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街中ダンジョン  作者: フィノ


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194話 トーナメント 挿絵あり

 爽やかな朝は爽やかな目覚めと共に・・・。時計よし!モーニングコールよし!身嗜みとシャワーよし!遅刻は大丈夫!時間的には余裕のよっちゃん。昨日燃え尽きる様に寝ていた娘は朝っぱらから牛乳の様にエナドリを飲んでいるが大丈夫だろう。


「遥さんは大丈夫でしたか?昨日は相当疲れてたみたいですけど。」


「講習会で作った最初の方のインナーはどうしても糸自体は問題ないんだけど、ムラっていうかばらつきがあって、それを会場で補修しながら安めの価格で売ってたんだけど、それを見た人がリサイズをお願いしてきたり、他にはこんな感じの刻印出来ない?なんて要望がわんさかで出して急遽人数増やして対応してたから疲れた・・・。でも、今日は人数増やしたから大丈夫かな?」


「ほう、なんか変わった刻印の依頼ありましたか??」


「ん〜、保温とか冷却は多いかな?動くとやっぱり気になるから温度管理的なもの。後は、女性に多い消臭にシェイプアップ効果に、戦闘的なモノだと気配を消せないかとか?モンスターに有効かは知らないけど試して欲しいって言われて、消音効果とかはどうにか付けてみたよ。


 後は、刻印を表面じゃなくで体内に出来ないかとか?出来ない事もないけどでも、やっぱりイメージ次第だね。講習会には私よりもその辺りが上手い子もいれば、逆に本当にファッションとして捉えてる人もいるし。」


 話を聞いて望田がシェイプアップとつぶやいているが、それって矯正下着なのでは?ぱっつんぱっつんの下着でゲート内を走り回りたくないな。加圧トレーニングにはなるのだろうが、あれって相当疲れるらしいし。


 前に遥に刻印が素材や糸の品質で何個まで〜みたいな話をしていたが、抜け道を早々に発見して割と個数は自由っぽい。なんでも刻印したハンカチ程度の布を服なんかに縫い付ければ、修復機能が働いて馴染んだ時にそういう布として効果が出るのだとか。まぁ、縫い付けた時点でも出はするが、それはその布の部分オンリーらしい。なので、心臓や内臓の部分が着ぶくれしている人もいる。


 千人針よろしく何重にも反発しない範囲で重ねたり、間にクッションの様に何か別のモノを彫ったりと、発想と組み合わせでかなり自由度は高い様だ。一番新しい実験では10人で別々の刻印を施した布を縒って糸にして、それを布にすれば更に刻印の数を増やせるのではないかと試しているとか。う〜む、壊れた時の修復が大変だよな、それ。既製服として作るのはかなり難しそうだし、完全オーダーメイドの高級品コースかな?


「ファッションだと注目度アップとかか?」


「そんな感じかなぁ・・・、お父さんが綺麗になるやつって魔法に込めれる?」


「さぁ?試す気はないな。あんなもん街中で全力で使ってみろ。脇見運転して事故の元だ。あんまりやりすぎるとその人じゃなく歩く服を見る事になる。よく考えて使いなさい。」


「は~い。実際講習会でも視線誘導系はやらないようにしてるよ。ゲート内で人の視線集めた時にモンスター来たら周りの人死んじゃうし。」


 扉がノックされエマとジョージが来たので会場へ出発!到着したがあの2人は本当に物販会場へ行くらしく、ついて来なかった。まぁ、今日は個人戦初日だし負けた人は、そのまま職員として打診する手筈なので見所がない訳ではないがどうなんだろう?150名、75組で行われるトーナメント。


 地形は様々でランダムに障害物がある。対戦相手の抽選は既に手紙のナンバーでランダムに分けてある。選手達の情報収集は自由なのでパブリックビューイングやテレビで観戦して戦い方を模索してもいいし、逆に先入観を持たずに自身の戦い方を再確認してもいい。薬3本までの使用以外のルールはなにもないのだから。


「さて!本日はトーナメント初日!並み居るスィーパーが集まったガチガチ戦い!強い者だけが!強い奴だけが!ここでは正義だ!本日も実況を務めるお耳の友達望田 香織とぉ!」


