表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第8章 過ぎ去りし幻想を求めて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

220/272

#212 セバスチャンの休日

 俺の名はセバスチャン⋯⋯リネット王女殿下の臣下だ。

 だが今は⋯⋯。


「ジョン! そろそろ起きて朝ごはん食べなさいよ!」

「ああ母さん! いま行く!」


 俺の名はジョン・ウイリアム⋯⋯ただの下町のレストランの息子だ。




 普段激務な俺だがこのたび、リネット様の一時帰国に合わせてこの故郷のブルースフィア島へと戻ってきた。

 そしてリネット様がここにいる間は休暇を頂いたのだ。

 それで実家でのんびりとしようと思っていたのだが⋯⋯。


 俺は家庭の食卓ではなくレストランのテーブルで朝食を取っていた。

 もちろん作ってくれたのは父と母である。

 このレストランは俺の両親だけで経営している小さな店だからな。


「⋯⋯なあ父さん母さん。 休暇の間くらい俺も店を手伝おうか?」


「気にするなジョン、お前は休暇中だろ?」

「そうよ、普段から私たちだけで店はやってるんだから!」


 とまあ手伝わせてくれない⋯⋯やれやれ。

 たしかにのんびりしたいが両親が働く店でのんびりできる俺ではないようだ。


「ところでジョン! お前、結婚はまだなのか?」

「⋯⋯ああ、まだだよ母さん」


「お前が騎士団に入ると言った時にはすぐに結婚すると思ってたんだけどなあ⋯⋯近所のニーナちゃんと」

「いやべつにニーナとはただの幼馴染なだけで⋯⋯」


 この『俺が騎士団に入ったらすぐに結婚する』という事は日本人の方にはおかしく聞こえるかもしれん。

 だがこの国ではごくありふれた一般的な人生プランだったりするのだ。


 何を隠そう今ではただのレストランの店主の父だが若い頃は騎士団に入っていた。

 まあ俺のような準騎士爵(くんしょう)をもらっていない巡騎士止まりだったけどな。


 そんな父の経歴はこの国ではそれほど珍しくない、むしろ成人男性の約80%以上は2~3年くらいの騎士団所属を経験しているのだ。


 こう聞くとこの国は兵役義務があるのか? と⋯⋯思うかもしれんがそうではない。

 あくまで市民が望んで騎士団を目指すのだ。


 この国の少年たちにとって騎士団のあの純白のマント姿は憧れなのだ。

 それは俺も同じだった。


 しかし大人になってもそんな夢だけで騎士になるのは俺みたいな少数派(バカ)だけだろう。

 大人になっても騎士になるのはひとえに手厚い福利厚生があるからだった⋯⋯年金とかの。


 そして今回の結婚とかかわりがある福利厚生は⋯⋯騎士の婚姻への支援だった。

 騎士団員なら誰でもプロポーズ企画書を提出する権利があり、それが内容的に認められれば実行を支援してもらえるのだ騎士団に。


 かくいうさっきのニーナも俺の同僚に中央公園の噴水の前でプロポーズされるというイベントにて3年前に結婚した。

 今では2人の子供もいる幸せな家庭らしい。


 そして支援はプロポーズだけじゃなく結婚式も手配してくれる。

 年に10回、ほぼ毎月ごとに合同結婚式が騎士団では執り行われる。


 もちろん個人で式をあげるのも自由だが合同結婚式だと費用は国が持ってくれるからたいていそっちを選ぶ。

 それにこの時に一緒に結婚した夫婦同士はお互い親密になりやすく、その後の子育てなどの協力関係を得やすいのだ。


 この制度はこの国の建国から行われている伝統ってやつだな。

 そしてこの合同結婚式の祭事は国王が行うという習わしがある。


 不思議に思うかもしれんがこれもこの国の成り立ちに関係する理由がある。

 かつて約500年前にこの島に流れ着いた船乗りたちがこの国を作ったとされている。

 その船の女船長が初代国王になったのだ。

 そして船員たちの婚姻を船長が執り行うという文化は、まあどこにでもよくある習わしだからな。


 ⋯⋯もしも将来俺が結婚式を挙げるときはラズリアス殿下が国王なのだろうか?

 もしも万が一にもリネット様が女王になんぞなっていたら祭事としてニヤニヤ笑ってる姿が容易に想像できる。

 それは嫌だな⋯⋯なんとしてでもラズリアス殿下にこの国の王と成って頂かないと!


