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街中ダンジョン  作者: フィノ


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93話 進む世界 挿絵あり

 ホテルに帰って翌日、今日までは休み。週休二日制万歳。望田はまだ寝ているのでロビーに降りてタバコを吸いながら千代田に電話をかける。時間は9時半頃、エマに呼ばれてロビーの喫煙所で話している。いつの間にかこの喫煙所も豪華になり、フカフカのソファーとソフトドリンクサーバー、新聞なんかの雑誌まで置かれている。


 そんな喫煙所で電話して、判定機の事を話すと微妙な声で返答を渋った。言いたい事は分かる。判定機は特定輸出品目に入れようかという検討がされている。その検討中の品を海外に持ち出していいかと言われればいい顔はしないだろう。しかし、こちらとしても最初に話し合った通り、街で買えた品で武器でない物を送るとしているので明確な違反はしていない。それに個人的にはどうせ輸出するのなら、早いか遅いかの違いしかないので今回送った所で問題はないと思うのだが。


「その判定機はちゃんと使用できると確認が取れていますか?」


「回復薬は判定出来ましたよ?それ以外何か判別方法があるんですか?」


 判定機で判定確認が取れたなら、それ以上の証明をしろと言われてもハードルが高い。それとも精度向上の秘策があるのだろか?あるならそれはそれでエマに話して、理解が得られれば改良してもらうのもいいと思うが、政府に引き渡すとなると嫌がりそうだな。まぁ、大きさが今はドレッサー程で、目指すのが俺の使っているバーコードリーダーくらいの物となると、持ち帰ってかなり改良する必要性がある。


「私も詳しくはないのですが、今私達が使っている物は元を辿ると1つの判定機に行き着きます。各方面で出土品の研究は行われているのですが、エマ少佐が購入した物と我々の使うもので差異がある可能性を否定出来ません。かなり改造された物を私達は使っていますからね。」


 ん〜、言いたい事は分かるが・・・、アイツ等の作るモノにバラ付きが・・・、バラ付きしかないか。なら、交換した方が確実なのか?国際規格ではないが、ソーツには規格と言う概念は無さそうなので、多分好き勝手作って作ったそれがコンマでも違えばいいのだろう。


「一度エマに話してみましょう。私だけでは判断できませんし、そもそも所有者はエマです。規格統一を狙うなら、ドレッサーと私の持つ判定機を交換という手もある。」


「分かりました、一度エマ少佐に変わって下さい。」


 エマに変わってタバコに火を付けてプカリ。今日はゴロゴロ出来るといいなぁ。なんだかんだで昨日は出ずっぱりだったし。遥は芽衣の所で新しい刻印を試すと言って、新型バイクで颯爽と出ていった。知ってるぞ・・・、その刻印バイク用に作っているものだろ?今でもバイク表面に刻むだけじゃ飽きたらず、内張りに魔法糸使ってそこにも彫り込んでいる事を。


 どうせ国内じゃ最高速度出せないんだからそこまで・・・、セーフスペースで試すつもりか。あそこなら平坦な所もあるし、何かを轢く事もないから大丈夫か。まあ、それでもクラッシュを考えると推奨出来ない速度なのだが・・・。本人もスィーパーなので刻印の強度さえあれば大丈夫だと思うが、親心としては、ね。


 そんな事を思いながらタバコを1本2本と吸っていると、エマと千代田の話し合いは佳境に入ったようだ。途中英語で話していたので単語を拾った内容しか分からないが、どうやら国外に持ち出すのはいいようだが、エマの方も規格の話は定時報告で話さないといけないと結論づいたようだ。


「ふ厶、ファーストにかわろウ。」


 電話を差し出されたのでかわって話す。決着が付いたのではないのだろうか?取り敢えず、電話を変わり千代田と話す。


「もしもし?決着はついたんじゃないんですか?」


「ええ、交換で手打ちとなりました。今は更に改造されてハブとWi-Fiのついた最新モデルがあります。ビッグデータとリンクさせているので、使いやすさとしては数段上でしょう。写真映像も閲覧出来るようになっています。」


 小型化と謎機能取り付けはお家芸か。スマホにワンセグいる?そう聞かれると絶対に必要とは言えないが、買う時ついつい気にしてしまう。今回のは謎でもなんでもないが、データのやり取りを出来るようになっただけで、ここまで加速度的に技術が進むと車もしばらくしたら空を飛ぶかもしれない。