「テンション:並。朝からシャワー浴びて御飯食べる余裕のあったクロエです。回復薬は3本以上の持ち込みは禁止でーす。違反者は失格扱いなので、仮に指輪から出し忘れても使用しない事。また、機械処理としても回復薬は3本以上は処理されません。」


 指輪から出して誰かに預ければいいし、預り員として今回もセーフスペースには引率の講習会メンバーがいる。高額なので預けたくない人もいるだろうが、そういう人は戦闘に集中しすぎると無意識で使ってしまう癖が出そうなので、預けられるなら預けて欲しい。回復薬制限以上の使用で失格とか悔やんでも悔やみきれないだろう?


「今回の見所はどこだと考えます!?」


「そうですね・・・、地形に性別、自身の戦いやすい距離でなにが出来るのか?或いは不利になった時にどうするのか?見所は多いですよ?ただ、1つ。これは警告であり忠告です。貴方と私は違う。だから、同じ事は出来ないけど違う事ならきっと出来る。選手を真似てもいいですが、それだけだとその先がない。」


「あ~、確かに格闘家の格闘スタイルが違ったり、ガンナーでも弾丸撃つのかボーガン撃つのかで変わりますからね!治癒もそうですが。」


「赤黒いおっきな棒と結合してポタポタ血が流れるのは痛そうに見えるけど、そんなに痛くないらしい。剥き出しじゃないと駄目らしいですよ?くっつけるのに皮は邪魔ですから。男の人は嫌がりますが一応、結合したら痛くもないようです。それに、繋がってすぐに動かしてもスムーズとは聞いています。まぁ、私にはその体験がないので分かりませんが。」


「米国での治癒の話です!いかがわしい話ではありません!不適切な発言ではありませんからね!政府HP、米国での治癒風景を確認できる人はして下さい!一応R指定が入っています!」


 なんか望田が慌てているが、いかがわしい話とかあったかな?いや、そもそも公式の場でそんな事を言った覚えはない。千代田も何やら慌てているが何かあったのだろうか?


「?、頑張れば無傷での生還は可能でーす。鍛えろよー。」


「はい!それではまもなく1回戦の開始です!一度に4組づつ対戦を行うトーナメント方式。上位入賞し本部長の席には誰がつくのか!そして、本部長内定者に行われる宮藤キャンプの内容とは!?それでは、準備完了次第開始の合図が行われます。」


 一試合最長10分。決着が付かないなら付くまで続行。その場合ストップなしの続行でアナウンスだけが流れる予定だが、よっぽどお互いが潜伏でもしない限り決着は時間内に付くだろう。


 開始の合図の前に位置取りをしている。分かりやすいと言えば分かりやすいが、大体の人は岩場の影などを選択する。ただ、様子見では決着は付かず、それだけをするなら大会まで来た意味がない。個人の考えはあまりとやかく言えないが、それでも最終的には先手と後手で必ず戦い出す。要は開始後に相手を確殺できる準備をするか否か。当然だろう。調合師や装飾師が正面切っていきなり殴り合いをする事はないのだから。


 『ビーッ』と言うアラームが鳴り試合が開始される。派手な所と言えば互いが真正面からぶつかり合った所だろうか?選手達には対戦者名だけ知らせてある。そこから情報を集めてもいいし、下手に相手に対するイメージを作らない為にそれだけに留めてもいい。だがまぁ、名前だけでもそれが男女か区別はつく。そして、前職が有名なスポーツ選手とでもなればなおさら。


「シッ!シッ!」


「嫌なフットワーク・・・、確かヒットマンスタイルだったか?」


「まぁな、これでも元フェザー級のバトルマネーで飯食ってたんでね。格闘家様々、試合には出れないがR・U・Rだったか?これが有れば、またリングにも上がれるしなにより裏打ちされた自信がある。ま、今はトレーナーだが、なぁに顎に1発、KOになってくれればそれで済む。痛いのは嫌だろ?槍師。」


「さてな。俺はしがない会社員だった。お前みたいに花のある仕事じゃないが、それでも日本経済を回すお父さんなんだよ。悪いがスィーパーは金になるが、安定した収入とは言えなくてな。上でぼちぼち狩るだけじゃこの先やってけるか不安だ。間合いを詰めさせる訳にもいかん。」


