閑話 ルーブルへ至る経緯。或いはバッカーノ 22
バカ話です、ポスターの効果は見る人によります
ウィルソン=スミス。30代後半米国国防総省職員にして、各方面にちょっかいを掛けるナイスガイ。日々デスクワークに苛まれ、マッドガールからの報告で禿げ上がりそうな頭と、ドーナツで出来た少し出た腹は見るものが見れば魅惑のボディへと・・・。
「ウィル、そろそろ現実へ戻れ。日々頭のおかしい報告で辟易としているのは分かるが、定時報告は受けねばならん。今日は視察に大統領も来る。」
「局長、トラップは出た。ファーストは予想よりも遥かにまともだった。なら、私は定常業務でいいんじゃないですかねぇ?」
「別に構わんよ?今からスィーパーになりにゲートに入ってジャックポットでSを引け。そうすれば君は今日から国の財産だ。大統領も新しいSの誕生にお喜びになる。」
「無理な話ですよ、適性?それがないと成れないって話じゃないですか。」
地位もある程度得た、仕事も悪くない。遊ぶ女も不自由はない。ただ、マッドガールの定常報告は日本時間の18時から19時辺り。時差を考えればこちらでは早朝、それも朝の6時なんてデタラメな時間だ。クソ、定時報告の内容はスカスカだとたかを括っていたが、こうも成果を出されたらメールで済ませる訳にもいかない。
毎回通信ではおちょくっているが、それでも線引きはしている。線引きはしているがファーストが出鱈目なのが一番たちが悪い。なんだ?魔法を渡すって?エマはホグワーツにでも入学したのか?ホテルでは出せないと、撮影した映像待ちだが絶対仕事が増える案件だ。それだけでも頭が痛いのに、橘はサイボーグ?バカは休み休み言えよ。しかし、だ。
「それにあんな所入ろうとも思いませんね。金貨も資源も魅力的ですが命がいくらあっても足りない。少佐に渡した若返りの薬、あれを探し出すだけでダインコープの人間が何人死んだか・・・。」
報告では参加メンバーは20階層を悠々お喋りしながら歩いて回るらしい。アプローチが違うと言われて、根本的な見直しをしている最中だが、初期の方向性として少佐と同じように、兵士にゲームや漫画を読ませるのは有効なのか未だに悩む所がある。
「彼等は民間軍事会社の人間、早い話が傭兵だ。金の為なら死ぬのも仕事のうちだろう。我々が関与する事象ではない。我々が目を向けるのは少佐の成果であり、教育者のファーストだ。少佐の話だけでも、聴き逃がせば我々の損失は大きい。通信データは研究者が血眼になって何万回も再生している。」
「はっ!ビデオならデブの腹みたいにダルンダルンになるか、ばーさんのパンツみたいに擦り切れてる。そろそろ上がっていいですかねぇ?」
報告の内容は教育から私生活まで多岐に渡る。それもこれも少佐にはファースト観察任務も命令されているからだ。謎多き人物、日本政府が躍起になって経歴その他を抹消した人物。うち以外の国が手を出そうとしたら、その国の工作員は1名の送還を許したのみで後は消されたらしい。
きな臭い臭いしかしないが、多分ファーストは知らず。日本政府の犬どもが処理したのだろう。表向きは外国マフィアと言う触れ込みだった組織は、崩壊し息のかかった企業の外国国籍者も、捏ち上げられた罪で国外追放されたらしい。個人としての突出した力は分かるが、そこまで躍起になったと言う事は、何かしらの弱味を見つけた?
