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リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第1章 導かれしVチューバーたち

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#004 ボイスレッスン

 僕がVチューバーになる事を両親は許してくれた。

 その期待に応えるためにも頑張らないと⋯⋯。


 そう決意した翌日、僕は再び『ホロガーデン』の事務所ビルに来ていた。

 姉も一緒である。


「待っていたわアリスケ君」


 そう言って木下さんに迎えられた。


「こんにちは木下さん、今日は何の用でしょうか?」

「アリスケ君は来週真樹奈の所に引っ越すでしょ? その前のデビュー前にアリスケ君がちゃんと声を出せるか確かめておかないとね」


 どうやら僕のテストの為だったらしい。

 本来であるならきちんとオーディションを受けてから、事務所に入るのが筋らしい。

 しかし⋯⋯。


「アリスケ君の事は社の上層部でも注目されててね」


 どうやら例の切り忘れた動画の僕の声の部分が切り抜かれて再生数を伸ばしているらしい。

 そして姉の姉弟だというコネもあってスカウトの打診、という事だった。


「どのくらい?」

「例の動画⋯⋯まあ2分くらいの長さなんだけど、それでもこの数日でもうすぐ100万再生に届きそうなのよ⋯⋯」


 そう言って木下さんは手に持ったタブレットに映った動画のページを僕に見せた。


「うわぁ⋯⋯なにこれ⋯⋯」

「なになに? 『天使の産声』⋯⋯だって!」


 そう言いながら姉は笑った。


 その動画は歌っている僕の声だけのものだ。

 しかし⋯⋯1コーラス分だけとはいえちょうどいいとこまで歌っていて、まるでその為に収録した動画みたいになっている。


「まあこんな感じに鼻歌は評価されてるけど、ちゃんと声が出るか試さないと⋯⋯ね」

「わかりました」


 このテストの結果では僕のデビューは無くなるのだろう⋯⋯。

 いま僕はデビューしたかった。

 いや変わりたかったんだ、だからやらなきゃ!


