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リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第9章 リアルの家族たち

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#238 リネット・ブルースフィア王女殿下の高校デビュー(テイク2)

「私にいい考えがある」


 というコンバイン司令官が言うと不安になるセリフを留美さんが言った。


 まあ僕としてもリネットのより良いスクールライフが送れるように手を貸すことはやぶさかではない。

 ⋯⋯しかしはたして留美さんはどんな方法を使うつもりなんだろう?




 そして新学期2日目。

 今日のリネットは徒歩での通学だった。

 そう僕と留美さんと一緒の通学である!


 しかし⋯⋯不自然なくらい取材が居なかった。

 これは入学初日にはリネットが取材に全面協力する代わりにその後は来ないように⋯⋯という取り決めがあったらしい。


 もしも約束を破った報道関係者が居た場合は何かしらのペナルティがあるらしい。

 そんな意外と強いブルースフィア王国の外交圧力を感じさせる登校風景だった。


 ⋯⋯ただ1人を除いて。


「それでどうだったリネットちゃん! 学校の感想は?」

「ええ素敵な学校でした。 これから楽しく通えそうです!」


 そう存在しない記憶を楽しそうに語る我らがリネット姫である。

 そしてこのルール破りの取材の人はある意味特別な人だった。


「この事も記事にするんですか、みどりさん?」

「ええ。 いま話題のブルースフィア王国のお姫様の入学だもの」


 そうこの人は僕たちと同じVチューバーの緑川まどかさんだ。

 とくにリネットと同じ会社所属のVチューバー、虹幻ズの仲間である風巻みどりの中の人である。

 だから特別というか怖いもの無しというか⋯⋯。


 というかみどりさんのこの取材は本当に取材なのだろうか?

 僕にはただ朝のジョギング中にニアミスしただけにしか見えないラフなジャージ姿のみどりさんだった。

 これには遠くで見守っているセバスチャンも苦笑いである。


「それではみどり様、おねがいしますね」

「ええ。 いい感じにまとめとくわ」


 Vチューバー・風巻みどりの登録者数は150万人以上だからな⋯⋯僕よりも多い。

 その中に学校関係者がどのくらい居るのかは不明だが少しはリネットのイメージアップにつながる可能性を信じよう。


 こうしてみどりさんは走って帰った。

 ああ見えて学校の校門という他の生徒の多くなる場所を避ける配慮のある人だ、きっとうまい感じの記事にしてくれるだろう。


「嬉しいですね、こうして力を貸してくれる友人が居るのは」

「そうだね」


 僕の友達はほぼ居なかったからなあ⋯⋯今ではVチューバー関係の友人が増えたが。


「さてみどりさんには外側(ネット)から、今度は私達で内側(リアル)からリネットのイメージを生徒たちに伝えないとね」


 このみどりさん召喚も留美さんのアイデアだった、あまりに手際がいい。

 シオンよ⋯⋯今日の留美さんは一味ちがうぜ!


 普段の留美さんだったらリネットを学園祭でメイド服姿にして⋯⋯とか考えそうなんだが、あいにく学園祭はまだとうぶん先なのだった。


 そんな事を考えていると校門に近づいた⋯⋯その時だった。


「あ⋯⋯芹沢さんおはよう。 それに栗林と⋯⋯お姫様も」


「おはよう井口君」

「おはようございます井口様」

「⋯⋯おはよう」


 僕は聞こえるか聞こえないかのギリギリの声であいさつする。


 この井口陽太という男⋯⋯1学期もよく目立っていたけど、こうして留美さんに話しかけてくるような男ではなかったはず。

 なぜか急に留美さんに話しかけて来るようになったなこの男は⋯⋯。


 そうなぜか僕の心の奥底にモヤがかかる。


「⋯⋯今朝もか」


 誰にも聞こえないような小声だったけど⋯⋯あいにく僕の聴力は良い、バッチリと聞こえた。


 一体何が「今朝も」なんだろう?

 疑問だけが僕の中で増えていくのだった。




 そして今日から普通に授業がある。

 クラスの皆はまあ浮ついた雰囲気ではあるもののまだリネットに話しかけて来るチャレンジャーは居ない。


 こうして見るとお姫様に普通に話しかけた姉とかはすごい人なんだと思えてならない。

 まあ調子に乗るから本人には絶対に言わないが⋯⋯ああいうバカな人も世の中には必要なんだろう。


 僕はチラッとリネットの横顔を見るが⋯⋯なんだか痛ましかった。

 すごく笑顔なのに内心では笑っていないのがわかりすぎて⋯⋯。


 いったい留美さんはどんな方法でリネットをこのクラスに馴染ませるのか?

 僕にできる協力なら何でもする気になっていた。




 そして授業は体育の授業になった。

 この学校の体育の時間は男女混合である。

 なので僕もみんなと同じ授業を受けるのだが⋯⋯。


 しかしながらわが校の体育の授業はほとんどやる気のない自習である。

 今日は体育館での授業なのでバスケのコートやバレーのネットを使って生徒たちは思い思いに遊んでいる。


「体育か⋯⋯」


 僕はこれはチャンスだと思った。

 なにせリネットは元体操選手のアスリートでもある。

 きっとフィジカルエリートのスポーツ万能に違いない!