 ⋯⋯まあプロポーズの相手すらいないんだがな俺には。

 これもリネット様につき合わされて出会いがないからだな⋯⋯クソったれ。


 ⋯⋯休暇だというのになんだかリネット様の事ばかり考えているな。

 あの方は今頃友人たちと楽しくやっているだろうか?

 これまでのリネット様には遊び相手が我らロイヤルガーディアンしか居なかったからな⋯⋯。


 まだ短い時間だが日本でのリネット様の護衛はすごく楽だった。

 めっちゃ平和な国だし、それ以上にだいたい同じマンション内で遊んでくれるおかげでな。

 この島に居た頃とは大違いである。

 個人的にはこのまま日本で暮らして欲しいリネット様には⋯⋯。


 そんな事を考えながらのんびり朝食を取っていたら。


「ぐっ! 痛てっ!?」


「父さん!」

「あらら手を切っちゃったの?」


 どうやら父が包丁で手を切ったらしい。


「見せてみろ父さん! ⋯⋯まあ大丈夫そうだな」


 俺のみたところすぐ治る程度の切り傷だったが。


「でも今日はもう料理は無理だろ?」

「何言ってやがる! この仕込みをした食材が無駄になるだろ!」


「でも血が止まらないだろ。 しかたない今日は俺が手伝うよ」

「ジョンお前⋯⋯すまないな」

「いいさ、父さん」


 こうして俺は父の代わりに今日のキッチンに立つことになるのだが⋯⋯まさかそれを後悔するはめになるとはこの時思っても見なかった。




 お昼のランチタイムは両親のサポートもありなんとか切り抜けた。

 まったく大変な仕事だな、あらためて父さんと母さんを尊敬する。


 そして夜の部に備えての準備中の時だった。


 チリーン♪

 とドアの呼び鈴が鳴る。


 客か? まだ営業前なんだがな⋯⋯。


「いらっしゃいませ! そのまだ⋯⋯⋯⋯あ! あんた!」

「これは!? よくぞいらっしゃいました!」


 ⋯⋯なんだこの両親の対応は?

 俺はキッチンから顔をだして店内を見るとそこには、床に膝をつく騎士の礼をしている父とオロオロする母の姿だった。


 父さんの騎士の礼は洗練されてあんがいカッコよかった⋯⋯じゃなくて!


「リネット殿下!? 何でここに!」

「あは、来ちゃいました!」


 そういたずらっぽく笑うリネット様だった。


「おー、ここがセバスチャンの実家の店ね」

「わーおしゃれ!」


「⋯⋯あんたたちもか?」


 そこにはリネット様のVチューバー仲間で友人の今回の旅行メンバーがそろっていたのだった。

 ⋯⋯しかも。


「ほう⋯⋯ここがセバスチャンの実家の店か」

「へー、なかなか雰囲気のいい店だね」

「うむ! この国の食堂らしい食堂であるぞ!」

「隠れ家的名店という感じね」


 ⋯⋯と、なんと王室の方々までご一緒である!


「⋯⋯あのリネット様、なぜここに?」

「セバスチャン! お店に来るのに料理を食べる以外に理由があるとでも?」


 くっ⋯⋯ニヤニヤといたずらっぽい笑いを⋯⋯。


「そのリネット様。 ここは王室の皆様に来ていただけるような上等の店ではありませんので⋯⋯」


「セバスチャン! あなた両親の仕事を侮辱するつもりですか!」

「うぐっ!?」


 いい事言ってるがこの姫⋯⋯ただ俺をからかうために来たのだという事がよくわかる俺には⋯⋯。


「うむ! リネットの言うとおりだ! 店主よ、素晴らしい店ではないか」


「おお⋯⋯陛下や姫殿下にそう言って頂けて私は⋯⋯私は⋯⋯」

「あんた、よかったね⋯⋯」


 マジ泣きで感動する両親だった。


 ふふん⋯⋯と勝利宣言するようなリネット様。

 これはもう帰れとは言えん⋯⋯。


「⋯⋯しかたない父さん母さん、今日はもう貸し切りという事で」

「あ⋯⋯あいよ!」


 こうして今夜のこの店はリネット様とお仲間によって侵略されたのだった。




「あのセバスチャン⋯⋯僕も手伝いますね」

「ん⋯⋯君は客なんだから。 ⋯⋯まあいいか、手伝ってくれ」

「はい」


 なんか嬉しそうなミスタ―アリスである。

 彼も知り合いが働いている前だと落ち着かない俺みたいなタイプなんだろうきっと。


「あ! 私も手伝うわアリスケ君!」

「え!? 留美さんも?」


 やれやれ、どうしてこうなった?


