもしれないが、それならそれまでだしな。


「先ずはコングラッチュレーションと、そう伝えて下さい。」


「嫌味ですか?本来なら大スキャンダルで身柄の引渡し等様々な措置を要求されても文句が言える立場ではないのですが。」


「違いますよ、新たな中位の誕生を祝っただけです。多分鑑定術師でしょう。他の職かもしれませんが、今頃抗議してくるならその線は薄い。ならば鑑定術師が誕生し視たんでしょう。まぁどこの誰で何を鑑定してどう言う思いで至ったかは知りませんけどね。」


「中位誕生は確度は高いものとして話を進めても?」


「どうぞ?否定するにしても肯定するにしても、ならば何故イタズラに今更気づいたのか教えてもらわないとですね。だってそうでしょう?いくら私が口で『もうしてないよ〜』と言っても確かめるすべがないなら不信は拭えない。逆に自信を持って解除された事を確認したと言うなら、警備体制の強化としてやり方を教えてもらえばいい。まぁ、アライルさんならその辺りを読んだ上でエマが発見したとか言いそうですけどね。」


「分かりました。前提として中位の鑑定術師が誕生したものとして話を進めましょう。解除の方は?」


(賢者、イタズラ中止。バレたっぽいぞ。)


(いいよ〜、次はスマホを通して暇つぶしするから。)


 賢者が不穏な事を言っているが聞かなかった事にしよう。どうせ俺の中からは出られないし、知識欲の方が勝るのか思い出なんかの記憶はほぼ無視されて書籍関係の記憶ばかり見ている。ただ、底に眠って俺も忘れているモノを掘り起こしたり、抜けてるものをサルベージしたりしているので最近物忘れならぬ物思い出しが増えたように思う。記憶容量自体海馬が大きくなってるなら増えてるから大丈夫だろう。まぁ、脳そのものはないのだが・・・。


「既にしました。不安なら自分達で確認して貰って下さい。発見できたんです、当然終わらせた確認もできるでしょう?」


「当然ですね。それで今回はどのような事で連絡を?」


 多分電話の向こうで千代田が悪い顔をしているだろうが、元々強面なので今更である。それに千代田本人が米国に連絡を入れるのではなく、多分外務省か松田辺りが話を進めるんだろ?変に欲をかかず奥ゆかしい話し合いなら丸く収まるはずだ。欲をかいたらどうなるか?多分薄氷が割れてコチラも痛くもない腹を探られる。


「ギルドの温泉を使いたいなぁ〜と。帰り際に私も裏口の鍵を貰ったんで入るのは入れるんですが勝手に入ったらまずいでしょ?」


「温泉ですか・・・、利用されるのはクロエだけですか?」


「いや、妻も一緒に。」


「変に汚さなければ構いません。金庫の方も登録は完了してますからね。ただ、くれぐれも登録をイジル等はしないで下さい。現状、稼働までは特定の人間以外は入れないようになっていますので。そう言えばR・U・Rの早期搬入やプレオープン、増強配置の件は松田さん達に話を上げました・・・。伊月警部でしたか。知り合いと言う事もあり黒岩さんに名を出したのでプレオープンの際は彼が指揮する警官が増強されると思って下さい。」


 気を使ってくれたのかな?全く知らない人と仕事をするよりある程度話が分かる人がいてくれた方がいい。彼もまた、開通当初に地元で色々一緒にやった人だしな。気が回らず降格とかしていないか心配だったが・・・、警邏って閑職に回されてる?いや、警部がパトカーで回ったら悪いわけでもないし、叩き上げっぽいから大丈夫だろう。


「伊月さんって降格とかしてないですよね?今更ですが東京に行った後の話は知らなくて。」


「その件は大丈夫です。謹慎期間がありましたが公には休暇として処理され経歴にキズはついていません。寧ろ有益な情報をもたらしたとして表彰と金一封が出ています。」


「それは良かった。歳も歳なので懲戒処分とか受けてたら悔やみきれないところでした。あっ!千代田さんも男風呂入りに来ます?」


「いえ昨晩他の温泉を堪能したので結構です。先程の件の報告もありますからお2人で入られて下さい。では。」


「分かりました。予定では明日の便で東京に戻る予定でしたよね、変更等はなしですか?」


「今の所ありません。時間近くになったら迎えに行きますので所在だけははっきりさせて下さい。少なくとも空港までは2時間は見ないといけないので。」


「遠いですからね、空港。その頃には家に居るようにしましょう。では。」


 電話を切って残りのコーヒーを飲み、店を後にして車でギルドへ。温泉道具は基本的に車に積んであるので買い足すものはない。そうでなくとも、今は指輪があるので思い立ったが吉日と着の身着のままの旅行なんかも楽しめる。泊まるところ?テント買えばセーフスペースに泊まればいいよ。


