#062 ネオ・レジェンド・プロジェクト
かつて『レジェンド・プロジェクト』という夢の企画があった。
それは当時のゲーム少年たちなら誰でも思っていた企画だった。
今から約25年前⋯⋯僕はまだ生まれてもいない頃。
当時ゲーム業界はRPG全盛期で、どのメーカーもこぞって力作を世に送り出していた時代。
その中でひときわ輝く巨星⋯⋯それが2つあった。
それが『ドラゴン・ファンタジア』シリーズのエミックス。
もう一つが『ファイナル・サーガ』シリーズのスフィエアだった。
この二社はライバルだった。
でも当時の子供はそんな事知らない、単純に面白いゲームを作る会社程度の認識である。
なので夢に思ったのだそうだ。
『この二つが合体したら最高のゲームになる!』⋯⋯と。
そんな子供たちの願いが届いたのか信じられない事に、その夢が実現する事となった!
そのプロジェクト名が『レジェンド・プロジェクト』である。
そして生まれた伝説のRPGその名は『クロノスコープ』である。
遥かな未来、世界は時空断裂によって崩壊寸前の危機にさらされた。
その原因が過去に現れた『何か』によってだと推定された。
そしてついに原因究明解決に時空観測機『クロノスコープ』が飛び立つ!
しかし突如発生した時空乱流によってクロノスコープは不時着してしまう⋯⋯。
その時代は⋯⋯現代だった!?
現代に生きる普通の少年クロトと姉のルカが突如出会ったタイムマシンによってさまざまな時代を行き来して事件解決を目指す!
そして集める仲間たちを! それはさまざまな時代の主人公たちだ!
キャッチコピーは『戦え! トキノキョウセイシャ達よ⋯⋯』である。
こうして主人公は仲間たちと共に星を救うために戦うというストーリのゲームである。
なんでも過去や未来がある設定なのは、王道ファンタジーが得意なエミックスと近未来SFがやりたかったスフィエアの意見をまとめた結果だったらしい。
そんな二大RPGメーカーが総力を結集して作ったこのゲームは、そのプロジェクト名に恥じない『伝説のゲーム』になったのである。
そして発売から20年以上たった現在でも『思い出に残るゲームランキング』などでは常にベスト10に入っている化け物ゲームだ。
当然のように父のコレクションにもあったので僕もやった。
まあ僕には当時の少年たちのような特別な感情は無かったが⋯⋯だからこそ純粋に評価できたのかもしれない。
その僕の評価は⋯⋯神ゲーである。
キャラクター、シナリオ、音楽、どれをとっても最高クラス。
ただ残念なことは、このゲーム移植はあってもリメイクや続編が無いということくらいか?
そんな一度きりのお祭りだからこそ生まれた伝説の神ゲー、それが『クロノスコープ』である。
そして今回、木下さんが持ってきた『ネオ・レジェンド・プロジェクト』が残念ながら『クロノスコープ』の続編ではないという事は既に僕は知っている。
しかしクロノスコープ生誕25周年を記念して、再びこの二社が手を組むことになったのはゲーマーの間では数年前から知られてはいた。
そして今回の『ネオ・レジェンド・プロジェクト』によって作られていたゲームというのが──。
「『ロールプレイング・アドベンチャーワールド』のベータ版のテストプレイヤーに、私たちヴィアラッテアとポラリスのVチューバーが選ばれたわ!」
「うおおおっ! やった──!」
僕は大声で喜ぶ。
それをみんなはポカンとした顔で見ていた。
そりゃそうだろ、みんなはさほどゲーマーってわけじゃないからそんなゲームが開発中なのを知らないだろうし。
それに僕だけはこの企画があの天下のエミックス様がら持ち掛けられたところを見て知っていたからだ。
あの時点でまだ決定事項じゃなかったから喜べなかったけど⋯⋯もう喜んでいいよね!
「嬉しそうねアリスケ⋯⋯で、その『ロールプレイング・アドベンチャーワールド』ってゲームは何なの木下さん?」
「それにポラリスともコラボなの?」
こうして改めて木下さんから今回の企画の詳細が語られるのだった。
「今回の案件はエミックス・スフィエア両社から今度販売されるゲームのベータ版のテストプレイを含めた宣伝活動です」
ニコチューブなどでゲームの動画を上げている配信者は多い。
それがゲームメーカーの利益を損なう事もある。
しかし時代の流れ的にそういったものを完全に取り締まることは困難で、むしろ今後は積極的に宣伝に利用すべきだという意見も出始めている。
そのためエミックス・スフィエアは決断した!
販売直前のベータ版を正式に企業Vチューバーにやってもらって宣伝活動してもらおうと。
「それを私たちだけじゃなくてポラリスとも共同でするの?」
「そうです」
エミックスとスフィエア、両社はしばらく前から宣伝活動を依頼するVチューバー企業の候補として我々ヴィアラッテアとライバルのポラリスを検討していた。
しかし決め手がなくどちらに依頼するかでもめていたらしい⋯⋯。
ところが今回の骨髄バンクコラボによって流れが変わった!