 上下のインナーにボクサーパンツ、足のブーツはステップを踏むたびカツカツ鳴るので改造品。手につけているのはボクシンググローブと言うより、盾師の方に近いな。握りこぶしから肘まであるそれはモンスターと戦う為のそれ。対する槍師は草臥れたおっさん。喪服の様に黒い背広は前のボタンは留められず、真面目にネクタイをつけているあたり、槍を持っていなければ市役所やオフィスが似合いそうな感じだ。槍というか突撃槍に近いそれは突く事をメインにしているのだろうが、長さがあるので牽制するには持って来い。片手で扱う辺り重さは気にならないのかな?


 そんな2人の奥のコートでは、どちらかが使っただろう煙幕が広がっている。ガンナー対策か或いは、日常的にそういった戦法を取っているのか?分からないが、何かが時折飛んでいるので多分、どちらかはガンナーだろう。


「大々的な激突はまだありませんが、このまま膠着状態が続くと思いますか?」


「まだ1回戦の1回目、何時もはモンスターと戦ってるので観察から始まるのは仕方ないです。ある意味、スィーパーと言うのはモンスターよりびっくり箱ですからね。と、またお菓子の家が建ってる。」


 選手名を見ると海道 華と三島 洋次とある。年齢だけ見ると親子ほど離れているし、性別も違うので三島の方はなんともやりづらそうだ。最年少タイは他にも数名いるが、その中で女性は彼女だけ。それ故に目を引いてしまう。


「隠れている嬢ちゃん、手荒な真似はしたくない。降参してくれないか?」


「いやいや、うち弱いからそっちが譲ってくれへん?勝ちたいねん。」


「その気持ちは預かったから早々に退場してくれ。」


「渡さへんよこの気持ち。あんた・・・、用心棒か?」


 さてはて、うちはどうしようかなぁ。上へ行くのは当然として目の前のおいさんを倒さなあかん。見た感じ・・・、何なんやろうな?退路はいくつもある。隠密中やから簡単にも見つからへん。おいさんが魔術師なら面倒やなぁ・・・。まぁ、一当ていこか。サバイバーは器用っちゃ器用な職で生き残りには最適や。まぁ、うちがサバイバーになったんは当然やろうなぁ。


 あの汚い部屋でオムツのポリマーっちゅんまで食ってたから。おとんは顔見たこと無いし、おかんは物心っちゅうか4歳ぐらいでおらんくなった。まぁ、元々10日に1回目見れればいい人やったから、おらんくなっても飯の方が心配やったなぁ。死物狂いで生きてばぁーに引き取られて、そこも貧乏で何時も腹すかせて草食って、落ちてるもん拾って食って・・・。虫はいかんね。下手したら腹下すし、熱が出ても薬ないし。そんな引き取ってくれたばぁーも死んで、適当に身体でも売ろかと考えとったら訳分からんゲートっちゅうもんが現れた。多分、神さんが少しは稼げる口を用意してくれたんとちゃう?


 頼る人おらんから1人で入って金貨集めて、初めて食った肉まんは美味かったなぁ・・・。夏の暑い時期にコンビニ歩き回って換金なんてそん時知らんから頼み込んで食った肉まん。しろーてふわふわで、今思えばあの店員ぼったくりやない?金貨1枚と肉まん1個て・・・。まぁ、終わった事はええ。今まで臭いだの汚いだの言ってきた連中を見返すチャンスやからな、気合入れていこか〜。


「さてな。職名も情報だ・・・。悪いが本部長の席は全員狙ってんだよ。現代の文字通りビックドリーム。自分の力だけで選ばれて、そこに収まりさえすれば楽とは言わないがいい生活が出来る。それに、やりたい事もあるしな。」


「さよか、なら別ん所でやってや〜。」


 相手が隠れて見えない、そして情報がほぼない。ネットで選手名を入れれば、大なり小なりなにか情報が出る。しかし、海道は何も出ない。出るのはソロで潜るチビな少女。パーティーの誘いは断り1人で階層を突き進む異端児てされているくらい。俺も名の通ったスィーパーだが、それが裏目に出たかな?本当に用心棒と勘違いしてくれたなら嬉しいが、本当は剣士だ。岩陰から中央付近に建ったお菓子の家が見えるが、窓はないので中は伺えない。切り崩すか?指輪から適当な石を取り出して蹴っ飛ばし家に当たれば崩れる様に・・・、消えない?穴は空いたが家は崩れない。代わりに一瞬しゃがんだのか髪が見えた。


