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街中ダンジョン  作者: フィノ


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214話 意思疎通できそう 挿絵あり

短いです

「ハ、放してくれバイト!食い込ム!牙がブーツに食い込んでル!」


「負けた腹いせですね。まぁ、バイト的には再現率がまだ上なら勝っていたと言っていますが。」


 コードのおかげかバイトの言いたい事は何となく・・・、いや普通に分かる。まぁ、あれだけ教材を見て賢者に文字通り叩き込まれれば当然か。それでも完璧と言えない辺り、もしかすれば接続詞なしの短文で話すのがこいつ等のやり方なのかもしれない。実際不便はないし、深く理解しようとも思わないのでいいのだが・・・。見取り稽古をしていた研修生達と合流してアドバイス出来る人は適時アドバイスしている。


「アレでどれくらいの再現なんダ?」


「ん〜・・・、70〜75%くらいですかねぇ・・・。証拠にビームはなかったでしょう?多分、ビームまで撃ち出すと渡した煙をすぐに使い潰してしまいます。」


「アレで75%・・・。いヤ、私の勝ちダ!何を言い繕おうとその時その場の結果が全てダ!っテ!噛むナ!前に犬に追いかけ回されて若干犬嫌いになっているんだゾ!」


「私も猫派なので何とも。」


 そう言うと開いた口が塞がらないというように犬がこちらを見てくる。猫は愛玩動物。お前は戦闘猟犬。方向性が違うだろう・・・。まぁ、今まで講習会メンバーのお守りとモンスターを好きに狩ってこいと放逐していたが、中々どうして意味を得ようと頑張っているようだ。実際この犬の本体は俺の中にあるので、たまに魔女や賢者がパシリに使ってるっぽいんだよな。俺は乗っ取れないけど、手足のように文句言わずに働く手駒的な?


 まぁ、実害がなければどこで何をしていようと興味はないのでいいのだが、後からヤバい事になってましたテヘペロされても怖いので釘は刺している。ただ、たまにファッション雑誌を咥えて帰って来るが代金はどうした?勝手に箱開けたのか?まぁ、人が開けられる箱をこいつが開けられないとは思わないが・・・。


「何でござろうな・・・、アレを見ていると全部任せた方がマシに・・・。」


「言うな藤!お前はいいけど俺達はああなれって言われてるんだぞ!?てか、お前も中位なら出来るだろう?」


「精進が足りてないでござるよ・・・。犬以外の大群ならまだしもバイトでござったか?アレに勝つ道筋を作るのは難しいでござる。」


「てか、あれクロエちゃんじゃん!えっ!ちっちゃ!めっちゃちっちゃ!華ちゃん身長いくつ?」


「うち一応145あるで。靴履いててもうちよりちっちゃいんちゃう?」


「公式発表は身長140cm、体重22kg。・・・、私どうしよう。神様が目の前に降臨してる!握手とかサイン大丈夫かな?酒井さん私どこもおかしくない?服破けてない?メイク落ちてない?」


「奏江、素が出ているぞ?」


「黙れジジイ!憧れなの!目標なの!パッとしない私の人生で初めてこの人みたいに成りたいって思った人なの!見たらわかるでしょ?後ろから持ち上げたらひょいと担げそうで段ボール箱に収納して運べそうなくらいちっちゃくて可愛いのに、モンスターを1人であれだけ事もなげに倒してしまったり、世界をアッと驚かせたり・・・。別に派手に生きたい訳じゃないけど、それでももし自分がそう成れたらって夢見るくらいいいじゃない。」


  挿絵(By みてみん)


「いや、ファーストさんは段ボール箱に入らないだろ?というか青山なんでまた這いつくばってる?後ろから腰パンパンするか?」


「いやいいんだ鬼塚・・・、俺は有能が示せなかった・・・。玉なし野郎だからちょっと落ち込まさせてくれ・・・。」


「おめーは落ち込むなや!ミスって腕やられた俺はどうすんべ?」


「救援はいいタイミングでごわした。今度ちゃんこを食わせてやるでごわす。」


「いや、やったのは当然の事で誇るべき事でもない。仲間は助けるしここで誰かを死なせる訳にもいかない。俺達は大切な戦力でこんな雑魚相手に散らせる訳にもいかない。それより腕は治ったか?制限時間いっぱい引き伸ばしたが流石に限界がある。」


「おう・・・、お前意外とマトモなのな?」


「浦橋どん、助けてくれた相手でごわす。」


「いや、分かっちゃいるがコイツだいぶイカれだべ?」


「ファーストさんが絡まなかったらマトモなんじゃないか?」


「ファーストさん・・・、合わせる顔が・・・、いや、俺もあの犬に勝てば有能と見られる?」


 四つん這いだった青山が犬を射殺さんばかりに睨んでいるが、今回のアイツは釘を刺した分ちゃんと仕事をこなしていた。その点を考えると評価はしないが褒めてもいいのかな?このまま犬に殴りかかられても面倒だしな。


