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街中ダンジョン  作者: フィノ


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237話 出会うのか?

 息子を見送って外でタバコをプカリ。今は遠き過去の幻影には男友達と馬鹿騒ぎしながら歩く姿はあっても、彼女とキャッキャウフフしながら何処かへ行く学生時代の姿はない。別にいいし!俺は工業高校出で周りも男しかいなかったし!


「じゃ!母ちゃん行ってくるわ!」


「あんた!宿題はやったの?春休みも初日からゲートに行くなんてなんかあったらどうするの!?」


「大丈夫、大丈夫!ゲートに行けばパーティー組めるし行くのも5階までしか行かないよ〜!」


 元気な声がすると思えば斜向かいの家から結城君が飛び出してきた。ゲートに行くようだが小遣い稼ぎかな?5階層まで行くようだが、軽い気持ちで行くと痛い目を見る。それこそ支払いは命以外受け付けませんと言うような最悪もある。ただ、俺の立場として行くなとも言えないのが歯がゆいところ。今朝も考えていたが知り合いや家族に何処まで甘くするのか?答えは未だに出ない。ただ、娘や息子に子供が産まれたとして、その子がまた子を産みとしていった先まで面倒を見るのか?


 昔なら王家の血を絶やさないとか言い出すんだろうが、残念な事に俺の血は俺で終了。次いでに言えばEXTRAが出るわけもない。それこそ先の先なら可能性はあるが、それはその時の話だろう。まぁ、見守って3代目くらいとか?平均寿命が多分バグってくるので一概には言えないが、曾孫くらいまでなら関わりが持てるのかなぁ・・・。


「お〜い、結城く〜ん。」


「どこからともなく魅惑的な黄色い声!遂に僕のファンが現れ・・・、クロエちゃん!じゃなくって、えっ!司さん帰ってたんですか!?」


「騒がない騒がない、昨日帰ってきたんだよ。それで、ゲート行くの?」


「あ〜・・・、はい。これでも何度か5階までは行ってるんで、ゲート近くで誰か見つけて即興パーティーで潜ろうかと・・・。やっぱり危ないって止めますか?」


「いや?俺にそれを言う資格はないよ。仮に君を止めたなら俺はこれから先誰にもゲートに入る許可を出せなくなる。だって知り合いだからと止めたら、それこそ依怙贔屓も甚だしいからね。」


 公平な天秤なんてものは存在しない。それを叫ぶ人は叫んだ時点で公平ではない。だって主張しない人に対して何らかの要求をしているのだから。なら、逆を言えば公平でない天秤なら存在する。例えば・・・。


「それは・・・、厳しい事言いますね。」


「今の言葉が厳しいと思えるなら少しは大人になってるって事だ。ただ、止めないなら止めない人の責任もある。入るなら同行しようか?」


「えっ!?いいんですか!?仕事とかで忙しいんじゃ・・・。」


 妻は夢の中でそろそろ起きるかもしれないが、特に今日の予定は組まれていない。息子が休みなら何処かに出かけても良かったが彼女と部活に行ってしまった。彼をこの場で見つけなかったら妻とショッピングとかデートでも良かったが、見つけてしまったからには多少手を貸してもいいだろう。


「莉菜に話してからになるし、もしかしたら妻も来るって言うかもしれない。保護者同伴みたいになるから嫌なら断っていいよ。」


「いや、こんな機会ないんでお願いします!で、話してからすぐ出ます?」


「いや・・・、そうだな30分後でどうだろう?多分それくらいの時間があれば色々話がまとめられる。」


「わっかりましたー!家で待っときます。」


 回れ右して家に戻る結城君を眺めつつ、俺もタバコの火を消し家の中へ。台所から包丁でまな板を叩く音が聞こえるので、妻が起きてなにか料理でもしているのだろう。特になんの香りもしないのでまだ仕込み中かな?


「おはよー。」


「おはよー司。昨日は楽しめましたね?」


 某ゲーム風のセリフを言い回しているのだろうが、お互いの事なので何とも。そもそも言った妻の顔が赤くなったのでこっちまで気恥ずかしくなる。頬を染めるくらいならわざわざ言わなきゃいいのに・・・。ただ、妻は時々本能で生きているので言っても無駄だろうし、エプロンで手を拭きながらこちらに来てねだる様に唇を突き出すのでキスを返す。


「今晩も楽しみます。と、それは冗談として・・・。」


「冗談なの?」


「いや、君が良ければ・・・。」


「なら、今晩もね?離れてた分・・・、1年分は愛してもらわないといけないんだからね?」


 今晩もお楽しみですね。と、グイグイ来る妻はいつもの事なのでいいのだが、明日の仕事は大丈夫なのだろうか?さっき起きたとすれば少々遅い時間のようにも思う。まぁ、その辺りはお互い大人なので無理のない範囲で仲良くすればいいだろう。ただ、にまぁ〜っと笑う姿に何をされるか気が気じゃない・・・。まぁ、嫌がる事はしないし、気持ちいいけどさ・・・。


 ただこうして誘ってくれるのも女湯に入る様、練習させられたのも妻なりの気遣いなのかもしれないな。彼女の出した結論を聞き俺もソレを尊重した。なら、彼女がいなくなった先で女性として生きる事に少しでも抵抗をなくせるようにと考えたのかもしれない。確かに時間を置いて慣らすよりも何処かでスパッとやった方が踏ん切りがつくし。


