#082 るーみあ さぷらいずど ありす
私は大きな荷物を2つ抱えて自宅に戻った。
「⋯気づかれないように」
鍵を開ける音で帰宅に気づかれないように静かに鍵を開ける。
そっと扉を閉めて私は自室へと飛び込んだ!
「⋯⋯ふう、気づかれなかった?」
ドキドキする。
なんかイケナイことしているみたいな感じで。
おまけに凄い汗をかいた。
「⋯⋯シャワー浴びよう」
最近の私は帰宅するとすぐにシャワーを浴びるのが習慣になっていた。
暑くなってきて汗をかくというのもあるけど、汗臭い姿でアリスケ君の前に出るのは絶対やだ。
「ちょっと前まで汗まみれのジャージ姿でも平気だったなんて信じられない⋯⋯」
人間ここまで短期間で変わるのだと私は思い知った。
誰かを好きになるってこういう事なんだな⋯⋯。
私は制服を脱いで全自動洗濯機に放り込む、これで乾燥までボタン一つだ。
そして浴室に入ってシャワーを浴びる。
⋯⋯ふう気持ちいい。
──しかし!
「姉さん居るの?」
──!!?
すぐそこにアリスケ君が来ていた!
そうか! 洗濯機とシャワーの音で気になってアリスケ君が見に来たんだ。
「こんな時間に姉さんがシャワー使うなんて珍しいね、おまけに自分で洗濯まで。 ジュースでも溢したの?」
どうやらアリスケ君は真樹奈さんがジュースでも被って、それで洗濯とシャワーを浴びていると思い込んでいるようだ。
「もうじき留美さんが帰ってくるからなるべく早く使い終わってね」
「⋯⋯」
いま私はすりガラス越しにハダカを見られていると自覚した!
ど・ど・ど・どうしよう!?
しかし何かをする前にアリスケ君は出て行ってしまった。
きっ緊張した──っ!
それから慌てて私はバスルームを出たのだった。
私は服を着て自室に逃げ戻る。
そして髪の毛を乾かしてからリビングに行くと⋯⋯。
そこにはアリスケ君と⋯⋯真樹奈さんが居た。
「おかえり留美」
「⋯⋯オカエリナサイ」
「⋯⋯タダイマ」
どうやらアリスケ君はさっきのが私だったと、いまさら気づいたらしい。
そりゃ隣の真樹奈さんが風呂上がりでないことは一目瞭然だし。
「どったの二人とも?」
「⋯⋯ナンデモナイデス」
「⋯⋯ナンデモナイデス」
私とアリスケ君は仲良く同じ答えを、なんにも気づいていない真樹奈さんに返すのだった。
「さて⋯⋯夕飯の支度をしないと!」
かなりわざとらしくアリスケ君は料理の支度を始めた。
どうやら私に謝りたいがここで謝ると真樹奈さんにバレるのが困る、といったところか?
それは私も同じなので合わせることにした。
料理をするアリスケ君の後ろ姿を何となく見つめていると⋯⋯。
ちょいちょいと私の服を引っ張る真樹奈さんだった。
無言のアイコンタクトで「こっちに来い」と言われたので私は真樹奈さんと一緒に彼女の部屋に入る。
「なんですか?」
⋯⋯まさかさっきの事じゃ?
「留美! 本当にありがとう!」
「⋯⋯何がです?」
「アリスケの誕生日よ! マジで忘れてて助かったからさ」
「ああ⋯⋯その事ですか」
セ──フ! 気づかれてない!
