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街中ダンジョン  作者: フィノ


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164話 さて、行こうかな

 松田との電話で小さい所を詰めていく。出発時間に想定した人員。他はお願いできる人にお願いした装備品について。魔法を使えば姿を消せるが、ここで仕損じると取り返しがつかないので、地雷の回収にしても回復薬の調達にしても誰かにお願いする事となる。まぁ、ラボの横は駐屯地で自衛隊経由なら回収出来るだろうし、検証した地続き案件をぶっつけ本番だが米国で試してもいい。


 ん〜、遥が丁度ゲートにいるので、回収して来て貰えるとスムーズなのだが、それには電話連絡が必要なんだよなぁ・・・。高槻と面識のあるメンバーは少ない。1度駐屯地で魚を食った仲だが、その時も話はするが親密かと聞かれると考えさせられる。次点の案とするなら兵藤にお願いして中野に受け渡し役をお願いするとか?


 薬の量産をお願いしているのでそれなりの量はあると思うし、米国に海外生産拠点1号を作る事も約束しているが、完成の知らせは受けていない。流石に工場建設と人員派遣をこの短期間でやってのけるとは思えないので、ある薬と追加の物で凌ぐしかないか。他は、お願いした靴とインナーの量だな。知らせを受けてそれなりに時間はあったのでそれなりにはあると思うが、米軍の規模が分からない以上、全員に行き渡るかは不明。


 ・・・、インナーと靴は売りつけよう。自衛隊は薬莢まで回収して物品愛護を叫び、税金で食わせてもらっている事を叩き込まれる。それこそ、戦闘服さえ官品で個人ではなく国の持ち物と言われて辞める時は返納させられる。しかし、米軍の考え方は別で貰ったら全部自分の物。薬莢は適当に撃ち捨てるしなにか失くした所で全く気にしない。何なら支給された銃でさえ個人管理だ。


 そんな所にインナーと靴を貸し付けたとしても、帰ってくる保証はない。なら、最初から売りつけてしまえばなんの憂いもない。まぁ、問題があるとすれば売り物として扱った事がなかったために販売価格がまだ決まって無いので、適当な額をエマにでも提示して値段を決めるとしよう。安ければ売らないと言う選択肢はないが・・・、いや、売る先を個人ではなく国・・・、それこそアライル辺りに一括販売でもしようかな?


 戦争で商売をする気はないがこれは1つの俺に対する戒めだ。何もかも無償でしていては、それこそ使い潰されて自分がバカを見る。困っている人がいたら助けましょう。いい言葉だが、それはその時その場その限りなら別にいい。しかし、何度も助け続けるとそれが当たり前となり、常識となる。そしてある時断るとどうなるか?簡単な事だ。なぜか恨まれる。


 人を勝手にあてにして断られると本人の思い描いた計算が狂って、何故か断った本人に文句とシワ寄せが来る。はっきり言おう。その計算はお前の計算であって、人の都合を無視して勝手に織り込むなと。なので、無償提供はなし。自前で準備しているなら販売もなし。あるとだけ伝えれば後は勝手に値もつくだろう。


「クロエ、電話中カ?」


「いえ、それは終わっています。エマの方にも連絡がありましたか?」


「あア、死ぬ前提なのか二階級特進して大佐になっタ。ついでに兵を6000名預かり、今すぐクロエと日本を離れろと命令が下っタ。」


「ほう?誰からです?」


「プレジデントジョージ。米国大統領からの直接命令ダ。実行しない訳にもいかないのだガ、準備時間がない事も重々承知していル。少ない時間だが協力できる事はあるカ?」


 ジョージね。名前変えてデウス・エクス・マキナとかにしないかな。出て来てハイ終了の終末舞台装置。アイツがプリーズを言ったから助かったし、松田からエマの家に遊び行ったと言う筋書きを言われた時から2人で隠れて渡米する事は予想していた。財布に小銭かテレカあったかな?次いでに公衆電話も探さないと・・・。下手に通信記録とか調べられると・・・、即刻GPSを切ろう。筋書きがあるなら通信記録履歴も操作するつもりなのだろうが、流石にGPSは不味い。


