#050 このゲームは実況のアリスケと解説の映子でお送りします!
試合が始まった。
応援したい、大きな声で留美さんを!
⋯⋯しかし僕の声は目立つしどうしよう?
⋯⋯ふとその時、隣のシオンが目にとまった。
カワイイなシオンって、これなら──。
「ねえシオン、頼みがあるんだけど」
「なに、アッ君?」
「僕さ留美さんを応援したいんだけど、声が目立つからさ⋯⋯」
「ああ、確かに⋯⋯ね」
「それでさシオンが口パクして、その後ろで僕が応援したいんだけど⋯⋯ダメかな?」
「⋯⋯なにそれ? うーん、別にいいけど⋯⋯そんなに応援したいんだ、あの子の事?」
「うん! 大切な友達なんだ留美さんは」
「留美ちゃん⋯⋯ルーミアだよね、声でわかるよ。 そっか⋯⋯アッ君がねえ」
なんかニマニマ笑うなシオンは? 何だ?
「それでいいかな?」
「いいよ、私がそれでアッ君の役に立てるのなら」
こうして僕はシオンという美少女キャラのアフレコで、留美さんを応援することになった。
その僕らの目の前で留美さんの開幕の3Pシュートが決まった!
「いいぞ! 留美さ──んっ!」
僕は大きく声を出して留美さんを応援する。
あ⋯⋯こっち見た、留美さん!
しかし留美さんは油断したフリして相手の後ろからボールを奪った、さすが!
そしてまたボールは留美さんに。
「留美さん! もう一本だ!」
コートの上の誰よりも留美さんが輝いて見えた。
「アリスケってば、あんな声出して」
「でも紫音ちゃんだとあの声が違和感なくて面白いわね」
⋯⋯なんか後ろで姉と映子さんが何か言ってるが気にしない。
そんな僕の見ている前で留美さんのパスから味方にボールが渡って⋯⋯決まった。
これで5-0、いい出だしだった。
「芹沢⋯⋯留美?」
僕の近くの⋯⋯相手の高校の生徒だろうか?
ベンチ入りできなかったバスケ部の女の子が観客席の下の先輩たちに何か叫んでいた。
「先輩! 相手の14番気を付けて! あいつ去年の中学の得点王です!」
⋯⋯どうやら留美さんを知っている生徒が居たらしい。
まあ有名選手だったからな留美さんは、雑誌に載るくらいだし。
そして見てわかるくらいに相手チームはあわただしくなったのだ。
試合は我が青海高校の優位に進んだ。
もちろんその原動力は留美さんだった。
敵にマークされ始めた留美さんはむしろオトリになって、味方を上手く使って得点させていた。
いいリズムで加点して第一クォーターはウチのリードで終了したのだった。
── ※ ── ※ ──
「芹沢さんどう? スタミナは?」
「このままだとちょっと最後まで持たないので、やっぱりペースダウンですね」
「OK、作戦通りここからはロースコアで行くよ!」
そして休憩が終わる。
「みんな! 私のためとか考えずに自分の為に、悔いのないように頑張って!」
「はい、キャプテン!」
こうして私たちはキャプテンを残してコートに戻った。
「あんた芹沢さんだってね、中学得点王の?」
「そうだけど⋯⋯それが何?」
どうやら相手に私の事を知ってた人が居たようだ。
チラっと観客席を見渡すと⋯⋯あ、中学の時のチームメイトが居た。
そりゃバレて当然か。
「さっきまでは舐めてたけど⋯⋯こっからは本気でマークするからね!」
「そう、頑張ってね」
懐かしい気分だった。
中学時代はよくこうやってマークされたもんだ。
しかし私は現役だったころとは違う。
ムキになって張り合えばスタミナが持たない、適当に流して上手くあしらわないと⋯⋯。
こうして試合は進むのだった。
── ※ ── ※ ──
「ああ! また点を取られた!」
僕の見ている前で留美さんが抜かれて敵に点を取られた。
しかも留美さんのシュートも減って、わが校の加点の勢いも無くなっていく⋯⋯。
「やっぱりブランクが長かったから⋯⋯」
「違うわね」
「⋯⋯映子さん?」
そこにはカツサンドを頬張りながらドヤ顔で語る映子さんが居た。
「これは作戦ね、体力温存して最後に爆発させるための」
そう漫画で読んだ知識で解説をする映子さんは、いつもより偉そうだった。
「⋯⋯なんか映子さんって」
「なに? 見直した有介君」
「的外れな解説してフラグを立てる観客みたいですね」
「ちょ!? なんでよ!」
しかし試合そのものは映子さんの解説通りに進むのだった。
「どやぁ~」
「やるじゃない映子」
「ふふん。 見たか有介君! この私のデータに狂いはないのよ!」
「⋯⋯なんか悔しい」
そして試合は第二クォーターでほぼ同点に追いつかれて、続く第三クォーター終了時にはその点差は15点になっていた。
「けっこー開いたわね」
「いやここから! 留美さんが何とかしてくれるよ!」
そして僕は観客席から身を乗り出してラストクォーターのコートに戻ろうとする留美さんに声をかけた。
「最後まで諦めないで! 留美さん!」
留美さんはこっちを振り返ることなく、ただ⋯⋯片手だけ上げて応えてくれた。
僕は最後まで応援する。
だから留美さんも最後まで頑張って!
