表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街中ダンジョン  作者: フィノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/878

97話 セーフスペース 挿絵あり

すいません、短いです

 雄二を乗せて気晴らしという名の法律内の自由を貪る。夜のパーキングエリアは県外ナンバーのトラックが止まり、どこか外国の船着き場を思わせ他県のキーホルダーを見れば、ついつい土産にと買いたくなる。雄二がどうなるのが正解か?その答えは自分で出すしかなく、俺に出来るのは生きた分の経験による推測。


 その答えが当たっているか外れているかは、雄二が決めるしかない。なにせ納得は本人にしか出来ないのだから、本人の出した答えが正解である。そんな雄二を乗せて、更に都市高を走って日付の変わる前に家へ送り届ける。明日もあるので、疲れを残すといけない、割とバイクは疲れる乗り物なのだから。


「割と走ってしまったね。外で人を載せて走るのは久々だからついつい楽しくて走りすぎた。」


「ありがとうございます。楽しかったですよ、俺もバイクの免許取ろうかな。難しいですか?取るの。」


「センスの問題かな?まぁ、教習を受ければ一月半、今なら自衛隊で取るなら料金はただにしてもらえる。私も大型車の免許取る時は自衛隊で取ったしね。バイクは外だったけど。」


「兵藤さんあたりなら掛け合って貰えそうっすね。今度聞いてみよ。」


「教習に通うのは時間的に難しいから、練習するならゲート内でするといい。あそこなら走り回ってもコケても文句は言われないよ。大体教習車はCB400だけど、練習するならこれをあげよう。」


 指輪から出すのはninja400。地元に帰る時に貰ったものだが、整備もいいしスピードを取るならこれになる。いささか初心者には癖のある車種だが、これを乗りこなせるなら免許は1発合格が狙えるだろう。まぁ、コース覚えたり検定したりはあるし、車の免許持ってないと、ペーパーテストもあるから、ちょっと面倒になるかな。


「えっと、いいんすか?かなり高価のものですよね?」


「指輪の肥やしになるよりはいい。私の愛車は地元から持ってきてるし、ゲートではこいつに乗る。だから、どうしてもninjaはあまり乗らなくなってしまう・・・。良ければ乗ってやってくれ。」


「ありがたく貰います。うわぁ、これ免許絶対取らないといけないやつだ。」


「早めに取るといい。これから先、ゲート内で活動する者は多かれ少なかれバイクか車に乗る。ソロ寄り・・・、多分、君と卓みたいに2人ならバイクだろうし、ソロならやっぱり車よりバイクだ。視界の問題があるからね。」


 動画を見ても乗る車は装甲車やオープンカーなんかで、銃座には絶対人を載せている。それでもモンスターに破壊されるので、スピード出して逃げ切るか、装飾師に刻印してもらうかしか手立てがないし、放置すれば消えてしまう。それ以外、メジャーな移動方法は徒歩か不気味な馬の鹵獲。しかし、最近は装飾師の固定処理をすれば勝手に物が消えない事がわかり、徐々にだが車両需要も増えている。


 固定処理による還元変換に対抗する手段。これの発見は自衛隊の尽力が大きい。金貨なんかが入った箱は消えない。しかし、それ以外は例外なく肌見放さず持っていなければ消えるし、死亡すれば死体も指輪も武器も消える。クリスタルは例外的に残るが、これも長期で放置すれば徐々に消えていくらしいし、モンスターが勝手に持っていく事もあるらしい。そんなゲートの中で基地を作りたい自衛隊はセーフスペースで色々試したらしい。


 兵藤に聞いた話だが最初は、箱で作ったドッグタグを放置して観察、次は様々な鉱物を、大きさを変えたりしながら放置して観察。次は車、戦車、ヘリ、生物、生物、切り身、刺し身、鶏肉、鶏に有精卵、無精卵。箱で作った掘っ立て小屋で、来る日も来る日も持ち込んでは観察、観察しては検証、途中からはそのまま研究しながら住み着いて、職の効果で対策を模索。その結果が装飾師の固定処理。これを行えば死体だろうとなんだろうと残せるらしい。


 最終関門は処理者が死亡したらどうなるか?と、言うモノが残ったらしいが、流石にその為に死んでくれとは言えないので、現時点の確定した事実は、固定処理すれば基地が作れる。で、落ち着いたらしい。この発見は割と大きく、政府が配信した自衛隊の仕事紹介動画で流した所、各企業もゲート内に研究施設を作りたいと乗り出してセーフスペースは大賑わい。残された問題点は必ず基地の近くに出れない事だが、不気味な馬に頼むと基地まで連れて行ってもらえるらしいので、どうにかこうにか運用は出来ているらしい。


 そのうち基地も大株主として視察に行かないとな。高槻の工場兼研究所の支店があるらしいので、行けば多分薬がもらえる。らしいと言うのは、作ると連呼していてある時から急にそれが止んでそれっきりなので、建設できたか分からないというのが大きい。一応、株主総会の招待状やIR、他にも優待券や決算報告も届くので大丈夫だとは想うよ、うん。本人がゲート篭りして身体を壊していなければだけど・・・。


