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街中ダンジョン  作者: フィノ


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174話 ヒーローと小田 挿絵あり

「派手に始まったみたいですけど、僕達も行きましょうか。」


「そうね。私は夏目程人間やめてないから守ってね、ヒーローさん。」


「その願いはヒーロー希望者として果たさないわけにはいきませんよ。まぁ、1番ドンパチやってるクロエさんと比べればどうしても霞んでしまうでしょうけど。」


 対面の夏目さんと雄二は派手という言葉は似つかわしくなく、どちらかと言えば不気味にモンスターと戦っている。米兵もエマさんの言葉で僕達のいる場所には近寄ろうとしない。まぁ、夏目さんのあの姿じゃなぁ・・・。女性的なディテールの人外モンスター。特撮で言うなら女幹部。もちろん裏切って寝返らないヤツ。


 いつだったか免許を取ろうと教えを請うた時、性転換を進められたのは記憶に新しい。そして、今回ペアの小田さんが僕と雄二が話す姿を何処か熱の籠もった視線で見るのも、理由は怖くて聞けないけど背筋が寒くなる。格闘家にもなって腹筋も最近くっきり割れ出したのに、何故かそれを嘆かれる・・・。


 よし、肩の力抜けた。時折聞こえるクロエさんの笑い声は楽しげだけど、それが逆に不安を煽る。ここは戦場で、人の悲鳴も怒号もある中一人で3体を受け持つというのにその余裕はどこから来るのか・・・。やめよう、僕は自身の弱さや無力さを知っている。でも、それを知っているからヒーローを目指すのだから。ブワリと炎を吹き上げ身体に纏う。


  挿絵(By みてみん)


 ここは米国でメジャーはアメコミMARVELヒーロー。でも、僕の中のヒーローは何時でも日本の戦隊モノ。決まっている、リーダーのレッドは何時でもカッコいいに決まっている!だから、僕がカッコ悪さを見せてはいけない!


「先に行く!」


「ええ、頑張ってレッド!私もすぐ追いつくから!」


 自身を炎としてモンスターへの右足での飛び蹴り、速度も威力も申し分ないそれはしかし、片手で受け止められる。そのまま右足を始点に左足の踵から炎を吹き出し頭部へ回し蹴り、クリーンヒット。だけど、やはり人じゃないモンスターはこれでグラつく事もないか・・・。足りないならまだ増やせばいい、足りないなら更に燃え盛ればいい!


「倒れるまで打ち込もう!何度でも、何度でもだ!とうっ!」


 近づいてからのインファイト、拳の速さだけなら赤峰さんに負けない!ウェイトは炎で加速してカバーする!ワン・ツーからの回し蹴り、人型の駆体で紅いモンスターはその太い両手で軽く受け止めながら爪で貫こうと貫手を放つ。しかし、それをくらう程、見えない程僕は弱くない!膝と肘で挟み込んでブロッキング、眼の前にある顔を発火させる。紅い虫みたいな外見だけど硬い!


  挿絵(By みてみん)


 太い腕にバッタの様に細い脚、後ろのモノは尾ではなく昆虫の腹?…いや、それがなんであろうと敵である事は間違いない。何をされるか分からない以上、観察は大事だけどそれをし過ぎて萎縮する訳には行かない!


「援護します!」


 声を聞くとともに火球を出しながら上空へ飛翔。眼下には小田さんの狙撃を受けるモンスター。ただ、それを受けても下がりもしなければ仰け反りもしない。細い脚のくせにバランスは悪くないらしい。いや、コレは中層のモノ。あの時見たバイトと同等かそれ以上。なら、相手にとって不足はないし僕が挑戦者だ!


 上空から瞬着しながら蹴り1つ!辺りに浮かべた火球もモンスターへ叩きつける。しかし、ここで相手に動きがあった。観察は終わりと言う事だろう。


「かはっ!」


 足を捕まれ叩きつけられる。当たったと思ったのは手のひらか。頭の中の冷静な部分で、自身の身体が急激に振り回される感覚を覚え、逃れる前に叩きつけられた。すぐさま指を開こうとするが馬鹿力が!足を爆破させても手を開かない!仕方なく振り上げた瞬間に足を炎と化してするりと抜けて眼の前に着地する。


「小田さんあいつ硬いぞ!」


「ええ、私の狙撃もあんまりダメージ無かったですからね。何か手はあります?」


「1人じゃ無理でも2人でなら手はある。小田さんは引き続き射撃と妨害を頼む!」


「了解、上から仕掛けるから存分に!」


 一人じゃない、仲間がいる。背中を任せて歩ける人がいる。なら負ける事はない。動こうとしたモンスターの脚が一瞬止まる。小田さんが地面と脚を結合したのだろう、接地面は少ないけど、ただでさえ細い脚が違和感を抱えるなら、そこに隙が生まれる。相手に構わず左フックからの腹へ膝蹴り、多少よろめいて下がった所を地面からの火柱で覆い尽くす。


 けどその機能は見てなかった。脚が邪魔と言わんばかりに背中から羽が生え『バンッ!』と一打ち空気を撃つ。このまま地上で決着をつけたかったけど、舞い上がったモンスターは僕じゃなくて小田さんへ向かう!しかし、行かせない!


