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街中ダンジョン  作者: フィノ


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211話 練習風景 挿絵あり

 井口と赤峰を呼んで話したが両人ともここには来る事は話し合って決めたらしい。実際出産後を勧めた赤峰と、身体が鈍るし検診でもすくすく育つ子供の事を考えると、井口としては動けるうちに多少なりとも動いておきたいと言う事でバトル勃発!普通の妊婦と言うか、妊娠2ヶ月くらいだと早い人はつわりが出だす頃なのだが、薬でそれもなくお腹もまだ目立たないので知らずに運動する人もいる。


 まぁ、50階層にしても全員の中心に置いて極力安全重視で連れてきたのでそこまで激しい運動はしていない。常人よりは激しいだろうと言う批判は聞かない。それを聞いた所でゲート内に常人がいないので意味はないからな。実際身体能力の上がらなかった橘の身体能力は、鍛えていると言うのもありオリンピック強化選手並には動ける。あくまでオリンピック選手でないのが伸び代分で、これから鍛え続ければそれも超えられるだろう。


「それで井口さん的には満足しました?」


「大人しくする心残りは消えたかな?流石に1人だけ置いてけぼりだと考えちゃいますからねぇ。これで心置きなく副官業務と言う名の鋳物師業務に集中出来ますよ。判定機とかR・U・Rとか増産依頼が増えちゃってますからね・・・。」


「理解が思った以上に曲者でしたからね・・・。材料揃えてチチンプイプイでいいかと思ったら、何回か自分で組み立てないと駄目とかパーツ名覚えないといけないとか。」


「判定機量産してた人はやり手でした・・・。分からないパーツは勝手に名前つければいいし、概ね位置が分かれば全体像として不都合ない位置に有ればいいとか。ただ、そのせいでバラして学ぼうとした私達は更に頭抱えたんですけどねぇ。」


 ゲラゲラ笑いながら話すがやけくそ気味である。まぁ、元々便利な土産品として持って帰ってきたのだが、中身が既にブラックボックス状態で頭を抱え、作り方を聞いて頭を抱え、いざ作って頭を抱えと鋳物師講習会はかなり難航したと聞いていた。やる事は繊細なはずなのに、やりかたは大雑把でもいいというさじ加減の難しさ。実際今では武器の増産も出来ない事はないと言うレベルなのだが、本当に同一物を作るならやはり自分の職となったものの武器が楽らしい。本当に職人だな・・・。まぁ、逆にイメージが完成してしまえば、パーツが多少無くても完成品が作れるという素敵仕様。


 最初に判定機作ってた職人さんは頭の中に設計図が完成してるのか、なにも素材を用意しなくても作れるし無理しなければ大型化も小型化も出来るとか。まぁ、別の物に興味が向けば何かやりだすだろうこの人。


「程々に楽しくやれる範囲でやるといいですよ。意気込みすぎると辛くなるだけですからね。」


「それはまぁ、ここにいる人達見たらねぇ・・・。」


 セーフスペースなので安全・・・。一応気を抜く気はないが安全ではある。周りの人間達以外は・・・。走りに行った赤峰達は帰ってくるなり乱取りを始め、望田は安全装置としてそれの補助。魔術師組は魔法そのモノの精度検証として色々試している。あぁ・・・、草原に火が燃え移って火事に成りそうな所を水で消したか。ただ、一部の人達が的にしていた太い木は見るも無惨にボロボロなのだが、折れたり穴が空いた所から溢れた樹液?が直ぐに表面を覆うと一体化して元通りになった。メイプルシロップ的な感覚で採取出来るだろうか?


 これで一応の採取と慣らしを終えて外へ。そのまま一度退出して高槻の所に行き採取物を渡し、検査を受ける人達を残して宮藤と連絡を取り居場所を確認して迎えに来てもらい再度中へ。新しい本部長達の座学研修は午前中に行い午後は実地訓練という名のモンスター・ハント。場所は30階層をメインとして慣らしの段階だが、この場所を既に走破して35階層に踏み込んでいる者もいるので、完全に安全とは言わないが死ぬ程危険とも言えない。藤もここでモンスターと戦っているので実質中位の引率は2人になるしね。