「本部長になると、そんな事も考えないといけないんすね・・・。」


「それを仕事と取るか、趣味のバイクの布教活動と取るかだね。」


「誰かの仕事はってやつっすね。その布教には乗るっすよ。」


「うむうむ。実際、仕事を趣味にしてもいいけど、何かしら逃げ場は用意しておくといい。料理でもいいゲームでもいい。何なら彼女作ってもいい。」


「彼女は・・・、兵藤さんがなぁ〜、いい人なんすけど。何故か変な所で躓いていると言うかなんというか・・・。」


「ヨイショはしてるんだけどね。まぁ、周りがいくら言っても本人や相手が納得しないなら無駄だよ。私自身、こっちの出身じゃないから紹介できる人もいないしね。さて、送ったのに話し込みすぎてしまった、そろそろ行くよ。」


「分かりました、今日はありがとうございました。楽しかったです。」


 雄二に別れを告げてバイクを走らせホテルに・・・。確か夜間はフロントに鍵借りないといけないんだったな。大概誰かと戻るのでこんな夜遅くに出歩くことはなかったし、朝帰りしたのは奥に行ったっきり。皆寝てるだろうし、どうしようかな。ちょっと35階層より先を1人で見るのもいいな。


 バイクを転がし迷った挙げ句ゲートへ。どの道51階層より先には行くので、下見がてら1〜2階層進むとしよう。進路を近場のゲートへ変えて走り出しそのまま中へ。夜間で人が少ないと思っていたが、夜型人間も多いらしく昼間ほどではないにしても、ゲートの周りは賑わっていた。その人々の頭上を魔法で飛んで入って35階層から先へ。薄暗さは変わらないが・・・。


「セーフスペース?取り敢えず、ここは36階層です。」


 首からカメラを下げて辺りを見回すと、不気味な手の形をした草なんかが見え、馬を呼ぶと走ってきた。この馬は他のセーフスペース以外では見ないので多分、セーフスペースで間違いないのだろう。どの程度の間隔でセーフスペースを設けているのかは分からないが、ここにあると言う事は間違いない。肩透かしを食らった気分だが、取り敢えず素材探しと洒落込もう。


 馬に乗って取り敢えず直線に走ってもらうが、6層あたりのセーフスペースと代わり映えはあまりしない。なにか無いかと、煙を撒いて辺りを調べると糸の材料である繭っぽいモノの群生地があったので根こそぎ奪い、他にも新しいものないかと馬に聞くと、すたこら走って不気味な木の林を抜けた先の湖っぽい場所へ。前は箱に水が湧いていたがここでは湖らしい。足だけ入ってみるが温度は常温、コップで掬って飲んでみるが無味無臭で多分水。


 しかし、新素材でここに連れてこられると言う事は何かしらあるのだろう。水を水筒に入れて顔を漬けて見る。驚きの透明度だが、何かしら・・・!


「もがっ!げほっ!」


  挿絵(By みてみん)


 多分、魚を模したであろう水生生物がいた。水をパチャパチャ叩くと寄ってくるので、多分食えるのだろう。警戒心もないし、素手で捕まえられたのでちょっと焼いてみる。無臭・・・、焼ける音はするが臭いもなく油も滴らない。ちょっと切ってみるが、中は白身・・・、でいいのかな?馬もそうだが骨はなく肉しか無い。多分焼けたので一口。


「ほう!ほうほう!ほう!これはこれは、食える!」


 肉とは違うが旨味だけで風味も何もない。しかし、コイツは素晴らしい。進化を感じる。なにせ、歯ごたえがあるのだ。ナタデココくらいの硬さで、旨味だけある魚。刺し身なら醤油とわさびで食べれば旨いだろうし、感覚としてはフグに近いかな?あれも薬味や醤油がなければコリコリした何かだしな。


 初めてナマコを食べて美味かった人の気持が少しわかる。魚はいっぱいあるので取れるだけ取り、中には形の変わったものもいるのでそれも取る。形が違うなら、多分なにか違う。その他、多分新しいものとして多肉植物っぽい何かに、花っぽい何かに。判定機で判定してみるが、何もでないので新種であるのは間違いないだろう。高槻と橘案件な物を大量に集め何なら目玉わらびの木を切り倒していたら、思った以上に時間が立っていたのでそのまま脱出。


 空はまだ暗いが冬場なので時刻は6時。これから帰ってシャワーを浴びれば出発にはちょうどいい時間になるだろう。バイクを転がしホテルへ帰る。フロントで鍵を借りて部屋に入ると・・・。


「おはよう、早いな2人共。」


 遥と望田か2人して起きていた。時間はそこまで経っていないし起きるには少し早いな。なにかあったのだろうか?今日のスケジュールも代わり映えしないゲート訓練で特に呼び出しや何かはなかったと思うが・・・。


「お父さん、朝帰りお疲れ様。どこ行ってたの?2人で。」


「お持ち帰りですか?やっぱり若い燕説は間違いなかったんですか?」


 2人して圧をかけながら詰め寄ってくる。何を言ってるんだろう?やっぱりも何も雄二の相談に乗ってゲート入って帰っただけだと言うのに。


「雄二とツーリングしてゲート入っただけだ。何を考えているかは知らないが、やましいことはないし、そもそも雄二は男だ。」


「なにもなかったと?」


「あってたまるか!毎度疑われるのは飽きてきたぞ?」


「そう言ってもね、2人きりでお出かけとか疑いしか無いよ?」


「遥・・・、父親をどういう目で見ている?俺は、莉菜一筋だと言っているだろう?なびくわけがない。」


 ドタバタとした朝は過ぎ、出勤の時間となる。朝合流したエマも何やら不審の眼差しだし、一体俺はどうすればいいんだろう・・・。取り敢えず魚でも見せれば納得してくれるのかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価、感想、ブックマークお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