#263 『ファースト・コンタクト』
俺は宇宙を見上げてそこにある惑星をながめる⋯⋯。
「ふん⋯⋯いまいましい星だが美しいのがまだ救いだな⋯⋯」
そこに浮かぶ惑星はアールディア星といって、俺の住むこのエルトラン星とは双子惑星だった。
かつてこの2つの惑星では星間戦争がずっと続いていたのだが、それももう昔の話だった。
「レグルス殿下!」
「なんだ?」
側近の男が俺に近づく。
「ただいま地球探求研究所から連絡があり⋯⋯なんと! 超時空ネット回線の接続に成功したとの報告です!」
「なんだと!? 今すぐに行くぞ!」
こうして俺は急いで地球探求研究所に向かうのだった!
そして駆けつけるとそこの長官がニコニコ顔で俺を出迎える。
「これはレグルス殿下! ようこそおいで下さいました!」
「そんなことはどうでもいい! それよりも繋がったのか! アレが!」
そして満面の笑みで長官は告げる。
「はい殿下! 先ほどようやく超時空ネット回線の接続を確認しました!」
「⋯⋯でかした!」
この『超時空ネット回線』とは⋯⋯。
かつて地球に存在したというヴァーチャルアイドル・アリスが歌った曲の中に出てきた概念である。
これさえ繋げは『いつでもどこでもアリスと会える』という俺たちの夢の技術だったのだ。
⋯⋯とはいえこの俺の住む惑星エルトランと地球は何十万光年も離れており、行き来することはほぼ不可能。
通信に至っても仮にリアルタイム通信に成功したとしても、もはやアリスは過去の人でこの現代には居ないのだ。
そんな無慈悲な現実に誰もが諦めかけたその時⋯⋯一筋の光明が差したのだった!
それがかつてわが星の天才科学者だったブルーベル博士の辿った痕跡だった。
ブルーベル博士はアールディアの技術者ラピスターと結託してタイムマシンの宇宙船を開発して過去のアリスに会いに行ったという⋯⋯。
まったくもって羨ましい話だった。
しかし検証の結果⋯⋯その時空航行エンジンは宇宙空間に時間断層を作るため危険すぎると判明し、星団条約で開発が禁止されたのである。
結果としてブルーベルとラピスターは2つの惑星の歴史に名を残す大犯罪者となってしまったのだが⋯⋯その功績もまた偉大過ぎたのだった。
それがこのエルトラン星とアールディア星からなるエルトアール星団と地球をか細く繋ぐ時空断層なのだった!
この時空断層こそがブルーベル博士の宇宙船の航路がつけた宇宙の傷跡なのだが⋯⋯現在でも残っていたのである。
調査の結果この時空断層はこのまま安定して残り続けるだろうという事だった。
これこそが我々とアリスを繋ぐ希望の道なのだった!
とはいえこの時空断層はとても細い⋯⋯だいたい直径1メートルもないので人が行き来する乗り物は通過できないだろう。
しかし通信用のバイパスハブならば設置可能なのではないか?
という仮説が立てられたのだった。
こうして我がエルトランとアールディアによる共同開発でこの地球探求研究所が作られたのだった。
そしてついに研究が実を結びこのエルトアール星団と地球との通信が繋がったのだという!
「おお! よくやった! さあ早く繋いでくれ!」
「はい殿下!」
そして長官がチャンネルを接続した⋯⋯。
早く⋯⋯早くしろ。
『⋯⋯ボクが⋯⋯いる⋯⋯限り、誰も死なせは⋯⋯しない!』
⋯⋯!?
「き⋯⋯聞こえたよなみんな! アリスの声が!」
「おおっ!」
それはわが星の女神アリスの声に間違いは無かったのだ!
── ※ ── ※ ──
「ボクがいる限り、誰も死なせはしない!」
そうボクはかっこつける!
今まさにロールプレイング・アドベンチャーワールドのラスボスとボクたちの最終決戦の真っただ中だった。
「いくよアリス! いっけー! メガロフレア!」
ルーミアの最強魔法がうなる!
「吾輩のアルティメット雷神ブレードをくらえ!」
シオンの魔法剣が轟く!
「悪は正義に屈するのです! さあこの正義の拳を今ここに! 会心彗星脚!」
ブルーベルの放った足に思わず見とれる!
「うぐぐ⋯⋯死ねぇ!」
魔王サルガトールがはなつデスゲイズビームがボクらを襲う!?
「うわああぁ!」
「きゃああぁ!」
「うぐううぅ!」
「ひゃああっ!」
被害甚大だ! でもボクがいる限り何度でも立て直す!
