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街中ダンジョン  作者: フィノ


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99話 億へ進もう

短いです。昼休みは有事に潰されたのさ‥

「兵藤さん、そろそろ戻ってきてください。」


「男には引くに引けない時があります。タイミングを逃した今、これを本物と思い揉むしかないんです!」


 涙!!冗談と知り乗って場を和ませようとした挙げ句、忘れ去られ止めるタイミングを逃した者の意地!男泣きである。男泣きの無駄遣いである。1揉みして『偽物じゃないですか、クッション貰いますね。』で、場を終わらせられなかった男の悲哀の涙!普通にしていれば兵藤はモテそうではある。しかし、何故か3枚目に走るその姿は悲しみを背負う。


 まぁ、人付き合いも上手いし話も面白い。病が無ければ普通に誰かと付き合って、誰かと好い仲になっていてもおかしくない。しかし、兵藤は兵藤である。ある意味噛めば味が出るというかなんというか・・・。


「流石に触らせる訳にはいきません。次行く時も御酌するんでここは1つ、現実に戻ってきて下さい。」


「御酌・・・、少しは酔いますか?」


「何考えてるか知りませんが全く酔いません。残念な事にザルです、ザル。」


 末期だな・・・。いや、元男を知らなければ、狭いだろうが貧素な身体の俺でもストライクの人はいる?まさかね。その人は色々危ないと思う。年齢は大丈夫だが、いつかの歌の様に犯罪史上に名が残ること間違いなし。いくら魔性の女だろうと、扇動する者だろうと、変化しない身体はどこまで行っても貧相である。


「・・・、分かりました。御酌でがまんします。」


「はい、では目を開けて返して下さい。それいりますか?」


「貰っておきましょう。ストレス発散にはちょうどいいんで。高槻先生が来てるんですね・・・って、めっちゃ変わってる!なんですかあのちょいワルオヤジ。元々アクティブな人だったけど、ワイルドになられて・・・。」


 高槻を見た兵藤も驚いている。前の高槻は年相応でどちらかと言えば、不健康そうだったがやることを見つけて動き回った結果だろう。痩せたし格好良くなった。


「お久しぶりです兵藤さん、15階層まで行ったのが懐かしい。中位になりましたが、本職は医者なので何かあった際はよろしくお願いしますね。」


「ええ、回復薬を回してもらっているので、何かあればすぐ動きますよ。何なら36階層がセーフスペースと分かったんです、自衛隊組で採取ツアー開いて素材を供給します。現状、36階層へ行けるのは講習会メンバーくらいですからね。」


「お願いします。材料はいくらあっても邪魔になる事はない。モンスターの素材も欲しいですが、どんどん還元されるので完全に近いものがあれば、研究も飛躍しそうなんですがね。」


 完全に近いモンスター素材・・・、あるな。エマから貰ったモノは、足こそ吹き飛んだ本数は多いがほぼ完全体に近い。それで研究が飛躍するなら、持ち込み先は高槻でいいだろう。これが斎藤の所だと変に改造とかしそうだけど、薬なら有益になりそうだしね。


「さて、皆さん食べ終わりましたし、ある程度話はついた。そろそろ本来の業務と行きましょう。私は高槻先生に受け渡してから別口で入ります。」


 そう言うと、各自皿を片付けて雰囲気が引き締まる。或者は至る道を探しに、また或者は先を目指す。取り敢えず、皆30階層には到達しているので訓練場はその辺り。高槻に物を渡して、俺は先を目指そう。そう思っていると、宮藤と雄二が他のメンバーを見送っている。早速か・・・。まぁ、中位も増えたし早々死人が出る事もない。なら、先を目指そう。


「高槻先生、ここではちょっと狭いのでグラウンドにいきましょう。欲しい物が出せると思います。2人はついてくるんでしょ?あと遥、先生の糸と魔法を渡しておくよ。」


 遥に糸とビーム無効の魔法の玉を渡した後、3人を連れてグランドへ。素材を片っ端から高槻に渡し最後の大物。エマから貰ったモンスターの亡骸である。そう言えば、これ持ってるのエマと橘しか知らないんだったな。


