115話 巻き付く髪の毛 挿絵あり
遅れてすいません&忙しくて短いです
「個人としてはライフワーク方面を色々と聞きたいですけど・・・、確信があったとはいえこんなに簡単にバラしてくれるとは思いませんでした。ちょっとぶっきらぼうな貴女も素敵ですよ。」
「彼女は結構悩んだんだけどね。まぁ、個が違えば捉え方は違うか。ないなら戻るけどこの事は秘密ね。」
「待って下さい。急ごしらえな質問ですがEXTRAは全員人格?と言うものがあるんですか?」
「ないよ?多分。色々とイレギュラーがあったから僕はこうなった。でも、他は会ってないから分からない。」
「そうですか・・・、他のEXTRA職は知っているんですね?賢者と名が付くならその知識は相当量あるのでしょう?」
「君達よりは遥かにある。けど、教えない。でも、なんで賢者がそんなに物知りだと思うの?認識がおかしくない?いや、言葉に惑わされてるのか。」
「惑わされる?賢者とは読んで字が如くあらゆる知識を有して賢い人の事ではないんですか?そうでなければ賢者とは呼ばないでしょう?」
「はい、間違い。その説明だと賢者ではなく全知だよ。そんな賢者は願い下げだね。感情や思考のないただただ知識を垂れ流すのは物の役目。僕はそれとは決別してるし、何より楽しくない。」
「楽しく?」
「そう、知識を得るのは楽しい。知識を無知なる者にひけらかすのは更に優越感がある。あぁ、言葉は大事だね。君たち寄りの耳当たりのいい言葉なら、弟子を教え導くのは有意義な時間だ。」
取り敢えず、後で賢者は殴る。ひけらかすのも教えるのも同じだが、印象の違いがありすぎる。流石は悪ガキ、ゲンコツが足りないらしい。大事と言う言葉で言い間違ったんだ、罰は受けてもらう。
「そうですか・・・、なら、クロエさんは賢者の適性があったんですね。教えるのは上手いですから。」
「ん?コレは極小の世界の更に粒子レベルを通り過ぎた先の、砂漠の中で1つの極小点を見つけるレベルの適性しかないよ?確かに貪欲さはあるし思考もする。でも、大切なものが足りない。」
取り敢えず、素の状態でゲートに入ったなら俺は賢者には成れないらしい。まぁ、賢者足り得るか?と聞かれて堂々と『うん!』と言えるような歳でもないし自分がそこまで頭のいい人間だとは思わない。足りない大切なものってIQとか?メンサ会員なら適性ありそうだな。IQ130以上で未知には興味持ちそうだし。
「賢者に必要なモノ・・・、知識欲?」
「それは適性以前の問題だね。知識欲と言うより、モノを知る事を知らなければ幸せだろうけど、知らなければ対処の仕様もない、粛々と運命を受け入れるならそれでいいけど、知性があるなら例外なく抗う。何であれ、どんな形であれ、ね。君や彼女が知る中で一番適性が高そうなのはタカツキだったかな?彼だよ。まぁ、極小点が小点になるレベルだけどね。」
ふむ、確かにありそうな感じはあるな。医者なら頭はいいだろうし、人を助ける為に知識を欲している。やっぱり頭の良さが賢者には必要なんだろうなぁ。例えば記憶力とか。
「なら、何が必要なんですか?」
「決まってるじゃない、考動力だよ。無知を知に変えるならまずは知らなきゃいけない。知る為には考動しなければならない。なら、考動する時に躊躇してはいけないよ?躊躇は知る機会をなくす。」
あ〜、コイツを悪ガキと考えたのはそのせいか。確かにその説明だと悪ガキが該当する。家の呼び鈴を鳴らせば人が出てくる。なら、出て来た時に人がいなかったら?そんな小さい頃のイタズラは、視点を変えれば相手への観察になりそこから様々な仮説が立てられる。ピンポンダッシュと怒るだろうか?別の家の音を自分の家の音と違って聞いたのだろうか?或いは、慣れた人なら無視するんじゃなかろうか?互いの関係性、やった回数、自身の普段の態度でやった人間とバレるバレない。