「みんなの傷を癒せ! レインボーハッスルダンス!」
ボクが舞うことでみんなのHPが完全回復した!
このレインボーハッスルダンスはふざけた技だけど回復性能はピカイチだから困る。
「キタキタ! アリスのパンチラダンス!」
「アリスの癒しのワキだ!」
「アリスパワー充填! まだ戦えます!」
⋯⋯なんかひどい扱いだな、まあ仕方ないが。
そもそもボクはオートマタで純粋な回復魔術師じゃないからこんな技を覚えるはめに⋯⋯クソッタレ!
「さあ早く! ボクが舞っている間にみんなは全力ブッパして!」
「「「3人連携! メガロ・ライトニング・彗星脚!」」」
「ぐわああああああああっ!」
⋯⋯⋯⋯魔王は倒れた!
「やったか!?」
「フラグ建てるなアリスぅ!」
しかし起き上がってこない魔王⋯⋯。
[魔王サルガトールは倒れた!]
そのシステムメッセージが出た時!
「「「「よっしゃ終わった~!」」」」
そう歓喜を上げるボクたち4人だった。
── ※ ── ※ ──
『『『『よっしゃ終わった~!』』』』
俺はアリス達の最後の戦いを見届けた⋯⋯。
「まさに神話よ⋯⋯」
いやまあ、これが単なるゲームだとは理解はしているんだけどなあ。
しかし今までは例の人工衛星に残された限りあるアーカイブでしか見ることのできなかったアリスのゲーム配信だったのだ。
しかもリアルタイムの生配信なのだから思わず感無量になってしまっても仕方がないであろう?
「⋯⋯よくやってくれた研究所の諸君!」
そう俺は職員たちを労う。
俺が素直に人を賞賛するのは珍しいのだが、まあ今日はそんな気分だった。
そんな俺の前で配信が続き⋯⋯感動のエンディングが続いていた。
[王様「おおアリスよ! よくやってくれた! おかげでこの国に平和が⋯⋯⋯⋯!?」]
その時だった!?
ゲーム画面に異変が起こったのは!
「なんだいいところで! 周波数あってるのか!? ノイズだぞ!」
「いえ殿下これは⋯⋯ゲーム画面そのもののノイズです!」
「なんだと?」
ばかな⋯⋯この感動的なエンディングにこのノイズは相応しくない!
どうなって⋯⋯?
[ククク⋯⋯サルガトールなど我ら7大魔王のなかでは小物⋯⋯]
そう謎のメッセージが流れたのだった!
『なになに!? 何が起こってるの!?』
そうアリスにも混乱が見て取れる。
[サルガトールは失敗したようだがここからはこの7⋯⋯いや6大魔王がこの世を支配してやる!]
そしてゲーム画面はこの世界を映す⋯⋯。
そこには6つのダンジョンが現れたのだ!
[さあいつでも来い! 我らはいつでも貴様たちの挑戦を待っているぞ! くははははっ!]
『なんだと! エクストラダンジョンじゃねーかこれ!』
そうアリスが憤っていた。
なるほど⋯⋯ゲームクリア後の追加シナリオなのだろうたぶん。
『やったねみんな! もうちょっとだけ遊べますよこのゲーム! ⋯⋯くそったれ!』
そうアリスがキレていた。
怒る声も可愛い⋯⋯。
そして話は祝福から一転⋯⋯この新しい魔王の事になったようだ。
[王様「おお⋯⋯なんということじゃ! サルガトールでさえあれほどの強敵だったのに、さらに手ごわい魔王が待ち構えているとは⋯⋯」]
『はあ~また地道にレベルアップとステータスの元集めかあ~』
そうアリスにも疲れが見える声だった。
[愛の女神「絶望してはなりません」]
『なんだ愛の女神って!?』
[愛の女神「私は愛の女神、魔王サルガトールに封印されていました。 しかしあなた達のおかげで解放されたのです」]
なんか超展開らしい⋯⋯。
[愛の女神「新しい魔王たちは強力です、それに対抗できる力を私が授けます。 さあ私の試練を乗り越えて愛の絆に目覚めるのです、勇者たちよ!」]
『新イベント来た!』
ほうほう⋯⋯。
その時システムメッセージが開いた。
[これより『結婚システム』が解放されます! プレイヤーの育てたキャラ同士を結婚させて愛の力で強化しましょう!]
『はあ!? 結婚? なんだそれ!』
そして流れるメッセージを読み理解するアリスたち⋯⋯。
『愛の試練を乗り越えたキャラ同士にはエンゲージリングが貰えてお互いの能力の一部を共有する⋯⋯だって!』
まあ要するにキャラ強化イベントなのだろう⋯⋯だがしかし!