「エマ、スマホのGPSは切っていますね?」


「当然ダ。位置が知られるのは色々と不味イ。通話も先程貰ったらモノで最後としてあル。」


「分かりました。こちらとしては渡米メンバーの発表とその他必要品の受け渡しをと考えていましたが、連絡して物自体は誰かに持ってきてもらいましょう。」


 そうエマと話し、教室へ。中は赤峰と井口の夫妻のへのおめでとうコールが続いている。幸せそうで、兵藤が赤峰を泣き笑いのような表情で爪を立てながら抱き締めている姿や、小田が井口に幸せそうなお小言を言っている。まぁ、小田の言う様に本部長の仕事をする前に副官になってしまったので、言いたい事は分かるが最後におめでとうの言葉を送るあたり予想はしていたのだろう。


「幸せムードに水を刺しに来ましたよっと。皆さんちゅうーもーく。」


 ガヤガヤとしていた室内が静かになり、前に立つ俺とエマに注目が注がれるが、今更このメンバーに見られても恥ずかしさはない。まぁ、居心地がいいかと聞かれると、よろしくないと返しはするが・・・。


「日本政府からの御達しで今回の派遣人員数は10名。1名指定として橘さんが入るので残り9名。外せない人員として、望田さん。回復及び攻撃要員として小田さんと夏目さん。現地で米軍との密なやり取りの為、兵藤さん。副長として宮藤さんとサポート2名に木崎君に神崎君。隊長は僭越ながら私で、最後の1名は・・・、本人達の希望により御祝儀と、子供への土産を取りに行く赤峰さんです。


 残りのメンバーは休暇なんてものはなく、45階層付近で継続してモンスター討伐と選出戦準備を行って下さい。なお、異論は認めるので異議ありの方は、選ばれた人に挑んで勝ってから米国行きの切符をもぎ取って下さい。細かな出発時間等の調整は政府からお達しがあります。因みに、私に挑むのは無駄です。現時点で私は数日前から米国に遊びに行っている事になっているのであしからず。」


 名前を呼ばれたメンバーは明日を見るように目を瞑り、呼ばれなかったメンバーはゲートを見るように外を見る。どんな結果だろうと、どんな免罪符だろうと、たとえ勝とうと今俺は近しい人の命を選び使う事を行った。言い逃れは出来ないし、事実を捻じ曲げる気もない。家族しか背負う気はなく、1番は決まっているがそれでもこんな身体になってしまったんだ。少しくらい・・・、仲間と呼べる者達に肩を貸して貸されるくらいは許されるだろう。


「良いのか大貴、新婚だろう?」


「なぁに、まだ世界を知らない子供に、親父が守った風変わりな世界を見せられるようにするだけだ。難しい事じゃねぇ。そう言う恭介こそそろそろ好い人捕まったんじゃねぇか?」


「生憎とまだだ。向こうで活躍して金髪美女をお迎えするさ。クロエさんと飲むのは楽しいが、ガードが硬い上に既婚者・・・、小田にしろ清水にしろちっとも靡かん。なら、世界に目を向けるまでだ。」


「そうか、なんかん時は背中頼むわ。」


「おう、俺の方も頼む。」


 兵藤と赤峰が拳を突き合わせて話す。男の友情というやつだろう。赤峰の話は立派だと思うが兵藤の動機は不順である。まぁ、戯けているだけだろうが、いい感じに肩の力は抜けているようだ。


「なぁ卓。お前英語話せる?」


「一般会話程度ならな。お前は?」


「察しろ!うぇ・・・、本部長なってただでさえ法律関係で頭痛いのに、英語まで覚えろとか死ねる・・・。」


「いい挨拶を教えてやろう。ハイ!マゲット。これが掴みの挨拶だ。」


「卓くんからかわないの。雄二くん挨拶はハイ、マザーファッカーよ。にこやかに相手の目を見て言うの。」


「小春おちょくるな。卓くんも、雄二は純粋なんだから信じて本当に言い出したらどうする?ウジ虫野郎にゲス野郎なんて挨拶誰が喜ぶんだまったく。あと夏目!向こうで問題起こすなよ?特に女性関係。」