一軒家か集合住宅か、普段誰がいるのか、この場限りで知らない人がいるのか、考え出すときりが無い。確かに悪ガキのイタズラは楽しくやっている分飽きもなく、そこから考察するだけの知識や知能があれば積み重ねていける。それを元に高槻を知っている限り考えると・・・、うん。イタズラはしないけど写真取る時にキスしていいとか言うし、フィールドワークで飛び回っているし、何よりセーフスペースでは躊躇なく草をむしるし食べもした。知識を得ると考えると確かに何より考動が必要で高槻は俺よりもある。
「他のEXTRAもそんな感じなんですか?」
「多分ね。まぁ、最初からEXTRAが出る人なんて、君達だと相当な年数先じゃない?突然変異は進化の過程で必ずあるけど、それがどう作用して何に成るかは分からない。僕は彼女を通してしかこの世界を知らないからね。さて、冷えて来た。女性は身体を冷やさない方がいいんだろ?」
「ええ、あまり内緒話しても仕方ないですね。ただ、覚えておいて下さい。私は女性の味方であなたの味方でもあると。」
「よし、ならお礼に頭を撫でてあげよう・・・、届かない。仕方ない、おあずけだね。」
「しゃがむんで撫でて下さい!ええ、片膝もつきましょう頭も下げましょう、なので顔見ながら撫でて下さい。そもそもクロエさんは背が低くて、普段見る時は見下ろす形になるんですよね。」
眼の前で片膝つかれてニコニコ顔で俺を見てくる。まぁ、賢者とバトンタッチして俺である。人の頭を撫でるのなんて何時ぶりだろう?子供達が小さい頃はよく撫でていたが、流石に今の歳になって頭を撫でる事はない・・・。娘に背中を流されるのはつい最近体験したが・・・。
そんな事を思いながら夏目の頭を撫でる。サラサラと手入れのされた髪は指を滑り、外の寒さでかじかんだ指が頭皮の熱でほんのりと暖まる。割と手触りがいいので撫でているが枝毛もなく指に絡まる・・・、絡まる?撫でる度に何かが指に絡まり手の動きは阻害される。最初はなんの抵抗もなかった、しかし、この短時間で抵抗が・・・?撫で方が荒くて髪が絡まった?いや、髪は女の命と言うし優しく撫でている。なら、絡まる事はないと・・・。手をそっと持ち上げる、夏目の髪がゴッソリと指に巻き付き!
「きゃー!」
「美少女のスクリームありがとうございます。と、言うか普通にキャーなんですね、グッジョブ!」
立ち上がってからのサムズアップはいらん!頭撫でてたら呪いの市松人形よろしく髪の毛が巻き付きだしたら誰でも驚くわ!取り敢えず、心を落ち着かせる為にタバコをプカリ。興味深そうに見ているが、煙しか出んぞ?
「そう言えば、タバコで切り替わるんでしたっけ?」
「いや?基本的に私が上位で権限を持ちます。なので、お願いすれば表面に出る事も出来ますが、それ以外は私の中で外を見ています。」
あの2人は基本的に人の中で遊び回っている。それこそ、人の記憶を読み取って映画を見たり、くだらんコントを見たり、魔女は俺の乏しい洋服知識に腹を立てて、雑誌を読めと催促される。着るのはいいけど、洋服雑誌はやはりというか読んでも暇。トレンドは万年黒なので今年の新色はどうでもいいし、服も今は娘コーデで間違いはない。そもそも、女性の服なんて妻の買い物でたまに意見を言うくらいなので、下着まで用意してもらえるなら感謝しかない。まぁ、面積が少ないものが多いけど、月のモノも無いしこれでいいのだろう。妻もスケスケレースとか付けてたし。
「そうですか、では部屋に戻りましょうか。」
「ええ、吸い終わってから戻ります。」
さて、千代田にも連絡しないといけないし。卒業式も本当に考えないといけないな。中々癖の強いメンバーだったけど開放と言うように本当に全員が欠けること無く先へ進めた。もうひと踏ん張り、やれるだけのことはやろう。