 国内をぶらり旅している配信者でアパートも解約し、冒険者になる!とスィーパーになった人がそんな生活をしているな。割と面白くて住所は実家に移して郵便物の心配はなく、ネットショッピングの受取は基本的にコンビニ受け取り。移動は最初の頃は箱バンだったらしいが、俺が見出した頃は免許を取ってバイクになっていた。実際ゲート内の足としてバイクの免除を取る人は増えたらしい。


 法律も通用しない所なので勝手に乗ってもいいのだが、スクーターじゃなくて跨るタイプだとモンスターと戦う前に良くてバイクがおしゃか、悪いとバイク諸共さようならとなる。なのでちゃんと講習を受けようと中免取る学生なんかが増えたとか。因みに俺の貰ったバイクは大型に分類されたので、コソッと免許も中免から大型に変わっている。免許がどうしても取れない人は自転車か徒歩で頑張るらしいが、下に行くにつれて徒歩の方が安全と考える人も多く負傷した時の緊急逃走用に移行するらしい。


 まぁ、それでも例外はいて長期滞在を見越してキャンピングカーを購入する人もいるそうだ。職次第なら見張りもいらないので快適だと言うが、目立つから襲撃は多いそうな・・・。


「ギルドに温泉あるの?」


「地下にある。そのうち最上階にも引いてもらって個人とかで楽しむかな?」


「前に家に温泉引きたいって言ってたもんね。流石に温泉権やら配管の維持やらで止めたけど夢が叶ったじゃない。」


「仕事場であって家じゃないんだけどね。莉菜にはギルド温泉入浴1号になる権利をあげよう。」


「なら貰って分かち合います。」


 そんな事を話して互いに笑い合いながらギルドへ。裏口から隠れて入りエレベーターで地下へ行って2人で入浴!結構広くてサウナやらジャグジーもあるので飽きはしない。メインの風呂は泳げるくらいの広さがある。


「はぁ〜い、痒いところはございませんか〜。」


「ないでーす。」


 頭を洗われ背中を洗われる時にくすぐられて泡が飛んだので、再度頭からお湯を被り2人で湯船にゆっくりと浸かる。隣同士で入りそっと手が触れ合って重なり合いどちらともなく笑い合う。もうすぐ帰れるのでこんな日常がまた始まるだろう。



ーside リーー



「昼食べるなら奢るよ。懐も温まったしね。」


「いえいえ、一緒に潜って山分けしたんですから懐具合は一緒です。なら、割り勘にしましょうよ。こう見えて私って結構食べるんですよ?それに今日あったばっかりで奢ってもらったら悪いですよ。」


 対象と換金所へ行き円を入手。活動資金自体はテイから提供されるものがあるが、私への祖国からの直接支援はない。厳密にはテイがパチンコで勝ったという名目で資金提供がなされているものの、大っぴらに出来ないので集められるうちに集めておきたい。こちらの物価は高いものと思っていたがコンビニではなくスーパー、飲み物も家から持ってくれば安く済む。


 一応国を出る前に活動資金として安くない額は貰い指輪に入れているが、緊急用として残しておく方がいいだろう。今着ている服にしても学校の制服にしても古着で済ませたが、余り金銭に余裕のない素振りを見せれば貧困層とみなされ、対象が私を誘うのに躊躇する可能性がある。上でもなく下でもなく中流。平等を目指してまやない祖国の望みを私がここで体現してみせよう。


「ん〜、でもやっぱり僕が出さないと格好つかなくない?それに、今日はツカサさんや時枝さんのおかげで楽できたしね。使いすぎるのは良くないけど、こうして出会った記念になにか食べるなら・・・。」


「ならやっぱり半分個ですよ。私だって転校する学校に知り合いができて嬉しいし・・・、楽したのは一緒です。」


 笑顔を作り返す。これで言い逃れも出来ず公平に出し合えるだろう。人相も表情も思ったように変えられるのは便利だ。欲しい時に欲しい顔が作れる。私は女優ではないので言動は良くても表情からバレる可能性がある。事実私は今この少年に対して何の感情も抱いていない。


  挿絵(By みてみん)


 思考するならばファーストの第2職の事。剣士を名乗りモンスターを斬って見せたが情報としては不確かだ。選出戦開幕で格闘家中位との無手での戦いをした姿を見せられた以上、接近戦が出来ないとは考えられないし、武器を使うだけならどの職でも可能。しかし、ブラフだとするにはいささか早計で走る速度や身の熟しは素人っぽさもあったがモンスターは倒されていた。


