閑話 エマの活動報告@3 25
至る。当初の目標は達成し私は中位となった。喜ばしい反面、それは別れを意味している。不思議な感覚だ、カオリは満ち足りていると言っていたが私は心軽く心細い。それは多分、彼女と離れる事が確約された切符を至ると同時に、手にしてしまったからだろう。会って過ごした時間はそんなに長くないが、恋知らぬ私が彼女に惹かれたのは間違いない。
悲しい事だ。逃した獲物は新たな形で仕留めたと思ったが、次の獲物はどうやら、既に誰かに先に仕留められているらしい。確かに彼女は配信で妻と言っていたが、私はその言葉をスラングだと否定した。今思えばそれは単純に、彼女が誰か1人を想っているという事を否定したかったのかもしれない。
お笑い草だ。なにせそう考えると、私は本人に出会う前から彼女に惹かれていたと言う事になるのだから・・・。何ともやりきれない気持ちになる。肩肘張って色眼鏡で見ずにフラットな状態で出会えていたなら、もう少し違った関係性もあったかもしれない。まぁ、過ぎてしまった事だ。今更どう言おうと今の関係性から変わる事はない。
ウィルソンとの定時報告もこれが最後になるだろう。嫌味な奴だったが仕事はこなしていた。なので、ポスターを買い込み送ってやろうかとも思っているが態度次第ではお預けでもいい。そもそも市販のポスターだ。美しく目を引くが本人程ではない。寧ろ、本人が本気でしたらどうなることやら。あやすような声でも甘えそうになったというのに・・・。
「もしもし、ウィルソン定時報告だ。」
「毎度朝早くにありがとう、ゆっくり寝かせてくれないか。最近忙しくて時間が経つのが早い。」
「あー、うん、なんかやつれたな。大丈夫か?」
ブーツの解析や報告の精査で忙しいのだろうか?出た腹は引っ込んだが目の下の隈が酷くどこか夢遊病者を思わせる。現地で話していないので今の状況は分からない。判定機も送ったし、これから更に忙しくなるが大丈夫だろうか?
「まぁ、私用だ。ゆっくりしているし、満ち足りた気分だが、それで忙しくてな。それで、進展は?」
「進展というより完結だ。中位へ至ったぞ。」
「・・・、は?」
「聞こえなかったか?中位へ至った。狩人は狩猟者に、第2職は肉壁、追跡者、スクリプターが出た末に追跡者を選択した。」
当然といえば確かに私がこれを選ぶのは当然だ。私は狩猟者となり獲物を追う。残念な事に相棒の犬はいないので、自身の足で追うしかない。なら、追跡者しかないだろう。他の2つも確かに出た理由は分かる。嫌った顔を作り変えられる肉壁に、過去を編集出来るならしてしまいたいスクリプター。
しかし、私は追う事を選んで先に進む一歩を踏み出した。過去は過去、先は先。なら追うしかないじゃないか、たとえそれが仕留められないとしても。追うのは自由だ。なら、追跡者しかない。
「おい・・・、とても喜ばしいが、仕事が増えて彼女との時間が・・・、そう言えば、ファーストとのコンタクトは取れないのか?」
何やらだいぶ参っているようだ。彼女とはガールフレンドか?冴えないが仕事は出来る、それに皮肉屋でモノをはっきり言う方だが、それを好む女性がいるのもたしかだ。ファーストに報告に立ち会わないかと一応、打診はしたが英語が話せないと良い返事はもらっていない。しかし、こいつも鞍替えしたのか?
どちらかと言えば私と同じ様に、ファーストにはいい印象を持っていなかったような気がするが・・・。仕事熱心とするなら、本人の意見を直接聞きたいと言う事だろうが、なにか違うような気がする。いつからだろうか、こうなってくたびれた様になったのは?確か・・・、靴とポスターを送ってから?それとも、あまり想像は出来ないが、ガールフレンドに振り回されている?