「何処へ行く!お前の相手は僕だ!」


 身体から切り離された腹は独立して空を飛び、ビームの乱射と細い触手の絡め取り。しかし、触手なら焼ける!モンスターが硬かろうと、ビームを放とうとそれに対するイメージで塗り固め壊せばいい!


「陽炎登りて光は霞み!細い糸は焼き切れる!」


 炎より立ち上る陽炎は通過するビームを減衰させて、細ければ細いほど糸の様な触手は焼き切れる!イメージを固めろ、本体は固くとも中から出た触手は焼き切れた、空を飛ぶモンスターは速いが追い付ける。それに、小田さんの援護で触手は結合され太い棒となりバランスを崩した腹は飛ぶだけに。


 本体だ!本体さえ倒せば腹も消え残骸になる。ゲート内ではないので消えはしないが、しかし、クリスタルさえ取り出せば勝ちだ!腹を通り過ぎて本体へ殴りかかるけど、羽が出てから速度が増していたのが仇となった。腹に当たるはずだった蹴りは右肩へ当たり左手で邪魔だと言わんばかりに投げつけられる。


 再度地面に叩きつけられそうな所を、空中で羽ばたき急制動からの瞬着で再度殴りかかる!しかし、あの手に持つのはさっきの腹?知能も上がったのか、ハンマーの様に振り回す。


「悪いけど、私もただのサポーターじゃないの。増えろ育て!脂肪の様に、膨れろ膨れろ手に持つ腹は肥え太れ!」


 治癒師は残念ながら魔法職ではないらしい。おかしいなぁ?白魔道士とか魔法職のはずなんだけど・・・。でもまぁ、戦えるに越したことはないかな。傷ついた人は助けたい、でも助ける為には守られてもいられない。『回復しているから攻撃しないで!』は通用しない。薄暗がりの中、現れるモンスターはどれも醜悪で、強かろうが弱かろうが人は傷付き血を流す。


 衛生小隊にいた頃、何度もそういった映像は見たし本当に血は出ていないけど、応急処置は何度も習った。女性に苦手かと聞くのは愚問だ。毎月一度は見るし、それが続けば好き嫌いは別としてある程度慣れる。ある意味それは助かった、ゲート内で骨が出た腕を治す時も物怖じしなかったし、別班として動く時も判断を迷う事はなかった。


 まぁ、別班はクビになって本部長になったから、これからは人助けをメインに色々と動こうかとしていた時にこのスタンピードの知らせ・・・、はっきり言って私は怒っている。兵藤さんじゃないけど、勝手に人の星に来て勝手にゲートを置いて行った奴に頭にきている。こんな技術があるなら外に出さないようにしろよ!卓君のサポートの合間に見える範囲で見える人にも回復を施すけど、乾いた砂漠には血と臓物と動かない屍とクリスタル。そして、壊れたモンスターの残骸が転がる。


 増殖させたモンスターの身体は物理的に増えた体積で速度も落ちて、振られたハンマーは空中をバックステップして躱す。危なかった。思ったよりも風圧のあるハンマーは、結合しながら動いていなければ吹き飛ばされていただろう。真空波で切れた頬を癒やし狙い撃つ。動きは緩慢になったけど、それで中身までは増えてくれなかった。装甲と言えばいいのか分からない体表の姿に撃ち込むけど、ダメージは見て取れない。増殖でモンスターは倒す事ができる。でも、それは何度も何度も重ねる必要がある。うん、やはり彼に任せよう。何せ炎の翼をはためかせ、彼はモンスターのすぐ近くにいるのだから。


「どりゃ!」


「d5tpamwp!!!」


 モンスターより高く跳び上がり踵落としで地面に叩きつける。よし、若干へこんだ。増殖した分、密度が減って柔らかくなっている?考えるのは後だ。手があるなら実行して確実に仕留めよう。


「小田さん、頼みがある。」


「いいけど危なくない?自爆技とかなら手伝わないけど。」


「大丈夫!ヒーローは生きて帰って勝利を叫ぶ者、それにまだ敵は多くいる。ちょっと強い雑魚相手に構ってはいられない!」


「はいはい、で。何をして欲しいの?」


「必殺技を叫んだ時に結合(・・)して欲しい。」


 肥大化しずんぐりむっくりで不格好なモンスターは、立ち上がろうとしているが、小田さんの結合と狙撃で体制を整えていない。攻めるなら今だ!正々堂々と正面から打ちた倒したい、でもそれが出来ない自身の弱さも知っているし、仲間の心強さも知っている。誰かを頼るのは悪い事じゃない、足りないなら助けを求め手を貸してもらえばいいんだから!


