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街中ダンジョン  作者: フィノ


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169話 合流 挿絵あり

 空港に降り立ちエマと共にフラッシュの嵐に合う。ポリゴンショックを知らんのか?目がチカチカするじゃないか。芸能人がサングラスする意味がわかったような気がする。どうせすぐ戻るから大丈夫と言えば大丈夫なんだが、降り立って演出を終えた後は魔女と交代したので早く立ち去りたい。てかウィルソン、或いはSPはよ!英語で一斉になんか一言とか、今回のお忍び訪問はどういった意図があったのか?とか聞かれているが、特に答える気もない。笑顔で適当に手を振っとけばいいかな?


「私は米国陸軍所属エマ=ニコルソン大佐。今回クロエ氏は日本国で開催された講習会に参加した、私の友人と言う事でプライベートで渡米されていた。そのさなか、急遽発生したスタンピードに対応する為、今ここにいる。悪いがマスコミ各社は道を開けてもらおう。」


 おぉ〜、日本語は端々が未だに英語訛りっぽいのに流石は母国語、淀みなくスラスラと話す。まぁ、母国語が怪しかったら致命的だし、少佐には成れないだろう。けど、日本人は日本語怪しい人もいるのでなんとも言えないなぁ。若者言葉とか分からんし、プルいとか言われても、プルかプルツーに似てるのかな?としか思わんぞ。


 ただ、エマがそんな事を言っても引くマスコミではない。飯の種なんだし海外で初撮影の人物だし、派手に登場したしで既に収拾がついていないような・・・。ウィルソンの到着も遅いし一定間隔空いているとは言え、ジリジリ詰め寄ってきそう。


Could(何か)I have a (一言) quick word(いただけ)from you?(ませんか?)


Would you(静かに)be quiet(していただ), please?(けますか?)


 疑問形を疑問形で返したが丁寧な返しなのでいいだろう。エマが『えっ?英語話せるの?』みたいな顔をしているが、高校は工業高校だけど出てるんだよ!中学生か下手したら今の小学生レベルの英語くらいなら話せるよ!ただ、書くのは勘弁な?サイン頼まれてもカタカナで書いてたし。ただ賢者に聞けば普通に文書もかける。感覚としては教科書写してる気分なので面倒だ。


 割とPCと言うか中のデータと言うか賢者は知りたがりなので、ペンタゴンから引っ張って来た文章データを人の中で好き勝手読んでいる。いや、読むというよりパズルをしてるかな?同一単語を探しては前後の文から意味を推測して行くような感じ・・・。まぁ、下手に内容を聞くと知らなきゃよかったと思う様な事もあるだろうし、ひっそりと見守ろう。


 そうこうしているうちに飛行機から降りたウィルソンが車を回し空港を後にする。相変わらず黒塗りセダンに囲まれて、どっか観光しないといけない訳だが、ダラスってなにあるの?スマホをポチポチすると出てくるのはケネディ暗殺に使われた博物館に自然公園にブッシュ博物館兼図書館とか・・・。行くなら図書館1択だけど、行くって言ったら英語の読み書き出来て話せるならちょっと海外行かない?とか言われそうなので却下。他めぼしい所は・・・。


「遅いじゃないかウィルソン!あのまま囲まれたらどうすル!」


「すまん。これは俺の失態だ、好きなだけ殴れ。」


「いヤ・・・、まァ・・・、失敗は誰にでもあル。クロエは怒っテ・・・、その前に流暢に英語を話したナ?」


「中学生、或いは小学生レベルです。日本の教育を甘く見てはいけない。それとウィルソンさん怒ってないので大丈夫ですよ。ただ、サングラスは欲しくなりましたけどね。と、行き先ですがペロー自然科学博物館に行けますか?なんか脳波測れるみたいなんで興味が出ました。」


「その程度ならお安い御用です。人払いを・・・。」


「マスコミ以外はいいですよ、子供の為の博物館なんでしょう?普通に楽しんでいる人に悪いじゃないですか。」


 ウィルソンが無線なんかを飛ばして博物館へ。ペロー自然科学博物館は変わった外観の建物で億万長者のペローさんが子供が楽しめる博物館として建てたもの。中を見て回るが竜巻コーナーや恐竜の化石が山程展示されている。4階建ての建物で踏むと鳴る階段や3階には気象やエネルギーに関する展示、2階には人体やエンジニア関係が展示されている。


  挿絵(By みてみん)