「ウィルソン、ガールフレンドはじゃじゃ馬か?それとポスターはどうした?個人に宛てた物だが研究材料だろう?」
「・・・、ウチにある。帰ったらそれを眺めて過ごしている。教えて欲しい、本物とポスターは違うか?」
「バカな事を言う。動画と静止画どっちが好みだ?」
「エマ少佐、我々は配信でしか・・・、質の悪いカメラで撮られた彼女しか見ていない。戦闘で映像はブレ、常に歩いてはブレ、そんなブレブレな姿でも、それでも彼女は美しいと思った。そして、それよりも質のいいポスターが手に入り、その先は本人を見るしかない。」
配信の映像は確かに高画質とは言えない。リアルタイムで配信されたそれは編集もなければ、静止画で切り取ろうとも実際の本人よりは遥かに質が悪い。あの配信以降は本人がシャイで出演する事はほぼなく、音声とたまに見切れたりチラリと映る程度。そう考えると、確かに本人に会いたい気持ちも分からなくはない。会って惹かれた私が言うのもなんだが、あのポスターは素晴らしいが、それよりも会って話た方が数倍いい。
「それには同意しよう。ポスターよりも素晴らしいぞ?それよりもウィルソン、仕事の話をしよう。」
「う、うむ・・・、それで、なにか変わったのか?外見的な変化はないようだが。」
「外見的には何もないな。強いて言うならイメージ強度とでも言えばいいのか、それがかなり増幅したように思う。そして何よりどこに何を設置すれば効果的か分かる様になったし、設置する為に触る必要はなくなった。試しに見せよう。」
ファーストがフィールドとか領地とか言っていたが、確かに私の立つ場所は私の狩り場で間違いない。仄暗い所があればそこから背後に飛ぶ刃、頭上が疎かなら降り注ぐ岩に槍、死角ある所はどこでも狩猟者の罠があり、追い立てるも待ち伏せるも自由自在。それに追跡者が絡めば、罠は猟犬の様に獲物を追い意表を突く行動にも対応出来るし、何よりも獲物を発見するのは容易だ。
カメラを離し見える範囲で暗がりから、ゾロリと刃物やトラバサミが姿を見せる。今でも彼女の言葉が頭に浮かぶ、罠を使う者であると。確かに重火器は今も使える。しかし、これはあくまで仕上げの1発であり護身用。獲物をあまり傷付けてはいけない、獲物はあくまで捕る物であって、破壊してしまえば素材も何もあったものではない。
そんな刃と私の姿にウィルソンの息を飲む音が聞こえる。彼はスィーパーじゃないので、感覚的なモノも原理もなにも分からない。まぁ、なれば分かるというものでもないのだが・・・。
「それが中位の力であると?」
「いや?これはなんでもない事だぞ?モンスターもいないのに攻撃なんてする訳ないだろう?」
「少佐、今すぐ検証班を呼ぶ。再度同じ事は出来るな?」
「当然だ。ゲート内なら爆弾だろうとドローンだろうと、何でも罠なら扱える。ふむ、ドローンか・・・、他の参加者達がイメージが湧けば試したくなって、ゲートに入ると言っていたが確かに分かる。」
ドローンに追尾を付ければどこまでも追ってくれる。私に猟犬はいないがこれは猟犬の代わりになるし、攻撃型を作れば待ち伏せにも使える。いや、浮遊機雷を追尾させてファンネルミサイル?カオリはビットの様にスピーカーを使っていたなら、私もそれが出来ない事はない。トラップは感知でも時限式でも任意でもいいのだから、職を組み合わせれば出来る事は広がる。
「何をブツブツ言っている?さぁ、連れてきた、やってくれ。」
再び刃なんかを出すが考えているのはその先の事。職には3つの説明がある。ファースト曰く拡張性を持たせる為の単語での説明。なるほど、試そうと思えばいくらでも試し方はある。
「凄い!この短期間でこれだけの成果!教育ノウハウは!!指導者のファーストは何をどうしてこの成果を出した?君は教育のノウハウもマスターしたのか?いや、何を手ほどきされた!?こうしちゃいられない、君はすぐにこちらへ帰還するのだろ?その前に定時報告の映像を見直して・・・。」
