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街中ダンジョン  作者: フィノ


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221話 嫌な雰囲気

「しかしクロエ、貴女も無関係ではないのですよ?技術交流の要請が国連を通して来ています。」


「国内が安定してないので無理ですね。今この案を推す政治家がいるならその人に行ってもらってください。無理して話をゴリ押ししようとするなら、流石に私も雲隠れする算段を付け出しますよ?」


 俺は御神体でもなんでもない。中位が国外で出たなら仲の良い国同士で交流すればいいし、そう言う事態の防波堤の意味も込めて、先手を打って至った者達から状況等を書き記した文書も公開した。そこまで行ってしまえば会う意味もなければ自己研鑽の段階に移る。


 今夜で色々と転がるかも知れないが、大々的にやるならやるだけの材料もあるのだろうし、至り方が分かりませんと言われても自分達で研究して最適化してくださいとしか言えない。お国柄もあるだろうしねぇ・・・。


「そう言うと思って話そのものは断る方向で進めています。ただ、政治家の方々も一枚岩ではない。その事は忘れないでください。」


「忘れないも何も政党が乱立して与党も野党もあるんですよ?一枚岩じゃないどころか東尋坊並に岩だらけじゃないですか。前にも言いましたが、私は基本家族と友人くらいにしか興味がありません。政も国同士の付き合いも好きにしてもらって結構ですが、巻き込むならそれ相応の覚悟をして個人を巻き込んでください。でなければ尻拭いどころか尻そのものを捲って走り出しますよ?」


「肝に銘じるよう話しておきましょう。因みに松田さんは議論にすら値しないと最初から突っぱねていましたね。」


「それが正解。議論に乗せた時点で回答を出さなければいけないので、議論する前に突き返す方が頭の良い場合もある。回答を長引かせれば長引かせるほど、勝手に期待して膨れ上がったそれは断った時に逆恨みになる。なら、個人が忙しいので無理と返せばいい。」


 国が逆恨みするかは知らないが、その芽を断つならたった一言応じられないと回答する方が良い。たとえそれが傲慢と取られようと、たとえそれが相手の意向にそぐわなかろうと、さっさと出来ないと回答しなければ期待が先行してありもしない事を言い出して外堀を埋めようとする輩も出だすのだから。


「その個人が公人となりつつあるんですがね、本部長殿?」


「1つの機関の長が世界を相手にする謂れはないでしょう?日本では本部長ですが国外での肩書なんてなにもないし、勝手に付けようとするなら全て突っぱねます。嫌ですよ?ゲート全権大使とか言われだしたら。」


「その交渉権が一番頭の痛い問題で、国連を無下にできない要因でもある。祭壇はまだ見つからないのでしょう?」


 冗談のつもりだったが、その冗談が問題かよ・・・。権利の譲渡は出来ない以上俺にするしかないのだが、交渉材料は未だに・・・。いや、1つの思い付いたモノがない訳でもない。1つは魔女達の言う掃除する者の討伐。魔女の口振りからして相当長い間手を焼いているモンスター?なのだろうが、これを討伐すると言うのは材料になり得るのではないか?


 詳細は一切不明な為大口が叩ける訳ではないが、作られたモノなら討伐出来ない事はないだろう。ただ、これを掃除の範疇と言われると材料でもなんでもなくなってしまう。なので、対話から始めないといけない。他に材料に出来そうなモノと言えば魔女と会話させるとか?


 ソーツと魔女達の関係を考えると魔女達が多くを渡しているように思う。ガーディアン然り、職のシステムの大元然り。魔女の本体がソーツに強権を振りかざすとは思えないが、何かしらの糸口にはなるのではないかと思う。まぁ、両方とも希望的観測の範疇なので実質ないに等しい。ん〜、何か彼奴等の興味を引けるモノがあればいいが、作る事が意味である以上、何かを作ってくれと依頼は出せてもこちらにお願いさせると言うのは至難の業だ。だってお願いするくらいなら自分で賄えるし。いや、賄えないところがあるからモンスターは依頼なのか。ふむ・・・。


「まだひっそりこっそりと奥でしょうね。昨日中層の掃除でスタンピードが起こらないならそれでもいいかと思っていましたが、どうやらなにがあっても奥へ・・・、底へはいかないといけないようです。」


「底になにかあると?」


「さぁ?パンドラの箱よろしく希望くらいはあるんじゃないですか?と、高槻先生からのメディカルチェック報告は受けましたか?」


「データとして受け取りました。にわかに信じられないような内容でしたが科学的根拠に基づいてのデータまであるので疑いようもないでしょう。JAXAの方々にはこれから公開予定のデータですが宇宙開発には大きな追い風となります。」


 内容的には宇宙に来いと言っているような変化だしな。神志那辺りがやる気出すと一気に開発が進みそうだが、リーさんの件とどちらが大事になるのかな・・・。まぁ、他国でなにかする訳でもないので反響そのものはリーさんに軍配が上がるだろう。