 走り回る子供がいたり、興味深そうに化石の土取を見ている子がいる。子供は特に問題なさそうだが、ドレスでここまで来たせいか親御さんにめっちゃ見られてる。寧ろ、博物館の展示物より俺の方を見てる。子供から目を離すなよ〜。すぐコケるぞ〜。博物館と言うと静かなイメージだが、ここは子供の為の博物館なので割と皆騒いでいる。ただ、SPが辺に目を光らせているので俺の周りだけ異様な雰囲気になってるだけ・・・。


「アレで脳波を測る様ダ。測るカ?」


「キッズコーナーなのでやめましょう。測らなくても結果はなんとなく予測できますし、他のコーナーも面白そうですよ?」


 そうして中を見て回ったのはいいのだが、俺の周りでやたら子供が転ぶ。寧ろ転がっている・・・。いや、うん。理由は分かっている。最初にコケた子供を助け起こして飴玉をあげたから。その後親の所に行って『将来僕はあの子と結婚する!』と息巻いていた。ごめん少年。既婚者で中身おっさんなんだ。それを皮切りに男の子も女の子も転ぶ転ぶ・・・。


「そろそろここを離れた方がいいですね。流石に子供が転びすぎる。」


「片っ端から子供の初恋を奪っているからナ。さっきの女の子も『天使様に将来仕えるノ!』と言っていたゾ。」


「俺は初恋どころか今も恋心を奪われているが、どうしたらいいと思う?」


「別の女に貢ゲ。さもなくば封印しロ。」


「返すので適当にしまうか、諦めて海にでも投げ捨てて下さい。マスコミ対策と既成事実はこれでいいでしょう。後は宮藤さん達の到着を待つばかりです。」


「了解しました、時間があるのでホテルで休憩してから・・・、出迎えに行きますか?それとも、ホテルで到着を待ちますか?」


 馬鹿話をしながら車に乗りホテルへ。相変わらず黒塗りのセダンに囲まれているがもう慣れた。SPは話しかけると返してくれるが、カタコトの日本語なので変な丁寧語が出たりする。まぁ、いきなり流暢に話し出されても世間話するくらいしかないので特に問題はないか。ついでに言うと、外で待ち構えていたマスコミも追ってきている。


「到着時間次第ですね。予定時刻は?」


「日本時間の19時頃出発予定なので、ざっくりと言えば4時頃到着です。サマータイムがあれば5時頃ですが今の時期はないのでそれくらいです。」


 朝4時か・・・、ホテルにいよう。流石にフライトで疲れた上に時差ボケしている可能性もある。マスコミ引き連れてやんややんやと騒ぐよりはホテルで落ち合って少しでも休憩してもらった方がいい。回復薬で身体の疲れは取れても精神まではねぇ・・・。それに、到着したなら到着したですぐに砂漠へと言われる可能性もある。一応、メーターの進み具合から考えて1〜2日程は余裕があると思うが、なにかあるか分からないし一応地形も見ておきたい。


 作戦場所はアビリーン、スィートウォーター、ロビー、アンソンという長方形方に配置された町の真ん中辺りにゲートは移設されており、アビリーンからアンソンまで約38km、同じくアビリーンからスィートウォーターまでは約66kmと言う距離がある。ダラスからアビリーンまで車で約3時間なので、余程余裕こいてギリギリ出発でない限りは余裕があるはず!


「ホテルで待ちます。長旅の疲れや時差ボケ解消の為にも到着して昼頃まではそっとしておいてあげてください。皆さん同じホテルでしょう?」


「ええ、フロア貸し切りで全員スィートです。ただ、ファーストさんや宮藤副長、橘さんはなにかの際に呼ばれる事を想定しておいてください。」


「ふむ、2人共休ませるので対応は私がしましょう。どちらかと言えばエマの方が大変なんじゃないですか?6000名の指揮でしょう?」


「指揮官だガ、本来指揮人数の倍いる上に普通なら准将や少将のポジションだ。部隊構成自体が陸海空の寄せ集めスィーパー混成部隊なのデ、早々に職別に部隊分けを行い再編成。その後、治癒師を起点とした部隊構成を再度行い初期の打撃から突入までをスムーズにしタ。残りの6000名は秋葉原で言う外円組だガ、規模が不明な以上予備戦力として残し、基本は補給と回復の構えとなっていル。無論、状況によっては・・・、突撃ダ。」


 外円6000名の突撃とは即ち内円の全滅か。させる気もなければ散らす命も最小限にする。そう・・・、最小限に。0とは言わない、それは夢見がちな英雄(子供)が口ずさむ歌のように儚いものだから。残念な事に俺は大人だ。だからこそ、現実を見て数を減らす方針しか取れない。『生きて帰ろう』そう言うのは簡単だが、厳しい現実はどこまでも追いかけてくるし、絶望するほど酷くない世界は一人が欠けても回っていく。