 上空からのボールの様になったモンスターに流星のような蹴りを放ち、反動を利用してから再度飛び蹴り、次は跳ね飛ばす一転集中で乱打!空気の焦げる臭いがする、ここで終わりではなく次の敵がいると勘が囁く。そして、周りで戦う米兵達の叫びが聞こえる!モンスターのツノがキラリと光った瞬間、振りかぶった拳とかち合いゴッソリと肩まで消失するけど、バイトは見た!残った拳に炎を込めてこれが終の一撃をとなるだろう!


 モンスターもそれを感じ取ったのか、腹で出来たハンマーを叩きつけようと振りかぶるが遅い!既に拳は赤を通り越して白く輝き、周囲には漏らさぬようにするが地面の一部はガラス化している!この炎は誰にも止めさせない!


「この拳は太陽!日の下を歩む者達の希望の光!悪しき者よ!!その身に受けて燃え尽きよ!コロナバースト!!」


「このタイミング、必中は確実かな。結合!」


 振り下ろされた拳は相手の身体に阻まれる事なく、表面に結合されて中に入り込む。そして、内部に小さな太陽の様な熱を放つ!流石にこれは耐えきれなかったのだろう。内部から溶け落ちていき、到頭僕の手には大きなクリスタルが握られる事になった。


「お疲れ様ー、熱くて近寄れないけど大丈夫ー?」


「気遣い無用!僕の炎は何度でも燃え盛る。」


 消えた腕は再度炎で形成すれば・・・、うん・・・。スーツを解くまでは大丈夫だ。等級の高い薬を飲めば、解いた後も生えて元通りになる。


「やせ我慢言わないの、分からないけど治癒して先に行くよー!」


 立っていた僕に小田さんが治癒を何発か撃ってくる。やはり彼女も中位か。腕が生えてくるような感覚が炎から伝わってくる。一体僕の身体はどうなったのか?ヒーローの身体なんて何処か変わった作りをしているんだ、そんな事に今は構っていられない。


「ありがとう!外を助けに行く!」


「分かった!雑魚を始末して、私が周りを癒やすから!」


 僕の炎では怪我人は救えない。でも、それを出来る人を守る事は出来る。なら、その道を進むとしよう。ウジウジと悩んだ僕と共に弱さを抱えて先を進む。



________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


ーside ホワイトハウス ー


 嫌な報告を受けた。外円の米兵から正体不明の人影が多数確認されたと通信があった。国内は・・・、義勇軍はすり潰す算段がついたけど、どうやらあちらも1枚は噛みたいのだろうね。今回の件に噛めれば、その後の彼等は動きやすくなる。


曰く、海外にもファーストは来てくれるのだろう?


曰く、映像資料を元にすれば〜。


曰く、一国にその戦力を認めるのか?


曰く、2カ国以外で発生した場合の救援は?


曰く、音頭は誰が取るのか?


曰く、曰く、曰く!曰く!!全く持って人の国が大変な時に横合いからしゃしゃり出て来て中を引っ掻き回そうとするのは止めて欲しい、不愉快だ。大統領の演説でスタンピードが我が国で発生している事は周知の事実。善良に対抗手段を手を取り合って模索するなら、まだ取れる手もあるけど彼等はそういう人種ではない。寧ろこの機に横合いから殴りかかり、全てをご破算にして新しいルールなんてものを掲げるなんて事を考えていてもおかしくない。


「大統領、正体不明の人影は始末してもよろしいですね?」


「・・・、待ちたまえアライル。今始末するのは上策ではない。確かに邪魔だ。それこそ妻とベッドでSEXしている時に鳴るチャイムくらいに邪魔だ。だが、このまま帰しては遠路はるばる来てくれた増援(生贄)に悪いだろう?」


「成る程、援軍ですか。なら、パーティーに招待しましょう。・・・、ヒューストンゲートでよろしいですか?そこが1番最寄りのパーティー会場です。」


「あぁ、構わないとも!私は演説で世界に向けて言った。猶予を稼ぐ方法を!ならば義勇軍と共に国連軍ならば戦ってくれるだろう!仮に、そう仮にこれが敵対勢力なら・・・。」


「えぇ、そちらはそちらで手を打ちましょう。1000名程動かします。中の映像を見る限り、我々のベットしたクイーンは負ける様子もなく笑っていらっしゃる。」


 醜悪で10年履き続けた靴下を煮込んで作ったような、そんな嫌悪感をもたらすモンスター3体を彼女は笑いながら1人で相手にしている。切り替わる映像の中で、他の中位も続々と強いであろうモンスターを倒して今だ戦況は我々の有利。なら、仕事をするとしよう。国内は任せろと言ったんだからね。


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[一言] 橘が宇宙刑事、卓が戦隊ヒーローでニチアサで人気が出そうだな
[良い点] 久しぶりに各キャラの活躍する話で成長したなーと感じる。 ここからどんな強いモンスターが出て絶望するか立ち向かうかが楽しみです。 クロエが爆弾で自死する話の伏線は回収してくださいよ。 [一言…
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