「納得しているなら私は何も言いません。もちろん、その最新型は私も貰えるんですよね?」


「・・・、エマ少佐の品とともに届けましょう。今日も駐屯地ですか?」


「いえ、オフなのでホテルです。どこかで待ち合わせをしますか?」


「ホテルの喫茶店でどうでしょう?出かけるなら、出先で待ち合わせしてもよろしいですが?」


 特に出かける予定はない。なんならゴロゴロデーにしたい。まぁ、エマや望田が出掛けたいならついていってもいいが、声がかからないなら寝て過ごす。


「あ〜、ホテルでいいです。」


「分かりました、1時間後に落ち合いましょう。」


 電話を切って時間もあるので取り敢えず部屋に戻ってニュースやスマホで情報収集。激動すぎて荒唐無稽な見出しのニュースがポンポン出てくる。国際情勢を見ると、日本がハブを作ったのを皮切りに、他の国も出土品関連の技術革新が目覚ましい。アプローチも様々で、日本では接続用のハブだったが、中国なんかは出土品その物を核として試作品を作っているようだ。クリスタルリアクターを車や飛行機果ては家庭に取り付けて大気汚染を無くそうとしているが、国民と政府でバトルが勃発している。あの国は実質企業国家なので、エネルギー関連を新構築されると国としての財政が傾く。


 それだけでも打撃は大きいのに、土地そのものは政府の土地として国民に貸し出しているが、ゲート移住者が後を絶たず建設業も大打撃。それにつられて不動産業界も煽りをもろにくらい、更に政府の財政は傾く。残された道として出土品の改造販売を国家事業として掲げているそうだ。あの国なら国民総スィーパー計画とか打ち出してもおかしくないな。


 エネルギーで言えばロシアも天然ガスや油田、サウジアラビアも石油というエネルギー関係でかなり打撃を受けている。そんな中ハイテク系に強い国は躍進する所が多い。台湾は日本のハブ技術を先日輸入してデータ解析できないかと動き出し、半導体事業は根本から素材を変えかねないと学者が動いている。


 ほか目立った所で言えばイギリスの金融街だろうか?世界第2位の金融街は金貨の出土とともに色々規制で忙しいらしい。そもそも、金に18金や24金というのは金の純度を示す値である。そして、ゲートから出る金貨は24金以上。つまりは100%混ざり物なしの純粋な金。銀貨はうん・・・、銀貨だと思ったらピトー合金だった・・・。Ptとau繋げてピトーつまりは金とプラチナの1対1比率合金。最初の時に銀貨がでなかったのは金より価値があったからかよ・・・。まぁ、そんな貴金属や宝石がポンポン出回っているので相対的に価格が下がる。


 なので取引価格の下限を決めたり、1日での取引総量を決めたりと躍起になっているようだが、規制に従うよりも個人間売買やオークションでの金貨払いで売買に使われる物の方が多く。そろそろ音を上げてしまいそうだ。実際、出土品売買=金貨銀貨として、後で現金化するか、基軸通貨として金貨銀貨を入れる方が合理的ではある。偽造はそもそも金貨なので溶かして混ぜものをするくらいしかないし、純度を調べればほぼ分かる。後はどこが保証するのか問題はあるが、これは既に国の枠組みを超えているので国連辺りに頑張ってもらう他ない。


 まぁ、国連は国連で薬の増産や増出土、他はスタンピードに対する各国との連携及び必要戦力確保の呼びかけ。モンスター持ち出し不可等の啓蒙と前は腐って動かないし的外れな事をして、なんなら税金泥棒ならぬ利権泥棒だと思っていたが、今はかなり動き回っているようだ。


 そんな世界を相手に斜め上に頑張ってる日本がいる。うん、斜め上にだよ・・・。言語の壁と理解力と言うのはエマが言うように大きく、その一点分ゲートの中を歩きやすい。海外勢が命をベットしてアクティビティやモンスターハントをする中!ゲート内キャンプツアーを開いている。当初こそあまり人気はなかったが、時が経つに連れ、指輪だけでも欲しい勢が現れて、どうせ入るならちょっとゲート内の物を食べたい。なんなら冒険したいと、言う人間が増えて今では大人気。