「分かりました。ただ、暴走だけは気をつけて下さい。下手に先走って突っ込めば・・・、無駄死にだ。」


「分かっていル。そう言えばウィルソン、価格は決まったのカ?決まったなら購入して早く届けたイ。」


「靴とインナー合わせて10億ドル。うち、7億ドル分を金貨で払い残り3億ドルはキャッシュだ。回復薬使用については別途査定する流れですが構いませんか?」


 継続販売したくなる額とは言ったがいい額だなおい。買い取り後はどう扱おうとこちらの知るところではない。ただ、額が額なので後でおまけに糸玉とアドバイスくらいは渡そうかな。米国の魔術師が糸を出しやすくなるような、そんなアドバイスをね。


「ええ、構いません。回復薬なんて使わないならその方がいい。それを使っていると言う事は誰かが瀕死になっている時ですから。支払いは証書と契約書を準備するなら後で構いません。」


「助かります。財務省が掻き集めていますがキャッシュより金貨の方が集まりが悪い。政府が金貨を集めだしたと言う噂のせいか敏感な投資家が紙幣を売って金貨を集めだした。」


「金持ちのやりそうな事ダ。こちらは命を掛けてるというのニ・・・。」


「まぁまぁ、私達は血を流す。金持ちは金を流す。違う様に見えますが、どちらが欠けても戦は回らない。戦争特需なんて言葉もあるんです。好き嫌いは別としてワガママでない限り見逃す他ない。特に、相手が人でなくモンスターである以上、費用の目処は立ちづらく今回のスタンピードが諸外国ではスタンダードな出費額となってくるでしょうね。」


 日本とは違い国土問題や作戦場所の選定など考え出せばきりがないが、それはもうその国のお国柄としか言いようはなく、逆にスタンピードの為に国土を広げると言うのはナンセンスだ。寧ろ、他国周辺に作戦区域を指定して討伐に失敗し、他国が乗り出してきた時点でゲートを持ち去られる覚悟は必要かな?前にゲートを売った国は、到頭買い戻しを諦めて今ある分のゲートで運用方法をまとめたようだし・・・。まぁ、あの国は国民感情で動く国だし、なんで軍事境界線から40km地点に首都なんて置いたか分からないし、何なら南進されたら相手が旧世代の武器しか持っていなくとも被害想定はうなぎ登りだろうて・・・。まぁ、過去を見ればすぐ統一するつもりだったんだろうけどさ。


 そんな話をしながらホテルについて休憩。相変わらず外にいるマスコミは無視して、ウィルソンの見る前でエマにある分だけインナーと靴を渡し数量を確認してもらう。エマも使用者登録破棄の仕方は知っているので指輪に収納しても大丈夫だろう。基本的にインナーは洗い替え以外は長く使った方が修復効果で丈夫になっていくし、遥曰く糸に戻しても強度は落ちないらしい。そのうち一子相伝の武具ならぬ一子相伝のインナーとか出来そうではあるが、汗臭そうだな。モンスターと戦闘する関係上動き回っている訳だし。


「ウィルソンさん、販売価格に満足したと伝えてください。それに伴っておまけをあげます。」


「おまけ?」


 キセルをプカリ。ゲートから出た箱を1つ取り出して中に糸を作りながら口を開く。糸だけなら登録までは行かないので、後はこれを持ち帰ってもらい国の装飾師に形にしてもらえばいいだろう。


「ええ、箱いっぱいの糸玉と糸を出しやすくするコツの様なものです。あくまで私見ですが21gの魂を繋ぐ糸やへその緒、後は絆や人と人を繋ぐ様なイメージで私は糸を出しています。米国ならスパイダーマンとかもありですね。火の玉なんかを飛ばすのではなく、瞬間発火とか出来る人はあと少し頑張れば糸が出ますよ、多分ですけど。」


「!、急いで報告してきます!」


 ウィルソンが部屋から出て行きエマも部隊状況確認と、インナー等を運搬する人選の為外へ。部屋に一人残され見る方角は作戦区域方面。流石に距離があるのでゲートは見えないがもう3日もしないうちに戦が始まる。嫌なものだ。予定通り作戦が進んだとして問題は最後に出るモノ。犬くらいの強さならまだいい、1度相対して対処はできた。明確に倒した訳ではないが、対処のしようもある。ただ、だだっ広く遮蔽物のない砂漠なら巻き戻りを誰かに見られるのは覚悟しないといけないし、その事をとやかく言われる可能性もある。