「有能なのはわかりました。このまま精進して下さい。」


「はい!やはり犬畜生より俺!こうして話し相手にもなりますし火もつけれます!」


 タバコを咥えたらライターを差し出したのでそのまま火をもらい一服。突発的な襲撃訓練だったが死亡者0なので良しとしよう。それにエマの成長度合いを見れたのも嬉しい。米国の映像も見たが実際に生で動いている方がよりよく視える。トラップの発動もスムーズだし必要なものの選定も戦い方もイメージもどこに出しても恥ずかしくない中位だと思う。そろそろ帰るならなにか餞別を考えるか。サプライズ方式と指定方式があるが指定方式が良いな。渡していらないものだったら困るし。


「今日はいい経験になったと思います。中位の方達は多忙なので来れる時と来れない時があるので聞きたい事は事前に準備しておくように。それ以外は、自分の方に質問して下さい。中位でその職を習得している方がいれば取次という形で質問を投げます。では、脱出しましょう。」


 宮藤の号令でそのまま退出すると外はどっぷりと日が暮れていた。時間を確認すると18時か。望田達も帰ってるだろうし何処かでエマと飯でも食って帰るかな?そんな事を考えてバイクを出そうかとしていると小田と清水に肩を捕まれそのまま駐屯へ連行・・・。理由?汚れてもないけど埃っぽいから風呂入れだそうだ・・・。久々の大浴場だが既に慣れたもので恥ずかしさやらなんやらはない。ただ、研修生からやたら見られる・・・。まぁ、これも慣れたものか・・・。


「はぁ〜、ちょっと腰掴んでいい?」


「減るもんじゃないのでいいですよ・・・。ただ、全裸なので余り掴み続けないで下さい。寒いのでさっさと風呂に入りたい。」


「ファーストたん苦労してる?うちより痩せてるやん!」


「単純に肉や脂肪がつかない体質です。」


(生ファーストさん!生ファーストさん!生ファーストさん!えっ!ここって天国?推しとお風呂とか頑張ったご褒美にしては贅沢すぎる・・・、もしかして私死んだ?)


「魚好きかい?好きなら若い衆に送らせるよ?魚さばけないならあたいが刺し身でも煮付けでも作るよ?大喰らいって聞いたから量もいるなら送れるけど。」


「好き嫌いなく魚は食べますね。貝も好きで牡蠣とか1人で10個は余裕で食べます。」


 後ろから腰を掴まれるというか持ち上げられて足をプラプラしながら話しているが、酒井は重くないのだろうか?一般女性のはずなんだが・・・。


「ほら皆さんお風呂入りますよ。」


「私達も最初の頃に持ち上げたり脱がせたりしてたなぁ・・・。はたから見るとああ言う状態だったんだな。」


「私は先に入るゾ?寒くてかなわン。」


「そう言うエマさんだってガッツリ見てるじゃないですか。」


「見ないと損だロ?私はもう時期いなくなるしナ。・・・、よシ、今日は私がクロエを洗おウ。酒井だったカ、クロエを借りていくゾ。」


 今度は前からエマか。手は脇の下に差し込まれ相変わらず。プラプラと持ち去られる。拐われるから気を付けろってこう言う事か。流れるように椅子に座らされ頭やら背中を流される。しかし、毎回してもらうのも悪いよなぁ・・・。妻の手前手を出されても手を出す気はなかったが、頭を洗うくらいは大丈夫だよな? 


「たまには頭を洗ってあげましょう。これでも子供二人育てたので上手いんですよ?」


「いヤ、それは悪いようナ・・・。」


「遠慮はいりません。それに、帰る前になにか欲しいものを考えておいて下さい。餞別にあげましょう。」


 シャンプーを手で泡立ててモコモコにして頭にかぶせ優しく洗う。散々洗われたので慣れた手つきになったもんだ。爪を立てずに指の腹で優しく洗う。こうすると頭皮にいいらしい。まぁ、今以上に良くも悪くもならない身体なので人の身体は丁寧にするが自分の身体はねぇ・・・。


「餞別カ・・・。今は思いつかないガ、そうだな2人で写った記念写真がほしいナ。」


「記念写真ですか?駐屯祭りの優勝写真とかもありますけど?」


「いっただろウ?着飾る事を楽しむくらいには前向きになったト。」


「ふむ、ならどこかで2人だけの記念写真と卒業写真でも撮りましょうか。」


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― 新着の感想 ―
[一言] バイトにも腹いせの八つ当たりをする精神性はある? 本質はまるで違うものかもしれないけど表面に出る形はそのものだな
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