 ⋯⋯これは大人気間違いなしのシチュエーションだった。


「ねえ留美さん⋯⋯」


 僕はそっと留美さんに耳打ちするが。


「わかってるアリスケ君。 私もこの体育の授業で攻めるつもりよ!」


 そう自信たっぷりに作戦を語る留美さんだった。


 そして留美さんは誰かを探し始めた。

 ⋯⋯あれ? 僕もリネットもここに居るのに?


「智花! 華恋! 由愛! 一緒に3on3しない?」


 そう留美さんはクラスの女子を誘っていた。

 あれは確か⋯⋯バスケ部の1年生トリオだったはず、そうか⋯⋯このクラスの子たちだったのか。

 僕は留美さん以外の女子には無関心だったからぜんぜん気づいてなかった。


「留美とバスケか⋯⋯いいね!」

「やるっス」

「負けないよ」


 とりあえず留美さんの誘いに乗った3人だった。


「じゃあそっちはその3人で」

「いいの? こっちは現役のバスケ部3人なんだけど?」


「いいよそのくらい。 じゃあ私のチームに入ってくれないかしら⋯⋯リネットさん!」


 そう大きく声を出して勧誘する留美さんだった。


「わ! 私ですか!?」


 体育館にある謎の梯子を見ていたリネットは突然誘われたことにびっくりしたようだった。

 まあ僕も驚いたが⋯⋯てか事前に言っといて欲しかった。


「おい⋯⋯あの姫様と?」

「大丈夫かな?」


 そんなヒソヒソ話が聞こえてくる。


「あ~。 あ~。 私その~バスケは~初心者なんですけど⋯⋯」


 なぜかリネットの目が泳いでいた。

 始めて見る⋯⋯こんなにも狼狽するリネットの姿は?


「いいのよリネットさん! 誰だって始めは初心者なんだもの。 それに気楽な遊びなんだから!」


「⋯⋯嘘だ」


 なにやらボソッと呟いたのは背の高い女、バスケ部の智香さんだった。

 うんわかる⋯⋯留美さん普段はそんな事無いのにバスケだと妙に負けず嫌いで熱くなるからな⋯⋯⋯⋯心配だ。


 こうして消極的ではあるが留美さんの作戦を信じてリネットはバスケをする気になったようだった。


「大丈夫⋯⋯大丈夫⋯⋯。 今日の私は星占いの運勢最高だったし⋯⋯」


 たぶん今朝の神崎アカメの星占いを見てきたのだろう⋯⋯なんか自己暗示しているリネットだった。


 ⋯⋯なんか不安になってきた大丈夫か?

 その時だった。


「おい、そっちはバスケ部3人だし芹沢さんのチームには俺が入る!」


 そう名乗りを上げたのはなんとあの井口陽太だった。


 え⋯⋯あいつと留美さんが同じチームに?

 なんか僕は嫌だった。


 だが同じ気持ちだったのはバスケ部3人娘も同じだったようだ。


「井口君入ったら高さでぜんぜん敵わないよ! ハンデきつ過ぎ!」


 そう背の高い智香さんまでがそう言う。


「そうね⋯⋯男子バスケ部のセンターの井口君じゃちょっとズルいわ」


 ⋯⋯あいつバスケ部だったのか?

 そう見るといい体格なのがよくわかる。


 うん確かにバスケは高さが有利なゲームだ。

 そこにあの身長⋯⋯かるく190センチは超えてそうな大男が入るのはズルイよな。


 あの智香さんの身長ですら僕よりちょい高いくらいの175センチちょっとくらいかな?

 留美さんは僕と同じくらいだけど、リネットはそれよりもう少し低いし。


「ごめんなさいね井口君。 ちょっとハンデがありすぎるわ」

「そうかすまん⋯⋯出しゃばったな」


 そう素直に引き下がる井口君だった。

 ⋯⋯でも僕もあいつみたいにハッキリと出て行けたらなあ。


「じゃあ代わりのこっちの3人目は⋯⋯アリスケ君! お願いね!」

「ぼ、僕ぅ!?」


 やべ⋯⋯声が裏返った。

 明らかにヤべー声が出てしまったがクラスの皆からはとくに不審には思われてないようだ。


 まあ状況が状況だしな⋯⋯。


 こうして相手は現役バスケ部3人娘。

 それを迎え撃つのは留美さんリネットそして僕というVチューバーチームである。


「ならせめて審判だけでもやらせてくれ!」


「そうね⋯⋯じゃあお願いね井口君」

「おう!」


 ⋯⋯僕の心にモヤがかかっていく。

 あいつと留美さんが話していると思うと⋯⋯なんでだ?


 そんな僕を冷静に戻したのはリネットの様子を見たからだった。


「大丈夫。 ゴリラダンクの映画は見たからバスケならできる⋯⋯」


 ⋯⋯僕はこの時この留美さんの作戦に穴がある予感がしていた。

 すなわち⋯⋯リネットってバスケぜんぜんできないのでは? ⋯⋯と。


 こうして僕たちのバスケの試合が始まるのだった。

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