── ※ ── ※ ──
第三クォーターが終了した。
ここまでの作戦は⋯⋯やや破綻している。
「点差⋯⋯開いたね」
「まあ仕方がない」
「でも体力は温存できました、これなら最後まで全力で走れます!」
私はそう答えながら、アリスケ君が作ってくれたレモンの蜂蜜漬けを食べる。
「芹沢さん! リバウンドは絶対取るから3Pお願いね!」
「ええ、任せて桜田さん」
ここまででよくわかった。
桜田さんは優秀なゴール下だ、これなら安心して3Pを撃てる!
さあ、最後まで頑張るか。
コートに戻る私にアリスケ君の声が聞こえた。
「最後まで諦めないで! 留美さん!」
⋯⋯人前で声を出すことをあれだけ嫌がっていたのに。
私の為にアリスケ君が応援してくれている⋯⋯それがゾクゾクするほど嬉しい!
ここまで応援された以上はもう⋯⋯勝つ以外ない。
私は手だけ上げてアリスケ君に応える。
だって今の私⋯⋯きっと怖い顔しているだろうから。
残り10分15点差。
2分で3点ずつ詰めれば追いつける。
イケる──。
「気合の入った顔しているね、でも止めるよ」
その人は今日私をずっとマークしてきた相手の選手だった。
「今の私を止められるかしら?」
「止めるさ」
「やってみなさいよ」
そして試合は再開した!
もう我慢は終わりだ! 後先考えるな! とにかく点を取れ!
私と司令塔の梅沢さんとでゲームを組み立てる。
最速で点を取る!
私は味方がスクリーンをかけてフリーにしてくれた一瞬を見逃さない。
⋯⋯静かだ。
周りから音が聞こえない。
大歓声も、その中で一番よく聞こえるアリスケ君の声も。
体の体勢、シュートのフォーム、指先の感触⋯⋯完璧。
私は撃った3Pシュートが入ったことを確認せずに、守備に戻った。
その後ろで音もなくボールはゴールネットを揺らしていた。
あと12点。
点差を詰めるのはオフェンスじゃないディフェンスだ。
来い!
最前線の守備位置に着いた私を抜こうと、相手はフェイントをかける⋯⋯ここだ!
私の反応でボールは奪った!
相手は困惑している。
ここまで私は体力温存のために守備はある程度手を抜いていたのだ。
相手に時間を使わせる、そして最終的には抜かれて点を取られても構わない。
その分こっちは3点取る、相手には3点だけは取らせない。
そんなゲームの組み立てだった。
ボールを奪った私のワンマン速攻!
相手は守備に戻り切れていない、このまま2点確実な場面!
しかし会場にどよめきが起こる。
私がシュートしたのは⋯⋯3Pエリアだからだ。
「入った」
私はもう見向きもせず守備に戻る。
その後ろでボールがネットを揺らす音と、相手チームの悲鳴のような声が聞こえた。
もう私は止まらない、止められないよ!
見ていてアリスケ君!
他の誰でもない、私の事を!
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