「チェックの結果ってなんですか?私まだ知らないんですけど・・・。」


「カオリが知らない間に宇宙人にキャトられて改造されたって話。一応実害はないらしい。」


「ちょ!大事!!なんですか!内蔵抜かれたり何か埋め込まれたりしたんですか!」


「私は中身抜かれたけどカオリは増えた。」


「それインプラント!えっ!いつチップ入れられたんですか!?寝てる時!寝てるときなんでしょう!?」


 割と色々スルーしていたが一般的な反応ってこんな感じになるのか。シレッとHP告知でもしようかと思っていたが見送ったほうがいいのかな?ん〜、これは俺より政府の決定に任せる方がいい気がしてきた。どうせ海外で中位が出たならそれの研究論文も出てくるだろうし。それに、事実が判明したからと言って今更世界の流れが止まるとも思えない。


 自然派やアーミッシュなどの昔ながらの生活をする人には受け入れ難い事実だろうが、別に受け入れられないなら受け入れられないで静かに生活してくれれば済む話。ゲートには入って欲しいが、それをするしないは自己責任だしね。考え方としては予防接種とか?まぁ、接触したら脳改造受けたと言うのは中々ショッキングな話だろうが・・・。


「落ち着きなさい望田君。クロエも言葉が足りません。高槻氏の文章によれば脳の海馬やニューロン伝達速度、神経反応速度等が向上しているとあります。増えたのは海馬に当たる部分です。」


「それでも知らない間に改造されるのは・・・。健康被害はないんですよね?」


「高槻先生の見解としては全く無いし、結果として人が進化したとしてるよ。宇宙に出る足掛かりとしては十分なんじゃないかな?身体もそれに対応するようになってるらしいし。」


「映画の世界が現実に、ですか・・・。実感がない分怖いですね。」


「いやいや、職を使ってる時点で実感してるでしょ?結局職は脳に宿るとでも思えばいいんじゃない?最終的な弱点部位はそこになりそうだし。」


 流石に夏目も脳をやられると厳しいらしい。ただ、厳しいという時点で何かしらの抜け道はあるんだろう。実際好きに身体を弄れるので、脳の場所を変えてしまえば急所は移動する。まぁ、能力を使っても疲れもせずにあるのは山歩きする体力消費くらい。それさえも回復薬を飲めばすぐに改善される。思考する戦闘マシーンに作り変えられているような気もするが、対象はモンスターだしいいだろう。内ゲバにソーツは関係ないし。


「個人的には即時公開でも良かったのですが、この事実の公表は政府に任せます。混乱や波紋が大きいと思うなら小出し程度にでもしてください。」


「分かりました。政府側としたもこの件は慎重に取り扱いたいとしています。まぁ、慎重と言ってもどの国が先陣を切る切らない程度の話ですが。」


「そんな段階なんですか?わりと大事になっても仕方ないような事実に思えるんですけど・・・。」


 望田は慎重派だな。ただ、素直とも言える。騙しやすい騙しづらいで言えば騙しやすく宗教とかに嵌まるとズルズル行きそうなタイプ。いい人ではあるんだけどなぁ・・・。


「カオリ。例えばの話で言うけど私がゲートが出現した直後に、一切の情報を隠して神だと言い張ったとして信じる?テレビに出て頭をふっ飛ばして生き返ってみてもいいし、魔法で海を割ってもいい。何日か昼みたいに明るい光をばら撒いて、薬を使って死者蘇生もできる。」


「いや、信じないですよ。ペテン師じゃないかと疑いますね。余りにも現実離れしすぎてますから。」


「それと一緒。結局の所人は宗教的な動物だけど、好きなのは宗教を信じている自分であって神様じゃない。今言った例はイエス・キリストが起こした奇跡だよ。でも、カオリは神を信じなかった。目に見えて奇跡を起こしてるのにね。否定する動機は色々あるだろうけど、先ず見て触れるならそれは実体を持つ。起こした現象には科学的に再現可能である。そして何より、神を見た事ないのに神と言われても信じきれない。結局、自分の信じる神以外は全部否定するに値する対象になる。


 脳を弄られたと言われても結局生で自分の脳は見れないし実害はないけど、一時的にデマや面白おかしくある事ない事書いた記事がバンバン発行されるだろう。ただ、それも噂と一緒で75日もすれば収まる。だって、何を言おうと事実は真実で覆い隠そうと有用な職も倒すべきモンスターもそこにいるからね。」


 泣こうが喚こうが祈ろうが願おうが信じようが、神は人を救わない。だってそれが一番公平だから。何かに、誰かに肩入れした時点でそれは神ではなくエゴのある人だ。逆に言えば日本の神様達くらいのご利益がちょうどいい。家内安全無病息災、簡単なご利益だが人にはそれくらいで十分だという自立しろと言う厳しさもある。


 ソーツや魔女達は神の様な奇跡を起こせるかもしれないが、まだエゴや主体がある分信じられるんだよな。あぁ、だから奉公する者は受け入れづらいのか。目的と主体が同一なのはまだいいが、自身の為という部分が致命的に欠落しているように思う。だから、有事には救世主や勇者になれても平時には異常者になる。多分青山の言う結婚って主人と奴隷の契約みたいなもんだろ?奉公出来てハッピー!たまに頭を撫でたりするのはボーナスで、それ以外はゴロゴロしていてほしいとか?魅力的だが居心地は悪そうだな。


