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街中ダンジョン  作者: フィノ


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207話 めんどくせぇ

 魔法の受け渡しはつつがなく終了し、座ったまま作りながら握手に応じていたのでなんだか晒し者になっていた気分だった。選手達は今後の日程等を説明すると宮藤が連れていき、俺も控室に引き上げて千代田と望田と話す。まぁ、話すと言っても3日間お疲れ様と言うくらいで本題は青山。会いたくないし話したくないが、奉公する者であるなら話さない訳にもいかない。魔女にお前も話に参加しろと打診はしているので急に知らんぷりする事はないだろう。まぁ、その横で賢者はニヤニヤしてそうだが、二人が揃っているならなんとかなるのかな?


 逃げ隠れしようにもどの道俺の中にいる2人なので嫌でも付き合ってもらうが、本当にお前等逃げるなよ?こちらとしても青山の現状は予想出来てないし、洗脳状態なら御主人様である魔女に責任持って解放してもらうんだから。と、言うか多分青山の中の奉公する者は人格あるよね?


「さて、大会も終了したので防音個室に連れて行って下さい。青山と話さないといけないので。」


「二人きりで大丈夫ですか?その・・・、ストーカーなんですよね?」


「俺は誓ってファーストさんの嫌がる事はしません。今だって疲れているであろうファーストさんを抱っこして運ぶか、この場で足を揉んでマッサージするか、疲れを抜き取って癒すか悩んでます。あっ!オススメは抱っこです!寧ろ、マストです!他の2つでも癒せるでしょうが、どの道更に歩くのなら抱っこの方が疲れないで済みます!」


「青山さん本音は?」


「抱っこして柔らかさを確認して最適な服や下着を選定してプレゼントして、香りを嗅いでフレグランスを確認して香水を渡し、近くで髪質のチェックを行ってシャンプーやボディーソープを揃えるに決まってるじゃないですか。同じ物を使えば切れた時にすぐに渡せます。服や下着のサイズが分かれば交換が必要な時にすぐに出せます。ゲート内で長期活動するなら、女性特有の悩みはあるでしょう?なら、そこをサポートして必要なら指輪にお湯を大量に入れてゲート内でお風呂を沸かして一緒に入って背中を流しても何1つ問題ないのでは?あぁ!入浴する時は背中を支えて湯船に浮かべてお湯が顔にかからないようにしながら丁寧に入れます!大丈夫です!育児書で沐浴のやり方は勉強しました。」


「問題しかない・・・。あのな、私は成人してるし風呂にも1人で入れる。なんで赤子の様に扱われにゃならん。」


 頭が痛い。こいつの中で俺って赤子枠なの?奉公じゃなくて介護とか育児にしか聞こえない。寧ろ、入浴方法をなんで育児書で学んだ?そこはせめて介護師用のテキストとかあるだろ?千代田もわざわざ本音を聞くなよ・・・。内容聞いて余計疲れるんだからさ・・・。と、言うか魔女よ・・・、お前介護されてたのか?


(私は放置しかしてないわよ?その原生生物としての奉公がそれなんでしょう?)


(冬に冷えた草履を懐で温めるのも奉公らしいが、お前もそれを見てアッパレとか言う?現代風にいうなら、冷えた衣類をコタツで温めて出してくれるとかになるんだろうが。)


(貴女自分で言って割と悪くないって思ってないかしら?)


 冬のクソ寒い朝にコタツで温まった衣類・・・、悪くない。寧ろありがたい。我慢して着替えられない事もないが温かいに越した事はない。今は女性、中身がなくても身体は冷やさない方がいいだろう。


「えっ!講習会後のお風呂の時は洗ってもらってると何かで読みましたけど?出来た人がいると悔しながらも称賛しましたが?」 


「クロエ・・・、貴方はそんな事をさせていたんですか?」


「させていたというか、させられていたというか、この場合合意なく風呂で毎回洗われるのは被害者ですか?加害者ですか?黙認していたと言えばそうなんですが・・・、下手に逃げると追われると言うか・・・。そもそも織り込み済みでしょう?私の反応以外。」