 そこにいると言う確証はないが、無視もできない。あまり得意じゃないが、ガンナーの棒でハンドガンから射撃する。弾数9発、イメージのせいかガンナー程乱射できないしマガジンチェンジの様な動作もいる。後何個か銃はあるが、温存出来るならしたいな、


「痛いわぁ〜!なんなんコレ!初めてダメージもろたけどはよ逃げな!」


 家の扉が蹴り破られ、中から小さな少女が岩陰に向かって走り出す。早いが追いつけない速度ではない。弾が当たったのか右腕からは多量の血が流れている・・・、追うか。見逃してもまた同じ事を繰り返す。バトルロイヤルのお菓子の家は彼女のものだろう。なら、何度でもそれを繰り返して何かしらの勝機を待っている!点々と続く血を追い岩場から飛び出すではなく、曲がり角の先を上から下にしゃがむ様に岩に手をついて顔を半分出し・・・。


「ほい、あんがとさん。」


「が!・・・、が!」


「逃さへんでぇ〜。」


 追って来てくれて楽出来たわ。あそこで隠れたままでもやりようはあるけど、退路が多すぎるんよなぁ。だから先ずは指輪嵌めた指一本と首の頸動脈。ギリギリん所で首は躱されて落とせんかったけど、これで終いやな。うちの退路はぎょうさんあるけど、おいさんの退路はもうなぃ。


「トドメいるか?そんままやと意識飛ぶまで痛いで。」


「・・・!・・・!!」


 後ろに飛びながらボケットに忍ばせといた回復薬を探しているようやけど、それももう盗んでんねん。おいさんが不用意って訳やあらへんけど、手負い思うてちょっと気が緩んだんちゃう?うちは最初から一歩も(・・・)動いとらんから早々見つからんしな。切ってすぐに隠れたからおいさんは多分見つけられへんのやけど。


「・・・、・・・。」


「痛かったやろ?一応、トドメさしとこか。」


「こ・・・、こ・・・、だ・・・!」


 近寄って一応トドメさしたろか思うだけど、おいさんも負けたくなかったんやね。最後にはうちの事を剣で切ってきたけど、ごめんなぁ。それ偽物やねん。満足そうな顔で動かんくなったから、これでほんとに終いかな?


「おっ!終了の合図かいな。おいさんの分まで次も勝ってくるでぇ〜。」


 それぞれのコートで勝敗が出だす。ボクサー対槍師はかなり接戦で、動のボクサーと静の槍師と言う構図になった。間合いを詰めたいボクサーが槍の穂先を殴ったりいなしながら近寄るが、槍師はそれを嫌がり穂先を若干下にして構え、牽制状態を解かない。ボクサーはフットワークで潜りたいが、下手に攻めれば串刺しと言う事で攻めあぐねたが、以外にも槍師が徐々に隙を見せだした。まぁ、間違いなく誘いなのだろうが穂先は徐々に上り、片手持ちだったランスは両手持ちへ。


 ボクサーは攻めたくなさそうだったが、こうも見え透いた隙を晒されれば突破口にしたくなるものまた事実。緩急をつけた動きで踏み込み、繰り出された穂先はグローブで滑らせて躱し、左のストレートが届くかと思った時に、ランスの柄が別れそこから伸びた糸で後ろに飛びながらまた距離を開ける。ただ、手が痺れたのか槍を手放し別の槍を取り出して構え直す。


 そっから先はボクサーが何発か槍を殴っては懐に入る手前で槍を手放し、新しい槍を出しては再度仕切り直す。ボクサーが段々と熱くなり、足まで使いだしてボクシングスタイルからムエイタイスタイルに変わった頃、到頭槍師が片膝をついてばら撒いた槍を手元で引き戻しボクサーは槍衾に・・・。