 こうして僕は音楽室みたいな場所に案内された。


 ホロガーデンは総合芸能事業団体のほんの一部である。

 姉が元所属していたコンパニオンや声優など、他にもレッスン科などもあり人材育成にも手を広げている。


 いま僕の前に居る人たちはそんなプロの指導員たちだった。



「じゃあアリスケ君、おもいっきり声出して!」


 大きな防音室の中で僕の声だけが響く。

 でもここに居る人はそんな僕の声を笑ったりなんかしない。


「変じゃないんですか、僕の声?」

「この仕事ではもっと変な声を聴くさ」


 指導員さんの答えはあっけないものだった。


 そうか⋯⋯僕よりも変なのが居るのか⋯⋯。


 無論それは下には下が居るという意味じゃないのはわかる。

 でも僕は救われた気持ちになった。

 すると声も次第に通るようになっていった。


「アリスケがあんな大声で話すのは久しぶりね⋯⋯」

「ちょっと意外だったわね、もっとボソボソ喋るかと思っていたので」


 部屋の隅から姉さんと木下さんの話も聞こえる。


「ちょっと歌ってみようか?」


 そう指導員が言い出した。


 Vチューバーの仕事の中には『歌ってみた』なんかも含まれる。

 今の段階で僕にそんな事まで期待するのかは不明だが、今のうちに確かめておくようだった。


 そして僕はマイクを渡されて⋯⋯部屋に音楽が鳴り始めた。

 その曲は日本人なら誰でも知っている国民的なアニメの主題歌だった。


「これなら歌えるでしょ?」


 どうも指導員的には無難な選曲だったらしい。

 そして僕は歌い始めた──。


 フルコーラス歌いきった⋯⋯気持ちいいな、やっぱり。


「⋯⋯次コレ行ってみようか?」

「はい! お願いします」


 こうしてどんどん別の(アニソン)を歌わされた。

 中には知らなくて歌えなかった曲もあったが、だいたい7割くらいは知ってて歌えた。


「⋯⋯アリスケ、あんた歌上手いんだ?」

「真樹奈さん知らなかったの?」

「アリスケがまだ小っちゃい時には家族でカラオケには行ったけど、最近は⋯⋯ね」


 それはそうだ。

 僕が中学に上がった頃にはもう姉は実家を出ていたからな。

 僕が声が原因で周りからイジられ始めたのは中学2年生の頃からだし。


「有介君、君はよくカラオケするんでしょ?」


 そう指導員はあっさりと見抜いた。


「ええそうです。 こんな声なんで一人で大声出したいときは一人カラオケをしょっちゅう⋯⋯」

「なるほどねえ」


 指導員さんの評価は上々のようだった。


「声量もあるし、こんな高いキーで歌える男は珍しい。 素人レベルなら合格だ、プロを目指すなら今からレッスンを受けてみるかい?」


 たとえお世辞でも嬉しかった。

 今日初めて出会った人が僕の声を認めてくれたんだって。


「今はVチューバーを目指します、もしレッスンが必要になればその時にお願いします」

「そうか、頑張れよ」


 そう言ってその指導員は退室した。


「お疲れ様アリスケ君」

「いい歌声じゃん、アリスケ!」

「ありがと、ねえさんに木下さん」

「これなら『歌ってみた』も行けそうですね」


 そう木下さんは言ってくれた。

 そして別の指導員がやってきた。


「さあ今からこの台本を読んでね」


 こうして僕は声優の真似事みたいなことをやらされた。

 どうやら目的はキャラを作って喋れるか? という事らしい。


 その目的を読み取り指示通りに僕は──、

 ときにボーイッシュに、ときに少女の様に台本を読んだ。

 全てアニメを見て真似たレベルだった。


「いかがでしょうか?」


 まだ演技が抜けきらない僕は少女っぽく問いかける。


「なかなかいいね」


 指導員の評価は良かった。

 そして姉は笑い転げていた。


「アリスケ! あんた最高! もう女の子にしか聞こえないよ~」


 でも⋯⋯なぜかこの笑いはあの頃の馬鹿にされたようには聞こえなかった。

 僕が前向きになったからだろうか?


 それから僕は休憩室で待機する事になった。


「はい、アリスケ」

「ありがと、ねえさん」


 僕は姉からジュースを受け取った。

 その冷たい飲み物が喉に心地よかった。


「こんなに声を出したのは久しぶりだよ」

「そっか⋯⋯よかったねアリスケ」

「ねえさん以外みんな笑わずに僕の声を聴いてくれた」

「プロだからね、あの人たちは⋯⋯もっと面白い声の人もいるよ」

「⋯⋯そっか」


 まだ僕は普通の人前で話せる勇気はない。

 でもここでなら平気になった。


「ここに居たいな」

「大丈夫⋯⋯アリスケなら」


 僕の試験の結果が出たのはそれから30分後だった。


 結果は⋯⋯合格だった。

 ただし基礎レッスンを受ける条件で。


「アリスケ君、あらためておめでとう。 そしてようこそアリス⋯⋯『ホロガーデン』へ」

「これからよろしくお願いします、木下さん!」


 そう僕は笑顔で返事したのだった。




 事務所のビルを姉と一緒に出た。


「次からはもう一人で来れるよね」

「うん」


 その姉の言葉が、ビルまでの道順を覚えたじゃない事くらい僕でもわかる。


「ひとりで来れるよ」


 僕は今ようやく歩き始める事が出来た気がしたのだった。

 ありがとうねえさん、今まで心配かけて⋯⋯。


 次の日⋯⋯。


 僕は三度事務所ビルにやって来ていた⋯⋯姉と共に。


「ねえさん?」

「仕方ないでしょ、私まで木下さんに呼び出されたんだから!」


 なんとも締まらない⋯⋯でもやっぱりまだ一人は早かったのかな?

 姉が居ると安心出来た。


「おはようございます、木下さん」

「おはようアリスケ君、それに真樹奈も」

「おはよう木下さん⋯⋯で、今日は何の話なの?」


 今日何か大切な話があるとだけ聞かされていた。

 それも僕だけでなく姉も一緒に⋯⋯と。


「今日はとても大切な事を決めます⋯⋯それは」

「それは?」

「『アリスの設定』です!」


 こうして僕はまた一歩Vチューバーに近づくのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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銀色の魔法はやさしい世界でできている~このやさしい世界で最後の魔女と素敵な仲間たちの夢見る物語~
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― 新着の感想 ―
[一言] 自分も昔、ボイトレの専門学校のブースとかでプロデューサーに声聞いてもらったりしたので半分なつかしく、半分主人公に嫉妬しますね!
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