「人よりモンスター戦の方が得意な感じですか?」


「本職としてはそれですからね。討伐数や速度に目を瞑れば優秀ですよ?まんま昔の自分達を見ているかそれよりも上手いです。問題点は連携がまだ取れないと言う所でしょうけどそれは追々身に着けるしかないですね。」


 普段ソロかチームかでやり方も違うしな。見ている分ならソロだろう人は割と慎重に事を運ぼうとする。当然と言えば当然だが索敵、会敵、攻撃、回復、損耗率と1人でこなす仕事が多い分、無闇矢鱈と発見したモンスターと戦えばいいと考える人は少ない。お宝全取りの分、身入りはいいのだろうが失敗した時のリスクはそのまま命での精算となりやすい。なので、時間が許せばモンスターは必ず観察から始めるし、発見される前なら逃げると言う選択肢も取る。そう言うのが上手いのは見える範囲では海道や酒井、奏江だろうか?


 逆に浦橋や泰山、御堂はガツガツ前に出て乱戦もなんのそのでモンスターと戦っている。まぁ、盾師なので2人は分かるが御堂は追跡者の能力を活かし全体把握と周囲へのサポートが上手い。前に出た分、周囲を発見や対応で探り穴を潰す様に銃でサポートしている。盾2枚に遠距離でサポート出来る武闘派の指揮官。中々いい組み合わせだろう。


 そんな中でよく分からん事になっているのが五島と鬼塚。五島は歩きながらモンスターを斬りつけて倒しているからいいのだが、あまり走らないのでそこまで討伐数を上げられない。回避や防御と言う面では遅れを取らないだろうが、団体行動となると何かしらの移動補助具がいるのかな?その点、鬼塚はモグラ戦法とでも言えばいいのかモンスターを見つければ穴に引き釣り込んで中で多分倒している。顔を地上に出す度にさっぱりした微笑を浮かべているが、穴の中で何が行われたかは分からない・・・。


「懐かしいねぇ・・・、死にものぐるいで走り抜けた道だがこうしてみると懐かしいって言葉が出ちまう。」


「そりゃあその道中で嫁を捕まえた男だからだろう?俺はでかいやつ相手にキレた記憶の方が鮮明だ。」


「私は小春が告白された所とか?休息になるとよくされてたよね?」


「同じ班分けで歩いたからね。まぁ、私は今もフリーで気になるのは御堂×藤×浦橋とか?暗いゲート内、訓練中に芽生える友情からの愛・・・。卓×雄二はどの時点で雄二が愛情と友情の違いを認識するかに・・・。」


「本人の横でやめてくださいよ小田さん。ついでに清水さんも頷かない・・・。雄二もなんか言ってくれ。」


「ん?何だ?友情ってか俺達ライバルでパートナーだからな。取り敢えず卓の横には俺がいるぞ?」


「お前はまた何でここで爆弾を投げつける!道は!お前の言った事の先にある道はなんだ!」


「はぁ?言葉の先の道なんて誰かに繋がるしかないだろ?独り言でも口に出せば誰かが聞いてるんだ。後は受け取り手側が勝手に解釈するしかない。それが嫌なら一から十まで事細かに説明するしかないな。」


「ほう、雄二の能力的にはそれが正解なのか?」


「そうっすね。なんで何をどう解釈しようと夏目さんなら夏目さんの、清水さんなら清水さんの回答があるっす。」


 生暖かい目で離れた位置から新人達を見る夏目達を横に、エマは宮藤と話しながら真剣に訓練を見ている。帰る期限が直ぐそこなので米国に帰って転用出来る部分は学んでおきたいのだろう。必要なら帰りまでの間は宮藤と共に行動してもらってもいいな。俺の方はお役所仕事の方がメインになりそうだし。


「お久しぶりです!どうです?俺の勇姿は見てもらえましたか!?あっ!どうぞコーヒーとさっき倒したモンスターのクリスタルに回収した箱も・・・。」


「さっさと訓練してこい青山弱。せめて勇姿を語るなら青山中くらいになって出直してこい。」


 コーヒーカップとソーサーを受け取り青山をモンスターの元へ出荷。実際モンスターからクリスタルを抜き取りながら戦うので綺麗な死骸は有効活用しやすい。他の探索者にそれとなく聞いてみたが、クリスタルをぶっこ抜くのはかなり難易度が高いらしい。そもそも、モンスターのクリスタルがどこにあるのか?捜索で判明したとしても次の瞬間にそこにあるとは限らないし、知見を積もうとも多分こう移動するかなぁ程度までしか絞れないのだとか。