 流石に何十本もの槍はボクサーも対応しきれなかったな。何本かはジャブで叩き落としたがそれでも、全て同時に飛来する槍は銃弾と違い長さがある分、避けても他の槍に身体が当たりそれで軌道が変わればその場で停止する。手元に戻らないからだろうか?そんな空間で足を貫かれフットワークも早いジャブも意味をなさず、槍を背に突っ込んだが腹を貫かれて終了。しかし、根性はあったようで、腹を貫かれながらも顎に1発入れた辺り、先に槍師が気絶したならダメージはあろうと逆転の目はあったな。跪いた理由は多分手元のイメージのせい?浮き上がった槍は全部地面に刺さってたし。


「1回戦全て終了です!ちびっ子は上手かったですね!」


「正面切って戦うだけが能じゃないですからね。私もよく隠れるので、隠れた際はそっとしておきましょう。見つからなければサボれます。サボっている間に多分、仕事は誰かしてくれます。なんですか全く!海外の要人との会食会とか!行きませんからね!私は!ぶぶ漬け食ってさっさと帰れ!私はまだ何1つ許していません。」


「どうどう。政府関係は政治家に。うちはギルドであって政治とはほぼ無関係ですからね。帰ったら久々にゆっくりお酒飲みましょう。さて、次の準備も整ったようです!」


 望田の発言があってアラームが鳴り響く。昼とR・U・Rのメンテを挟みつつ続くとトーナメントは割りと早い。1回勝てば残り75名になり、2回戦はそこで再抽選、余りの1名は政府側がバトルロイヤルと1回戦の試合内容を見て6名選出しそこで勝ち上がった1名が復活枠として入るそうだ。まぁ、ここで勝てれば手札を必要以上に晒さなくていいので、誰もが勝ちたいだろう。ラーメン屋の2人は勝ち上がり、爺様も勝ち上がり、奏江さんも勝ち上がり、青つなぎも勝った。


 しかし青つなぎ、鬼塚はなんなんだろう?真面目に戦っているし、その体格と筋肉に目が行くが頭脳タイプなのか淡々とした試合運びだった。しかし、穴掘って出た先が相手の真後ろ。そこからくり抜きなんてするもんだから相手のお尻がヤバい。いや、尻って人体急所の1つだから攻撃するのは間違っていないが、疑惑は深まる。


 相撲取りは相手が悪く負けてしまったが、代わりに負けて欲しい青山は勝ち残った。やべーやつっぽいので勝ってホッとしているか、どうしたもんかなぁ・・・。ただ、今日も写真集は買えなかったらしく、また開始時に這いつくばっていた。そして、トーナメント1回戦ラストが始まろうとしている。最後と言う事でダレるかと思ったがテンションは割りと高いようだ。


「さて、1回戦ラスト2回戦にコマを進めるのは誰だ!敗者復活については順次声掛けがあります。スマートフォン等、連絡手段の確保は各選手共にお願いします。」


「トーナメントですが、次もシャッフルして始まります。休憩時間を利用して情報収集とうしてくださーい。基本的に敗者含めギルド職員としての雇用がありまーす。拒否される方は申し出て下さーい。本部長じゃないメリットは地元の職員になれる事でーす。」


「地元職員、慣れ親しんだ土地はいいですね。」


「私は早く帰って妻と過ごしたい・・・。」


 そんな会話をしていると開始のアラーム。どの試合も激しかったり技巧を凝らしているので瞬く間に過ぎていく。しかし、割と女性も多かったな。布団叩きみたいな物で弾丸撃ち返していた奥さんは何者だろう?黒いエプロンした若奥様だったが・・・。玉の輿と叫んでいた辺り奥様ではない?


 まぁ、それはさておきラストにも女性がいる。爪研いでた姉ぇちゃん赤カラコンに白髮。メイクまではしていないのか普通の肌色。ただ、衣類は冬だからかモコモコした・・・、何時だったか俺が着ていたダウンジャケットに似たものを着ている。名前は酒井か。完全モノマネよりその姿の方が似合っている。これで奏江程振り切れていたなら、名字ではなく奏江2号として覚えていたかもしれない。


「メイクマジ無理。本物見て勉強したかったけどナチュラル過ぎて素材の違いががが・・・。雷マジョみたいに振り切れないしぃ〜・・・。」


  挿絵(By みてみん)