 比較するなら自国の剣士とだろうが職を使ったとしても身体が光るわけでもなく、外見でその職と決定できる要素もない為判定出来ない。更に言えば他にEXTRAがいない為、そのクラスに第2職が発生するのかも分からない。


「じゃあ割り勘で。オススメだとこの辺りはパスタに定食屋にラーメン。中華料理なんてのもあるけど食べたいものある?」


「そうですね・・・、定食屋さんでどうですか?こっちに来て唐揚げがあんなに美味しいものだって感じたのは初めてでした。」


「ソウルフードだからね!よし、オススメの唐揚げ定食をだしてくれる所に案内するよ。」


「ありがとうございます。」


 人に取り入る時は急かされなければ、徐々にいい印象を与えればいい。私と対象は今日出会い互いに何も知らずに接点と言えば共にゲートに入った事。なら、私と言う像を対象の好ましい形にしていく。難しい事ではない。住んでいる国や地域の特産品などを褒める。さり気なくボディータッチをする。食事をするなら対象と似たような順で箸を進め同じようなタイミングで食べる。そして・・・。


「工藤君はトマト好きですか?」


「ん?どっちでもないけど時枝さんは嫌いなの?」


「あんまり得意じゃないかな?でもお父さんが残したら勿体ないから食べろってうるさいんですよね。それでなんか残すのも嫌になっちゃって・・・、いります?」


「ふ〜ん、なら貰うよ。せっかく美味しいご飯食べてるのに最後で嫌な気分になるのも嫌でしょ?」


「ありがとうございます、会わないと思いますけど会っても内緒にしてくださいね?」


 小さな弱みで人間らしさや人となりを示し、共有の秘密を作る。トマトなんて祖国で食べ飽きるほど食べたし別に嫌いでもない。単純にそこに嫌いと言っても疑われないものがあっただけ。ただ、何も知らない対象からすれば印象には残るだろう。今の私の容姿は秀でた見た目を作るわけでもなく、どこにでもいそうで嫌悪感を抱かせず、この国の学校に入れば中の上か中の中程度の容姿。つまり、手に届きそう。或いは少し努力やアピールをすれば手に届くと思わせるもの。


 第一印象をどうするか?覆すのが厳しいそれは共にゲートに入り決定された。なら、後は暗がりから出た後に好印象をもたせるようにすれば私と言う人物に少なからず興味を示す。そう、私が学校で同じクラスになる事は決定されている。理由は不要な誰かに転校してもらった事。


 私が日本に入った時点で対象の高校のクラス決めは終わっていた。だから細い糸を辿りテイ達を使い、息のかかった企業に務める1人を転校させてその空いた枠に私が収まった。公安にバレないよう、何重にも人を辿ったおかげで中々骨の折れる作業だったと聞いたが、私がここに来る前からの計画なので余程の事がなければバレないだろう。


 実際対象の高校には様々な国から寄付金を持参して息子と懇意になろうと美女が送り込まれているらしいが、そろそろそれも打ち止めになるだろう。皮肉な話だがファーストの目のない所で懇意になる工作は出来ても帰った後のお膝元で下手に動く事は憚られる。息子が泣きつきこそしないだろうが、国を名指しで挙げられたならどう転んでもいい方向には転ばない。まぁ、次に考えられる路線としては友情を育むとかだろうか?どちらにせよ私には関係のない事だ。


「わざわざ言わないよ。それに会う機会なんてないだろうからねぇ。この後どうする?僕は一旦帰ろうかと思ってるけど。」


「私はもう少しこの辺りをぶらついてみます。初めての街ってなんだかワクワクしません?」


「分かる分かる、小さい時に隣町とか行って歩いたら観光地って事も合ってすんげーワクワクした。なら、この辺りのおすすめスポットを教えてあげよう!駅裏からキャンパスバスってのに乗ったら美術館に行けるんだ。そこからの眺めがきれいだよ。」


「そんな所が!行ってみますね。」


 食事を終えて駅で別れ1人になる。対象への接触は一旦終了。これ以上の接触は面倒がられかねない。後は自由にしていいが美術館に足を運ぶ事は決定事項だな。共通の話題作りにちょうどいい。後は・・・。


「ギルド庁舎の外見確認だけしておこう。ライセンスの話もあるし、何かの際にはあそこからの脱出経路も考えなければならない。」



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[一言] 地獄への道は善意で舗装されているって言われるけどこういう事をいうんやなぁ・・
[一言] 回復薬で洗い流せる以上喫煙者も増えるわな 工藤君、一人でラブコメをする、相手にそのつもりはない模様 表情も含めて自由自在って女優とかキャバ嬢向きだな
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