『アリス! 結婚して!』
『うへぇっ!? シオンとボクがぁ!?』
『そんなの許さない! アリスはルーミアのなのよ!』
『えへへ⋯⋯嬉しいなあ』
『そんな! アリスはこのお姉ちゃんと結婚するよね!?』
『ブルーベルまでぇ!? 急にボクのモテ期がきたなこれは!』
⋯⋯このVチューバーはブルーベルという名なのか?
あのブルーベル博士と同じ名前とかまあ偶然だろうが⋯⋯。
まあブルーベル先生は銀髪だったけど、このVチューバーは靑髪だし別人だな。
『あ⋯⋯いやコレ! ここ見るとさあ、アリスの能力共有するのが一番シナジー高いからさあ吾輩は!?』
『ル! ルーミアもだにゃあ⋯⋯』
『も⋯⋯もちろんベルお姉ちゃんもそうですよ!』
『ちくしょう! そんなこったろうと思ったぜ!』
こうしてアリス達のあたらしい旅が続くらしい⋯⋯結婚するために!?
「ば⋯⋯バカな! アリスが結婚だとぉ!?」
俺はその場にひっくり返って倒れた!
「で、殿下! 気をお確かに!」
「許さん! 許さんぞ! アリスが結婚なんて! アリスと結婚するのは俺なんだ!」
「なに言ってるんです殿下!? あなたにはスピカ姫という婚約者が!」
「そんなの親同士の決めた婚約でしかない! だいいち俺様はスピカ姫とはリアルで会った事さえないんだぞ! そんな婚約は破棄だ! 俺の嫁はアリスなんだ! この結婚をやめさせるぞ!」
まあそれがゲームの中の話だとは理解はしているのだが俺は受け入れられなかった。
それほどまでに俺にとってアリスは絶対的なものだったのだ。
「殿下! いけませんそれは、地球への通信マイクで──」
俺は部下たちが止める間もなくそのマイクで地球に語り掛けた。
「地球人たちよ──」
── ※ ── ※ ──
20XX年 10月某日。
アメリカ合衆国フロリダ州、国際宇宙開発研究所にて。
そこに私は私の婚約者であるレジェイド様とやって来ていた。
「ノア! こっちだよ!」
「はい! レジェイド様!」
まさか私がブルースフィア王国の第二王子様の婚約者になるなんて!
そんなレジェイド様が今回私の為に連れてきてくれた場所がここアメリカの宇宙開発研究所だった。
それも私の夢が将来宇宙開発をしたいからというのを聞いてくれたおかげです。
「ハロー! レジェイド!」
「やあマイケル!」
この2人は大学時代の大親友だったらしい。
その伝手で今回私達のこの研究所の見学が実現したのでした。
「そちらのレディが君の婚約者かい?」
「ああ⋯⋯まあね!」
「レジェイド様の婚約者、ノア・アイノです。 今回はよろしくお願いします」
「オーケーオッケィ! はははっキュートなレディーじゃないかレジェイド! 君の嫁は二次元のロリータだけじゃなくって安心したよ!」
「うるさいなあマイケル!」
こうして私の宇宙開発研究所の見学が始まったのでした。
そこで見る物はすべてが感動的で私の知的好奇心を満足させるものばかりでした。
⋯⋯でもしかし。
ピピピピッ! ピピピピッ!
急に目の前の機器からアラームが鳴ったのです!
「これは一体?」
周りの職員にもあわただしい気配が?
『────⋯⋯地球人たちよ』
研究所のスピーカーからそんな声が届いた。
「こ⋯⋯この声は?」
『私は、エルトアール星団のレグルス・アリステラである! 私はここに宣言する! 今ここに我々と地球との講和を! そしてその証として俺はアリスと星間結婚することを⋯⋯ここに宣言する!』
は? ⋯⋯今なんて?
それにアリスって?
「おい誰か!? いたずらか!?」
「いや違う⋯⋯これは冥王星方向からの通信を受信しています!」
驚くべきことが私の目の前で起こりました。
それは外宇宙からの通信の傍受だったのです!
その混乱は収まるどころかさらに広がるばかりでした。
しかしやがてこう結論されることになった。
20XX年10月某日⋯⋯。
この日は長い地球の歴史にこう記される。
『この日地球は初めて異星人とのファーストコンタクトに成功した』
⋯⋯⋯⋯と。
第9章『リアルの家族たち』⋯⋯完。
最終章『幻想の花嫁』に⋯⋯。
To Be Continued...
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