ファーストが初めて世に出た街には大きなタペストリーがあるというが、本人がやらせたのなら自意識過剰もいい所だ。・・・まぁ、なんだ。そうなるほどに綺麗だとは思うが。俺はロリコンではない。
「待たんかウィル。今日は君宛のプレゼントが届くのだろう?インナーでは痛い目を見た・・・。しかし、あれを装備しなかった場合我々が窮地に追い込まれていた。同じ物は我々では作れない。仮に誰かがちょろまかしたなら、ファーストとの関係は崩れていたかもしれない。」
「はぁやだやだ。神様に祈るのを辞めてファーストに今度から祈りましょうかね。助けてー!魔法少女ファーストー!て。」
実際いない神様より目の前のファーストではある。映像データから見た秋葉原での戦闘をシュミレーションすると、ファーストと言う1がないだけで、被害想定が尋常ではなく跳ね上がる。逆を言えば1人でそれだけの被害を抑え込める力があると言う事だ。事実、秘密裏に行われた国家安全会議でファーストと言う個人を対象とした議題では、手を出すなで全会一致してしまったというお笑い草な結果がある。
「好きなだけ求めるといい。報告で聞く上では彼女は中々知的なようではないか。教育手腕もあるなら、国賓待遇でも来てほしいと大統領からのお達しだ。」
「はぁ、世界は間違ってる。働いてる私より空想の魔法使いが優遇される。」
「ウィルに局長、お届けものです。」
「悪態はそれくらいにしろ。ファーストは実在するし、仕事は目の前にある。ありがとうスコット。少佐からか?」
「ええ、荷物とエアメールです。開封に立ち会っても?」
「まぁよかろう。少佐からの早いクリスマスプレゼントだ。メールから開けてみよう。」
局長が黙読し、回された手紙を見る。検閲を危惧してかはたまたそれだけなのか、内容的には日々の訓練と参加メンバーの観察状況、ファースト個人に対する印象などが書いてある。年齢が開示されたとあるが、本人の申告で43歳は・・・、若返りの薬か?外見と年齢のミスマッチは仕方ないが、これでファースト個人を追うのが更に難しくなった。あの衣装はカモフラージュか?なら、相当な策士だな。事が終わった後のことまで見ているという事になる。悪態は付くが、脅威度は見誤らない。それを誤れば無能だ。
後半は荷物についてが殆どだ。市販されている靴とあるが、製造方法は鍛冶師と装飾師の合作で少佐自身ファースト子飼いの装飾師に刻印をしてもらっている旨が書いてある。初動が悔やまれる。国防総省全体でも嘆かれているが、我々も日本に倣いスィーパーの管理をするべきだった。今は警官を配備して聞き取りを行っているが、真実を話しているかは分からない。
判定機なるモノへの言及もなされているが、これはどうやら簡易鑑定機で販売されているかは不明らしい。自由行動を許しているので、後は少佐頼りか、在日米軍に虱潰しに探させるしかない。その他はここでもポスターか・・・。なんだというのだ。そんなにも少女のポスターが危険か?価格にして約11ドル少々。そんなものが何になる?いや、ここまで言われたなら脅威なのだろう。
「荷物を開けても?」
「かまわないよ、靴は研究機関に回そう。しかし、ポスターは・・・。少佐の指示に従い開く時は目覚ましをセットしよう。」
「局長、高々ポスターが危ないなんてありゃしませんよ。精々紙で指を切る程度。それ以外は何もなしです。」
強がりと自身で分かる、局長も心なしか緊張している。馬鹿らしい話だ。たかが紙切れ1枚。それに対してスコットは知らないが大の男2人が、国防総省の職員である2人が脅威を感じている。
「それだけの軽口が少佐に叩けるようになってから言いたまえ。」
「嫌ですよ、マッドガールは殴ってくる。痛いんですよ、アレ。」
本人は軽いつもりかも知れないが、アイツの拳は普通に痛い。スィーパーと言うモノは力加減さえ忘れてしまうものなのか?女性軍人とは言え、プロボクサーのストレート並みに痛い。
「さて、セットした。では拝見しよう。」