「お手柔らかにって、そうじゃなくて今日の予定なんだけど、結城君とゲートに行こうかと思うんだけどなにか予定ある?」


「結城君と?貴方から誘うわけないし出掛けの結城君を見つけちゃったとか?」


「御名答、予定があるならそっちを優先するけど何かある?」


「特にはないけど昼からデートはしたいかな?そう言えば仕事で来たって聞いたけど良かったの?」


「仕事と言っても庁舎の内見とかだからほぼ終わってるよ。昼からデートか、実入りは少ないだろうけど4階層辺りから潜ればそこまで時間かからないかな。車は置いていくから後から迎えにくる?それとも一緒に潜る?」


「資料まとめたいから後から迎えに行くわね。出る前あたりで電話貰えればいいかな?」


 話しながらも朝食を作っていた手が止まり出来たのはサンドウィッチ。香りが漂わなかったのはゆで卵を茹でるだけだったからか。そんな玉子サンドを1つ貰い千代田にも連絡をいれる。昨日の考えたR・U・Rの事もそうだしちょっとくらいの融通は願えないだろうか?


「もしもし、おはようございます。」


「おはようございますクロエ。こんな時間になにかありましたか?遅くないとは言え今日はプライベートを満喫するものだと思っていましたが。」


「私もそのつもりですよ。なので、プライベートでちょっとゲートに行って来ます。」


「ふむ、御子息か奥方の付添であると?」


「いえ?斜向かいの子ですね。息子の幼馴染で今朝彼の出かけに遭遇して即興チームで入ろうとしてたので、それなら付き添おうかと。」


「実に豪華な付き添いですが、奥へはいかないのでしょう?」


「ええ彼が了承すれば、4階層辺りから始めて昼には出る予定です。それ以降は私も妻と買い物に行く予定で付き合えないですし。」


「分かりました、その階層で不測の事態は起きないと思いますがお気を付け下さい。」


「了解です。そう言えばR・U・Rの搬入前倒しとかギルドの地下施設の早期開放とかできます?出来ればプレオープンして1日の利用者数とか知りたいんですけど。」


「予想ではなく実数が知りたいと?」


「温泉で芋煮は嫌でしょう?器具も足りないなら外に少し増設しようかと。」


「分かりました。すぐにとは言えませんが限定的な利用者も調べられるようにしましょう。オープンすればギルドではそこしかライセンス発行していないことになりますし。一応政府のCMとして最寄りの警察でも発行業務を一時的に行えるようにしますが、国民性を考えると殺到しますからね。」


 丸め込み成功、勝利を我が手に!まぁ、実働前の先行オープンは必要だと思っていたのは嘘ではない。そんな電話をしながら時計を見ると、約束の時間になりそうなので電話を切り外へ。外ではローブと言うか、ポンチョを着た結城君と奥さんが待っており今日はよろしくお願いしますと頭を下げられた。


 それに対し昼までには出る旨を伝え、指輪からバイクを出して2人乗りでゲートへ。ニュースやネットで情報収集したのか、本物のクロエちゃん限定モデルだ!と騒いでいた。実際このバイクは既存の俺が乗り回していたバイクを元フレームに作っているので、限定でもなんでもないのだが人気が出て再販したとか。まぁ、中身は流石に違うのでエンジンがクリスタルリアクターな為音はものすごく静かだ。


「スッゲーーーーッ!マジ、スッゲーーーー!俺アイドルとニケツしてる!」


「おいおい、今も昔も姿は変わっても私は司おじさんだぞ?はしゃぐ気持ちは分かるがゲート近くや人の多い所では騒がないでくれよ?」


「分かってます!ゲートに入るまではなんて呼んだらいいですか?」


「ツカサでいいよ。こっちの名前は広まってないからね。私もそれなりに外向きの口調に変えるし、適当に妹か姉か従兄弟にでもしときなさい。」


「分かりました〜。」


 軽い口調で話しているが大丈夫だろうか?何時もは優先してゲートに入れてもらっているが、今回はお忍びなので当然並ぶ。スィーパーに出勤時間なんてものはないが、混雑を避けるなら出社時間を避けるとか?結城君自身も時間をずらして電車かバスでゲートに行くつもりだったようだし。


 そんな事をつらつら考えながらバイクを転がしゲート近くへ。ヘルメットを脱ぐ時にはサングラスと帽子で顔を隠して、コンビニで適当に飲み物と食べ物を買ってゲートへ入る列に並ぶ。列から周囲を見渡すと結城君が言った様にパーティーメンバーを求める人も多いようでプラカードに◯◯職募集や補助承ります等の見出しが見える。多分浅い階層に潜るのだろう。でなければ初パーティーで奥になんて行きたくない。順番が近付いてきたが後ろが騒がしいな。



ーside リーー



 対象の休日は高確率でゲート入る事が多い。目当ては単純に金銭で欲しい物が多いのか足繁く通っている。出会いの場としては最適で様々な人間と潜るようなので、その中の1人となれれば繋がりが持てる。そうして対象の家を監視していた者からゲートへ向かったようだと連絡を貰ったが・・・、今回接触するかの判断はつかない。確かに対象はゲートに来た。しかし・・・。


「ファーストが同行している・・・。橘ではないからバレる恐れは低いが・・・、どうするべきか・・・。」

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― 新着の感想 ―
[一言] >橘ではないからバレる恐れは低いが 司は不審者だと気付かなくても賢者と魔女はどうだろうなぁ 危害を加える意志が無ければ気にもしないかもしれないけど、総じて"ファースト"は気付きそう >予想…
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