 そんな中で正確に雑魚からとは言え抜き取れるのは奉公する者のおかげか・・・。実はあいつってチートなんじゃない?扱い教えてもらいながら実戦して強くなってるし。まぁ、人の事は言えないので置いておこう。ただ、見た感じそこまで強そうなモンスターもいないので温そうといえば温そうなのかな?階層的には小骨多数で赤峰や兵藤達が至った場所より深い。ん〜、せっかく赤峰達もいるしモンスターをけしかけてみるとか?


 宮藤の評価としてはモンスターとの戦いは昔の・・・、至る前の俺達よりも上手いらしい。なら、多少数がいても大丈夫かな?望田は検査待ちで置いてきてしまったがそれでも過剰戦力ではあるし。


「ちょっとこいバイト。」


 呼べばすぐ来る忠犬。相変わらず鳴きもしないが取り敢えず頭は撫でておく。そんな犬に煙を渡しモンスターを探して引き連れてあそこで戦かってる奴らを襲撃してこいと指示を出してみる。推定モンスターの犬ならモンスターを連れてきてくれるはず!まぁ、モンスターはモンスター同士でも殺し合うので実質的には追い込み漁的な?当然犬にはお行儀よくお座りで鑑賞するだけと言っているので、甘噛はしても食い千切る事はないし動かないボス的な存在である。


「宮藤さんちょっと。」


「はいなんでしょう?」


「ちょっとモンスターが集まってくるので、私達は危なくない様に隠れます。」


  挿絵(By みてみん)


「初日から飛ばしますね・・・。まぁ、確かに見た感じ必死さもなく淡々とやってるのでいいですよ。ちなみに許可しなかったらどうしてました?」


「バイトのエサか私が倒すか暇ならやりたい人が倒すかですね。エマも新人達に混ざってきます?過剰戦力ではありますけど。」


「過剰戦力か・・・、ならバイトをもらおウ。アレに甘噛された事は忘れン。可能カ?」


「ボス的存在でお座りして見るだけと指示してましたけどいいですよ。ただ、最初から殴り掛かるのはやめてください。一応、お座りしたまま新人達を甘噛する予定なんで。米国の映像や大会で虚像を見たから竦んで動けないと言う事もないでしょうしね。」


 まぁ、あれよりも更に忠実になっているので恐怖心自体は抱くと思う。それでも動かなければならない時もあれば、判断を下さなければならない時もある。この場にいるのは全員がリーダーになるか、そのリーダーのサポートをする人間なので見極める判断力は養ってもらわないと困る。特に不測の事態。これから起こる不意のモンスターの襲撃とかには冷静且つ的確ではなく、冷静且つ後悔しない判断を付けてもらわないとね。


 的確な判断をしてもそれで全てが救える訳でもない。どんなに取り零さないようにしたとしても、指の間からサラサラと水は流れ落ちる。それをただ流れ落ちているのを止めようと指に力を込めて水を止めようとするのか、落ちるモノを飲みながら手の中身も飲み干した方がマシと判断するのか?どちらも正解で失敗と判断を付けるのは自分か他人かしかいない。なら、せめて判断を下した自分は後悔してはいけない。


 それは判断された側に失礼だろう。胸を張ってこれでいこうと判断して終わった後にああすればこうすればと後悔しても遅い。その後悔を受け取る人間は既にこの世にいないかも知れないのだから。なら、送るのは感謝であり決意だ。次は少しでも助けると。次は少しでも良い結果を出すと。そして、その教訓を残してくれてありがとうと。


「宮藤さんは指揮とかします?それなりに来てるっぽいですけど。」


「ん〜、初日から教育放棄はまずいので警告と最悪に対するフォローくらいですね。」



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[一言] 母体と胎児が別の個と判定されるのはどのタイミングだろうか 個として分かれる前なら胎児も職の影響受けるんだろうか そして腐勢にナパーム投下する雄二の図 腐海が激しく燃え上がる
[気になる点] 「私は小春が告白された所とか?休息になると【よくさらてた】よね?」 おそらく脱字?報告です
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