靴を取り出し見聞するが特に変わったようには見えない。少佐の話では、ナイフすら欠けるほどの硬度だというが、手に持った感じ普通の靴と変わらない。手近なペーパーナイフを突き刺そうとするが、それは刺さることなくナイフの先が曲がってしまった。
「靴は・・・、たしかに硬い。局長、研究機関に回す前に1度鑑定しましょう。いいですね?」
「構わんよ。学者共には最終的に届けばいい。分かる範囲での情報は私達にも必要だ。スコット、靴を鑑定師の所へ。」
「分かりました、こっちを開けてからでもいいですか?ウィル、ポスター要らないならくれよ。」
「中を見てからだなロリコン。お前もファーストファンか?とっとと開け。」
「可愛いですからね、彼女。」
局長が承諾しスコットが手に持った丸められたポスターを伸ばしていく。最初に目に付いたのは黒い靴。送られてきた靴と似たデザインの靴は次に見えた白いふくらはぎに対して大きく見える。細い足だ。拒食症を疑いたくなるが、エマ曰く大食い。そして、不思議と太ももまで見えると細いという印象から、その脚線美のラインで瑕疵はないと思える。瑕疵があるなら、それは靴だ。隠された足先が見られないのが誠に残念だ。
次第に広げられていくポスターは赤いベルベットが見え、黒い服が見えだす。邪魔な服だ。共に見える手が美しい分、それ以外の部分が邪魔に思えて仕方ない。しかしスコット、もったいぶらずに早く広げろ。その言葉が口から出ようとするが、口を開くことが憚られゴクリと唾を飲む音だけが頭に響く。待て、なぜ私はそこまでこのポスターの開く先が見たいと思った?これは脅威ではないのか?
ゆっくりと確実に開かれていくポスターを止める事は出来ず、とうとう身体があらわになり、残りは顔だけとなる。細い肩はいい、細いがその造形に不備はない。その形が最適だ。その形だから足とともに成立する。邪魔なのは靴であり服だ。それがなければ更に美しいモノが見られただろう。
美しい鎖骨のラインから首筋にかけてが見え、残された顔が現れる。映像は見た、嫌と言うほど見た・・・、いくら見ても嫌と言う印象は受けないが、それでも仕事の資料として動画も静止画も見て、声も聞いた。しかし、これは違う。これは魅入られる。私達がポスターを見ているはずなのに、それ以上にポスターから私達が見られていないと言う寂しさを感じる。その顔で、その目でこちらを一目でいいから、烏滸がましいだろうが、目を汚す事になるだろうが許されるなら見て欲しい。
遠くで邪魔な音がする。悪いがポスターを見るので忙しい。今日は有給を使って1日眺めていてもいい。プレゼントなのだ、それくらい許されるだろう・・・。一瞬、スコットのポスターを持つ腕が揺れ、蛍光灯の光がポスターに反射して顔を隠す・・・。音だ、鳴っているのはアラームの音だ!
「おい!スコット!局長も!なんか知らんがヤバいぞこれは!」
「そうだねウィル。コピーして持って帰ろう。」
「スコット、私の分も頼むよ。日焼けするといけない、何枚でもコピーしてくれ。」
「待て待て待て!スコット!局長も!魅入られてる!」
ヤバい!ヤバい!!ヤバい!!!少佐めなんてものを送ってくる!?いや、警告はされた、されてこの有様だ!高々ポスター、しかし、そのポスターは魔性を秘めている。今も視界の端に映れば、自然と視線が惹きつけられる!駄目だ、慣れればいいと言っていたが、これはいつ慣れる!?
「ウィル、君は要らないのか?それにこれは実験でもある。コピーしてもその効力があるかという高尚でワンダフルでエクセレントな神御業にもまさる実験だ!」
「局長正気に戻って下さい!スコット!一体何枚コピーしてるんだ!」
「シッドッ!何が違う!?インクか!?コピーしているのになぜ同じものにならない!?このクソポンコツコピー機が!メイドインジャパンじゃないといけないのか!?生写真だけの特権か!?」
局長はコピーを見て悲痛な顔をし、丸めて捨てようとしたが思い直して綺麗にシワを伸し、スコットはキレてコピー機をガンガン殴っている。ポスター1枚でこのザマか!?たった1枚のポスターで国防総省が手球に取られているのか!?何なんだ一体ファーストとは!?