 兵藤にこっそり教えてもらったが、何社かは自衛隊員が紛れ込んで補助しているらしい。階層も行ってセーフスペースまでと比較的安全?な所まででベテランの護衛付き。誓約書は書かされるらしいが、それよりも恩恵の方が大きいので、会社の部署単位で申し込むパターンもあるそうな。そんな企業に真っ向から挑むのが街の工場や伝統工芸師勢。職とはイメージが強ければ強いほど扱いが限定される分強くなる。つまりは、現役最高齢80歳の刀工が鍛冶師となって剣を鍛えたら?結果、出土品なんて目じゃない物が出来上がる。


 まぁ、そんな人もゲートに入って悠々自適に色々やっているようだ。ネットで拾えるものには限界もあるし、今まで埋もれていた人が世に出るなんて事もある。あぁ、そう言えば何か配信してくれと松田にせっつかれてるんだった。なんなら歌って踊って笑顔で呼びかけてとかも・・・。うん、今まで通り棒読みナレーションで行こう。今は中位の紹介とかで短い配信ばかりだし、潜ったら新しい発見もあるだろう。


  挿絵(By みてみん)


「おはようございまふ・・・。」


「おそよう、もう10時を回るよ?休みなんで寝て過ごすのもありだけどね。」


「いえ、起きます。そう言えば朝からどこ行ってたんですか?」


 ベッドからモゾモゾ動き出した望田が、身体を起こして聞いてくる。起こさないように下に降りたが、どうやら気づかれていたようだ。まぁ、音に敏感なのは仕方ない。そういう職だしね。


「ロビーで千代田さんに電話。昨日買い込んだ判定機を送りたかったけど待ったがかかった。」


「待った?危ないものでしたっけあれ?」


「いや、国際規格と国益とビジネスかな?」


「規模の大きな話ですね。シャワーを浴びて同席しても?」


「いいけど、面白い話じゃないよ?」


「本部長候補なので、そういった話もこれから付き合う事になるじゃないですか。知見を広めようかと。」


「私は交渉上手じゃないよ。まぁ、相手は千代田さんなんで同席しても文句は言われないと思うからいいけど・・・。そもそも、機器の受け渡しだけだしね。」


 それを考えると、卓と雄二にはいい補佐官をつけないと丸め込まれてもしたら事だ。失敗する暇なくいきなりトップだが、間違ったときのリスクが大きい。千代田にその辺りの人選も話すか。ちょうど渡したいものも思いだしたし。望田もシャワーから上がりちょうど時間となったのでロビーに下りてエマと合流。喫茶店に行くと既に千代田が奥の席で待っていた。


「お待たせしました。」


「いえ、先程着いたところです。注文を先にどうぞ。それから話しましょう。」


 それぞれにコーヒーや紅茶を頼み話し出す。エマとの話はほぼついているので物品の確認から。机の下に置いてあったアタッシュケースケースを開き中を見ると、バーコードリーダーっぽいものと付属品に説明書。大きさ的にこのままホテルから発送出来そうだ。


「先ずは説明から。聞き及んだ限りの説明になりますが、本体と付属ケーブル。一応充電器となります。本体その物だけでは文章表示だけなので、定期的にネット接続かWi-Fiで更新操作を行い同期してください。データの大本は日本政府サーバーのビックデータに繋がるように設定されています。充電についてはほぼ必要ありませんが、スマホと同じように画面の電池マークが減ったらしてほしいとの事です。」


「ふム、量産はしているのカ?あト、メンテナンスの場合は日本に送る必要があるカ?」


 エマが判定機を手に取り見ている。俺の待っているものと違い充電ケーブルを刺す場所があるので、そこでデータ更新兼充電を行うのだろう。他は今ある物と変わらない。この仕様なら扱いに困らないが、スマホのアプリにならないかな。グーグルレンズとか・・・。まぁ、下に降りると通信状況も悪くなるので本体に記憶出来るならそれに越したことはないか。


「メンテナンスフリーと聞いていますが何分データにしろ本体にしろ今でも改造を重ねています。壊れたら新しい物を送る事になるでしょう。ただ、政府子飼いの装飾師が固定処理を行っているので戦車砲くらいの衝撃までは耐えられるそうです。」