「さて、話的にはリーさんの事ぐらいですか?」


「ギルド稼働後のライセンスの件は前に打ち合わせした通りですね。ただ、治癒師の医療行為については慎重です。対外的にはスィーパー相手ならいいですが、一般の方は病院と言う区分になりそうです。まぁ、緊急時は別ですが。」


「妥当なところでしょう。治癒師にかまけて医療技術が衰退しても困る。それに、雇用もありますからね。」


 魔法があるから医療技術が進化しないでは話にならないんだよなぁ・・・。最低でも医療器具は残してもらわないと困る。どちらかと言えば目標は医療用ポッドの作成。高槻が回復薬風呂に入ったと言っていたが、それをポッド内に満たすと同時に溺れない範囲で経口摂取と酸素供給。欠損は治癒師行きなら手間も減らせるだろう。まぁ、夢見る未来の技術なので今はまだ無いが。


「欠損部位の復活はかなり嬉しい人多いですからね。保険会社が文句いってきそうですけど・・・。私も保険見直そうかな?クロエは保険どうしてます?」


「入院以外やめたよ。無駄金とは言わないけど、払い続けると莫大になるからね。」


「社会的混乱と急な雇用の削減は色々と問題がでます。20年後になくなる職業等もありますが、それを早めてはいけない。」


「でしょうね・・・。生活を機械に任せて人はモンスター・ハント1択では色々と支障をきたす。そう言えば千代田さんホングヌスを知っていますよね?」


  半分はカマかけで半分は確信。その組織自体がどう言うモノなのか?俺は知らない。ただ、単純な下着ドロ組織ではないだろう。それならそれでジョージがわざわざ短文メモで渡して来る言われはない。突く先は千代田か出張から帰ってきた加納だと思っていたが、情報量なら千代田の方が多そうだ。


「私は存じ上げない名前ですね。」


「個人の名ではなく組織の名前なのですね。ペンタゴンで遊んだ時の情報と一致しました。なるほど、赤い国とはやはり関わらない方がいいと?」


「何故そうなるんですか?私は知らないと言いましたが?」


「反社会組織を公安の元室長が知らないと?」


 半分嘘で半分本当。ペンタゴンでは何もでなかったし手元にあるのはジョージのメモと状況証拠のみ。そして、その状況証拠もどの国が具体的に仕掛けたのかは分からない。まぁ、尻尾が切られた後なのだが千代田がここまで情報を渋るなら何かしらの理由があるのだろう。人を理詰めするとはパズルではなくチェスである。将棋ではダメ。駒が復活しては真実がずらされる。


「元ですからね。私が退いた後に出来た新しい組織なら分かるはずもありません。」


「なるほど、確かにそうですね。では過去から長くあったと言う米国からの情報は間違いであったと?ちょっとジョージかエマに問い合わせてみましょう。」


 新しい組織が日本と米国に同時に出現する・・・。あり得ないだろう。2カ国に拠点があってホングヌスと言う単語だけで網にかかるような新組織があってたまるか!組織とは長を起点とした縦社会。詰まりはそれだけ人も多ければ、下につく現地構成員も増える。それを短期間で爆発的に増やすなんて先ず無理。なりふり構わないなら洗脳でもなんでも出来るだろうが、それをするにしても施設や人を集めないといけない。


「・・・、知ったとして貴女はどうします?」


「私が殴り込みに行くと思います?」


「殴り込みに行くだけの理由がありそうだとしたら、飛んでいきますか?」


「理由は理由であって行動原理になるとは限りません。事が未然に防がれたなら、それは過去であって今ではない。なら、腕を振り上げた時点で負けでしょう。」


 千代田の胃は多分限界MAX。嫌な脂汗も頬を伝っているので、ゲロるのはそろそろだろう。残念な事に千代田のキングにはチェックしている。ここから取れる行動は知らないを突き通すか、話して建設的に物事を進めるか。悪いがこちらの情報は明かさないよ。何を何処まで知っているのかね。


「・・・、ホングヌスは中、露のアンテナ組織です。ただ、これは壊滅させてスパイを本国に返しました。」


「ふむ、赤い国ですね。で、何をしようとしていたんですか?」


「知らないのですか?」


「私のクローンを作ろうとしていたのは知っていますよ?」


「待っていただきたい!その情報は確かですか!」


「ここで嘘をついても仕方ないでしょう?無くした下着の所有者はホングヌスの元構成員、下着確保はクローン作成のDNA採取の為。因みに下着ドロは死亡したようです。」


 千代田の慌て様を見ると何か違う目的で動いていて壊滅させたようだな。まぁ、組織も一枚岩ではないので担当する目標が違えば変わってくるのだろう。嫌な流れだな・・・。直接俺に関係ある事で騒ぎ出すと言う事は、千代田達は間接的な・・・。例えば家族に関する事で動いていた可能性が高い。


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[一言] ソーツとしてはゲート配置して原生生物に通達した時点で過去の話だろうしねぇ 国連が主導権握るにはクロエ事務総長しかないけど当人が全力で拒否るだろうし
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