カメラ越しの検証班の人間達は、湧き立ち成果を見ては話をしている。確かに短い期間で至りある程度、教育ノウハウも感覚的に掴んだ。掴んだが、それを手解きして後進を育てるとなるといささか不安は残る。日々一緒にいて指導なり助言なり催眠なりをかけられたが、1人でそれをしろと言われると指導力不足は否めない。それに、この国でもまだ指導要領は体系化されておらず、今の受講者達は成果こそ出しているが試金石としての側面もある。
いや、言い訳を募るのはよそう。単純に今、私が離れたくないだけだ。期限は限られていた、至れば終了と。しかし良くも悪くも職は柔軟で、この国に残って彼女を追う論理的な理由も頭に吐き出してくれる。
「帰還の件だが先延ばしを要請する。」
「・・・、エマ少佐。君はバカか?区切られた期間は成果とともに終了した。これから君は本国に帰還して指導者と成り後進を育てるという任務につく予定だ。」
「分かっているウィルソン。しかし、駄々をこねている訳ではない。日本が開発したスィーパー用の模擬戦訓練装置、これを使って本部長選出戦を近いうちにやる。」
話を聞いたウィルソンやその上司の顔色は悪い。技術協力としてファーストと戦い、1セットもらえる装置だが、あれは模擬戦での怪我を考えると必ず入手する必要があるし、それを使っての大々的な大会なら、装置の癖や発生するバグ。他にもヒューマンエラーなども見て取れる。
それだけではなく、軍人として戦力分析はしたい。至ったばかりのカオリと戦ったがはっきり言おう。規格外だ。人の事は言えないが、下位はある程度人を逸脱しているが、まだ人の範疇。しかし、中位は別物。中層の魔物を疑似的に見せられ、対処方法を話されたが、あの時は全く理解できなかった。
しかし、中位に至り思い返すとおかしな事は言っていない。攻撃するイメージがあるなら、当然されるイメージもある。威力は残念ながら体感するしかないし、どういった攻撃かも瞬時に判断して対処を求められる。だが、そもそもモンスターは攻撃してくるモノなのだから、見えようが見えまいが職の能力で守りを固めてしまえばいい。
バイトは犬で何かを齧って食べている。その対象が私なら、私は閉じる口につっかえ棒を差し込んでもいいし、噛んだ瞬間に爆発させれば、口は閉じずに開いてしまう。反応装甲と彼女は言ったが、確かにそれをガチガチにイメージした状態で齧られても、即死するとは思えない。誰が、何に、どういう、こうする、ああする、何かされた、こうされた、ああされた・・・。単語の説明は確かにSより自由度は高いな。当てはめてイメージすればそれに対応してくれる。まぁ、イメージ強度というか中身を練り込まなくてはいけないのだが・・・。
「パイプか戦力確認がしたいと?外交官に任せろ。」
「忘れたかウィルソン。今国の行き来は難しく、今回の選出戦をぽっと出の外交官に見せると思うか?ナンセンスだ。国防の要だぞ?」
「君ならそれが見れると?」
「少なくとも講習会参加者でファーストの、いや。クロエの客人でもある。彼女自身本部長で大会の元締めをするような事を言っていた。装置の安全性の確認、実践での職の再現度の検証、戦力確認にその他諸々。米国で今これを1人でこなせるのは私しかいない。」
ウィルソンは苦虫を噛み潰したような顔で私を見るが、私の肩書は米国陸軍所属の軍人で階級は少佐。後の任務の事も考えるなら、ここで引く事は出来ないし引きたくもない。一度帰れば、私がこの国の土を踏むのは相当先になるのだろうから。
「すぐにokは出せない。外交上の約束もあるし、教育カリキュラムの作成や中位に至ったプロセスの検証もある。開催はいつと明言されているのか?」
