#025 Vチューバー廃業の危機!?
僕の名前は栗林有介。
今年の春にVチューバーになってまだ1月程度の新人である。
だがそれは仮の姿、本来の僕の本業は学生である。
そして⋯⋯。
「先日の小テストの結果だ!」
そう言って先生から帰って来た僕の小テストの結果は⋯⋯あまり芳しくなかった。
そんな僕を見て留美さんからラインが来た。
[るみるみ:どうしたの? 成績悪かった?]
[アリスケ:うんまあ⋯⋯]
このように僕らは普段教室ではスマホのラインで会話していた。
しかし僕のほんの些細な変化も見ていてくれてたんだな留美さんは⋯⋯。
なんか嬉しいな。
こういうのは今までなかったから。
しかし浮かれてもいられない、早急に対策が必要だった。
来週の高校生活初めての中間テストに向けて!
元々僕は成績はいい方だった。
なぜかというと親の方針だったからだ。
ゲームを禁止して勉強をやらせるよりも、ゲームをしたいなら成績を維持しろというのが特に父の教育方針だったからだ。
父いわく「ゲームを禁止しても子供の成績には影響しない!」だそうだ。
これは父の実体験らしい。
むしろ100点取ったらゲームソフト1本買ってもらえると交渉した結果、学年首位にまでなったそうだ。
その父の教育方針によって僕の成績はまあ、上の下あたりをキープしていた。
しかし高校に入りVチューバーにもなって気を抜いていたようだった。
この小テストの結果は中の下といったところだった。
赤点を取るほどでもないが正式な中間テストで同じ結果なら、両親からはVチューバーを続けることを反対されるだろう。
元々学業をおろそかにするなら、その時は辞める約束だったからだ。
僕は今Vチューバーを辞めたくない。
姉や留美さんや映子さんなど、楽しい人たちの囲まれて暮らしている⋯⋯あの学校から5分の位置にあるマンションから実家に戻るなど、断固お断りだった。
[アリスケ:帰ったら一緒に勉強しようよ]
[るみるみ:いいよ]
よし! 勉強の時間だ!
そう意気込んで家に帰ると映子さんが来ていた。
「あ、映子さん。 ただいま」
「有介君、お帰りー」
すっかり明るく元気になったな映子さんは⋯⋯初対面の時のメンヘラっぽいヤンデレムーブは一体⋯⋯。
「おっかえりー、アリスケ」
「ただいま、ねえさん」
「あれ? 留美は?」
「今日は留美さんが買い物担当」
「そっか」
「それからねえさん、来週までテスト勉強するから邪魔しないでね」
「OK。 ⋯⋯テストかー、学生時代のやな記憶が蘇るわね」
「じゃあ夕飯は私が作ろうか?」
「そうですね、お願いしてもいいですか映子さん?」
「任せなさい!」
映子さんはこのマンションの管理人補佐として就職? した。
その際に隣の部屋に引っ越してきたのだった。
元々その部屋に住んでいた人は、同じこのマンションのもっとグレードの上がった上の階の部屋に引っ越してもらったらしい⋯⋯。
こういったタワーマンションでは上の階ほどマウントが取れるらしく、同じ家賃のまま間取りも広くなるという裏取引のおかげで快く快諾してもらったそうだ。
姉いわく。
「結局過保護の親バカね、映子の親は」
だった。
このマンションの不動産主は映子さんの親で、僕らの社長だからだ。
それはともかく⋯⋯来週まではVチューバーはお休みすることを木下さんに言っておかないと。
[アリス:中間テスト対策に来週までお休みします]
元々学業優先での契約なので、これでいいはずだ。
すると返信が帰って来た。
[木下:わかりました、勉強頑張って。 それと──]
その後の木下さんからの指示を僕は実行する。
「じゃあ僕は夕飯まで配信してくるよ」
「ん⋯⋯珍しいわねこんな時間に? まあがんばって」
そして僕は部屋に入った。
さて⋯⋯いつもより早い時間の配信になるし予告なしのゲリラ配信になるが、見てくれる人が居るだろうか?
まあアーカイブを残すのが目的なんだが。
── ※ ── ※ ──
「皆さんこんばんは、アリスです」
配信が始まってまだ1分もたっていないのに100人くらい集まってきた?
どうやって知ったんだろう?
この人たち、ずっとパソコンに張り付いているのか?