「はっはっはっ!私は兵藤隊長のお目付け役として付き添う義務がある。なので、ストリップバーにコールガール、ヌーディストビーチを堪能しなくてはならない。凪夏は怖いが帰れば浮気は許してくれる。最も、浮気と言っていい関係か迷うがね。」


「はぁ・・・、雄二後でお守りを買いに行こう。行けない代わりに祈りを持っていってくれ。」


「あっ、なら私も行く。卓くんも行くでしょう?裕子は?」


「行く!安全祈願とか家内安全とか無病息災・・・、全部買ってネックレスにしたら効果抜群?七海どう思う?」


「取り敢えず、安産祈願を買えばいいんじゃないか?」


「安産祈願は既に10個くらいあるからいいかな・・・。うん、私と景子は行かないけど、みんなでお参りして行く人達の無事をお願いしよう。」


 雄二達はこれからお参りか。神がいるかも分からない世界だが祈って悪いと言う事はない。経を上げるのと一緒、ただ死者へではなく生者に願いを送るだけ。心は軽くならないし、思い詰める事もあるがそれはその人がそれだけ大切という事だから仕方ないだろう。実際、目の届かない所での悲劇は日常的に何処かで起こっているのだし。


「宮藤さん!スタンピードで燃え尽きないで下さいよ?俺達はなんだかんだてクロエさんと同じくらい宮藤さんにもお世話になったんですから帰ったら恩返しさせてください。」


「そうそう、何回炎の兵に助けられて、おんなじくらい燃やされたか・・・。」


「ガチシゴキされると三途の川が見えたな・・・。無理やり現実に帰されるけど。」


「実際、座学系は宮藤さんがほとんどやってたから、学びの日々が懐かしい・・・。チョークじゃなくで寝たら灰の塊が飛んでくるけど。」


「そのおかげで死なずに済んだでしょう?斯く言う自分も教える側なんで相当勉強やらなんやら忙しかったんですよ?元々ただの警察官、話に乗って戦って志を持って前に進み、今立ってるここがようやく始まりのようでもある。一区切りと言いたいですが、区切った所で明日も同じ様に日は昇るんです。内藤さんや鈴木さんほか佐藤さん達も45階層マラソンサボらないでくださいよ?」


 宮藤の周りにも人が集まってるな。講習会のメイン講師は宮藤で俺はあくまで助言役。その事を考えるとこうなるのも納得がいく。ゲートにしろ日常にしろ質問される事は多く、その都度知識を蓄え教える準備をしていた。俺も法律関係は宮藤に頭が上がらないな。


「クロエさん、今回はご指名ありがとうございます。副長の宮藤です。指名されなかったら、参加者を闇討ちして入れ替わるところでした。」


 変にホストっぽい言い回しをしながら宮藤が歩いてくる。元々若かったが、今は若い中にも精悍さがあり、見つめる瞳の先は既に米国に向いているのだろう。強い意思が感じられる。ジョークのつもりだろうが、闇討ちの部分で全く目が笑っていないので、本気でやりかねなかったな。


「はい、ご指名したクロエです。私はこの後すぐ米国に遊びに行きます。既成事実を作る為に打ち合わせしながら遊んでいるので、必要なものを揃えて持ってきてもらえますか?」


「いいですよ、取り敢えず回復薬ですか?」


「ええ、増産はお願いしているので快く貰えるでしょう。代金は建て替えになりますが、詳しい数量が分かったら連絡をお願いします。それとインナーと靴、両方遥が持っているとは思うので、同じく数量をお願いします。」


「いいですが無償提供ですか?」


「まさか、全て米国に買い取ってもらいます。何せ必要な分の報酬はくれるらしいので、米国に自身の国の価値を決めてもらいましょう。」


「・・・、あくどいナ。まァ、嫌とは言わせなイ。靴もインナーも現時点ではそれ以上に快適な防具はなイ。更に回復薬も大量に融通してもらうんダ。ガッポリ持っていくといイ。」


「太っ腹ですね。これでまたギルドの貯金が増える。あぁ、支払いはドルじゃなくて3分の2は金貨にして下さい。」


「それはいいガ、それで良いのカ?」


「それが最善です。破産されても困るし国が傾いても困る。何より、金貨を指定すれば躍起にってゲートに入るでしょう?掃除不十分の罰でスタンピードが起こるなら、掃除するように仕向ければいい。」


(掃除・・・、何時もの言い回しカ?)