「装置のロールアウトから準備期間を経て行う予定だ。米国大使館職員との面会を打診し、そこで話し合う方式なら大丈夫ではないか?うちの国も秋葉原でやらかしている。その事を考えるなら、ある程度の関係が築けている私が適任だ。」
「イヤにアピールするじゃないかマッドガール。軍人やめて政治家にでもなるか?未来の大使殿。名前で呼ぶようになったようだしな!」
「国益を取るなら駐在大使代行にでもなってやるさ、ロートル。実際、彼女が定時報告に出ないのも、言語が通じないからというのが大きい。シャイなんだよ、彼女は。それと、名前呼びは講習会での不文律で、至れば名前呼びでいいらしいぞ?」
雑談で話したが日本語を話せなかったら、私はそのまま送り返されていたらしい。らしいというのはファースト本人がそう考えていただけという話だが多分、本当に送り返されていただろう。その点についてはウィルソンに感謝をしよう。地獄の1ヶ月だったが、少なくとも話せるし理解も出来るようになった。
それを今度は母国語に置き換えて説明するとなると、中々骨が折れそうだ・・・。信号の色の話をしたと事があったが、日本では一口に青と言っても山程呼び名がある。そんなニュアンスの違いでも職に影響する可能性があるなら、いっその事私が行う講義は全て日本語で行ってしまおうか・・・。どうせゲート内は全て日本語で表記もされている事だし。
「不文律、ね。まぁいい。装置と中位。他に気になる情報は?確か51階層から中層という話だったが。」
「飲みながら話すが本人は、中層以降にも足を運ぶ気でいる。何故そこを目指すかと言えば、スタンピードに関する検証と本人の仕事だからだそうだ。」
「その件は我々ではどうしようもない。米国1号の中位がようやく出たばかりで、早々先の話は出来ない。出来ないが、出土品は国益に繋がる。国防総省としてもゲート内の探索は進める予定だ。しかし、仕事か。モンスター・ハント以外に仕事があると?」
「分からない。彼女は多重人格者の様に見える時もあるが、それも確証はない。不明な点を言えば、職も魔法職として名前は出さない。まぁ、政府からの禁則事項案件なのだろうがな。」
「それが分かれば、その職の人間を徴用できるものを・・・。推測は?」
「無理だ。中位の魔術師でさえ理解できないし、時同じくして至ったSPの女性の職でさえ、名前を聞いて何故そうなるか分からない。」
カオリは防人から歌人になったという。歌人を調べれば歌を詠む人だというが、それが何故防衛職になるのだろう?考え出せば頭が痛くなる・・・。まぁ、彼女はそれで喜んでいたからいいのだろうが、至った後の模擬戦では相当やられた。米国にいるか分からないが、あの職は危ない。優劣というがあの職の隙が私にはない様に思えて仕方ない。まぁ、それでもリンゴは割れたのだが。
「不明に不明か。ファースト個人の調査も九州出身以外わからんしな・・・。」
「あぁ、その点で追加情報だ。彼女は既婚者で相手は女性だそうだ。相手には会えていないがな。SPの女性は会った事があるそうなので間違いないだろう。」
会った事はないが羨ましい。そっちの気はないが外見とは裏腹に、どこか男っぽいファーストとならありだと思う。私もヤキが回ったのか?しかし、風呂で見る彼女は美しく、あれに恥じらいがあれば・・・。まさか、それを危惧してされるがままなのか?下手に恥じらえば余計に色々されるという。
「少佐。多くは言わん、ハニートラップは?」
「無理だな。多くの女性に囲まれているが、歯牙にもかけないし一線は引いている。その点を踏まえるなら逆効果で今の関係性も崩れるだろう。」
英雄色を好むと言うが、彼女が好むなら男女関係なく選び放題だろう。そう考えると彼女が色欲にとらわれていないのは、ありがたい事なのかもしれない。かもしれないが・・・、そういえばウィルソンはポスターの事を気にしていたが、そのポスターの事も言っていたな。