【あれ? いつもと違う時間だね】
ふだんのボクの実況はたいてい20時から22時くらいである。
今は18時⋯⋯イレギュラーと言ってもよかった。
「実は少々報告がありまして、短い時間の配信となります」
【なになにお知らせ?】
「実は来週までしばらく配信をお休みします」
【えーなんで?】
【新人だしメンタルがついに⋯⋯】
「あっ健康の理由とかではないです、ボクは元気です」
【じゃあなんで?】
「実はボクは来週まで⋯⋯ドック入りして、改造されることが決定しました」
【改造w】
【ついにパット入れるのかw】
「パットは入れませんよ、必要ないですから」
【俺たちには必要】
【よかったなルーミア、下には下が居てw】
「ルーミアちゃん怒るよ? いやボクが怒るよ?」
【サーセン】
「まったくルーミアのあの完成された『最萌えの機能美』が、君たちにはわからないの?」
【ヤバい変なスイッチ入ったw】
「ルーミアちゃんはね、紫色の毛並みの美しい髪の毛をツインテールにまとめていて、三角とんがり魔女帽子を被っているけど魔法の力でその猫耳はあの帽子を貫通していて、いつもぴょこぴょこ動いて見えている、それに尻尾もフワフワ腰の高さで自己主張していて目を楽しませるんだ、おっぱいは確かにあんまり無いけどそれって要る? あの可愛さにおっぱいは邪魔じゃない? なんか不自然というかあざといというか、おっぱいがいいならエロフのエイミィさんやボクの姉の無駄乳でも見ていればいいんだよ、つまりルーミアの良さっていうのは──」
【長い⋯⋯】
【始まったw】
【ガチ勢で草】
【ルーミアの耳は3D透過バグじゃんw】
「──っで、あるからして⋯⋯は!? そうじゃなかった」
【あ⋯⋯やっと戻ってきた】
「えっと来週についにボクの3D化が決定しました、という事でのお休みです」
【おーついに3D来た】
【でも立体化しない部分があるんでしょ?】
「まあそういう訳で、短い動画ですが報告させていただきました」
【もう1時間経っているんだが⋯⋯】
【全然関係ない話ばっかりだったよなw】
「あれ? もうそんなに時間が? おかしいな? それでは来週まで待っててください」
【はーい待ってます】
── ※ ── ※ ──
こうして僕の配信は終わった。
さあそろそろ食事の時間かな?
部屋を出ると何とも言えない空気で姉と映子さんは僕を見る。
「あれ? 留美さん、まだ帰ってきていないの?」
「留美はさっき帰ってきて今部屋に籠ったわ」
「そう⋯⋯」
「あんたの演説がよっぽど恥ずかしかったんでしょ」
「演説? 何のこと?」
「⋯⋯あきれた」
そう言って姉はエイミィさんと見つめ合う⋯⋯、一体何だと言いうのか?
「じゃあそろそろ夕飯にしましょうか」
「おー、映子の手料理か楽しみ」
「ふふっ。 まだまだ有介君ほどじゃないけどね」
「じゃあ僕は留美さんを呼んできますね」
僕らの部屋の前には配信中かどうかわかるランプがあって、今は青だったからノックしてもいい。
だから僕は留美さんの部屋をノックする。
⋯⋯あれ? 反応がない?
もう一度ノックするが⋯⋯出てこない?
寝ているのかな?
そう思ってそっとドアを開けた、するとそこには⋯⋯。
『──だいたいさールーミアちゃんは、あのクールっぽく振る舞っている演技と素の可愛らしさの落差がいいのであって──』
⋯⋯さっきの僕の配信動画を見ながら、留美さんは固まっていたのだった。
「あの⋯⋯留美⋯⋯さん?」
「ひゃい!? アリス⋯⋯ケ君!?」
「その⋯⋯夕飯の時間です」
「そう⋯⋯もうそんな時間か。 動画が長かったから気が付かなかったわ」
「うん⋯⋯その⋯⋯ごめん⋯⋯」
「⋯⋯そんなにルーミアが好きなんだ、アリスケ君?」
「うん」
「私とどっちが?」
「ル⋯⋯いや同じじゃん」
「⋯⋯同じ? 同じかなぁー?」
正確には真逆だと思う。
留美さんの時は時々ルーミアの面影を感じて。
そしてルーミアの時は、素の留美さんが見えるときがある。
それが何とも言えない魅力なのだ。
お互いがお互いを引き立てるというか?
可愛いは正義だと世界は言う⋯⋯それが真実ってやつだ。
僕のように正体がバレればキモいだけの存在とは違う。
きっと留美さんは神様に愛されている人なんだろう。
⋯⋯僕と違って。
⋯⋯気がつくと留美さんは出て行ってて、僕は一人留美さんの部屋に佇んでいた。
おっといけない、このままレディの部屋の中に男が居るのはマズイ。
まあ姉の部屋を掃除するのに僕はよく入るが⋯⋯留美さんは自分の部屋の掃除を決して僕にはさせない。
それが女子力ってやつなんだろう。
「あれ留美? 顔赤いけどどうしたの?」
「さあ!? 最近暑くなってきたのかしら?」
「そう? まだ5月じゃん」
ふむ⋯⋯たしか冷凍庫の中に買い置きのアイスがあったな、夕飯の後に出すか。
こうして僕たちは、4人で夕飯を食べる事が最近の日常になるのだった。
なお⋯⋯。
「うーん、有介君の料理に比べるとまだまだね」
「えー? 十分美味しいよ映子の料理」
と、食う専門の姉がフォローする。
「そうかな? 有介君、今度料理教えてもらってもいいかな?」
「いいですよ」
「よーし! 味見は任せろー!」
「ねえさんも一緒に覚える?」
「やだー! だって覚えたらアリスケの料理が食べれなくなるじゃない!」
好き勝手なこと言ってる姉だった。
「留美ちゃんは有介君の方が好き?」
「え!? ああ、料理の話ね。 まあアリスケ君の方がおふくろの味という感じがして毎日食べたい⋯⋯というか、いやでも映子さんのも美味しいですよ」
「ありがと留美ちゃん」
「そういえば留美のアレ⋯⋯なんか変な昔話、何なの?」
「ちょっとした声優ゴッコというか⋯⋯やってみたくなって、つい」
「アレ留美ちゃん一人でいろんな声出しててすごかったね」
「ありがとう。 でもやっぱり一人だとキツイかな?」
「じゃあ私達も出ようか?」
「いいわね私達でやりましょう!」
それを聞きながら僕も、留美さんや映子さんの頑張りに負けてはいられないなと、勉強に意欲を燃やすのだった。
決してこの居場所を失いたくないから⋯⋯。
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