 中層付近まで進んだが無傷とは言わず、傷も負えば厄介なモンスターも多い。お手柔らかに、そう言って手加減してくれるなら土下座でも土下寝でもして、排出量を秋葉原と同等にしてもらいたいが奴等はそんなもの聞く訳もなし、どうせ掃除してくださいとしか言わないだろう。・・・、弱気は駄目だな。少なくとも他はいいけど、お前は残って掃除した方が効率いいと言われたんだ。それはつまり、それが出来るだけの力があると言う事だろう。


 割と時間は経ったが2人は帰って来ない。仕方ないので適当にルームサービスを頼みテレビを付ける。時刻は18時頃、チャンネルを回しても日本人とは違うツボで笑い声の上がるコメディーや、米国の格闘家が車と競争して勝ち、次はF1カーと勝負するなんて番組をやっている。格闘家とガンナー次に多いのはサバイバーなのだろうか?忍者対決と第されてサスケの様なアスレチックを飛び回り、互いに手裏剣の様なモノを投げ合ったり蛙や狐を出している。器用そうなので生き残るのには向いていそうだな。


「ここで速報です。ホワイトハウスよりジョージ・ハーワード大統領が臨時の記者会見を開きました。現地からの中継です。」


 画面が切り替わり壇上のジョージがアップで映される。さて、この時期に会見とか何を話す気だ?猶予はまだあるし、取り急ぎ発表する様な事もない。仮に次、何らかの発表があるとしたら、それは宮藤達の到着報告だと思っていたが・・・。


「親愛なる国民諸君!並びに今もなお現地でスタンピード対策を行う勇敢なる米軍兵士諸君!そして、未だに本隊は到着待ちだが共に肩並べる同盟国の戦士達!我々は危機に直面している!同盟国日本で発生したスタンピードが我が国で発生しようとし、モンスターのクソ虫共が今か今かと我々の喉笛を食い千切らんと、ゲート内より虎視眈々と狙っている!


 我々米国民はそれをただ座して待つだけか!?敢えて言う!否であると!!メーターがスタートしたゲートを沈静化する方法は未だ見つかっていない・・・。しかし!有益な情報としてゲート内よりクリスタルを持ち出せば猶予が稼げる事が判明した!ならばやろうではないか!訓練された兵士の大多数はスタンピード対策に向かい残された者は少ない。


 しかし!この危機に立ち上がり自国を守ろうと武器を持った者達がいる。そう!義勇軍の諸君だ!君達の力を貸して欲しい!ゲートへ入りクソ虫を潰し、少しでも多くのクリスタルを持ち出し、万全の体制でスタンピードに対応する者達が戦えるようサポートして欲しい!現米国大統領ジョージ・ハーワードとして深く、深くお願いする!」


 演説は続き異例と言えば異例だが、義勇軍の中で有力者だと思われる人物の名前を上げて激励している。・・・、アライルの差し金だな。多分名の上がった人物達は国連軍の息の掛かった奴等。シベリア送りならぬゲート送りで合法的にすり潰すつもりだろう。名を挙げられ、合法的な理由で合法的にお願いされているんだ、間違っても腹痛いから無理とは言えない。何なら先陣切ってゲートへ入りMVPを取る勢いでモンスターを倒さないと自分達の立場が危うい。当然だろう、少なくとも人を集めたからにはそれだけの責任があり義務がある。


 まぁ、これで米国内の国連軍の一部は身動取れなくなったかな?どれくらい入り込んで、なにをやろうとしているかはしらないが、こちらに向く目が減るのは確かだ。それに、これで中位が生まれる事になれば更に俺への依頼は減る。所属云々は抜きにしていい仕事をしているな。最近仕事をする国連だし本当に善意があるのかもしれないが、断った上で義勇軍に息の掛かった人間を潜り込ませていると考えると、ただの善意とは考えづらいよなぁ・・・。


「戻っタ。インナーと靴は先に支給品として駐留部隊に送り分配する運びとなったガ、1000着足りないのが痛イ。分配方法でだいぶ揉めてしまっタ。命綱なので仕方ないガ、ある者とない者では士気が違ってくル。」


「それは、明日になってからですね。至った遥がどれくらい頑張ったのか?そして、その生徒がどれだけ成長したのか?運が良ければどうにかするでしょうし、限界までやって駄目ならその時です。遥には劣りますが足りない時は、ウィルソンさん方式でどうにか作りましょう。」


 子が頑張って足りない所があるなら、それに手を貸すのは親の努め。不細工でも出来が悪かろうと数は揃えてやる。誰かに頑張れと気軽に言ってはいけない。既に本人が限界まで振り絞って全力でやってそこまでだと言う可能性があるのだから。ズルして楽をしているなら、そのツケは後からでも払わせればいい。