 政府には遥も負けていないが、政府は政府で抱えた職人を上手く使っているようだ。これで未だにドッグタグオンリー生産なら、全員開放しろと文句を言っていたかもしれない。


「千代田さん、これって各本部にも配るんですか?配るなら私も早く欲しいんですけど。」


「望田君は先ずは中位に至りなさい、君の仕事はそこからです。そう言って至れるモノでも、努力でどうにかなるものでは無い事も、聞いていますが期待はしています。予定では鑑定師の少ない所には一定数配置予定です。」


「おぉ、鑑定師足りない問題がある程度緩和された。増産の目処は付いたんですか?」


「井口さん含め数人鋳物師を確保しました。企業とタッグを組んで日夜研究研修開発増産と忙しい限りですよ。まぁ、各都道府県の本部庁舎建設も始まりました。クロエの庁舎が1号となりますが、番号としては第5となります。」


「完成さえすれば番号なんてどうでもいいです。どうせ南から数えて5番目とか言う話でしょうし。確かギルド本部内にゲートを設置する方式でいいんですよね?」


 前に渡された庁舎の設計図を見ると、ゲート設置区画と記載された部分があったので間違いないだろう。なぜそこに設置するのかといえば、スタンピード対策で海上に庁舎が設置される関係上補給線が限られてくる。そこで、庁舎を砦兼補給処として活用する為にゲートを中に設置して、その他の部屋をスタンピード発生時にはスィーパーと物資で埋め尽くしてしまえば、最前線中央に基地が置けると言う寸法である。これも秋葉原のデータから算出された方式なので間違いはないのだろう。負傷すれば庁舎に戻り回復して、外に出れば目の前にはモンスター。見晴らしを良くする為に庁舎5km圏内には何も建てない予定だ。


「変更はありません。既に建設に取り掛かっています。こちらが基本の設備リストになりますが、他に必要なものがある場合は言ってください。できる限り対処しましょう。」


「それはありがたい。なら、私からも千代田さんへではないですが、喜びそうなものがあります。」


 望田が設置リストを見たそうにしていたので、貸して俺は指輪からあれを出す。硬度照射装置とクリスタル液状触媒の設計図。物はないが、設計図があればどうにかならない事もないだろう。


「設計図ですか・・・。作成出来るかは別として、今やこれは国の財産です。つい先日のニュースですが、国同士の取引で設計図の事が言及されていましたね。これはどなたに?」


「硬度照射装置は斉藤さんへ。触媒の方は千代田さんの裁量に任せますよ。」


 千代田が内容を確認しながら考え込んでいるが、何かアテがあるのだろうか?まぁ、千代田の繋がりなのでおかしな人物とは思わないが。


「斉藤さん宛含め研究者の方々が喜びそうな品ですね。有効活用させてもらいましょう。」


「どうぞどうぞ。私は必要ないですから。それと1つお願いで雄二と卓にはいい補佐官を付けてください。当初の予定ではそのまま宮藤さん含めて連れて行こうかと思っていましたが、現状ではそれも厳しいでしょう。なので、社会経験に乏しい2人をお願いします。」


「親心ですか?」


「老婆心です。それに1つ間違うと権力がある分影響が大きい。ある程度の関係が築けるよう、早めに人選をお願いします。」


 千代田なら公安あたりから、人を引っ張って来てくれないかな。その方が色々安心できる面もあるし、副本部長役が同じ様なタイプだと事務方の苦労は鰻登り。


「分かりました。その事には配慮しましょう。クロエの副本部長役は望田君で確定として・・・。」


「はい?」


「・・・、聞いていないのですか?昨日辞令として話、本人も承諾したのですが。」


 望田を見る。千代田を見る。エマを見て、もう1度千代田を見て望田をみる。えっと・・・、初めて聞いたその事実。確かに至っていないし、専属SPなので近い所に居ても問題ない。本人が承諾しているならいいのだが・・・。


「本当にいいの?」


「ええ、承諾しました。本当はもっと驚かそうとかムーディーに伝えようかと思ったんですけど・・・、なんで千代田さんここで言うんですか?」


「寧ろなんで昨日伝えていないんですか・・・。」

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