「あ~、岩の上にいるあんたは学生?」


「Yes!就活してます!目指せネイリストだったけど、雇われるより雇いたい!目指せ好きな事しながらハッピーライフ!」


「さよか、で。普通にお互い速攻出会っちまったがよかったのか?」


「モーマンタイ。目指す高みは何時も遙か彼方。あっ、遥さんはマストね?方向性は違うけど、ドレッサーは憧れるしぃ〜。1回会ってみたいなぁ〜。ちびっ子は普通に勝ち上がったから心配しなくても良かったし。」


「・・・、昨日物販会場にいたみたいだぞ?勝ちを譲ってくれて駆け付ければまた会えるかもな。」


「ん〜、なら、さっさと片付けて行こうかな?」


 岩から飛び降りる私ってカッコよくない?なんか説明会の時肉まん配ってたちびっ子、華ちゃんとは縁あるみたいだし、お姉さんがカッコ悪い所も見せらんない。まぁ、あの子も強そうだから心配いらない感じ?まっ、男が絡まない女の友情はきれいなもんっしょ!


 対戦相手の男の人はなにする人かな?準備はバッチシ、ストックもガッツリ!奥の手は奥にしまい込んで一丁やるだけやってみよう!


「はっ!言ってろガキが!大人舐めんな。」


 研いだ爪・・・、一本一本に刻印した爪は痛いよ?飛び降りながら引っ掻く様に振り下ろすけどノーガード?あ〜、まずったかなぁ・・・。私、モンスターはいいけどあのうねうねした触手ってキモくて嫌いなんだよねぇ・・・。腕が伸びて腹にズドン。モンスターのビームも痛いけど、この人の1発も痛いなぁ・・・。何個か砕けちゃった。


「ナメプする訳ないじゃん。ちょっと刻まれて?私バカだからあんまりやると頭痛くなるんだよね?」


「なら!寝てろや。女殴んのは好きじゃない!」


 そう言いながら蹴っ飛ばそうとするのはいいの!?ダルシムみたいに手足伸びてくるんですけどぉ?セクハラって叫びたいけど、同意書にセクハラで訴えないって書いてあったのは覚えてるしぃ!まぁ、R-18になる前に倒せばいいっしょ!


 伸びた手を捕まえてサクッと無痛針を差し込む。そうすれば腕がぶっ千切れる!足をムチみたいにして薙ぎ払おうとするけど、この足邪魔だから固定して針を指したら更に引き千切れる。ん〜、ミートボールだったかな?なんか違うけど、そんな名前だったはず!


「ちっ、片腕片足か。お前、つえぇな?」


「うぇ〜い!痛いなら降参してくんない?」


「まさか!」


 粋がって見たけど、さてこいつはなんの職か?岩から跳び降りたからそこまで身体能力が低いわけじゃない。無手だから格闘家?いや、格闘家ってこんなにスッパリと腕切れないだろ?なんか刺されて異物が広がって千切れた感じだったが、何を入れられた?毒なら分かる。抵抗が働く。それを掻い潜って一瞬で腕も足も持っていかれた。


 最初の微かな、本当に微かな違和感だ。それが何かしらの攻撃だろう。基本的に肉壁は頑丈だ。盾師みたいに誰かを守るんじゃなく自分を守るようなもんだと考えてる。千切れた手足は少しだが動かせる。身体のバランスが悪いが、これも治せる。お手軽ダイエットだな。だがまぁ、肉出すのも回復薬使うのももちっと後だ。そうじゃなきゃ相手がなんかした時の保険がない。なんかメガネ掛け出したがファッションか?


「それずっくない?」


「薬じゃないからズルくない。こちとら文字通り身体削ってんだよ!」


 踏み込みを早くするならやっぱ鉤爪、飛ぶ様に地面に点を残し、手はいらないから骨の芯と周りは炭素で固めた刺突鞭。いや、そこまで自由が利かないからレイピアか。どっちにしろ刺さればいい。残した足と腕はもう少し近寄れば使えるか?


「うっわ固そ〜。なら私もなんかしよう!」


「あぁ!?」


 何だ?刺さる直前で腕が止められた!?レイピアを先から分岐させて糸まで細くして刺そうと伸ばすが、どれもこれも止められる!?いや、俺の速度が見えてるのか!?