「あらお嬢さんたち、そのままじゃ服が汚れちまうよ」


 そう言って母さんが予備の従業員用エプロンを持ってきた。


「おー、るーちゃんカワイイね! あっ君もそう思うよね?」

「うん⋯⋯そうだね」


「あー! 私も着たいです、セバスチャン!」

「その、リネット様は着てもいいですが手伝わなくても結構ですからね!」


 こうしてこの日の営業はまったく客商売とは思えん大騒ぎになった。

 我儘な客、困った客、騒ぐ客⋯⋯さまざまだ。


 俺はふとアリスケ君と留美嬢の働く姿を眺める。


「料理が出来たよ留美さん」

「はーい! ご注文のポテトグラタンでございます!」


 まるで両親の働く姿を見ているようだ。


 ⋯⋯いいかもしれん。

 俺もいずれ騎士を辞めた後はこうして夫婦でこのレストランを継ぐのも⋯⋯。


「あらあら! やっぱり日本のお嬢さんは気配りが行き届いてて、いい子ね!」


 そんな母の言葉に俺は我に帰る。


「そうだな」


 まったく⋯⋯彼女もいない俺が引退後の結婚生活なんかを夢見るなんてな。


「この前来たお客さんの中にも店を手伝ってくれた日本人の子が居てね、気立てがよくてキビキビ働くいい子だったわ! 「これも完全無欠の完璧メイドには当然の事です!」とか言っちゃてね! あんな子がジョンのお嫁さんだったらなあ」


「ジョン、お前また日本に行くんだろ? 日本で彼女を作れ! それがいいぞ!」


「やかましい! 日本へは仕事で行くんだ! 嫁探しじゃねえ!」


 そう俺は両親に怒鳴った。


「あらセバスチャン、私は部下の恋愛は自由だと思ってるけど?」

「リネット様も余計な事言わんでください!」


 カオスな状況だったこの店は⋯⋯。


「ああ、リネットの給仕服姿も良い⋯⋯」

「ラズリアスお兄様、オレンジジュースを持ってきてください」

「よしきた!」


 ⋯⋯なぜかラズリアス殿下が給仕服姿のリネット様に給仕するというよくわからん事になっている。

 でも王宮では見たこともないくらい楽しそうに生き生きしているラズリアス殿下だった。


「ふふ、こんなレストランで食事なんて学生時代を思い出すわね、ネフライト」

「そうだな、アンジェリカ」


「うげー、両親の昔のデートの話とか聞きたくないなあ⋯⋯」


 そういえば陛下と王妃様は同じハイスクールのご学友だったらしいな。

 まあこの国では王家以外の尊い血などほぼ無いからこういう恋愛結婚もアリだったりするんだが。


 妹しか愛せない第一王子。

 二次元しか愛せない第二王子。

 恋愛にまったく興味のない第三王女。


 ⋯⋯王室の未来はどうなる事やら?


 そんな事を考えながらメニューにある商品をかたっぱしらに作っていく俺だった。




 そして宴もたけなわに近づいた頃だった。


『──親愛なるブルースフィアの皆さま、本日もごきげんよう』


 それはこの店の年代物のラジオから聞こえてきた機械音声のニュースだった。

 このチャンネルはこの国の国民放送だ、津波の警報とかがあると勝手に放送されるチャンネルだった。


『──親愛なるブルースフィアの皆さま。 本日は嬉しいニュースです』


 ⋯⋯? なんだ?


『──本日、敬愛するリネット・ブルースフィア殿下が王位を継承しました』


「⋯⋯は?」


『──さらに嬉しいお知らせです。 リネット・ブルースフィア女王と日本人の栗林有介様との婚約が発表されました』


 ⋯⋯は? は?


 一瞬で騒がしかった店内が沈黙する。


「なんでどうして!? 私とアリスがけ⋯⋯けけけ、結婚!?」

「どういう事だリネット!? お兄ちゃんは許さないぞ!?」

「僕とリネットがなんで!?」


 一瞬でパニックになる店内⋯⋯。

 それはこの大きな事件の始まりだった。

お読みいただき、ありがとうございます。

続きを読みたいという方はブックマークの登録を、

面白いと思って頂けたなら、↓の☆を1~5つけてください。

感想もいただけると励みになります!

皆さまのご支援・応援を、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鮎咲亜沙の作品リンク
銀色の魔法はやさしい世界でできている~このやさしい世界で最後の魔女と素敵な仲間たちの夢見る物語~
こちらも応援よろしくお願いいたします。
感想もいただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