「それでサプライズパーティーをしたいんだけど⋯⋯」
「サプライズも何も、アリスケ君は自分の誕生日知ってますよ?」
「それはしゃーない、でもちょっとでも驚かせたい」
「どうやって?」
「明日あんたたちが学校に行ってる間に私と映子の二人でパーティーの準備をしておく、なので留美は明日だけはアリスケと一緒に帰ってきて」
「わかりました」
「これで後はプレゼントの問題だけね」
「あ⋯⋯それなら私はもう買ってきました」
「買った? 何を」
まあいいか万が一かぶるよりは。
「スイッチ・ライトを⋯⋯」
「はえー、奮発したわね留美」
「まあ私もけっこう稼いでますから!」
私のVチューバーとしてのお給料は養成所のレッスン料なんかを差し引いても結構あるのだ。
これも春先から一気に登録者数を伸ばせたおかげだった。
その原動力は間違いなくアリスやマロンとのコラボが増えた事だった。
「それなら私もなんか考えないと⋯⋯アイツなに貰ったら喜ぶのかな?」
「真樹奈さんでもわからないんですか?」
「私もこの春まではアリスケと離れて暮らしていたしね」
なんか意外だな、真樹奈さんはアリスケ君の事なら何でも知ってるイメージだったのに。
「とくに最近のあの子は変わってきているからね」
「Vチューバーになってから⋯⋯ですね」
そりゃ変わるよなあ⋯⋯しかも女の子のフリまでして⋯⋯。
この後、映子さんが遊びに来てこの作戦会議はいったん終了になったのだった。
そして夕飯時に。
「そういえば有介君、明日誕生日なんだってね!」
そう私たちの作戦をまったく知らない映子さんによってサプライズパーティー計画はおじゃんになってしまった。
「ノォ──! ギブギブ!」
そんな映子さんは今、真樹奈さんにサソリ固めを食らっていた。
「ははは! サプライズパーティーとか照れるから、台無しでちょっと安心したかな?」
どうやらアリスケ君は人を喜ばせることは好きだけど、自分がされるのは苦手なようだった。
「それでも明日はアリスケ君のパーティーするからね」
そう私は宣言する。
「うん、まあお手柔らかに⋯⋯それと姉さん、そろそろ映子さん許してあげたら?」
「そうね」
そう言ってあっさりと映子さんは解放された。
「痛かった、でももうちょっと真樹奈とくっついていたかった⋯⋯」
なんともタフでめげない映子さんだった。
そうして私は一つの計画を立てる。
これは私のサプライズ計画だ!
その計画を私は真樹奈さんのラインに送った。
[真樹奈:了解]
そして紫音さんとみどりさんにも⋯⋯。
[紫音:協力するよ!]
[みどり:なにそれめっちゃオモロイwやるやる!]
よし、これでこっちはいい。
あとは──。
私は配信準備を始めた、一つの決意を胸に秘めて。
絶対に私はアリスケ君を驚かせて見せる!
── ※ ── ※ ──
「みなさんこんばんにゃー! 今夜も元気な魔法猫娘のルーミアだ、にゃん♪」
【るーちゃん! るーちゃん!】
まあいつものやり取りである。
「えー、今夜はこのあとミランダ姫を助けに行くんだけど⋯⋯この中にアリスのリスナーさん居る?」
【いますw】
【同時視聴です!】
よし居るな!
「じゃあ部員さんにちょっとだけお願いしたいことがあるんだけどー」
それからしばらく私は自分の計画を語った。
【よっしゃー乗ったぜ!】
【ワイも協力する!】
【まさか裏切る部員は居ないだろうな?】
【居るはずがないw】
【そうそうw】
【アリス部長部員全員に裏切られてて草w】
【ルーミアのお願いだぞ】
【それに比べればアリスをだますくらいわけないw】
⋯⋯どうやらリスナーの協力は得られたようだった。
「じゃあ上手くいくかはわからないけど⋯⋯その時はみなさんお願いしますね。 ⋯⋯にゃん♪」
【にゃん♪遅いぞw】
【キャラちゃんとしてw】
思えば私はいままでファンのみんなを信じた事があっただろうか?
もしもこの中の一人でも裏切り者が居たらこの計画はおしまいである。
でも信じてみよう、今回は!
「さてはっじめるよー! 今夜のルーミアのアリスちゃんサプライズ計画、発動にゃん♪」
【媚び媚びで草w】
【最近はそんなににゃんにゃん言いませんよね?】
「うるさいね、こうやって頼んでるんだから協力してください!」
こうして始まる、私の一世一代の大計画が!
待っててねアリスケ君。
私の不意打ち攻撃を!
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