「あ〜、あんまり暴れないでね?ストック減るから。」


「うるせぇ!」


 両手は止められた、足で蹴り上げれば合わせるように宙返りして躱す。何なんだ!?何の職なんだ?寧ろ、何で宙返りの瞬間加速した!?ストック?何かを溜めていた?


「ほい!その腕またいただききぃ!」


「なっ!?」


「ダメダメ!下がっちゃダメ!ミートボール嫌いなんだから!」


「ミートボール?なんの事だ!」


「あんたミートボールでしょ?しぶといし、千切れても平気そうだし。色んな人見たけど、これが1番嫌いなの!だから、そのままでいてね?」


 理由が分からんまま両手腕が千切れ、下がろうとすればチクリと断面が痛む。何かされた?何をされた?自身制御と抵抗を試みるが、あるのは小さな・・・、針?これが種なのか?いや、その前に千切れた腕が生えない!?最初に千切れた腕の指には指輪がある。ギリギリ制御下における・・・!


「待て!」


「嫌!遥探しに行きたいしぃ!ミートボールってどうやったら気絶すんの?グロいけどバラバラとか?」


 速度固定も使っちった。また作れるけどかなり面倒ぃ〜。腕は固定したから多分生えないけど、なにするか分かんないのよねぇ、ミートボール。ミートボール・・・、ああ!ミートウォール!美味しそうな名前呼んじゃったけど、バレてないよね?マイクで拾われてないよね?やっば!顔暑!それより、この人どうしよう?前に配信者の動画見た時は脳を移動したり、薬を身体の中に入れたりしてかなり無茶苦茶してたしなぁ・・・。


 切り札ってのは残した方が良さそうだし・・・。でも、ここで長引いても再抽選とか考えたら時間がなぁ・・・。どうしよう?いやいや考えるな、感じろ!私が考えてもあんまり意味ないし、感じた方が上手く行く・・・、はず!


「よし決めた!必殺技ぁ!その1!」


「させるかよ!」


 やば!なんか後ろから飛んできてるっぽい!何かな!?メガネで動体視力は良くなってるけど後ろに目はないよ!千切れた腕がロケットパンチとか?でも武器まで出しちゃったし!よし、避けずに突っ込もう!


「デコレーションオーバー!」


「なんだそりゃ!?」


 腕はえない?刻印で断面を固定して蓋したけど、大きさはたりてるっぽい。蹴り上げじゃなくて蹴り落としてくるけど、メガネのおかげでどうにか見える。なら、そのまま胴体に武器が届けば・・・、よし、刻印3個完了!転写シール様々、これだけでネイルができるってチョー便利!


「いっけぇー!」


「ガハッ・・・。あいう・・・、ち。」


「あだっ!」


 この人気合入ってる!身体がバラバラにされて、多分脳にもダメージ入ったのに最後の最後で頭突きみたいに額を伸ばして顔を潰そうとしてきた。頭周りは刻印多めにしてるけど、これで何個か消えちゃったなぁ・・・。後頭部も痛いけど、何だったんだろう?


「え~と、回復薬?・・・、はっ!最後の最後で一矢報いても私が勝てるように投げたとか?にいさん・・・、いい男だねえ。」


________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 最終試合も終わり2回戦シャッフルが始まる。敗者復活戦はすぐに始まり最終的に相撲取、泰山が復活して76名で行われる。後2つ勝ち進めば19名、井口は本部長ではないので省き、望田も副長なので省く。宮藤は元々職員採用としていたので問題ないし、雄二と卓は民間枠で初期の30名として名が入っている。ん〜、19名から1名は脱落か。遺恨が残りそうだが勝負なので仕方がないな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 青ツナギの人は阿部さんじゃなかった‥
[気になる点] ~一試合最長10分。決着が付かないなら付くまで続行。 一試合10分。と言った直後に時間無制限でやると即上書きされているので、よくわからない文になっています。 [一言] これストーカー氏…
[一言] クロエお父さんちょっと天然入ってるよ! とりあえず試合終了後あのシーンだけ切り抜かれて爆速で拡散して過去一の黒歴史化決定間違いなし!
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