「成果のある部署と視察に来たがなんの騒ぎだ?ハロウィンにも早いだろう?」
「大統領!?」
よりにもよってこのタイミングか!視察に来るのは知ってただが、こんな朝っぱらにふらりと散歩するように来なくていいだろう?厄日か?ボケ老人の大統領がフラリと散歩する日和か?
「そうだが・・・、確か君はウィルソン君だったか。なんの騒ぎなんだい?」
「あっ!いえ!なんでもありません!ほら局長!大統領です!」
「お久しぶりです大統領・・・、私は悲しい・・・。美しいポスターの複製が作れない・・・。」
「ポスター?なんだい?マライアかアブリルか?君も若いな、私はハイスクールで卒業したよハッハッハッ・・・。」
大統領はまだジョークだと思っている。なら、そのまま帰ってもらえば我々は真面目に仕事に取り組む、ホワイトカラーでいられる。さぁ、誘導して退場願おう。主に私の未来の為に!近場に送られてきた靴もあるこれで気を引けば!
「あ〜、大統領これが日本から送られてきた・・・。」
「ポスターです!ファーストのポスター!です!職場のコピーの品質向上を願います!」
「スコット!?」
野郎やりやがった!靴より先によりにもよってポスター見せやがった!ただでさえ訳分からん状態なのに、よりにもよって、大統領に真正面からポスター見せやがった!ヤバいヤバいヤバい!こんな事してたら無能のレッテルを貼られて首が飛ぶ!
「ハッハッハッ!模造品など要らん、言い値で買おう。さぁ、それをよこせ若造。」
「大統領!?」
脅威ではない攻撃だ!大統領まで血迷った事言い出した!何なんだこのポスターは!?少佐は籠絡されて自国に精神攻撃を行った?いやいやいや、11ドル少々で国が、国防総省が傾いてたまるか!
「大統領!ご冗談は程々に。スコット!さっさとそのポスターを処分するなり丸めるなりしろ!私以外正気じゃない!」
「嫌だ!そんな事されてたまるか!ファーストFooooooooooo!!!」
「バカ待て!広げて走るな!!」
スコットの野郎正気じゃねえ・・・。正気じゃねえが、広げて走り回られるとヤバい!クソ!私が追うのかあの若造を!自慢じゃないがデスクワークで足は遅いんだぞ!椅子から立ち上がって走るスコットを追おうと大統領の横を通り過ぎようとすると、ガッシリと肩を掴まれた。痛いほどの力の込めよう。正気に戻って事態の深刻さに気付いてくれた?流石大統領ともなれば、肝が座っている。
「正気にもど・・・。」
「ウィルソン君、あのポスターを持ち去った国賊から無傷で彼女の肖像を奪還したまえ。場合によっては発砲も許可する。」
「なっ!アイツは馬鹿ですがそこまでは!」
「ウィルソン君、大統領命令だ。事と次第では軍を動かす!」
「・・・、了解しました。」
ど畜生!どいつもこいつもまともじゃねぇ!ポスター1枚で米軍が動く?冗談も休み休み言えよ!それが出来る権力者はまともであれ!助けて神様!ファッキンファースト様!悪口言わねぇから、手加減してくれコンチクショー!
クソバカスコットはどっちへ・・・、いや、これは分かりやすい。全員が同じ方向を見てやがる。廊下に出れば、職員は足を止めて、スコットが走り去ったであろう方向をみんな見ている。分かりやすい、分かりやすいが・・・、他のみんなは大丈夫だよな?バイオハザード宜しく、ゾンビみたいに走り出さないよな?
「おい、スコットはこの先か!?」
「あぁ、美しいモノを持って走っていった。一瞬だったがアレは・・・?」
「ありがとよ!今日は休め。」
一瞬なら大丈夫なのか?分からん、分からんがいつの間にか国防が私の肩にかかっている。チクショウ、俺はいつから映画の主人公になっちまったんだ?ナイスガイなのは認めるが、ちょっと早急過ぎる!銃はホルダー、やる気は彼方、腹にあるのは脂肪だけ!ど畜生、走らせるなよ。
スコットは何を思ったか上へ階段を駆け上がりやがった、ブチ殺してやろうかあの野郎!階段を登って膝が笑う、心臓が爆発しそうなくらい早鐘を打つ、ファッキン運動不足!明日から走ってやるよ俺の身体!