「お願い出来るカ?」


「娘の有終の美を飾る手助けなら父親としていくらでも。数が足りなかったと嘆かせるくらいなら、私が無償でどうにかします。まぁ、本当に劣化品なので作った後は装飾師に整えてもらってください。正式なインナーがあるので、調べればどうにかなるでしょう。」


「・・・、父親とはそう言うモノなのだナ。私の父はロクデナシになってしまったから久しく忘れていタ。」


「さて、どうなんでしょうね?初めてなってその初めてが続いているので、正解なんて分かりませんよ。ただ、楽しかった記憶があるなら、その時は少なくともいい父親だったんじゃないですか?」


 親に成るのなんて皆初めてだし、成った後も全て初めて。自分の親に話を聞いて、妻と話し合って言い合ってそれでどうにか形にしていく以外ない。家族の形はきっと、そんな歪で不定形なモノを家族全員で作っていくものだろう?正解なんてないさ。


「戻った。糸と先程のアドバイスは局長に届けました。荒さはあるだろうが、これから米国でも糸が出せるようになれば更にゲートの攻略が捗るだろう。そう言えば、演説は見られましたか?」


「ええ、いい演説でしたね。」


「私はまだだガ、ニュースを見ればどこかの局で流しているカ、なければ動画サイトを見るでしょウ。」


「エマはそうしろ。ファーストさん局長からです。『国内は安定させておく、後は敵だと思ってくれて構わない。』だそうです。それと、先程これが届きました。」


 ウィルソンが一通の手紙を差し出すので中身を確認すると、作戦時における損害に付いては基本的に全て米国が責任を持つ旨と、怪我や物的損失に付いても同じく米国が責任を持つ事。最後に、今回派遣された人物の報酬については日本政府に一括で支払い、以後日本側で分配してほしいという旨が書かれていた。


 作戦区域的には損害は出ないと思うが、先にこう言った取り決めをしておかないと、何かあった際に後で揉めるのでありがたく免罪符とさせてもらおう。ただ、報酬の部分は逃げだな。政府がいくら吹っかけたかは知らないがボチボチいい額をもらって分配させてもらおうか。インナーの代金もほとんどは作成者とギルド運営資金に回す予定でもあるし。


 そんな話をしながら過ごし、夜を迎えて3人で食事をして風呂に入って寝る。朝の迎えは正直迷ったが外にマスコミが張り付いているので、このまま誘蛾灯のように座して待った方がいいだろう。何なら俺がいない方がひっそりと移動もできそうだしね。そうして夜はふけていき朝は9時くらいに起きればいいかな・・・。


「おはようございますクロエ。望田 香織!只今参上!」


「おはようカオリ。取り敢えずなんでここにいるの?」


「それは当然スタンピード対策に来たからです。」


 違うそうじゃない。寧ろその為以外にここにいたら、ただの観光客になる。聞きたいのはそこじゃなくで、なんでこの部屋にいるかであって、今の気合を入れたカッコ良さそうなポーズとかはどうでもいい。到着したならそのまま全員休んでもらうようにお願いしてたはずなんだけどな・・・。


「エマから入っていいと言われたのでここにいるんですよ。遥さんからインナーを預かってきたので、それの受領確認でき次第、駐留米軍に送る予定です。それにもう8時ですよ?皆で朝食食べませんか?」


 そう言って出されたのはインナー1000着と書かれた用紙。そうか、在庫がどれくらいあったか知らないが、人数が判明して増産してくれたのだろう。確かに受けとったよ。用紙にサインをして・・・、何か着飾ればいいのかな?取り敢えず指輪に収納して適当な服に着替えて望田の後を付いていく。豪華な食堂にはビュッフェ形式で料理が並び、到着したメンバーとウィルソン、エマが集まっていた。知らん間に何か打ち合わせでもあったのかな?時差ボケ解消の為にも寝たいなら寝てほしかったんだけど。


「おはようございますクロエさん、宮藤他8名無事に到着しました。」


「皆さん長旅ご苦労様でした。話を聞いたか知りませんが一応、明日の朝までは余裕がありそうです。それまでは自由にして下さい。」


 さて、朝食を取りながら情報交換といこうかな。


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[一言] 胡散臭い義勇軍は主戦場に影響を及ぼせず放っておけば削られる戦場送りになったのね 死んで良し生きてゲートからクリスタル減らしても良し、今後国連軍やらの胡散臭い連中はゲート送りだな
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