226話 興味のある人達
「おらおらおら〜!材料もっと寄越せー!」
「待ってください神志那さん!これは僕が貰います!そもそも素材は山分け輸送機は見るだけって話だったでしょ?壊したら修復も難しいし、そもそも修復装置を修復して転用するのが依頼ですよ!」
「派手にやってるでござるなぁ〜。おっ!拙者はこの繭を貰おう。魔法糸が出せるまでは既存の糸を使って服を作られねばならぬ。遥殿また宜しいか?」
「インスピレーション欲しいからいいですよ。和装で攻めますか?と、言うか藤さんは加わらなくていいんですか?私は酒井さんの方から色々話聞いてますけど?」
「今回は護衛対象、中位なので最後の砦としてここにおるよ。ただ、あれだけ自由に歩き回る者を護衛するのは骨が折れるでござろう?」
藤の見る先をともに見ると神志那達が倒したモンスターから何かを剥ぎ取ろうとしている。綺麗に倒して欲しいと言っていたが、下に行こうとしているので無理だろうし。護衛任務と言いつつ護衛対象がフリーダムに走り回るので、固まって動くよりも分散した方がいいと分かれているのだが、思った以上に難しい訓練になりそうだ。
一応複数護衛なのでこうして見に来ているのだが、過剰戦力である事は間違いない。本部長研修生に指示や要点を伝える宮藤。高槻と藤、遥の生産系中位に斎藤と神志那は下位だが割と攻撃にも参加している。ん〜、護衛対象が護衛よりも強い可能性・・・。まぁ、初めて職に就きに来ている訳ではないので、不平不満も話さなければ神志那はルンバライドで上手くついて来ている。
神志那には高速移動しすぎるとレーザーカッターで首が飛ぶと教えているので、離れるにしても一応のクリアゾーンの中を斎藤と話しながら移動している。神志那が今回付いてきたのは遥同様直に奥が見たいから。目標は51階層セーフスペースだが、流石に一気に行くのは無理なので依頼と言う形でこちらに回してきている。はっきり言おう、政府は嫌な顔しかしていない。今失うには余りにもリスクの大きなメンバーだ。
なので保険として俺の所にも話が来た。惜しいと言えば望田がアパートの内見の為に俺の地元に行っている事か。いたら不意の事故も防げたのに。ただ、遥と神志那と斎藤が6階層以降を歩いていないのでそこからの始まりとなる。まぁ、だからこうして話しながら和気あいあいと歩いているのだが・・・。戦闘が不得意や今まで関わって来なかった遥達はここで慣らしもしている。ただ、中位のアドバンテージか動きは悪くなく藤と共に遥はモンスターをチマチマ狩っては観察し、神志那と斎藤は狩るよりも素材としてモンスターを見ている。
モンスター自体は生身と機械パーツの融合したような姿なので、なにか引っ剥がしたいのだろう。設計図を渡してからというもの神志那の素材集めはヒートアップし、輸送機を直したい斎藤との取り合いバトルは白熱している。そんな斎藤が近寄ってきた訳だが・・・。
「そう言えばクロエさん、あの輸送機に制御装置はありませんでした?」
「ん〜、どうしてあると思ったんですか?」
「色々と調査してるんですが先ず1つ目に人ないしそれに準ずるものが乗って制御するような場所はありませんでした。輸送機と言う話なので箱を詰める空間はありましたけど、それ以上はなかった。これが1つ。
2つ目に接続端子的なものが集合する位置がありました。まぁ、これは台座型でどういった接続形式かは分かりません。ただ、あの飛行物体を制御するとするならルート配送にしろランダム配送にしろ、何かしらのプログラムが必要になるでしょう?まぁ、あの輸送機そのものが意思を持っていたなら別ですが。
そして3つ目。ネットで見たんですがゲート内の地面を掘ると壊れた新品が出るらしいので試しに掘ってもらいました。あれよりひどく破損した残骸の一部が出たんですが、それには台座の様な物があった。なら、制御装置ユニットがあると思いません?」
当てずっぽうではなくある程度推測と論理立てた結果と言う事か。確かに光る玉はフライトレコーダーと救難信号装置として機能している。最近はコードが分かるようになってきたので見ていなかったが、最適化されたなら他の人も分かるのだろうか?今度試しに見せてみるかな。