『国防総省内職員に告ぐ。緊急事態だ!』
「おぉ!ようやくまともに戻ったか!これで走らずに・・・。」
『安全保障に関わる重大な肖像が職員に奪われた。現在ウィルソン補佐官が追跡中、各職員は最大限の協力をしたまえ。』
「ど畜生ーーーー!!!なんで俺だけまともなんだよ!」
走って走って、途中職員からの声援と給水を行って屋上まで来た。疲れた・・・、息が上がり肩で息をする。しかし、そうまでして走った甲斐はあった。確かにそこにスコットの野郎はいた。
「おい!クソバカ若造!さっさとそいつを寄越せ!」
「せめて、せめて綺麗にコピー出来るまで待ってくれウィル!このポスターはくれないのだろ!?」
待ってやらん事はない、事はないが先ずは確保が先だ。やりたくはないが、発砲許可は出ている。空砲でハッタリだが、少しはコイツに言う事を聞かせる脅しにはなる。銃を構えながらこのクソバカに口を開く。
「頼む!大統領の命令だ!!お前を撃ちたくない!と、言うかそのポスターはエマから私へのプレゼントだろ!?」
「クソ・・・、俺は・・・、泥棒じゃない・・・。従おう。」
スコットは大人しくポスターを私に手渡した。あれだけ走り回ったのが嘘のようにシワ一つないポスターは、一体何でできているんだ?開いたままでは危ないので、丸めて運ぶが上空にはヘリが飛んでいる始末・・・。これから大統領に話を付けなければならないのか・・・。
笑う膝に疲れた身体・・・、白昼夢の様な出来事だがポスターは手にあり、部屋に帰れば大統領も局長もいる。夢じゃないのかよ・・・、夢オチでいいだろう・・・。しかし、顔に出しては悪い。相手は国のトップなのだから・・・。
「おぉ!ウィルソン君。君はやる男だと思っていたが、負傷者も出さずに上出来だ。さぁ、ポスターを渡したまえ。」
このままこの大統領に渡していいのか?11ドルそこそこのポスターだが、今日の馬鹿騒ぎの原因は間違いなくコレだ。恨むぞエマ少佐。なんて物を送ってきやがる・・・。
「大統領。これは私個人に贈られたモノです。自由の国アメリカらしく、私の好きにさせてもらいます。」
「なる程、自由結構。・・・、時に君は局長の椅子に興味はないか?」
「大統領!?」
「ジョークだとも、ジョーク。さて君はどうするかね?」
局長は顔を青くし、大統領の目は笑っていない。俺も首は嫌だ。嫌だが、今すぐこれを渡していいものではない。渡せばどんな馬鹿騒ぎが起こるかわからない。
「11ドル少々、それがこのポスターの値段です。」
「ふむ、ならその値段で買おう。」
「えぇ、どうぞどうぞ。販売元は日本・・・、ファーストのいる国です。ご自身で手にいれて自由を掴んで下さい。私はこのポスターを・・・。」
一旦家に持って帰ったポスターは開封する事なく記憶の片隅に追いやり、エマに散々嫌味を言った記憶だけが残る。禁書ならぬ禁写真?とでも言えばいいのか、この事件は箝口令がしかれ大統領でさえ口を開かない。まことしやかに話される噂には尾ひれが付いて、ミームの様になっている。ミームの様になっているが、時折ネットで不意にポスターを見ると思い出してしまう。一体あの馬鹿騒ぎは何だったのかと・・・。年老いたらこのポスターはルーブルへでも送ろう。それまでは・・・。
「ただいま、ファースト・・・。」
見慣れたが見飽きる事はない。なら、見るくらいならいいだろう。そのうち、ポスターの国外販売が始まれば、きっと落ち着いてくれるさ。