「分かっタ、向こうでウィルソンが補佐として付いて来ル。ヤツを経由して話が行くだろウ。」


 使いっぱしり2号か。まぁ、エマの補佐なので直接俺になにか言って来ないと思うが、何か依頼がある時はウィルソン経由になるだろう。米国のおっさんも大変だな。結局、若者は未来を目指して走るが、その未来へ続く道を作るのはおっさんやおばさんで、今ある枠組みを作って仕事している人達。


 向こうの兵士が若いのか老齢のベテランを揃えているのかは知らないが、外見年齢は既に意味をなさなくなっている。そうなれば、後に残るのは積まれた経験くらいしかないだろう。


「私は結局存じ上げなかったですけど、こっちで言う千代田さんみたいなものですか?」


「そんなもんだよカオリ。・・・、難しい役に担ぎ上げてごめん。会談は大丈夫だった?」


「ええ、言ってやりましたよ!核を使うくらいなら私を使えってね。」


「それはまた大見栄きったなぁ。」


 核より私、プライスレス。本人の意気込みのほどが知れるが、自ら背水の陣を敷くあたり変に追い込まれなければいいが・・・。向こうについたら砂漠だろうが、何かしら肩の力が抜けるような事をしてやろう。


「クロエ!まだいる!?」


 教室の扉がガンッとあらっぽく開かれると遥がズカズカと歩いて入ってきた。ゲートに行くと言って飛び出していったがどうやら無事に帰ってきたようだ。しかし、誰か連れてけと言ったのに誰も連れて行かなかったのだろうか?それとも、講習会メンバーは面が割れているので現地で補助でも雇ったのかな?


「まだいるよ、そろそろ迎えが来ると思うけど。」


「よかった。これと、これと、これ。至って作ったから本当の最初の一着。今できる最高傑作だから持っていって。」


 ゴスロリになんか薄いヒラヒラしたやつに派手目のドレス・・・。私服の概念が吹っ飛んでいるが。国土が広いので気候に合わせて3着なのだろう。考えてみれば、会談から直行なので今もゴスロリを着ていてそれに違和感を覚えない自分もいるわけで・・・。まぁ、それはいいとして遥は至ったのか。元々やりたい事は決まっていたし、それに向けて色々と作る上で行く末を決めたのだろう。


「ありがとう、大切にするよ。それでどう変わった?」


「装飾師はドレッサーになりました。鏡はないけど私の目が似合う服を映し出して作るよ。まぁ、カッコよく言っても見て作るだけなんだけどね。後、今ある分講習会で作った服を持っていって。」


 化粧台か。装飾からメイクアーティストとかになりそうだが、そもそも刻印は人にも刻めるので化粧と言っても差し支えないのかな?アイヌの人とかは口の周りに唇の樣な入れ墨を入れておしゃれしていたと言うし。そんなこんなで服を受け取り千代田が迎えに現れて米国へ。


 エマと2人で姿を消して車に乗り込み、色々と打ち合わせをする。今回は政府専用機で送ってくれるそうだが、乗るのは俺とエマ、後は内閣総理大臣・・・。総理大臣は隠れ蓑だって!接触しないんだって!まぁ、会っても何話せば良いのかわからないし、総理大臣は総理大臣でジョージに話があるんだろ?知らんけど。さて、降り立つのはワシントンらしいが交流までは遊ぶとするかな。



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[気になる点] 「はっはっはっ!私は兵藤隊長のお目付け役として付き添う義務がある。なので、ストリップバーにコールガール、ヌーディストビーチを堪能しなくてはならない。【夏凪】は怖いが帰れば浮気は許してく…
[一言] この10人が米軍以上に活躍しかねないよね 全員中位だし
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