「それに該当しそうなものはあります。ただ。こちらでも使うので渡せるのはその後ですね。」
「分解!分解はOKですよね!」
「分解してもとに戻せる自信があり、それがどうして欲しいと言っているか分かればいいですよ。ただ、分からないままやるのはやめてください。」
「話してるんですか!?」
「興味深い話ですな?」
「高槻先生も興味ありますか?」
パワフルな高槻が帰ってきたが。米国での地雷が思った以上に成果があった事をいい事に、某青い機体の様に地雷に吸着性と方向性を持たせ離れた所で青山を連れて行って魔法糸と糸の混合マントを付けてチェーン・マインを振り回していた。うん、おそらく青山は生身だが破片とか多分大丈夫だろう。
地雷の量もあるのか、起爆したらすぐに次の地雷をチェーンにセットしているので指輪の使い方もかなり上手いように思う。錬金術師とは一体・・・。まぁ、自衛手段があるに越した事はないのでいいか。前はフラスコに薬品入れて投げてたって言うし。
「こうしてモンスターと対峙して狩りながら進む。本来はこれが正しく、後方で研究するものではないのでしょうな。年甲斐もなく心躍ります。それは置いておくとして、隠し事はなしですよ?大株主。」
「これ出すと帰って研究すると言う人が出るので今は駄目ですね。少なくとも、今は先を急ぎましょう。私だって何時もいる訳ではないんですから。」
「地元に帰る話ですか。私も恋しくはありますが、今が楽しくてどうも・・・。帰ったらなにか送ってください。」
「冷凍の唐揚げでも送ります。」
そんな話をしながら進む。しかし、本当に遅いな・・・。さっきも球体のモンスター見つけて『これは何でできているのか?流体なのか固体なのか?』そんな議論を繰り広げていた。まぁ、話す横で遥がサクッと真っ二つにして倒していたのだが・・・。そんな歩みでも1日かけて8階層まで進み脱出アイテムで外に出る。要望としては36階層だが、このペースだといつになるやら・・・。手っ取り早く目隠しでもして空を飛ばせた方が早いのかもしれないが、嫌だと言い張るんだよな・・・。
箱にしろよく分からない残骸にしろ見る者が見れば宝の山らしく、それを見逃したくないと言う主張がある。実際今回を逃すと落ち着いて中を見たり探索できるか?と、聞かれると出来ない事はないがリスクは上がる。まぁ、研修会の片手間と雄二卓ペアにお守りを任せれば大丈夫かな?二人共東京近郊のギルド配置予定だし。
それに地続きなので地元からラボへは馬で駆けつければどうにかなる。千代田が前言った本部長会議用の部屋も出来ているので、リモートでも対面でも出来る。帰るに当たっての引き継ぎはほぼなく、あるとすれば今の研修生達の仕上がりが気になるくらいだが、青山が現れては何があったかと話していく。ただ、一言言うならお前の活躍は省いていいぞ?
話を聞く限りだと卒なく立ち回り宮藤の評価も高いし、研修生の評価も高い。そう、俺以外からの評価は高いんだよ・・・。なんで俺はこいつから自慢話紛いの報告を受けて頭を撫でているのだろう?一回頭を撫でたのに味をしめたか?俺は褒めて伸ばすよりも自主性を重んじる方だ・・・。
「さて外です!さぁプリーズ!」
「プリーズされたくないので次にしません?これはまだ使い道があるんですよ・・・。」
「見るだけならいいと思いませんかな?そうじゃないと気になって薬の生産が・・・。」
「社長のガチ脅しはやめてください・・・。」
ヤバい事言い出したが、本気ではないだろう。千代田に連絡を入れて適当な店を用意してもらい一息。来たのは斎藤達と宮藤。ただ、海道が帰りがけに宮藤から手慣れた様子で鍵を受け取っていたのが何とも。年の離れた兄弟に見えない事もないが、親と子にするのはちょっと雰囲気が違う。まぁ、海道自体が幼いので何とも言えない。ただ、身元引受け人なので一緒に住まなくてもいいのでは?まぁ、仕事でも一緒なので出勤は楽だろうが・・・。
「宮藤さん、海道さんはズボラじゃないですか?」
「いや・・・、遅く帰ったら食事もあるし部屋は整理されてるし、洗濯もされてるので助かってますよ?」
宮藤よ・・・、それは外堀を埋められてるというのだぞ?俺も莉菜からそうされた。歳さえ守って捕まらなければいいのだが・・・。