「これからほぼ完全なモンスターの亡骸を出します。間違っても攻撃しないでくださいね。」


 断りを入れてグランドに出すが、俺達より遠巻きに見ていた自衛官の方が慌てふためいている。中にはスィーパーもいるので、剣を抜いたり銃を構えたりと大忙し。大物だと思っていたが、外で見るとかなりでかいな。3階建ての建物くらいある。


「大丈夫ですから落ち着いて下さいねーー!!」


 大声で叫んで周りを落ち着かせるが、それよりも横で声を上げる高槻の方がうるさい。しかし、声が届いたのか自衛官達は武器を収めてくれたようだ。


「凄い!!これは凄い!!!ほぼ完璧じゃないですか!いやぁ、言ってみるものですね!持つべきは最強の大株主の友人!ありがたやありがたや。」


 亡骸に頬ずりしながら喜んでいるが、その亡骸に触れた蝶は溶けて液体になっているんだよ・・・。最初に職に就かずに触れようとした時溶けるかもよと言われたが、奇しくもそれは蝶の姿で確信に変わった。しかし、死亡?していても溶かすとかこいつ何で出来ているんだろ?


「これを取ったのはエマ少佐で、私は貰い受けただけですよ。お礼は彼女にちょっぴり目を掛ける事で大丈夫だと思います。」


「海外輸出の件ですな!良いですとも、どの道私も広められるなら薬を広めて病人を減らしたいですからね。生産工場海外1号を米国にしましょう。クロエもいいですよね?」


「どうぞどうぞ、回るお金は転がって、雪玉みたいに膨らみますから。」


 錬金術師と魔女でお金を生成!私腹は肥やせるだけ肥やそう。別に悪いお金でもないし、そもそもお金にいいも悪いもない。問題は使う人間であり、欲しがる人間である。


「こうして外で見ると不気味っすね。」


「色合いが酷いよね。まぁ、燃やせば鮮やかになるからいいけど。」


「確かに、斬れば一緒すね。でも、これどうやって取ったんすか?」


「エマが罠で動き止めてクリスタルをぶっこ抜き。採掘家とかならくり抜きでクリスタルをくり抜いて貰えるかも。」


「なるほど、穴ばかり掘ってる彼等ですが雇い入れてみましょうかね?」


 知り合いがいるのかは知らないが、雇い入れると、言う辺り何かしら繋がりはあるのだろう。元々フィールドワークで海外行ったりしてたみたいだし、医者と患者の繋がりで顔は広そうだし高槻侮りがたし。実際学生採用引き抜きとかやってるみたいだしね。人材が本当に人財になる日も近いな。職は個人のイメージで事を成すので、似たイメージでも違えばプロセスも違うし、結果も変わってくる。


 中二病的に言えば、唯一無二の俺の力!と言うやつである。まぁ、その力も鍛えなければ宝の持ち腐れ。どこまで行っても努力と根性は必要だろう。なにせ、鍛えるにもモンスター退治が一番効率的なのだから。


「私は持ち帰って早速研究を進めます。エマさんにはクロエから便宜を図ると伝えておいて下さいね!」


 そう言って高槻は指輪に死骸を収納して走って帰っていった。さて、俺達も行くとするか。自衛隊からジープを借りて俺の運転で出発。分かってるさ、見た目的に大丈夫かと疑いたくなる心。しかし、免許証という最強のカードを持っているのだよ。


 途中、止められもしたがどうにか遅れてゲートイン。35階層から潜り始めてセーフスペースで、またもや魚を乱獲した後は37階層へ。辺りはやはり薄暗いが更に平地が目立ち、山なんかは遠くに見える程度。出現ポイントで運を試されるな。


「見通しがいい分どこからでも襲撃を受けますね。」


「俺はこっちの方がいいっすね。岩場でも動けるっすけど、やっぱり平地が1番っすよ。」


「未知のモンスターがいるかもだから気をつけてね。」


 暗がりに宮藤の炎の兵が灯り奥へ進む。ウィル・オー・ウィスプで無ければいいが・・・。





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