両方にやってもらえばいい、そういう結論になったのだ。
RPGの二大巨頭エミックスとスフィエアはライバルだ。
そしてヴィアラッテアとポラリスもライバル同士。
そのコラボという化学反応を起こして見せよう⋯⋯それが。
「この新作ゲーム『ロールプレイング・アドベンチャーワールド』は、私たち両社のVチューバーで宣伝します」
これが『ネオ・レジェンド・プロジェクト』の全貌である!
「よっしゃ──!」
素直に大喜びするのはゲーマーの僕くらいで、あとのみんなはまだポカンとしていた。
「なるほど⋯⋯アリスケが大喜びするような仕事なわけね」
「ただ⋯⋯少し問題があって⋯⋯」
「問題!?」
僕のせっかくの喜びに水を差すの?
「今回はベータ版なのであまり人数が居ても仕方ないという訳で、ヴィアラッテアとポラリス共に2名を選出⋯⋯という事で決定したわ」
「2人だけ!?」
「その、できれば『アリス』は入って欲しい⋯⋯というのがスポンサーの意向なので実質ウチからはあと1人ね」
「⋯⋯いいのかな?」
なんかゴリ押しで選ばれたようで気が引ける⋯⋯。
「いいんじゃないの? アンタが一番楽しみだったんだし」
「でも、ここ以外にもいますよねウチの先輩Vチューバーの方々は⋯⋯」
なにもヴィアラッテアのVチューバーはここにいる4人だけじゃない。
「その人たちは今は別の案件もあるし、今回は見送るという事で話はついているわ」
「そうですか」
僕の知らない同僚は全部で4人⋯⋯いや1人引退したから3人か。
「ならアリスケは決定として、後は私たち3人の中から誰が出るか⋯⋯ね」
いいのだろうか? このまま僕だけ決定で。
「あの木下さん」
「なに、有介君?」
「ポラリス側は誰が出るんですか?」
一応聞いてみた。
「スポンサーの意向で『ネーベル』は選ばれてるはずよ、『アリス』と同じ最高のゲーマーだし。 あとの1人はまだわからないけど⋯⋯」
シオンが出るのか!
それなら是非僕はやりたい!
「あの! 私がやりたいです!」
「留美さん!?」
突然声を上げて立候補したのは、いつも控えめな留美さんだった。
「いいんじゃないの、ルーミアで」
「そうね、私もマロンと一緒だったら是非⋯⋯だったけど、アリス優先だと無理だし今回は別にいいわ」
どうやら姉と映子さんに異論は無いらしい。
「いいんですか、私で?」
留美さんも半信半疑といった感じだった。
「そうね、アリスとルーミアは仲いいし⋯⋯ちょうどいいかもね」
そう言って木下さんも決めたようだ。
僕と留美さんが一緒にゲームできる。
ちょっと前の絶望的な状況からは考えられない展開だった。
「うん、やろう留美さん! 僕と一緒に!」
「⋯⋯ええ、よろしくアリスケ君」
僕は思わず留美さんの手を握って喜ぶ。
留美さんは顔を真っ赤にして焦っていた。
「ああごめん! 女の子の手を勝手にさわって」
「いいのよ! そのくらい!」
⋯⋯? なんで留美さんはこんなに焦っているのだろうか?
こうして僕と留美さんは新しい仕事『ロールプレイング・アドベンチャーワールド』をする事が決定したのだった!
── ※ ── ※ ──
その頃──。
「──もしもし坂上さん?」
『おはようございます、みどりさん。 ⋯⋯なんでしょう?』
「今度の案件⋯⋯もう一つ椅子が空いてますよね? 私じゃだめかな?」
『今度の案件? 『ネオ・レジェンド・プロジェクト』の事ですか? 相変わらず耳が早いな⋯⋯どこで知ったんですか?』
「情報源は明かせないわね、当然でしょ? ⋯⋯それでどう? 私じゃだめかな?」
『⋯⋯まあいいですけど、大丈夫ですかみどりさん? RPGなんですよコレ?』
「大丈夫よ、だって私は⋯⋯『レジェンド・プロジェクト』直撃世代ですもの!」
『なるほど⋯⋯若いネーベルと経験豊富なみどりさん、いい組み合わせかもしれませんね』
「誰がオバさんですって?」
『⋯⋯⋯⋯それではこの件はお任せします!」
ガチャッ!
そう言って坂上マネージャは電話を切った。
「ふ、ふふ⋯⋯これで遊べる! ネーベルちゃんと、それにアリスちゃんとも!」
私は大喜びで部屋の中ではしゃぎまくる!
「これでい──ぱいっ、お話出来るね。 ネーベルちゃんとアリスちゃん! 待っててね!」
そう『Vチューバー風巻みどり』の中の人こと、元ニュースキャスターの緑川まどか(37歳)は喜ぶのだった。
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