「ウィルソン、ポスターを飾って見ていると言っていたな?」
「あぁ、毎日見ている。」
「あのポスターは靴の報酬として撮られたものだが・・・、本人曰く本気になったら更に凄いらしいぞ?」
「・・・、ヴィーナスかな?」
「さぁ?人間である事は確かだ。今の御時世、人間の定義があやふやになってきているがな・・・。」
人は年老いて死ぬ。しかし、不老も不死も若返りも薬で叶う現実的な夢になった。夏目を見れば職次第では姿を変えられるし、四肢の欠損も治癒師なら回復出来る。怪我も回復薬があればどうにかなるし、そもそも回復薬製造元の大株主は彼女だ。どこかの富豪は不死になったとテレビで騒がれ、私も歳に逆行して若返っている。
「あれよりも美しい人があるというのに、俺はなんでマッドガールなんかと話している?」
「その言いぐさはなんだハゲ!私は彼女に選ばれるくらいには美人だぞ!?」
真顔で失礼な事を言う。本国に帰国した暁には何発か殴る。せっかく彼女が私だけを選んだと言う話で、気分が良かったのにこいつと来たら。
「比べる対象が悪い。それにハゲてない。」
「同意するがお前の言い草が気に食わない。よって、買ったポスターは送らん。そろそろポスターの元データを消すとクロエも言っていたし、残念だったな。」
「まて少佐!それは暴動が起こるぞ!?」
「ポスターで起こるものか!代わりにインナーの元となったクロエの糸、魔法糸の糸玉を送ろう。大好きな仕事だ、励めよ?」
「跪いて崇めでもすれば送ってもらえるか?」
「気色悪いな。私ではなく他のエージェントに頼め。」
「無理だと知っているだろう?今はどの国も日本といざこざを起こしたくない。民間レベルの旅行もかなり厳しく、米軍も事件を起こせば事と、軍人よろしく上官のおもり付きでの外出だ。実質、今日本で自由に動き回れる政府の人間は君しかいない。」
初耳ではないが、そこまで警戒レベルが上がっている?裏に私の知らない情報があり、そこから出た警戒レベルなのだろうが何かきな臭い感じがする。
「何があった?」
「ロシアと中国のスパイ組織が壊滅させられた。日本の狗は勤勉だ。言いたくはないが・・・、君が残ると言った話は大筋で通るよう、日本の外務省にかけ合おう。」
きな臭さの原因はそれか。どの国も・・・、うちですら戦力を欲し、新たな時代に生きる事を藻掻いている。そんな中で事を起こす意味は確かにある。時代錯誤な覇権国家思想を目指すなら、時代の転機である今が一番やりやすい。
「了解した、ないとは思うがクロエがピンチになったなら、恩を売って友情を深めよう。彼女は中々義理堅い。」
「そうしてくれ。外交官は役人には会えるが彼女に会う口実がない。」
「エマー、そろそろ終わりましたか?」
ノックの音とともに外から呼ぶ声後する。聞き違う事のない彼女の声だ。至ったお祝いをしようと言っていたが、もうそんな時間か。ウィルソンと少し話し込みすぎたか。
「今の声はファーストだな?」
「ああ、至ったお祝いをこれから彼女の部屋でする予定だ。」
「一目、一目でいいから会わせてくれ!日本語も話せる!」
「知らん、本人次第だ本人次第。」
会いたがるウィルソンの事を彼女になんと話そう?日本語は・・・、自己申告で話せるらしい。当然か。コイツは私に散々日本語の事を話して資源等目録も読めるのだから。まぁ、日本語勉強で缶詰にされたお礼だ。言うだけ言ってみよう。
「ウィルソン、自分のラックを信じるんだな。彼女は懐かない猫の様に気まぐれだ。」
「信じるさ、全部ベットする。」
「ならいい。・・・、クロエ、米国のおっさんが会いたいそうだが会うカ?」
「なっ!?言い方があるだろう!」
取り出した櫛で髪を整え、大急ぎで身なりを整えているウィルソンが画面越しに見える。さて、彼はファーストに会えるかな?