 実際風呂に一緒に入れないと嘆くメンバーは多いんだよな・・・。まぁ、襲う襲わない以前の問題で襲えない襲われてるなんだが・・・。まぁ、頭が痛くなるのでやめよう。何を言われようと笑い飛ばすくらいの度量はある。ただし、青山は除く。


「私含め誰もがウエルカムなのでそこは千代田さんが口出す所じゃないんじゃないですか?変な言いがかり付けてクロエがお風呂遠慮しだしたら闇討ちに合いますよ?」


「この話は聞かなかったことにしましょう。個人のプライベートです。私としても本部長達から不興は買いたくない。」


 千代田の鮮やかな転進、心做しか望田の目が怪しく光っているような・・・。まぁ、それはいい。さっさとコイツと話を付けてどうにかしないとストレスがマッハだ。任地指定が脱落者の特権なのでどう足掻いてもコイツは付いてくる。寧ろ、今だと僻地に飛ばしても帰ってきそう。


それならそれで先にアレやるなコレやるなと指定を付けて、魔女の言う様に転がしたほうがマシ。流石に勝手に死なれても寝覚めが悪いが、俺と妻の間に無理やり入ってこないなら、周りからの評価は高いし、強さも初心者守りながら15階層まで走破できるだけの実力がある。モノの見方をさえ変えてしまえばいい人材だと思いたい。


 用意された個室へ。青山と二人きりと言うのは何だか身の危険を感じない訳では無いが、公表したい話でもないので仕方ない。他にこんな奴はいないと思いたいが、魔女の話を聞く限りいないはずである。今後の事も含めてここではっきりと話をつけておこう。扉に鍵を掛けて念入りに魔法で防音し、椅子に座って一服。手錠されたままだが青山が片膝を付いて頭を垂れているので椅子に座る様に促す。こちらの言う事には素直に従うので普通に椅子に座ってくれるのはありがたい。ここで駄々を捏ねられても困るしな。


「はぁ〜、それで奉公する者はどんな状態?なにか意思を伝えるとか乗っ取ろうとするとか?」


「いえいえ!話し合って奉公の方針を話し合うパートナーです。奉公する者、探索者はあの御方に付き従い俺はファーストさんの為に尽くします。同じモノを見ながら違う人に仕える様な状況で不自由をさせますが、対象は1人です。」


 話し合ってと言う事は人格的なモノがあるのか。奉公する者、探索者が魔女に仕えるのは分かる。少なくともそれは俺の知らないところで結ばれた契約で、それを粛々と実行しているに過ぎない。コレについてはもう俺が口を挟もうが何か言おうが、変更は無理そうだし仕方のない事だと諦めは付く。まぁ、文句は魔女に言うしどう扱うかも話し合うしかない。ただ、当の魔女は顎で使えと言うし、下手に指示させると『ちょっと下層まで行って祭壇探してきなさい。それまで帰ってこなくていいから。』と、死地へ笑いながら送り出しかねない。別に行くのはいいのだが、それで死なれても寝覚めが悪いが・・・。


「そもそも奉公する者、探索者が私に執着するのは分かります。そう言う契約があったというのも聞いています。しかし、青山さん。あなた本人が私に執着するというのは違いませんか?」


「全く持って違いませんが?」


(おい青山!聞き及んでいると言う事はあの御方にも意思があらせられるぞ!もしかすれば、た!対話も!あぁ!素晴らしい!幾星霜の時を過ごし、数多くの白の中を旅したが、意思を宿す者あっても対話まで行けるものは極わずか!丁重に!丁重に持て成すのだぞ!)


(いや、あの御方は別として俺はクロエさんと仲良くしたいのであって、知らないあの御方の事を言われても・・・。こうして同じ部屋で二人きり、芳しい彼女の芳香を感じながら美しい声を聞き、その姿を瞳に納められるというのは喜び以外にないんじゃないか?)


(吾は原生生物には興味がない。あの御方を、正確にはあの御方に連なる職を宿しているからだ。だから奉公する対象としてこの原生生物に従う事は吝かではないが、どうせ瞬きも終わらぬうちにおらぬようになる。ただ、宿し方も様々で深く繋がる事は少ない。対話出来るまでの深さはほぼない。)


(いやいや、俺はクロエさんと添い遂げたいのであって中身の職?はどうでもいい。好きな人と共に有りたいというのは自然な事で、それが一目惚れであれ他者から理解されづらい事であっても素敵なことだと思う。)


((よし!対象は一緒!ならば尽くそう!互いの為に!))


 キョトンとして違わないと言い張るが、何がそんなにコイツを駆り立てるのか?何時も邪険に扱うしそもそも夫婦の間に入るおじゃま虫。知らない所で勝手に思う分には口出ししないが、コイツの場合見える所で物理的に関わって来るからたちが悪い。人との距離感がぶっ壊れてるのかな?


「違わない事はないでしょう?こうして話していますが、関わった時間は少なくお互いの事も知らない。相互理解という点から見ても中々無理がありませんか?」


「大丈夫です!どんなファーストさんも受け入れられます!寝起きで涎を垂らしている姿はセクシーですし、庇護欲をそそる。公衆トイレに行くなら徹底的に清掃して快適に過ごしてもらいますし、ゲート内で共に過ごすなら笑い話や食事を大量に用意します。相互理解はあとから付いてきますよ!知らないなら共に過ごして知ればいいんですからね!」


 サブイボが・・・!鳥肌が止まらない!パチリとウインクしながら締めくくるが、確かに最後の点は納得できる。たが、それでもやり過ぎ感は否めない!確かに知らないなら知ればいいのだが、知る以前の問題で妻がいる事を知っていながら何故か間に入ってくるのが嫌。


「一理納得できる所は確かにあります。知らなければ知ればいい。ですが、妻がいると知っていながらなんでプライベートに関わってくるんですか?私は到底貴方の想いは受け入れられない。」


「いいですよ?受け入れられる受け入れられないではなくて、尽くせれば本望ですから。あっ!すいませんコーヒー党と聞いているので缶コーヒーですがどうぞ。どの銘柄が好きか分からなかったので全て買っておきました。」


 そういいながらテーブルの上に指輪から缶コーヒーを山の様に出してくる。飲まないのも悪いので適当に一本手にとって飲むが、話は平行線っぽいんだよなぁ・・・。青山が言う奉公は見返りを求めないモノっぽいけど、仮に見返りと言うなら側にいる事とか?


(ちょいと魔女さん?お宅の子ガッツリ人格的なものがあって、うちの生物を思考誘導とかされてません?)


(予定調和よ?職の使い方のアドバイス的なモノが出来ないと何もなせずに死ぬでしょう?一応、事を成せる最低限の機能としてそれがある。それより原生生物の方が貴女に御執心じゃなくって?)


(いやいや、毎回剥奪しては面倒事起こしてるお前に言われたくない。偉くて超常的でも今は職で俺の下だろう?どうにかしろよアイツ。)


(私達を選んだのは貴女よ?副次効果にしろ、スタンピードの対応にしろ私達がいなければ更に被害は上がってた、それに差し出すモノを決めたのは貴女。だから私じゃなくて貴女の領分でもある・・・。)


((取り敢えずアイツ等めんどくせぇ・・・。))


「・・・、ルールを決めましょう。そうすれば何が良くてなにが悪いか分かりやすいでしょう?」


「ええ!ファーストさんは座り俺が動く!そんな素敵なルールを作りましょう!」


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― 新着の感想 ―
[一言] うん、これは人間では受け入れられないな ましてクロエは元男だし 女性の生まれならあるいは受け入れられるかもしれないけど あるいは女王様気質なら 命を危険に晒すほどじゃない無茶な仕事を与え続け…
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